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有名映画の原作が多くあるので、大衆寄りの作風かなと想像しちゃうけど文学的な仕上がりがこの著者にはあるし、そこにまんまと魅了される。
主人公たちは想像の範囲内で一癖二癖あり、生きていく環境に翻弄されてまさに罪への陥穽に知らず知らずに嵌まる。決して根っからの悪人ではなく、ただボタンの掛け違いが修復不可能なまでに加速しもう後戻りできない最後の一線を超えていってしまう。
特に「百家楽餓鬼」と「白球白蛇伝」がシビれる。
原因は違えどどちらもお金に関係し、堕落していく。しかし、主人公二人とも最初は真っ当な人間といて歩んでいるはずなのに、周りの環境からの外的影響から歯車が徐々に狂い出し堕落していく。そこに劇画的なターニングポイントなんかなく、いつの間にか気づいたらがんじがらめの袋小路。人の破滅というのはいとも簡単に起こるんだなと戦々恐々です。
他のレビューにもあるように、後味は決して良くない。でもそういった結末にこそ、そこに人間の根底にある感情的な、理性では制御できない本質があるのだと思う。ここまで本作品に引き込まれるのだから、一理あるだろう。
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解説にあるように、登場人物たちの人生、生きる空間が丹念に描かれていて、人が罪を犯すまでが、ものすごくリアルに、近所の噂話かのように感じられる。
一人一人が身近に思えるので、事件が起こる瞬間には、ああもう取り返しがつかないと、とてつもないやるせなさに襲われる。
矛盾だらけで、本当に言いたいことは伝えられない、人間の哀しさみたいなものを感じる。
そんなずっしり重くてしんどい短編集だけれど、読むたびに発見があり、別の登場人物に共感できたりするので、何度も読み返している。
特に印象的なのは『万屋善次郎』『白球白蛇伝』。
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随分前に『楽園』を見て読みたくなり購入。買ってから短編集と知るw
じめ〜っとした嫌な蒸し暑さと全てを覆い隠してしまう重苦しい寒さといった温度が感じられる文章だったな。
不快な温度の中にいると何も考えられなくなるのと同じように、各短編の登場人物達も考え方が一方通行すぎるし人って本当に自分の都合のいい方にしか考えられへんのやなと思った。
それは悪夢を終わらせる希望でもあるのか。
あいつが怪しい、あいつに決まってるって次々に言い出すの怖かった。
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瀬々敬久監督の”楽園”が素晴らしすぎたので、その原作が読みたくて拝読。
神話的な雰囲気さえただよう短編集。
犯罪小説集というタイトルが想起させるようなハードボイルドな感じの事件は一つもない。
ただ必死に生きていただけだった。
それなのにどうしてこんなことになるんだろう。
罪を犯しているのは誰なんだろうか?
犯人?社会?運命?
ただ”生きている”、そのことが罪なのかもしれない。
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人間、堕ちて行く時は、このままじゃダメだ!って分かってて、それでも「今」を変えられなくて堕ちていくものなんだなと改めて思った。
ダメだ!と思って踏みとどまる意識がある時に、まだ戻れる道が見える時に戻らないと。
私って流されてしまうタイプだから、たまに 堕ちた生活に身を置く自分を簡単に想像出来てしまう。
怖いわ〜>_<
これ以上何も求めないから、どうかこれ以下になりませんように。
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オチ(救い)のない短編集5篇。このうち2篇がカップリングされる形で「楽園」として映画化されている。
映画になった、村八分にされた男が狂気に囚われていく話が一番やるせなかった。
高校野球で活躍した元プロ野球選手が金銭トラブルでドツボにハマっていく話は、元ファンの目線から物語が悪いほう悪いほうへと進行してのだけど、引き込まれた。
オーディブルだと1つの話が約2時間。波乗りに向かう車内で聞くのにちょうどよかった。
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いずれも実際に起きた事件を題材とした短編5編。どの作品もラストに曖昧さを残すが現実と創作の差異を読んで想像する。
誰しも犯罪者となる隙間が見える。
「青田のY字路」
北関東連続幼女誘拐殺人事が題材か。
そのうちの一件「殺人犯はそこにいる」で取り上げられた冤罪事件“足利事件”を意識したかな。
それだけでなく類似犯罪も取材の上かと思う。
少女達の誘拐殺人は許せるものではないが、
犯人であろうと地域住民から追い詰められる男の行先。数々の状況や生い立ちそのものへの不信感。
「曼珠姫午睡」
弁護士の妻英里子の中学の同級生が殺人犯で捕まる。内縁の夫の保険金殺人。目立たなかった少女の中学卒業後の変貌。中学のちょっとした関わりからか、彼女は自分の店名に中学の思い出を源氏名に英里子と名乗っていた。
犯罪とは無縁の英里子がふと踏み外す日常。
後妻業などかな。
「百家楽餓鬼」
バカラ、ギャンブルに堕ちていく御曹司。
今、タイムリーな話題。記憶に残る上場企業創始一族の社長がカジノで多額の借財を重ねた事件。
寝食を忘れて没頭していく様子、本人はすでに思考できない状態が背筋が凍る。
「万屋善次郎」
62歳善次郎が限界集落で5人の高齢者を殺人放火。善良な男が、集落で孤立、高齢者たちからの軋轢で追い込まれていく。
田舎暮らしでの孤立は過酷。余所者、上下関係と理不尽な掟もある。
「白球白蛇伝」
家族の希望を背負いプロ野球選手となった青年。貧しい家庭だったが、家族は才能ある青年に協力を惜しまない。
華やかな活躍は短かったが、一度経験した贅沢を引退した後も続けていく。そこには破滅しかない。
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モデルとなった事件
・青田Y字路
栃木小1女児殺害事件
・曼珠姫午睡
首都圏連続不審死事件
・百家楽餓鬼
大王製紙事件
・万屋善次郎
山口連続殺人放火事件
・白球白蛇伝
元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件
清原和博覚せい剤取締法違反
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青田Y字路
曼珠姫午睡
百家楽餓鬼
万屋善次郎
白球白蛇伝
どの話も登場人物が印象的。
万屋善次郎が、切なかったなぁ。
映画の『楽園』を観るのが楽しみ。
Posted by ブクログ
何というか、良い人も悪い人も彼(吉田修一氏)の描く人間の人となりが鮮明過ぎて、見知った人の話のような錯覚に陥る。
全く異なる5編からなる犯罪にまつわる物語なのだけど、隣近所でおこった事件を見せられている感じ。
だから決して読後感が良いわけではない。
1話終えるたび「嗚呼…。」となんとも言えない重りを背負わされるよう。
例えば、幼い頃からよく知ってる近所の子どもに「お母さん刺しちゃった」とインタホンごしに聞かされるような…そんなオモリ。
偏見、嫉妬、小さなプライド、欲、思い込み、集団心理、傲慢…人のダメな部分をあげたらキリがない。
そんな中に置いても、田舎の閉鎖的な街で生まれる集団心理の怖さが印象に残る。
「青田Y字路」「万屋善次郎」
そして何の罪もない非力な子どもがいつだって割りを食うことになるのがやるせない。
「白球白蛇伝」
余談ですが…
「青田Y字路」と「万屋善次郎」は、1つの物語として映画になってます。
『楽園』佐藤浩市、綾野剛(Netflix視聴可)
今年の21冊目
Posted by ブクログ
この小説を原作にした映画「楽園」を先に観た。
小説の短編をまとめた映画になっていた。
Y路路で運命の別れ道を描いて刹那に向かう
それぞれの人生の物語り
短編の各主人公たちはそれぞれ別れ道を
どう進んだのか
そしてどうなっていくのか
私は普段映画が先でよかったことは稀だけれど
今作の「楽園」は先に映画で良かった
Posted by ブクログ
こちら
短編集だと
知らずに読んでいて
3作目に入って
ん?
いつ前の話しに戻るん?
って真剣に思っていた
バカ←
てっきり
最後は話し繋がるもんだと
ばかり笑
なる程ね
だから犯罪小説集
映画も
この中の2作を
映像化したのね
青田Y字路
だけの小説で
映画だと思っていた
"人はなせ、
殺めるのか''
表紙も見ず
帯も見ずに読むもんで
このキャッチコピー
読んだ後に
目にして
心に響く
短編集だから
重い事件が短く
まとめられていて
(そこが凄いのだけど)
もっと
読みたい!
と思ってしまった
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(以下、直接の感想ではありませんが、触発されている自ツイートを転記(一部訂正有))
真の母数(発生件数)を知ることはできない。
しょせん、
無作為ならざるサンプル(認知件数)でしか社会の問題を知る事は出来んのだ。
そして「認知」という言葉のなんと胡散臭いことか
それが 「楽園(本作を基にして作られた映画)」という映画で切実に得た気づきだ
誰が「悪人」なのか?
誰への「怒り」なのか?
そして誰のための「楽園」なのか?
やはりつながっているな。
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不穏な空気がすべての物語に漂っている。そんな文章だった。人物のセリフというよりは、情景描写が印象的。読み始めると、その世界観にはまってしまう。ただ、ひとつひとつの物語の終わり方が、もやんと言う感じ。そう感じるのは、読んでいる自分が、バッドエンドで終わって欲しくないという願望があるからかもしれない。犯罪を犯す心理、誰もが状況が変われば犯罪者となる可能性を秘めているのだと考えさせられる作品。
Posted by ブクログ
登場人物が犯罪(主に人殺しかな)を犯すのを書いた短編集。
読み終わった時に、えっ、本当にこれでいいの?違うんじゃないの?と思うものが2つほどありました。
犬が出てくる物語がちょっと切なかったです。
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実際に起こった事件をモチーフにした短編小説集。
「万屋善次郎」は、元ネタがすぐに分かった。
過去に、あの事件のルポを読んだことがあるからだ。
小説なので、勿論ディテールは実際の事件とは異なるが、犯人が精神的に追い詰められていく田舎の閉塞感や、家の様子(不気味なマネキン)などの描写が、実際の事件を彷彿とさせる。
村人と上手く付き合っていた頃の善次郎の様子や、歯車が狂い始めた頃の村人との会話等が一人の老婆によって語られ、やがて事件が起きる。
そして、飼い犬の叫び。
ルポを読んだ時以上に、息苦しさ、胸苦しさを感じた。
すべての作品に、事件に関わった人達の哀しみを感じた。
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5話。どの話も以前、世間を賑わせたような事件を彷彿させる。
踏みとどまるチャンスは何度もあったのに、悲しいかな抗えぬ人間の業によって落ちていく主人公たち。
この主人公たちから学ぶ点があるとしたら、自分を常に客観視すること、欲望に身を任せない、他人に依存せず自力で道を歩く根性が必要、ってことかな。
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娘の家族から電話があり、夕方になるのに子供が帰ってこないという。村の人達と探しに行くが見つからず、用水路に沈んだランドセルだけが残されていた。それから数年、バッタ物売りのフィリピン人女性の養子の息子が怪しいという噂が絶えず、ある日別の子供が行方不明になった際、フィリピン人の親子の家に押し入るが…。
誘拐、刺殺、撲殺、背任などの犯罪に関わる短編集。しかし、そこは吉田修一である。ミステリ的な謎解きよりも、それぞれの人の生活や心象を描くことがメインである。
中学までのいけ好かなかった同級生が、若い男を使って保険金をかけた老人を殺させる。その犯罪自体にフォーカスが当たるのは一瞬で、同級生ゆう子の中学の頃、20代の頃、結婚していた頃などの話を伝聞で積み上げていくという、ありそうで以外にない展開など、独特の世界観の構築が面白い。
ただ、誰かの視点に収まるまであちらこちらに視点が動いていったり、犯行に焦点を当てすぎないのが逆に文章の核を曖昧にしたりと、読み始めと読み終わりがわかりにくいというのも事実だ。
それぞれの話は実際にあった事件を下敷きにしてお話を広げた『横道世之介』スタイルであるらしく、リアリティが魅力。村八分の恨みから村人を襲うのは、いくつか元ネタを思いつくがどれなのか、いずれにしろもとの事件が強烈過ぎて、あらたに構築しきれていない部分があったのではないか。
面白いんだけど、あんまり人におすすめするって本でもなかったな。
Posted by ブクログ
映画「楽園」を見て原作が気になったので購入。
実際の事件を下敷きに作られた5編の短編集。
・青田Y字路
行き所のない怒りの矛先はやがて最も弱い者へ
・曼珠姫午睡
何故地味だった女は男に巣食う毒婦となったか
・百家楽餓鬼
実直な御曹司は如何にしてバカラ沼に嵌ったか
・万屋善次郎
些細なすれ違いが起こした限界集落での大惨劇
・白球白蛇伝
輝ける栄光の中に最後まで生き続けた男の末路
全編を通じて人間の弱さや危うさが漂う。
人は常識という枠の中を何かを支えに生きている。だが些細なことの積み重ねや偶然の出来事によってその支えを失った時、徐々に或いは一気にその枠を踏み越えて行く事がある。
ワイドショーなどで世間を賑わした事件を追う、ルポタージュを読んだような読後感。
映画はこの中の「青田Y字路」と「万屋善次郎」の話を基に描かれた。
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3.8犯罪が何故起きたのかに迫る人間ドラマ。酷評もあるが、自分にとっては面白かった。犯罪者は特別な人ではない。自分にも起こり得ると思って生きようと思う話。
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この小説は、実際の事件を元にしてますね!
5つの内容を読み終えた後に、実際の事件を調べ
見比べをしました。
どこかで皆、"楽園"を求めているのかも知れないですね。
・青田Y字路
・万屋善次郎
上気2つは映画"楽園"に描かれていた内容ですね
ほぼ、内容通りだったので面白かったですね。
本当に小さな集落シリーズは、不気味です。
そんな、イメージがついてしまう。
互いに助け合う事は出来なかったのか。。と思う。
残り3つも、まぁまぁです。
背任罪といい、金の貸し借りといい。
お金関係は胸糞悪い!読むだけでイライラしますわ(笑)
ただ、"曼珠姫午睡"は凄く官能チックで
なんかドキドキしました。。
全体的な感想として、実際の事件を
少しアレンジして短編集となるのは
まぁまぁだったかと思います。
他、吉田修一さんの作品を読んでいきたいですね!
Posted by ブクログ
短編が5つ。「青田Y字路」「曼珠姫午睡」「百家楽餓鬼」「万屋善次郎」「白球白蛇伝」。
「犯罪小説集」とは言っても、そこで起こる犯罪自体より、登場人物の生き様や人間関係に重きが置かれている感じ。
ひとつめとふたつめは、最後でよくわからなかった。『え、終わり??」と思ってしまった。結末は想像してねってことなんだろうけど、しっかり終わるのかと思っていたから突き放された感じがした。ちょっとピンと来なかったな。
3つ目以降は、そのスタイルに慣れたのか、どれも面白かった。楽しいお話ではないけれど、ストーリーには引き込まれた。
出てくる登場人物たち、罪を犯したひともそうでないひとも、根っからの悪者はいなくて、何だかみんな哀しいものを持っていた。
人間くさい展開。物悲しい結末。登場人物の背景を知ってしまっているだけに、何とかならなかったのか……とやり切れない気持ちが残った。
「楽園」ってタイトルで映画化されているらしい。カバー(ダブルカバーで映画化仕様がかかっていた)の写真を見てもどれが使われたのかよくわからず、公式サイトのあらすじを見た。「青田Y字路」と「万屋善次郎」がミックスされているっぽいね。
Posted by ブクログ
実際にあった事件をモデルに作られた短編集。日常の延長線上にある犯罪の描写がとても巧い。著者の作品は他に『怒り』『悪人』『パレード』を読んだが、毎回リアリティが非常に強く、良い意味で小説感がないと感じる。情景だけでなく、気温や触感等も感じ取れることが多い。
各話の結末については、どれもモヤモヤするほど読後感が良くないものが多い。特に映画化された『青田Y字路』と『万屋善次郎』はやりきれなさが強い。
各話のタイトルが5文字で統一され、東京事変のようで少しワクワクしながら読んだ。
Posted by ブクログ
青田Y字路
曼珠姫午睡
百家楽餓鬼
万屋善次郎
白球白蛇伝
・
・
どれもボタンの掛け違いで起きてしまったように思う。それぐらい誰にでも起こりうる些細な事。
・
・
この5つの物語は誰が悪いのか分からなくなる。
・
・
個人的には万屋善次郎の物語がグサッてきたな。
・
・
どれも読み終わった後に哀しみがひろがります。
Posted by ブクログ
現実に起きた犯罪から着想を得て、吉田修一が書いた短編集、といったところでしょうか?
吉田修一自身、この作品を「ワイドショーのような感じ」と表現されておられたようなのですが、この感覚って、角田光代の「三面記事小説」とおんなじだな、と。
で、実は自分は、角田さんの「三面記事小説」のほうを先に読んでガッツーン衝撃受けたクチなので、正直言います。「吉田さん、ゴメン、、、俺、角田さんのヤツの方が、好きだわ、、、」という思いが。どうしても。ある。あるのです。ごめんなさい。
いやもう、この「犯罪小説集」も、もちろん面白い。間違いなく面白い。見事です。見事なんです。でも、ゴメン。どうしても、初めて角田さんの「三面記事小説」を先に読んじゃってるもんだから、あっちの衝撃がデカすぎて、ゴメン。こっちを「あ、角田さんとおんなじだね」って思っちゃってる自分がいるマジごめん。
いやあ、でも、うん。間違いなく面白いです。サスガ流石の吉田修一。って思いは絶対にある。うん。「ホンマこう、、、やれんなあ、、、人間ってヤツはホンマもう、、、やれん。やれんよ、、、」って気持ちになること間違いない。ですので、好きです。この小説。でもホンマにゴメン。個人的には、角田光代の「三面記事小説」の方が、好きです。こんな感想でゴメンやでホンマ、、、