【感想・ネタバレ】ベルリンは晴れているかのレビュー

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Posted by ブクログ

「ベルリンは晴れているか」(深緑 野分)を読んだ。

人間という生き物の際限のない愚かな行いを真正面から描く衝撃の怪作。

ヒットラー時代の幕開けから、終戦後の東をソ連、西を米・英・仏に分割統治されたベルリンを舞台に繰り広げられる物語の中で、驚くべきひとつの真実が明かされるミステリー小説でもある。

見事!

『次は誰を船頭にすればいい? 誰に舵取りを任せればいい? 誰が誰を裁き、自分たちはこれからどんな国旗を掲げればいいんだ?』(本文より)

(ネタニヤフやプーチンにこの本読ませたいぞ)

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2024年01月25日

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名作や 出会えてよかった
この夏、ソ連 ドイツ 日本 それぞれが舞台の戦争小説を読んでみて これまで小中高の授業で学んだ歴史の知識だけではなにひとつ戦時中のことを想像できなかった てことに今さら気付いたし、
新しい小説や映画に触れる度に ニュースで世界情勢を知る度に、自分の知識の足りなさに絶望するし もっともっと欲してしまう

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2023年10月17日

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1945年7月のベルリンを舞台に、主人公の17歳の女性が、ソヴィエト側の命令を受け恩人の男性が毒殺された犯人を探す旅に出るというストーリーです。

章の合間に主人公の過去が振り返られ、徐々にナチスドイツの勢いによって一般人の主人公やその家族周辺の人たちが生き方や考え方を変えないと生きていけなくなっていく過程が描かれていきます。

一人ひとりの思想が統制される時代を経て、敗戦によって立場が逆転したり自分のしてしまったことに後悔を抱える人など、それぞれの生き方が戦争によって左右されていく様が、読んでいて辛く感じる場面もありました。

本編の流れは中盤以降一気に動いていきます。
それも私は驚きながら読み進めることができ、ミステリー的な面白さもあって読めて良かったと感じました。

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2023年07月04日

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日本の戦中、戦後の話は、この身におびただしく浴びている。
そして、まずはアメリカのベトナム戦争、ソ連側の戦中、戦後の話も読んできた。
しかし、ドイツの物語は、どれもユダヤ人の側から見た話しばかりだった。”アーリア人種”からの物語は初めてだった。どの人にも戦争はあったのだ。

そして、本作。圧倒的なリアリティと謎解きを駆動力として、物語は進む。
最後に作者が書いたのは、良心?
オチが着いたとは思えないが、説得力はある。

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2022年07月04日

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1944年、ナチスが崩壊した直後のベルリンが舞台の小説。日本人が日本語で書いたからというだけではない力があるんじゃないだろうか。ぐんぐん引き込まれて最後まで面白く読んだ。
たぶんジャンル的にはミステリーになるんだろうけど、ミステリーとしてよりは、書かれている描写に引き込まれた。ナチスが崩壊した後の貧しく荒んだ様子の臨場感がすごい。ベルリンに西側勢と東側勢がそれぞれ入ってきて、明日をも知れない感じ。考えもしなかった一時期がベルリンにあったんだなあ。

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2022年07月03日

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占領された国で生活する、という圧迫感笑とてもリアルに感じた。
今までドイツの歴史は知っていても、その時の生活がどんなに恐ろしいものであったか、想像力が足りていなかったことを知った。

そしてソ連軍の体質、今のウクライナでも同じことが起こっているのだろうかと思った。

お父さんが話してくれた、薔薇見学禁止の立て札を引っこ抜く話、絶対に忘れない。

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2022年05月17日

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 本の扉をめくると最初に出てくるのは、1945年の敗戦後のドイツの地図。ソ連の占領地域、アメリカの占領地域、イギリスの占領地域、フランスの占領地域に分けられている。第二次世界大戦中のナチスの行いについては歴史で学んだ。その後、ドイツが長らく西ドイツと東ドイツにベルリンの壁で分けられていたことも知っている。でもその間にこんなにドイツ国土が継ぎ接ぎだらけの時があったなんて、この地図を見るまで想像していなかった。
 この小説を読むとこの頃のドイツ住民の心もこんなに継ぎ接ぎだらけだったのだと感じる。痛々しい。
 ヒトラーが台頭した時代、ユダヤ人が差別され虐殺された。だけど生きづらかっのはユダヤ人だけではない。ユダヤ人そっくりの顔をした、アーリア人。そんな人はアーリア人社会にもユダヤ人社会にも入れなかった。ジプシー系の民族もアーリア人ではないので虐待された。それから共産党員。彼らはナチスへの反逆者と見られただけでなく、後にスターリンからも裏切られた。
 両親が共産党員だったことが原因で、両親を殺され、自分自身身を隠しながら妹のように可愛がっていた盲目のポーランド人の少女も亡くし、身寄りのなくなった17歳の少女アウグステは戦後の混乱の中で、アメリカ兵の集まる食堂で働きながら生きていた。
 ある時彼女はソ連の基地な連れて行かれ、ドブリキンという大尉の元へ引きずり出された。理由は、クリストフというチェリストが不審な死を遂げたということで彼女に疑いがかけられたからだ。クリストフは戦前はアウグステのようなナチスから身を隠さなければならない子供を匿う慈善者であり、表向きの顔は、権力者の前でチェロを演奏する演奏家だった。
 アウグステの殺人容疑は晴れたが、今度はエーリヒというクリストフの義理の甥を探し出せという命令がくだる。彼に殺人容疑がかかっているからと。大尉の要求には納得がいかないがアウグステには彼女なりのクリストフな会わなければという使命感があり、旅のお供にカフカという元ユダヤ人俳優の泥坊を連れていけと言われた。たった2日間であったが、焼け野原の凸凹道、鉄道が壊れていたり、アメリカ兵に捕まったり、ソ連兵に捕まったり、〈魔女〉のような少女の支配する地下組織に捕まりそうになったり、スリリングな旅であった。途中で、子供の窃盗団の少年二人も旅に加わってくれることになるが、彼らは自分で部品を集めて作った木炭自動車に乗せてくれたり、野営するときにカエルを料理してくれたり、たくましい少年たちだった。二人はジプシーの子供と性同一性障害をもつ少年。訳ありユダヤ人俳優のカフカにしろ、アウグステにしろ、みんな若いのにスネに傷を持っていた。だけどこんな四人が協力して旅を続ける姿は、ジブリ映画のようで頼もしかった。
 深緑野分さんはすごい。若いのに、この時代のことをものすごく調べて、歴史小説のように読み応えがあるばかりでなく、前述のようにスリリングでキラキラした要素も盛り込ませている。
 ミステリーの部分はもうあってもなくてもいいと思うくらい重厚なのに、最後にあっと言わせてくれる。
 この小説はユダヤ人の皮を被ったアーリア人のように社会と人間の内面の複雑さからくる悲劇を描いているが、この小説自体も〈戦争〉の悲劇を描いた小説という皮を被りながら、実はもっと深くて複雑な人間の闇を描いている。それが最後に分かる。
 だけどこの小説がそれでも一貫してどこか明るいのは、アウグステがいつも自らの命の危険を感じながらもユダヤ人や障害を持つ人など弱い人の味方でいた両親の教えを守って生きていたからであろう。そこに深いメッセージ性もある。

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2022年02月27日

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ネタバレ

年始早々大変な本を読んだ。第二次世界大戦の不条理、ミステリー、登場人物・アウグステの強さ。何をとっても傑作。ドイツ敗戦後の共同統治下のベルリン、焼け野原と化した街にドイツ人少女のアウグステが、恩人である男の死をその甥に伝えようとするところから始まる。その後、アウグステの両親、義理の両親、姉、義理の妹、関わる友人、知人によって助けたり、裏切られたり、息つく暇がない。ヒトラーの狂気、ナチスによるユダヤ人虐殺、多国籍軍のドイツ統治による弊害、日本の戦争不条理とは人種問題が絡むところが異なる。超お薦めの1冊。⑤↑

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2022年01月03日

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冷戦時の西・東ベルリンの文化、音楽、カルチャーが好きだったので、始めてこの手の本を読みました。

アウシュビッツや夜と霧などのイメージが強かったですが、読み終わり、当時のイメージが変わり、アウグステやカフカのそれぞれの経験、思いが読むほどに味がでて、当時の町の雰囲気などが想像できました。

最後の最後におっと思わせる内容で、
評価星★★★★★5つつけました。

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2021年11月23日

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歯応え満載。
謎解きも面白いし、戦争の間の心持ちも風景も、社会情勢もよくわかる。
人を失う悲しみや、やりきれなさも。
「戦場のコックたち」もよかったけれど、これも好きな作品。

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2021年10月09日

購入済み

映像の世紀

読了したのは、もうずいぶん前の事ですが、数年後テレビ放送を見ていて、ある種の既視感を覚えました。
それは「NHKスペシャル映像の世紀」という番組でした。
ヒトラーやナチスドイツをフィーチャーした再放送でしたが、以前に観た記憶は無く不思議でした。
しかし番組が進むにつれ、それが漸く本書「ベルリンは晴れているか」の幾多の文章が紡ぎ出した舞台だという事に気づきました。
白黒フィルムが映し出す、ベルリンの悲惨な光景……
それは、本書を読んでいた時に頭の中で描いた世界と寸分違わぬ物でした。
おそらく深緑野分さんは、この映像をご覧になっていくつかの場面を執筆されたのでしょう。巻末の主要参考文献一覧に、この番組名がありました。
観たものを忠実に言葉に表すという事が、どれだけ難しいかは人それぞれかもしれませんが、深緑野分さんは見事にそれをやり遂げています。
脱帽です。
もちろん、ストーリーも素晴らしいので是非ご一読ください。
「オーブランの少女」、「戦場のコックたち」も併せてお勧めします。

#アツい #感動する #深い

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2023年10月18日

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『同志少女よ、敵を撃て』を読んだあとに、この本を読んだ。この時代に起きていたことを、小説を通して知る。日々、勉強です。

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2024年04月20日

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登場人物一人一人の生い立ちが回想として語られ、シリアスな場面では外国語としてのロシア語の会話に訳がなく、臨場感のある演出にハラハラさせられる。後半にかけて、先の見えない曲がりくねった下り坂のように罪が次々暴かれていくが、爽快に感じるよりも、戦時中ドイツの過酷な環境への憐憫の情を禁じ得ず、戦争への関心を強く持たねば、と思いを改めた。

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2023年09月27日

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人捜し×1945年7月のベルリン。殺害された人間の甥を探しながら、当時の様子がむざむざと伝わってきた。私は何も知らなかった。むしろ知らなかったことの罪悪感が大きい。そうか、ベルリンは連合国が分割して統治してたのか。戦争は女の顔どころか人間の顔をしてない。いや、、これが本当の人間の顔かもしれない。

ヒトラー率いるナチスによるユダヤ人の迫害は誰もが知っている。ナチスを支持するドイツ人もまたユダヤ人を迫害し、逆にナチスを支持しないドイツ人を非国民扱いしていた。そしてドイツ人にもユダヤ人にも密告者はいる。自分が信じたいものを信じられなくなる悲惨な時代だ。特に、本当はアーリア人なのにユダヤ人を演じていたジグの告白は強烈だった。生きるためにそうせざるを得ない。滑稽に語る口調からの痛々しさはこれまでに味わったことがないくらい、悲しいものだった。

あと、話の合間に出てくるワニのスープとペリカン。動物園を守ろうとしたヴィルマはかっこよかった。戦争を乗り越えたベルリン動物園はいまだ現役だ。この本を読み、ドイツ、特にベルリンに訪れてみたいと思った。

あとあと!深緑野分さんが描く少女は強い!「この本を盗む者は」に出てくる主人公もそうだし、17歳のアウグステもそうだし、バイタリティがすごい。やられたらやり返すくらいの気概を持ってないと。そう力強く思った。

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2023年03月27日

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巻頭の地図がありがたい。小説としても楽しめますが当時の資料をよく調べて描かれたのが分かりますしベルリンの惨状、ドイツ国民の置かれた状況など色々なことが勉強になりました。

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2023年02月09日

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ミステリーというより戦争文学。
前半は「卵をめぐる祖父の戦争」と似ている。
「戦場のコックたち」の方が好み。

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2023年01月28日

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ネタバレ

第二次世界大戦敗戦直後1945年7月のドイツ。
ヒトラーは自死を遂げ、英米仏露の連合軍に分割統治されるベリリン。

幼い頃から英語版『エーミールと探偵たち』を読み耽っていた主人公アウグステは、その英語力のおかげでアメリカ領のダイナーで職を得ることができ、なんとか食いつなぐ生活基盤を持つことができた。
くたくたに疲れて帰ったある夜中、ロシア軍管轄の警察に有無を言わさず連行され、NKVDの将校ドブリギンに告げられたのは、かつて世話になったクリストフの毒殺死。
クリストフは戦時中はその富を隠蓑に反ナチ地下活動を支持し、戦後は同志文化部のチェロ奏者としてロシア軍の庇護下にあった。

妻のフレデリカが疑わしい人物としてアウグステの名を挙げたこと、毒である青酸カリはアメリカからの配給品の歯磨き粉に混入されており、アウグステが数日前に支給された同一品を闇市で売っていたことから、アウグステは執拗な事情聴取を受ける。
確たる証拠がないため、ほどなく解放されたが、翌日ドブリギンからフレデリカの付き人の取り調べから、クリストフには生き別れた甥エーヒリがいるこが判明し、殺害に関わっている疑いがある、軍は人手が割けないので探し出してきて欲しいとかなりの無理難題をふっかけられる。
敗戦直後の関係性のなせるわざなのか、アウグステは断ることもできず、前日の取り調べの際に、偶然関わったコソ泥カフカと共にエーリヒ探しの旅が始まる。

戦前、戦後ドイツ国内の移ろいゆく描写に冒険ミステリ風味を混ぜ込むなんとも独特な読み応え。
そこまでどぎつい表現はないものの、共産主義からナチズムへの傾倒、優生思想や情報統制と生き抜くための盲目的な忠誠心、戦争へ導いたもの、結果として訪れたもの、繰り返される愚行、日本国内とはまた別の色合の”戦争”をとり巻く数多の理不尽が頭をぐるぐると行き交う。

ミステリー仕立てとやがて訪れるポツダム会議への機運がアクセントとなり物語へ引き込みつつ、その実”戦争”の残すものを考えさせられる一冊。

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2022年08月20日

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あたかもその時代に生きていたような1945年前後のドイツの描写に驚かされる。その描写ゆえに戦争の悲惨さがひしひしと伝わる。
ドイツがポーランドに不意打ちで侵略した際の話で、作中に下記のような記述がある。
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ゴミ捨て場の前にいた婦人たちは「だって、ポーランドが悪いんでしょう。総統は『平和のための攻撃』とおっしゃったし、国を守るためにやむなくよ」と話していた。
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現在のプーチンの発言とプロパガンダに汚染されたロシア人と全く同じ。
まさにプーチンは現代のヒトラーだ。

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2022年07月23日

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ネタバレ

あなたに伝えないといけないことがある。

連合国に占領されたベルリンで、アウグステはある人を探していた。お供は元俳優。アメリカ、ソビエト、ナチス、ユダヤ。戦争で家族を失い、自分を守るために人を殺した。「戦争」を終わらせるために、アウグステは行く。

アウグステが殺したというのはある程度わかるとして、その理由や方法が問題である。最後にジギの手紙があるのが救いのひとつ。アーリア人でありながら、ユダヤ人のように見える風貌を活かしてナチスのプロパガンダ映画に出ていたジギ。彼は自分かわいさのためにいつも逃げていた。最後の手紙でも迷っている。読者が一番共感できる人物ではないか。

皆脛に傷を持つ。戦争だから。自分の身が大事だったから。上に立つ者が変わっても、人間は変わらない。それならば戦争であっても許されない悪もあるはずだ。生きるために犯す罪もあれば、生きるために償わないといけない罪もある。アウグステは罪を犯し、その罪を償う。正しくはない。しかしその姿は眩しい。

『エーミールと探偵たち』が重要なアイテムとして出てくる。勇気と正義感とそしてちょっとした無謀な冒険の物語。それがアウグステを奮い立たせ、道を選ばせたなら。物語の力の大きさを思う。

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2022年05月08日

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現実でこんな悲惨な事が起こっていたのかと、どうしようもない気持ちになったり、そんな中でも自殺を選ばずに生き続けようと思ったのはなぜだろう、私だったらどうするだろう、と悶々とする。
誰か犯人なんだろう?と考える暇を与えさせてくれない程、没入して読んでしまった。

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2022年03月06日

Posted by ブクログ

登場人物一人ひとりの物語が濃い。日常の中にわだかまっているものが、戦争という異常に引っ張り出された濃さ。
戦時下のドイツと、敗戦直後のドイツを、物語は行ったり来たりする。なぜ?なぜ?という疑問をぽつぽつと抱えながら、私の周りに立ち上がる、いつか見た映画の中のベルリンを、主人公アウグステと一緒に走り、明かされる「なぜ?」の答えに悲しくなる。
ヒトはかんたんに残酷になれることを忘れがちなんだ。

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2022年01月20日

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現在と過去の二視点が交互に書かれ、過去が現在に追い付く辺りから事情がすっきり見えてくる感じとか、なかなか巧いなと思う。
戦争ものは好きじゃないんだけど、つい夢中になって読んでしまった。
こんなことが日常だったなんて、辛すぎる。

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2021年11月29日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦が終結した直後のベルリンにある米国兵員食堂で働く17歳の少女アウグステは、 戦中に彼女をかくまってくれていた恩人夫婦の夫が毒殺されたことを知る。
ソ連のドブリギン大尉はソ連領域内で米国の歯磨き粉によって引き起こされたこの事件が新たな火種になることを警戒し、アウグステに捜査への協力を求める。
アウグステは捜査に協力しつつ、まずは恩人の甥に訃報を伝えるために旅に出る。

旅とはいっても同じベルリン市内を移動するだけなので大げさに聞こえるが、当時のベルリンはフランス・イギリス・アメリカ・ソ連に分割統治されており、それらの境を越えて移動するのは少々厄介なことであった。
アウグステはひょんなことから役者くずれの泥棒の男を連れていくことになり、行く先々で面倒ごとに巻き込まれる様子は冒険小説のようだった。

幕間には戦争中のアウグステの様子も描かれており、それが彼女の人物背景になっており、またナチス統治下の苦しさも伝わってきた。
冒険小説であり歴史小説であり、そしてその情報量の多い中にミステリがある。
謎自体はシンプルではあるのだが、森の中に隠された木の状態で読みごたえがあった。

時系列的に、戦後のドイツはここから東西に分断され、東ドイツは先日読んだ須賀しのぶの『革命前夜』の舞台となる。
小説を読んでいて歴史がつながっていくのがおもしろい。
とはいえあくまでも事実をもとにしたフィクションなので、知識の導入としてはいいが、どこかでちゃんと歴史の勉強をしたい。

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2021年02月01日

Posted by ブクログ

 ミステリーというよりは、戦争小説のような物語。このタイトルは、「パリは燃えているか」を彷彿させる。ただし、天気のことではなく、心の中のことだろう。カバーイラストに描かれている主人公と思われる少女。目が描かれていないが、「見ないこと」、「見えないこと」を表しているのではないか。この物語は、読み手を選ぶのではないかな。

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2022年03月27日

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ミステリーを普段読まない方にも、おすすめしやすい戦争小説でした。時代背景もよく見えてきて、戦時中の市民の心境や置かれている状況など、学べるものが多かったです。

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2023年02月01日

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第二次世界大戦敗戦後のドイツ。ある人物の死を起点として、物語が進み始める。物語が進行する傍で、読者は主人公の半生を振り返ることになるが、戦時中の混乱に翻弄され苦悩する人々の様子が描かれており、ミステリ+歴史物といった内容になっている。
登場人物それぞれの思惑が交錯し、最終的に綺麗にまとまるのだが、綺麗なまとまりを重視するあまりリアリティに欠ける印象を受けた。
冒頭に死んでしまったある人物の描写が極端に少なく、後半の展開が腑に落ちなかったり、主人公の心を惹きつけたイーダとのつながりが薄っぺらかったり、人物の心理描写にはかなり課題が残る。
また、登場人物の個の弱さが目立ち、舞台はヨーロッパなのに、人物の名前や風景の描写以外はほぼ日本風であったことが悔やまれる。
いっそミステリと割り切って、戦争の苦悩などに言及しないほうが作品としての完成度は高かったかもしれない。 

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2022年03月31日

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当時のドイツを大いに体感出来る小説でした。
どうして甥に会うことに、ここまで固執するのかが分かるまでが少し長く感じました。

購入した文庫本に二箇所?があったのですが、これは誤植なのでしょうか。

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2022年03月22日

Posted by ブクログ

国産だけどWW2直後のベルリンが舞台のミステリ
個人的には、カバーイラストの少女と脳内作中少女の雰囲気の乖離が大

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2022年02月25日

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ネタバレ

これはミステリ小説というより戦争小説。
(いやもちろんミステリ小説なんだけど、、)

戦時中と戦後の描写が詳しくて、かなり辛い気持ちになる。
第二次世界大戦のヨーロッパについてはドイツ・イタリアが敗戦国であること、ナチスが虐殺してたことくらいしか記憶してなかったけど、各関係国の中でも対立構造があったりナチスとユダヤ人についてもそれぞれの苦しみがあったり、敗戦国と戦勝国の単純な二元論じゃないんだなと改めて思った。

しかし真犯人が人をたくさん殺した理由が描かれてなくてそこだけ「?」となった。快楽目的のシリアルキラーってこと?
こんだけ戦争で死んだり殺したり苦しい描写が続くのに真犯人はただのサイコパス?

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2022年01月27日

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敗戦直後のベルリンが舞台のミステリー小説。事件自体は戦争とは無関係だが、時代背景の描写が圧巻で、ミステリーとしてより歴史小説として読み応えがあった。日本も敗戦国なので、あの時代を生きていたらこんな思いをしてたかもと考えると、読んでいて苦しかった。

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2022年07月05日

Posted by ブクログ

本屋大賞ノミネート
日本人がこれだけ第二次大戦中のベルリンについて描けたことに驚嘆
ミステリーとしては少し弱いか

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2022年08月03日

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