【感想・ネタバレ】「生きる力」の強い子を育てるのレビュー

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Posted by ブクログ

すごい!

・今まで自分が学んだ、コーチングの基礎になる考え方、
・学校教育に関する、モヤモヤした感情
・”ゆとり教育”失墜の本当の理由

が順を追って、わかりやすくまとまっている。
これを読むと、これまでの子育て教育感が間違っていなかった
ことが判ると同時に、人間の能力を伸ばすために必要な環境
ついてのTipsが、知識として獲得できる。

後は、いかにこれらを実践するか?
だな。

本書を通じて知った、サドベリー校については、
また別の書籍を通じて見聞を深めたい。


以下、気になったキーワードを書籍からピックアップしておく。


・”ゆとり教育”は、教師の力量が問われる
 優秀な教師には、スポットがあたらず、
 ダメ教師のお粗末授業ばかりがクローズアップされた。

・アメリカのボストン郊外にあるサドベリー・バレー校
 NHKが紹介した番組(1997年放送)のビデオを入手
 ここは、「生きる力」を強い子を育てる教育の数少ない実践例

・日本ほど教育内容の規制が厳しい国は他にない
 アメリカでは、デューイ教育以外にも
 シュタイナーやモンテッソーリの教育など、多くの
 特にな教育が許されており、サドベリー教育でさえも
 公教育として認められ、政府からの補助金が支給されている。

・「与える教育」ではなく、「ひきだす教育」を
 適切な環境を用意し、自然に育った子どもは、いまの社会の常識に
 とらわれずに自らの価値観を熟成し、社会を改革する力を身につけていく

・「人間性教育」←著者が推奨している定義
の系譜
01.ジャン=ジャック・ルソー(1712-1778:フランス)
02.ヨハン・ハインリッヒ・パスタロッチ(1746-1827:スイス)
03.ヨハン・フリードリッヒ・ヘルバルト(1776-1841:ドイツ)
04.フリードリッヒ・ヴィルヘルム・フレーベル(1782-1852:ドイツ)
05.エレン・ゲイ(1849-1926:スウェーデン)
06.ジョン・デューイ(1859-1952:アメリカ)
07.ルドルフ・シュタイナー(1861-1925:ドイツ)
08.マリア・モンテッソーリ(1870-1952:イタリア)
09.アレクサンダー・サザーランド・ニイル(1883-1973:イギリス)
10.セレスタン・フレネ(1896-1966:フランス)
11.ロリス・マラグッチ(1920-1994:イタリア)
12.ダイエル・グリーンバーグ(1934-:アメリカ)

・グリーンバーグが提唱したサドベリー流の教育は、極端
 徹底的に遊び尽くして満足した子どもは、必ず学習意欲が高まる時が来る。
 日本の母親達は、必死になって就学前から文字を教え、知識を教えよう
 としているが、まったく無駄である。むしろ失ったものが大きいと考える。

・子どもを癒すには、「無条件の受容」が必要。
 「〜ができたら、〜を与える」ではない。

・近代に入ってからは、
 ルソー著『エミール』(1963年)が「性善説」の代表格
 J・ズルツァー著『子どもの教育と指導の試み』(1748年)が、「性悪説」の代表格

・いまの教育は、社会の枠組みを絶対的な正義とみなして、
 子どもたちを強制的にその枠の中に押し込めようとしている。
 ところが、枠が存在することにより抑圧が生じ、子ども達のモンスターが
 肥大してさまざまな問題を生じているというメカニズムを十分に理解していないと、
 本当はまともな教育は望めない。

・昔から、「リーダーは声の大きいやつから選べ!」という格言がある。
 岡田武史前日本代表監督は、それを聞いて
 「そういえば俺も、昔から声のでかいやつばかりキャプテンに選んできたな。。。」
 と言っておられた。

0
2019年05月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者は、42年間ソニーに勤務し、CDや犬型ロボットAIBOなどの開発
を主導して、上席常務にまでなられた方です。また、ソニーコンピ
ュータサイエンス研究所を設立し、初代所長に就任。茂木健一郎氏
や北野宏明氏などユニークな人材を輩出することに貢献します。引
退後は、教育や医療の分野で活動をされ、エジンバラ大学から名誉
博士号を授与されるかたわら、アメリカのネイティブアメリカンの
長老に称せられるなど、怪人ぶりを発揮されている方です。

本書は、そんな著者が教育について語った一冊。題名にあるとおり、
「生きる力」を育てることがテーマです。

「生きる力」は、現在の学習指導要領において、公教育の目標とさ
れているもので、もともとは、悪名高い「ゆとり教育」の導入に伴
って公式に使われるようになった言葉です。かつての学力偏重・つ
めこみ型教育に対するアンチテーゼとして使われるようになったも
のですが、ゆとり教育廃止後も、公教育の目標とされ続けています。
ただし、ゆとり教育の「失敗」を繰り返さないよう、「生きる力」
には「学力」も含まれると再定義がなされています。(すなわち、
「学力」が低い=「生きる力」が低いとなってしまうわけで、これ
はこれで非常に問題のある定義だと思います、、、)

本書の前半では、ゆとり教育の前後を軸に、教育政策がどのような
思想で行われてきたのか、それが本来の教育が目指すものとどのよ
うにズレてきたしまったのかが整理されています。そこで明らかに
されるのは、どのような教育にするにせよ、国が教育の中身を決め
る国家主義教育である限りは、ダメなのだという現実です。既に欧
米では、国家主義教育から人間性教育へと主流がシフトしつつある
のに、日本では、国家主義教育から抜け出せないまま。「生きる力」
を育てるには人間性教育へシフトすることが不可欠なのに、それを
国家主義教育において進めようとしていることの矛盾が、説得力を
もって語られます。

では、生きる力を育てる人間性教育とはどのようなものなのか。そ
れは、ルソー以来の伝統を持つもので、現代の認知工学や心理学の
知見も加味して煎じ詰めると、以下の四つの要素に集約できるので
はないかということが本書の後半で語られます。

1.無条件の受容
2.大脳新皮質がいろいろ学ぶ前に、古い脳を徹底的に鍛える
3.フロー
4.大自然との対峙

「なにも難しいことはない。子どもたちを勉強机からひっぺがし、
大自然の中に連れ出して、思い切り遊ばせればいいのだ」というの
が著者の結論ですが、一番難しいのは最初に掲げられている「無条
件の受容」かもしれません。これは子どもの可能性をどこまで信じ
ることができるかということと関連するからです。子どもにせよ、
他人にせよ、その可能性を信じて待っていれば、いつかはなるよう
になるはずなのに、それが普通は我慢ができません。相手の中に神
が眠っているということをなかなか信じることができない。それで
神の目覚めを待てずに、余計な介入をして、おかしくしてしまう。

相手のもつ可能性をどこまで引き出すことができるか。これは子育
てに限らず、後進の育成などにおいても重要なテーマです。ですか
ら、本書は、子育てや子どもの教育に悩まれている方のみならず、
部下や後進の育成に関心の高い方にも、きっと得ることの多い一冊
となることでしょう。個人的には、デューイなどに比べて言及され
ることの少ないニイルの教育哲学を知ることができたのが大きな収
穫でした。

人間の持つ可能性、神性について考えさせてくれる一冊です。
是非、読んでみて下さい。

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▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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入社してから活躍する人は、趣味やクラブ活動やボランティア活動
などを通じて、知識や学力とはまったく異質の「何か」を身につけ
ている。それは、自らを常に磨く力であり、集団の中における適切
で調和的な立ち位置を確保し、人生を楽しみ、目的を定め、挑戦し、
自己実現に向かう力だ。
そういった一連の力を、全部ひっくるめて「生きる力」と呼ぶこと
にする。

(2007年中教審答申では)「生きる力」は、「確かな学力」「豊か
な人間性」「健康・体力」の三つが支えていると定義し直し、再び
「学力偏重教育」へ舵を切ったのだ。つまり、もともとは行きすぎ
た学力偏重教育の弊害を是正するために出した「生きる力」という
概念を、それとは正反対の意味で使い始めた感がある。

「生きる力」というのは、ことばを換えれば「自己実現」に向かう
力だ。自分の能力を伸ばすとともに、それをいかんなく発揮し、思
いを実現して、社会の中で意義のある活動をし、自らの位置づけを
獲得していく力だ。

国連教育加盟国の中で、シュタイナー教育が公教育として認められ
ていないのは北朝鮮と日本だけだという。

「国家主義教育学」というのは、次のような両面性を持っている。
A.国家や支配者に忠実で、隣人に親切で、社会のルールやマナーを
 よく守り、勤勉で国の発展に献身的に貢献する人を育てる。
B.国に押しつけられた枠の中でしか発想できず、視野が狭く、自ら
 の価値観を確立できず、個性や独創性に乏しく、ひとつの方向に
 猪突猛進する、洗脳された戦士を育てる。

日本のフリースクールは、不登校児を救うために数多く設立された
が、大多数は「人間性教育学」を実践している。

知識は、人間の形成にとってはほとんど意味を持っていない。だか
ら、知識の習得を教育の中心にすえてはいけない。むしろ、無意識
の表出としての遊びと創造に道を譲るべき。木工、美術、音楽、ダ
ンス、ドラマなどを重視すべき。文明国には、十分に遊んだ子がい
ない。子どもが学んでいないと時間を無駄にしているという考えは
呪いだ(ニイル)。

「生きる力」には、「与える」教育はまったく無力であり、「引き
出す」教育以外にはあり得ない。

すべての子どもは自分自身の中に「神」を持っているのだが、通常
はその神が眠っている。たとえ表からは見えなくても神の存在を信
じて、その子を徹底的に信頼し、その神が目覚めるようにするのが
教育の本質だ。

自らの感情に、しっかり接地した子どもを育てなければいけない。
感情が自由であるなら、知性はひとりでに発達する(ニイル)。

私は人間が生きていく上でどうしても必要な要素を「歌と踊りと祈
り」の三つに集約した。

「生きる力」が伸びる四要素
1.無条件の受容
2.大脳新皮質がいろいろ学ぶ前に、古い脳を徹底的に鍛える
3.フロー
4.大自然との対峙

いろいろ深く考えていくと、結局は、勉強を強制せず、大自然の中
で夢中になって遊び回り、たっぷり「フロー」を体験すれば、子ど
もたちの「生きる力」が伸び、「いい人生」につながるという結論
に達する。
なにも難しいことはない。
子どもたちを勉強机からひっぺがし、大自然の中に連れ出して、思
い切り遊ばせればいいのだ。

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●[2]編集後記

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先日、高校時代の旧友と久々に会いました。昔やった悪行の話から、
彼が常習していた万引きの話になりました。

小学校低学年から始まった万引きは、何度警察につかまっても止め
ることができず、結局、高校二年まで続けていたと言います。ある
種の中毒症でしょう。経験者が語るずぶずぶとはまっていくプロセ
スは、リアルな恐怖がありました。

そんな彼が万引きを止められたきっかけは、万引きを発見された私
服警官に、「お前の目は死んでいる」と言われたことと、引き取り
にきた母親が全く怒らなかったことだそうです。

自分が人間として終わっているという事実を面と向かって言われ、
実の親からも完全に見放されたことがわかって、それで更生する気
になったのだそうです。親御さんは、さんざん彼が目覚めるのを待
ち続けて、いよいよもうダメだと諦めた時に、ようやっと彼は目覚
めたわけで、人間というのはわからないものですね。

彼はその後、有名私大に入り、現在は総合商社で立派な会社員をし
ています。

自分の子どもが万引きに手を染めた時、自分ならどうするか等々、
色々と考えさせられた体験でした。

0
2015年07月27日

Posted by ブクログ

天外さんの考えの全体像を紹介されている本。僕は、ニイルやシュタイナーの思想や斎藤公子さんについてしれたことが良かった。
フロー体験と乳幼児の学びについて、深めようと思った良書です。

0
2015年02月19日

Posted by ブクログ

早期教育の弊害がストンと理解できます。子どもに子ども時代を保障することの大切さを痛感する本です。読んで目から鱗というかズシンと本質が伝わるというか…衝撃的な本でした。何度も読み返しています。

0
2014年04月28日

Posted by ブクログ

久々に教育書を読みました。
ハッキリ言います! 超オススメ! 騙されたと思って絶対読んで!

以下のような方はぜひ読まれると良いでしょう。

・子どもについいろいろ口出ししてしまう方
・子どもが期待より出来ないことにイライラしてしまう方
・早く○○しなきゃ!と焦っている方
・今、何に取り組んだら良いんだろう、と悶々としている方
・子どもが全然勉強に取り組んでくれない方

また、既にシュタイナーやモンテッソーリ、アドラー心理学など一度は考えたことがあるような方も、本書を読むと改めて知識の再整理といいますか、腹落ち感は半端ないと思います。

あるいは、叱らない育児、褒めない育児、肯定的なしつけなどなど、あまりメジャーではありませんが、「ポジティブディシプリン」を信奉しているような方もかなりの部分で賛同出来る内容になっています。

意識の高い親たちはみんな気付いているんです。本書に書かれた教育法の効果を。
自ら考えたくましく世の中を闊歩する、「生きる力」が養われるという、その効果を。
・・・知識として。

けれども、それを実践するためには、日本にはそういう環境が少ないし、仮に環境が近くにあったとしてもまるでバクチのようにすら思えて、怖じ気づいて、いざやろうとすると出来ないのです。

そりゃ本書で紹介されたサドベリー校のように、朝から晩までひたすら遊んで過ごしながら集中力を養い、やがてそれが学習意欲としての集中力に転化するなどという奇抜な教育施策など、親の意思が強くなければ絶対に世間の風当たりの強さに負けてしまうというものなのです。

「あの家庭は子どもを遊ばせていて、それで将来は生きる力が付くなんて信じてるらしい。おめでたいね」
「どうもあの子はしつけがなっていない。人に迷惑を掛けておいてけろっとしてる。親は何やってんだ」
「あの子まだひらがなも書けないんですって。かわいそうね」

真面目な親ほど、そういう声にとても敏感で、いつの間にか既成の枠の中に子どもを閉じ込めてしまいます。
そうしたとき、子どもの創造力は失われ、型にハマった「良い子」が出来上がります。
もったいないけれど、それが現実。

ゆとり教育もそう。あれは極めて高度な教育の思想です。それを全国一律に導入しようとしました。
全ての教師や親たちが意識の高い人の集団なら、もしかしたら成功したかもしれませんが、いろんな人たちが居る中で理想的な教育理論だけを振りかざしたって、上手く行きっこ無いんです。
教えないで待つ。与えないで引き出す。
忍耐が要ります。
失敗したらどうする? 恐怖が募ります。
素晴らしい思想だったのにもったいない。欲張り過ぎたのでしょう。

そうなんです。
この本を読んで感化され、100%本書の通りにやるという行動も一つの選択だと思いますが、そんなことができる親は1%もいやしないと思います。
でも、この本から20%くらいなら取り入れてみて、少しずつ実践してみる、という取り組みなら、何とかできそうな気がします。

世の中にはパレートの法則、2:8の法則なんて勇気が出る経験則があります。
本書の20%でも実践できれば、きっと80%の効果が上がるはずなんです。

少しずつでもいいから試しながら、一歩ずつ確認するようにゆっくりと、それでも前進して行けたなら、いつか世界中の子どもたちが幸せになれるんじゃないかな、そしたら戦争もなくなるんじゃないかな、とそんな風にすら思えるのです。

本書のような内容のことを、僕はのんが0歳のときに少し勉強していました。
あれから5年を経て、今僕は本書と出会い、何だか懐かしい気持ちになりました。

のんがまだママのお腹の中にいた頃、僕はのんにどうなって欲しいと思っていたのでしょう。
目の前で字を書くこと、英語をしゃべること。
そんなことはどうだって良いとは言わないけれども、とりわけて大事なことでもない。
僕は、のんが、「自ら道を切り開いて、世の中を生き抜いて行ける強い女性にしたい」と、そういう風に思っていたのでした。
そのためには創造力や決断力、コミュニケーション能力などを高める必要があると。
そこでポジティブディシプリンを勉強したり、アドラー心理学の本を読んだり、様々な育児書、教育書を読みあさっていたというわけです。

でも、100%それを実現することは、僕には出来ませんでした。
僕は意思の弱い人間です。
世間の目や「普通の5歳」や「出来る5歳」を意識して枠にはめてしまおうとする悪魔が出て来てしまうのです。

でも、不思議なことに、いろいろ読みあさっていたことが深層心理で効いていたのか、のんの進む道は100%では無いながらも、かなりの部分で本書のような内容を意識した選択をしていたのです。

・例えば、山の中を自由に走り回れる自然が豊かな保育園に1歳になってすぐに放り込んだこと。
 →うちは共働きですから、意識せずそうなった。近くの保育園が取れず、結果的に田舎の方の保育園になった。
・例えば、音楽や芸術など、本人がやりたいように自由にさせ、そのような環境を準備しておいたこと。
 →ズボラなので、いろんな画材を最初に買って全部与えた。音楽は何となく情操に良いと思っていた。
・例えば、本人が集中しているときに、敢えてその集中を削がないようにそっとしておいたこと。
 →単に私がズボラだから、集中していてくれると楽だから。
・例えば、教えることより引き出す教育を実践している小学校に進学させたこと。
 →狙ったと言えば、これぐらいかな。。

100%は無理でも、それでも諦めないで、一歩ずつでも理想の教育に近づけるように、意識して行ったら、もしかしたら自然にそういった選択をしていくのかもしれません。

答えはまだ分からないのです。将来のんがどうなってしまうのかも。
でも、100%ではないにしても、少しは幸せに近づけるのではないのかなと、そう信じたいのです。

良書です。ぜひ読んでみて下さい!

0
2013年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

お子さんがいる方、保育士や教師など子供に関するお仕事をされている方にとって、もしかしたら、ご自身の考えている教育方針、子育ての考え方に迷いが出てしまうかもしれないけど、自分の頭に新しいアンテナがニョキって出てくる感じがした。

以下、転載です。(自分用メモとして)

■この著者が定義する「生きる力」の特徴:

人間の大脳の中で、爬虫類時代までに発達した「古い脳」のはたらきがコアになっている能力や資質のみを「生きる力」と呼んでいる。

逆にいうと、理性、論理、知識などの大脳新皮質のはたらきだけで完結している表面的な能力は「生きる力」に含めていない。外から強制された枠に従って実行している正義感、倫理観もそれに含まれる。(「生きる力」には含まれない) 
※それをいかにしたら強化できるかを本書で掘り下げている。

■この本に出てくるキーワード・トピック:

・「与える」教育ではなく「引き出す」教育。

・すべての子どもは、自分自身の中に神を持っている。自我が満たされた自由な子どもはその神を発揮する。善悪や正邪の価値基準を与え、子どもを型にはめようとすると、その内にある神を悪魔に変えてしまう。つまり、法律や規則でしばり、道徳で抑え込もうとするから、罪を作り、反逆者を作り出すのだ。

・サドベリー教育:「自由に遊び尽くす」ことにより「生きる力」が強化されることを重視した教育。

・チクセントミハイが提唱する「フロー理論」。

・「フロー(流れ)」とは、「夢中になって、我を忘れて、何かに取り組んでいる状態」をさす。

・フローにはいるひとつの条件として、何事も強制されることなく、完全に自由な状態で、自らの心の深いところからこみ上げてくる欲求にしたがって行動する必要がある。これを「内発的動機」にもとづいて行動する、と表現する。
遊び尽くした子どもは、今度は学習意欲が高まり、先生と交渉して自ら授業を企画する。つまり、内発的動機にもとづいた学習が始まるのだ。子どもたちは、遊びを通じて「フロー」に入りやすい体質になっており、学習の効率は極端に高くなる。
事実、小学校六年間で教わる算数の内容は、二十四時間程度で完璧に身につけてしまうという。

・「生きる力」の強化は、「バーストラウマ」をいかに軽減するかにかかっている。

・子どもに関する真理はひとつしかない。それは、愛され、自由であり、自分自身であることが許されるなら、誰しもが攻撃性が少なく、表裏のない、誠実さと思いやりの心にあふれた、善良で、平和で社交的な人間になることだ。

・もし、世界中の母親が、医療の介入を受けることなく自然に分娩し、すぐに赤ちゃんを抱いて初乳を与え、母乳と愛情をたっぷり与えて育てることができたとしたら・・・おそらく・・・この地球の上から戦争はなくなるでしょう。

・人間教育の土台は早期文字教育などではない。あらゆる感覚器官、運動器官が、この瞬間模倣力の最も強い時期(0〜2歳)に発達する。(中略)このときは何という意欲に満ち満ちているか。それなのに多くの兄弟姉妹、友だちをもつこともなく、狭い教室に閉じ込められて、この二度とない大切な時期を過ごさなくてはならない子どもたちのことを思うと心が痛む。

・「生きる力」が伸びる四要素
1.無条件の受容
2.大脳新皮質がいろいろ学ぶ前に、古い脳を徹底的に鍛える
3.フロー
4.大自然との対峙

・日本の親たちに目覚めてほしいという願いを込めて、本書を書いている。

・「生きる力」の重要性をすべての人が理解し、それを強化する方法論のトレーニングを受けた人が増える必要がある。何よりもまず、優秀な保育者を大量に育成することが急務だ。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

心身共にたくましい子に育ってほしい。1歳半の子どもに願うこと。「生きる力」の強い子を育てる、というタイトルに惹かれて読みましたが、いい意味で予想外でした。
というのは、古い脳を鍛える、フロー、大自然の中で思い切り遊ぶ、という主張の背景として教育学、歴史の観点から整理して説明していたこと。なかなか興味深いです。
一部共感納得できない部分もありましたが、読む価値ありでした。
今後も参考にして子育てを楽しみたいと思います。

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2019年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まだざっくりのななめ読みしかしてないけれど、
つまりは生き物としての本能を高めるってことかな?
古い脳の担当している部分を鍛えるって、
人間としての高度(というのが適切かなぞだけど)な教育を施すのではなく、
野性を取り戻すような、ありのままの状態で保育するということのように感じられた。

「無条件の受容」が伴うから、動物とは違うのかもしれないけど。

でも生きる力=本能を高める、って考えてみれば当たり前のことのような気もする!


思っていたのとは少し違ったけど、
早期教育はやはり必要なさそうって改めて思った。
心や脳、自己肯定を高めてあげることが大事だね!
お勉強はやる気になればいくらでも出来る。


心理学の話が面白かった。
生まれながらに罪を背負っている、ことの意味とか。
他にも色々読んでみようかな

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2019年12月06日

Posted by ブクログ

日本の教育はほぼすべて与える教育をしているので、生きる力が弱くなっている。

現代に必要な「生きる力」の強い子を育てるには、引き出す教育による人間性教育を重視すべきと言う本。

大脳辺縁系の古い脳を土台として、大脳新皮質を育てるべき。身体性、情動、芸術的感覚などの生きる力のあと、理論を学ぶ。早くから読み書きの勉強を教えるのは間違いだと。

自分は間違いなくそういう教育を受けてきた。これを読んで、自分の子どもや社会に対して自分には何ができるかな。

内容はよく分かったし、ためになったが、もう少し実践的な内容を期待してたので、そこは若干期待はずれ。次回作に期待。

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2014年10月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

教育は非常に難しい。結果がわかるのが何年も先になるし、これが良いという正解はないと思う。「ゆとり教育」は教師の力量が問われるため、一律に導入したのが失敗の原因と筆者は主張している。

私は「ゆとり教育」には懐疑的で「知識を深めることが成長、想像力も知識が必要」と考える。しかし筆者は「生きる力」が「いい人生」につながると言い、そのためには、勉強を強要せず夢中になって遊ぶ「フロー」体験が必要と説く。このことは本書を読んで頭では理解できるが、実行するのは難しいなあ。

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2014年07月04日

Posted by ブクログ

単にペーパーテストでいい点を取るようにトレーニングするのではなく、大地をしっかりと二本の足で踏みしめ、自らの存在を肯定し、自らを常に磨き、自己実現へ挑戦し、明確な意思を持って、物事を前向きに解決するように積極的に行動する事。
大自然を畏敬し、周囲と調和し、全体の中で適切で調和的な立ち位置を確保し、人生を楽しむ事ができる。感受性と独創性が豊かで、好奇心が旺盛で創造する喜びを知っている者が育つ教育が望ましい。


「生きる力」の定義
1、大地をしっかりと二本の足で踏みしめて立つ力
2、自らを肯定する力
3、自らを常に磨く力
4、自己実現へ挑戦する力
5、意思の力
6、物事を前向きに解決する力
7、大自然を畏敬する力
8、全体の中で適切で調和的な立ち位置を確保する力
9、人生楽しむ心
10、感受性、感性
11、独創性
12、決断力
13、好奇心
14、やる気
15、人間的魅力
16、積極性、行動力
17、バイタリティー
18、交渉力


国連加盟国の中でシュタイナー教育が公教育として認められていないのは北朝鮮と日本だけ。


国家主義教育学
国家や支配者に忠実で、隣人に親切で、社会のルールやマナーをよく守り、勤勉で国の発展に献身的に貢献する人を育てる。国に押し付けられた枠の中でしか発想できず、視野が狭く、自らの価値観を確立できず、個性や独創性に乏しく、ひとつの方向に猪突猛進する、洗脳された戦士を育てる。

どうしたらフローに入れるのか?
一つには完全な自由を与えなければならない。どこでいつ何をするか、強制があってはならない。


褒めるという行為はフロー教育では御法度。なぜならば、人から褒めてほしいという欲求(外発的動機)が強くなると、子ども達の心は外に向いてしまい、内側からこみあげてくる声(内発的動機)が聞こえなくなってしまう。内発的動機に接地できないと人は「フロー」に入れない。


セルゲイブリン、ラリーペイジ、ジェフベゾス、ジミーウェルズは、モンテッソーリ教育を受けた。
卒業生は知的独立心が強く、権威が嫌いで人から指示、命令される事を好まず、パラダイムをたたき壊してブレイクスルーする傾向がある。

何の予備知識もない母親がごく自然に自分の産んだ子に接すれば、無条件の受容はひとりでに発露される。ただし、出産直後に30分以上、母親と赤ちゃんだけで、誰にも邪魔されずに過ごす事がとても大切。
それは、出産直後は母子ともにオキシトシンやβエンドルフィンといった愛を司る機能があるホルモンが濃厚であり、心の絆が結ばれやすくなるから。僅か30分でもその絆は一生続く。

最近の出産風景は、明るい部屋で分娩台に乗せ、産婦にドンドン話しかけたり、理想の出産をイメージさせたりしている。あれでは新皮質が活性化してしまい、わざわざ難産を誘導するようなもの。

「生きる力」を伸ばすには、新皮質の暴走を抑え、古い脳を活性化しなければならない。


人間の無意識には、性欲、バーストラウマ、死の恐怖、トラウマ、シャドーなど、5匹のモンスターが巣食っており、そこから反社会的な衝動がフツフツとわき上がってくる。
その衝動が強すぎてペルソナや超自我による統制能力を超えると、問題行動となる。
一方、モンスター達のさらに奥には「もう1人の自分」が眠っており、それが首尾よく目を覚まして活動を始めると、子供たちは善良で誠実で「生きる力」の強い子に育つ。

情動に接地できなければ、動的な能力は伸びず、「生きる力」は強化されない。

あらゆる能力に関して、表面的なスキルを伸ばそうとして、教えれば教えるほど、より本質的な情動や知能の発達を妨げる事がある。それは子供たちの「生きる力」を奪う事に他ならない。

家庭教育や保育の失敗で、情動に蓋をしてしまった子は、
徹底的なフローに入る事ができれば回復し、「生きる力」を身につける事ができる。
全身を使う、長期間ひとつの作業に夢中になって取り組む、泥とまみれる、などを組み合わせると、効果はさらに大きくなる。

グラウンディングとはなにか
1、地に足をつける
2、大地に根付く
3、固い基盤に人を降ろす
4、地面との感情的ないしはエネルギー的な接触を確立する
5、自分がどこに立っているかを知っている
6、自分が何者であるかを知っている
7、自己の存在の根本実在に触れる
8、現実に根を下ろしている
9、身体、セクシャリティとつながっている
10、喜び、安心感とつながっている
11、肝が据わっている
12、人々とつながっている


私達が自分自身だと信じている、ペルソナ、自我、超自我などは、長年にわたって人の目を意識して作り上げてきた。
大自然と真摯に対峙すると、それらは存在意義を失って縮小する。それに伴い、無意識レベルに巣食っていたモンスター達もおとなしくなる。その結果、もう1人の自分、野生の自分が目を覚まし、生きる力が強化される。

生きる力が伸びる4要素
1、無条件の受容
2、大脳新皮質がいろいろ学ぶ前に古い脳を徹底的に鍛える
3、フロー
4、大自然との対峙


いろいろ深く考えていくと、結局は子供を強制せず、大自然の中で夢中になって遊び回り、たっぷりフローを体験すれば、子供たちの生きる力が伸び、いい人生につながるという
きわめて平凡な結論に達する。

0
2018年04月05日

Posted by ブクログ

 ネッツ南国の横田さんに薦められて拝読。天外さんの深層に流れるフロー理論に軸足を置き、フロイト、ユング、ランク、、ニイルの心理学ををベースに、真の教育について書かれている。
 私自身は、一人息子を40歳で出産したが、お腹にいるとき胎動を感じてから、子どもというのは自分の子どもでありながらそうではない、神様からの預かり物だと体感した。添えまで、自分の人生は自分で計画し、自分の思い通りに作り上げていくものと考えていたが、お腹の中で自分の意思とは関係なく動くわが子を感じ、それは驕りであると理解した。妊娠、出産を通して、自分も宇宙の一部であり、大きな自然の摂理の中に組み込まれていると考えるようになった。
 神様から預かった子どもの中には自分を超える神が宿っており、自分の思うようにできるものではない。持って生まれたものを並走しながら上手に引き出す手伝いをしてやることではないか。これが子どもを育てるということではないかと。
 この本に書かれていることは、自分が出産、子育てを通して感じたことが理論立ててきちっと説明されており、さらに進んで日本の教育の在り方まで言及している。保育園では、子どもたちがのびのびと体感する保育で共感のあるしていたが、息子の小学校に感じた違和感がすっきり解決した感じであった。
 子どもというのは、未来を生きるものであり、子どもを育てるということは過去から未来への人の営みを継承していくこと。親はその責任を負う。子育てを通して、分かることの多さを今されながらに思う。

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2013年06月29日

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この本を読むと、自分は確実に生きる力の弱い子に育つ教育を受けてきた、と感じます。
「人間性教育学」のモンテッソーリ教育、シュタイナー教育など、教育論に興味を持ちました。

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2012年12月19日

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いわゆる子育て本ではなく、教育学の質の高い書籍。
多くのお母さん方に読んで頂きたいと感じました。

とことん遊んで遊びに満足した子は、学ぶ意欲が自然に芽生え、学ぶ意欲の高まっている時に得る知識は吸収力が高い。

大人も同じだと思いました。

心が充足されていればフラットな状態でいられ、そこを起点として目指したいところまで手を伸ばし、達成できる力が湧いてきます。

しつけや社会通念で、子どもの充足感を奪ってはいけないと思いました。

子育て中のお母さんたちの間で「自己肯定感」という言葉が流行しています。本当の自己肯定感とはどこから育まれて来るのか、しっかりと書かれています。

わが娘の園生活は、土に触れ、自然の生育に触れ、とことん歩くことが重視されています。田植えで泥まみれを楽しく感じた子どもたち、竹馬でよろけて裸足で地面に降りる子どもたち。

この著者の目指すところには到底届いていないかもしれませんが、よい経験をさせて頂いていると思います。

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2012年07月06日

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ネタバレ

「生きる力」を育む教育学に関する話
正直、賛否が判断しづらい。
そりゃそうだよなーって思うことと、本当か?って思うことに分かれた。主観論が多すぎて、半信半疑って感じ。

中には研究結果の引用もあり、そこは納得できた。
(愛着形成がうまく行ってる子は、離れてたお母さんが迎えにきてもちらっと見て遊びに戻る、とか)

実際こんな教育できなくない?怖くない?っていう気持ちもある。(勉強させずに大自然の中でフロー体験させて、その後勉強に集中投下して本当に巻き返せるの?とか)

この教育を極端に進めたら、今の世の中には適合しないよねっていう気持ちもある。(牛乳をこぼしてジャバジャバ遊んでいるフロー状態を邪魔しない→他の人の家でもやる、とか)

ただ、共感できるところもある。
(幼少期の古い脳が育たないうちに、大脳新皮質が関与する読み書きそろばんを教え込むのは、発達の順番がちぐはぐでエラーが起こりやすい。とか、無条件の受容を行うことで子どもが安定するとか)

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生きる力、とは、社会に変革を及ぼすような力のこと。

日本では、過去「国家主義教育(与える教育)」を行っていた。
これは、一つの方向に向かって一心に進む力を育む。一方で、自分で考えて進む力が育ちにくい。(戦争頑張っちゃうとか)

その後、「生きる力」を育むべく、「ゆとり教育」が始まった。
しかし根本の人本来が持っているものを伸ばすには中途半端で、失敗に終わった。

本来、「生きる力」は、下記4点で伸ばすべき。
・無条件受容
・大脳新皮質より先に古い脳を鍛える
・フロー (なにかを夢中になって突き詰めること)
・大自然との対峙

これは、サドベリー校、シュタイナー教育、モンテッソーリなどで行われていることと紐づく。

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2022年06月19日

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