【感想・ネタバレ】新訳 お気に召すままのレビュー

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Posted by ブクログ

 “All the world's a stage. And all the men and women merely players." でお馴染みの、シェイクスピアの、最後は大団円で終わるドタバタ恋愛劇。
 登場人物は他のシェイクスピア劇に比べても特別多いという訳でもないけど、やっぱり一生懸命読まないとゴチャゴチャして分からなくなる。始めに河合先生の『あらすじで読むシェイクスピア全作品』であらすじや登場人物の関係なんかを予習してから読んだ。
 うーん、河合先生の訳はびっくりするくらい面白いし、もうこれを台本にして今すぐ芝居を始めようという気にすらさせられるが、話自体はそんなに…。おれが恋愛モノ苦手だからだろうけど…。
 印象的であったところのメモ。まず女性同士がめちゃくちゃ親密にやり取りをするというところにちょっとどぎまぎしてしまうが、この点は「訳者あとがき」にも書かれている通り、「当時はシーツを容易に洗えないという事情もあって、同性で同衾するということはよくあり、(略)同性間の親密性が文化的に支えられていた。」(p.147)ということらしい。それからやっぱり名台詞の「この世はすべて舞台」(p.60)は来た来た、と思うのだけど、まったくその前後を知らないというか、その前の部分、「見ろ、不幸せなのは、我らに限ったことではない。この広大な劇場では我らが演じている場面より遥かに悲惨な芝居が演じられているのだ。」(同)という公爵兄の台詞の方が、スッと頭に入って来る感じがした。
 あとは河合先生の訳がすごい。元の文の解説もされているところがあって、よくこんな訳思いつくなあとしみじみ思いながら読む。あんまり言うとネタバレになっちゃうので、2つだけ気に入ったやつを。「その木にボケナスを、つまり、おまえを接ぎ木しようか。それからミカンでも接ぎ木しよう。おまえの言うことは無ミカン燥だから。」(p.71)、「前世はネズミで、しょっチュー歌われてたのかもしれないけど、よく覚えてないのでありマウス。」(p.74)。それから原文で韻を踏んでいるところはちゃんと印がついていて分かるようになっており、訳も韻を踏ませている。これもたっくさん秀逸なのがあるけど、1つだけ。「おいで、オードリー。結婚したらやり放題だよ、裸おーどり。」(p.87)。ちなみにここは注釈によれば「Audreyとbawdry(猥褻)で押韻している。」(同)らしい。すごい。裸おーどり。だって。
 あとは関係ないところで、「ディンガディンガディング」(p.130)といって歌うところがあるが、カーペンターズのYesterday Once MoreのEvery Shing-a-ling-a-lingというのを思い出した。わりと古くからある擬音?なのだろうか。
 下の注を読むのも面白い。「シェイクスピアより先に大活躍していた劇作家クリストファー・マーロウが、一五九三年五月三十日午後六時、ロンドン郊外デットフォードにある小さな居酒屋で、勘定書きをめぐるケンカがもとで刺殺されたことへの言及か。」(p.84)ということがあったらしい。「エリザベス朝時代、舞台上に藺草を敷きつめることがあった。殺人の場面などで血しぶきを飛ばしたあと、藺草をのけてすぐ舞台にできた。」(p.92)なるほど。イグサを使っていた、なんて意外。あとは最後のシーン。「シェイクスピアの喜劇には(略)大団円から立ち去る人物たちがいる。Kill-joyと呼ばれる彼らの存在は、浮かれ騒ぎが一時的なものでしかないことを明確にする。」(p.141)なんて、実生活でもこういうkill-joyみたいな人いるよなあ、おれもその気があるんだけど…。
 という感じで、薄さに騙されずに、もっと気合を入れて読めばもっと楽しめる話だろう、と思った。逆に言うとやっぱりシェイクスピア作品はダラダラしながら読む話ではなかった…。(21/01)

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2021年01月27日

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