【感想・ネタバレ】葬送の仕事師たち(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

葬儀社社員・湯灌師・納棺師・復元師・エンバーマー・火葬場職員、どの職業も死者に対し尊敬念を持ち誇りを持って仕事をしているのが垣間見られた。「死」という誰もが通る道だが、その時にどう有りたいかを話す機会はなく「縁起でもない」として忌み嫌う傾向にある。また、身近な人の死に直面すると、悲しみが強く、一連の流れに身を任せているうちに終わってしまった虚しさが残ることも多かったが、淡々とこなす仕事も、自分達が悲しみに浸れるようにしてくれていたのかもと本書を読み感じさせられた。


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2021年04月25日

Posted by ブクログ

普段、全く意識していなかった葬送の仕事。葬儀社、エンバーマー、火葬炉で働く人々など、壮絶な仕事の姿が書かれていた。
うつ病で何度も死にたいと思う経験をしたが、死んだ後自分がどう送られるのかを考えたことがなかった。本著で書かれた葬送の仕事師たちの思いの中で送られるのなら、死ぬこともそう悪くないなと思った。一方で遺族のことを考えると、死ぬときはできるだけきれいに死にたいもんだと思うようになった。
死を身近に感じることができる一冊。
いかに自分が死んだ後のことに無知だったかを思いしらされた。身近なひとたちの死は避けられない。だからこそ生きている今を大切にすることと、死んだ後にどのような思いで弔うかにも想いを馳せることは大切なように思える。
葬送の仕事師たちの言葉から、生きることと死ぬことは続いているのだということをつくづく思い知らされて、生きていることに清々しさを感じることができたように思う。

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2020年03月02日

Posted by ブクログ

ある日ふと目に留まり、
気になっていたものの手に取るまでに
ある程度の月日を要する。
購入したのは父が亡くなり10年目の年。
読み始めるまでに時間がかかる。

大事な大事な友人が亡くなり、
この本からまた遠ざかりたくなったが
「読まなければならない」ある日ふとそう思った。

葬儀社社員、湯灌師、納棺師、復元師、
エンバーマー、火葬場職員…
旅立ちを支える人たち。

彼らは日々「死」と真正面から向き合い、
悲しみに打ちひしがれる遺族だけではなく
亡くなった人にも寄り添う。

きれいな遺体ばかりではない。
家族や友人に囲まれて旅立つ人ばかりではない。

どんな場合であろうと、真摯な姿勢は変わらない。
そこに仕事と割り切っている人はいないのだ。

「辛くて読めないかもしれない」
そう思っていたわりに比較的冷静に読み進められたけど、
火葬場職員の話のところは相当苦しかった。

火葬場のひんやりとした空気、
さらに冷たい炉前に並ぶ無機質な火葬炉。
全て鮮明に残っていて、
何度か本を閉じては開くの繰り返し。

「きれいに焼く」
言葉だけ聞けば過激でもあり誤解され、
不愉快に思う遺族もいるだろう。
でもそうじゃない、わたしも今だからこそ、
その言葉の本当の意味と重みがよくわかる。


火葬場職員の方々を考えてみたことがあっても
わたしは浅いところしか考えてなかった。
こんなにも沢山の「作業と苦労」があったなんて。
そして職員たちの思いの強さも
わたしの想像をはるかに超えていた。


火葬場職員だけじゃない。
葬送を生業としている人たち。
彼らがこれほどの想いだったなんて。
この本を読まなければわたしはずっと
気づけないまま、知らないままだった。


「死」を語ることはタブーとされている風潮は
今だに根強いと感じる場面も少なくない。
でも「生」と「死」は切り離すことはできない。

この本を「読んでみて」など決して言えないし、
言う意味もないと思う。
必要な人には自然と手に取る時がくるかもしれないから。



父が亡くなった頃、映画『おくりびと』が大ヒットした。
どんなに好きな俳優が出ていても
「絶対観られない、観たくない」と拒絶したし
この先も観ることはない。


だからこそ、この本を読むことができて本当に良かった。


父を大事に送ってくれた
葬送の仕事師たちに感謝しながら。

父、祖母、叔母、そして友人を想いながら。


追記。

大人の事情、取材相手に対する誠実さなのだろう、
取材先の歴史なども詳しく書かれている。
それがやや過剰な印象。
同じ書くにしてももう少しシンプルな書き方だと
気持ちがぶつ切りにならず、
入ったまま読み終えることが出来たように思う。

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2019年08月26日

Posted by ブクログ

人をお看取りするまでが我々の勤めであるが、きれいに亡くなる方ばかりではない。
病気のために亡くなった方でも痩せてしまったり顔色が異なる様となってしまった方を戻す技術、また遺族と亡くなった方を繋ぐ技術と思いがあることを学んだ。
読み返す度8/10

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2018年09月10日

Posted by ブクログ

井上理津子(1955年~)氏は、京都女子短大卒、全日空、女性と暮らし社勤務等を経て、フリーランスのノンフィクション・ライター。2015年に出版された本作品で、新潮ドキュメント賞候補となる。
本書は、題名の通り、「葬送」に関わる仕事をしている人たち、即ち、葬儀の専門学校の生徒、葬儀社の社員、湯灌師、納棺師、復元師、エンバーマー、火葬場の職員等に真正面から取材をし、彼らの仕事や思いを描いたノンフィクションである。
私は従前より、人は死んだらどうなるのかなど、いわゆる死生観について関心があり、キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』をはじめ、その類の本は十冊を遥かに超える数を読んできた。また、ノンフィクションが好きなので、その中には、(本書の解説を書いている)佐々涼子の『エンジェルフライト』等、葬送に関するものもいくつか含まれている。本書については、以前より気にはなっており、今般たまたま新古書店で目にし、読んでみた。
読み始める前に漠然と思っていたのは、彼らはなぜこの職業を選び、どのような思いを抱いて働いているのか、ということであった。私は既に両親を亡くしているが、その両親でさえ、動かなくなった遺体に不気味さを全く感じなかったと言えば嘘になる。そう考えたとき、他人の遺体を、湯灌し、復元し、エンバーミング(遺体の科学的防腐処理)を施し、納棺し、火葬するという仕事は、並大抵の心持ち、覚悟では務まらないと思ったのだ。そして、読み終えて最も強く感じたことは、「仕事師たち」の強烈なプロ意識である。シニアな仕事師たちは、成り行きでその仕事についた人も少なくないが、若い仕事師たち(主に葬儀の専門学校で取材した人たち)の多くは、過去に自分が親しい人の死に遭ったときの仕事師たちの対応に感動して、自ら葬儀のプロを目指したというのだ。そして、取材を受けた仕事師たちは、自らその仕事を選んだか否かに関わらず、人の死、その結果としての遺体、そしてその遺体と遺族の別れに関して、一過言を持ち、掛け値なしの誠実さで対応するのである。私は一般の会社員だが、仕事に対する覚悟は到底敵わないと、正直に思う。
また、それぞれの仕事の内容についても詳しく書かれており、中でも、事故や事件に巻き込まれた遺体の復元や、遺体をきれいに焼く火葬などの様子は、正直息を呑むものだ。自分の両親の葬儀においても、仕事師たちのこれだけの仕事があって葬儀が行われたことを知って、今更ながら頭が下がる思いである。
本書では、最近の葬儀に関する潮流についても書かれており、想像通り、葬儀の規模は縮小傾向で、形式は多様化が進んでいるというが、自分がどのように送られたいのかを考える上でも、読む意味のある一冊であった。
(2024年5月了)

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2024年05月23日

Posted by ブクログ

おくりびとを読み終えてからその仕事に興味をもちこちらも。
旅立ちの仕事、初めて知る事ばかりでした。
そしてこの仕事の世間からの目も。
私自身は自分の葬式は望んでいませんが、この本を読むと人生の最後にお世話になりたいと思いました。
もしかしたら自分以上に自分の死と向き合ってくれるのではないかと。
自分ではなくとも自分が大切に思う人をこの本に出てくる人達に送ってもらえたら納得して旅立ちを見送れるようなそんな死と向き合うプロの人達のお話です。

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

このようなノンフィクションがないと永遠に知ることはなかったであろう。葬儀の舞台裏で働く人たち。職に就いた動機は死の場面に接したことが多いが、時間が不規則、知識も体力要る過酷な現場で他人のためになっている自覚が支えとなっている。また、うっすらと感じてはいたが、葬式の形態の変化も風俗史のごとく理解することができ、死について向き合うきっかけにもなった。2022.2.13

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2022年02月13日

Posted by ブクログ

葬儀に関わる方達の仕事について初めて知ることも多かった。火葬炉の扉を越えたら、皆平等に全てが無になる。というフレーズにグッときました

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2022年01月18日

Posted by ブクログ

エンバーマー、納棺師、湯灌士、葬儀社、火葬場、などいろいろな人に丹念に取材をして丁寧にまとめられた本。
普段なかなか意識しないけど生と死は隣り合わせで、その領域で働いているひとも確かにいる。
考えさせられる本だった。

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2021年06月29日

Posted by ブクログ

抜群に美味しいコシヒカリみたいな一冊。日本人全員に欠かせないことなのに、こんなに知らなかったことが多いなんて…すごく良かった。知らなかったことを知れた。人々のリアルをあぶり出す、ルポルタージュが果たすべき役割の極致。

まずもって葬儀ってのは誰の為の物なんだろうか。故人のためにするもの?残された人のためにするもの?エンバーミングを例に取れば、残された人を救う技術ではあるけど、あれだけ苦しみ抜いてメスを入れて頑張った遺体をさらに傷つけてまですることなのか?

だからこそ最終章みたいに自分の最期をしっかり話し合っておくことこそ肝要だなと感じた。死に際はどう生きたかを表すってのは割とその通りだと思っていて、世の中に何がしか貢献してきた自負があるなら、自分の最期ぐらいきっちり自分で締めてやるわっていざとなったらなるのが自然ではないか

「葬儀屋は傘。深い悲しみに陥った家族がやがて一区切りついて日常に戻れば、傘なんかいらなくなる」

「死にたいという人にいつも僕は、その前にちょっと横を見てくださいと言いたいんです。あなたがこんなになっても、お顔を見たいというご家族がいる。あなたをなんとかしてさしあげたいと必死になる僕みたいなのもいる」

「生きている間、自分は存在しない。死んで、生きている人の心に入ってから、生きていたと世に証明される」

葬送に関わる人たちの言葉の重さったらない。本当に重たい。日頃関わりもないのに死ぬ時だけしゃしゃり出てくる仏様よりこちらに手を合わせたい気分になる。

人の死の数だけ葬送がある。家の繋がりが薄れている今だからこそ、多死社会への移行と合わせて劇的に変わっていくジャンルなのだろう。自分が死ぬ時はどんな葬儀にしてもらおうか…子供に伝えるときまでにたくさんの選択肢からあれこれ迷う羽目になることを願う。

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2020年03月04日

Posted by ブクログ

死にまつわる仕事をしている人たちに密着したルポルタージュ。なんとなく遠ざけ、なんとなく無関心できた裏方の(まさしく)仕事師の方たちが、その仕事ぶりを通じて身近に感じられてくる良書。
映画「おくりびと」は、本木が美しすぎた分、逆にテーマ性が半減していたと感じるが、この本はもっと網羅的で、ありのままでありながら、ライターが取材を重ねるうちに芽生えてくる仕事師たちへの敬意や、故人の尊厳を守ろうとする人たちの想いなどが感じられ、より深く送り人への理解と共感が進んだと思う。

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2020年02月24日

Posted by ブクログ

昨年9月に母の弟が亡くなった。入院してくださいと言われたときにはすでに癌が全身に転移していて医者から手の施しようがない、と言われたらしい。私は転職の合間だったこともあって、娘を連れて平日何度か病院にお見舞いに行くことができた。

お通夜、お葬式、火葬場でお骨を焼いてもらい、49日の納骨。
亡くなった人に対してたくさんの人が動くし、それぞれ働いている。そんなことに気付いてこの本を手に取った。

遺体に化粧を施したり、生きているかのように保存をきかせるエンバーミング。そんな職種があることを初めて知った。
火葬場は公営民営がある。遺体を焼くときの温度。火の入り方はオートではなく人間が目視して調整する。これを日々の生業にされている方には頭が下がる。

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2020年01月18日

Posted by ブクログ

誰もができる仕事ではない
でも真心をもって勤める様子に涙が出た
自分がいつか死ぬときは、どんな風に送られるんだろう

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2019年09月17日

Posted by ブクログ

葬儀に係わる人たちについて書かれた本。
例えば、病院で亡くなった場合家まで業者が連れ帰ってくれるのだが、そのまま葬儀の話になったりする。
身近な人が亡くなると心がいっぱいでよく考えられなくなるし、言われるままに葬儀を執り行ったりする場合もある。
しかし必ずしもその葬儀社で頼む必要はないのだ。
葬儀の形やサービスなど、業界の仕組みをこの本で少し知ることにより、家族や自分の葬儀をどうしたいか話すのも必要なのではないかと思う。

まずは葬儀に関する専門学校の学生インタビューから始まる。
人が亡くなるとどういったことが行われるのか、どういった人々がかかわるのかがわかりやすい。
今と昔の葬儀社の違いや、東と西の風習の違いなども面白い。
感染症のことなども知らなかったので参考になった。

湯灌・納棺・復元師。
亡くなった人を綺麗にして棺に納める。この復元師というのがまたすごかった。
状態が悪い人を見られるように、その人らしく整えていく。

復元とはまた違ったエンバーマーという職業も初めて知った。
エンバーミングとはアメリカの南北戦争で遺体を長距離輸送するために開発された技術だそうだ。
特殊な薬液などを使い防腐処理を施すらしい。
日本では死亡してから50日以内に火葬しなければならないとのことだが、その期限いっぱいまでまるで眠っているかのように保存しておくことが可能らしい。

火葬場についての記述もあった。
特に裏側は知ることはないので、興味深く思った。
火葬方式に違いがあること、東と西では拾うお骨に差があること、従事する人に対する世間からの目や遺族からかけられた言葉などがあった。

どの職種の人も、この本に出てくる人は皆亡くなった人に寄り添い遺族に寄り添う。
東日本大震災にかかわった人の尽力なども描写されている。
本編にはなくあとがきに霊柩車の運転手の方の話しもあった。
文庫版のあとがきには、最初の単行本から3年たったこともあり、現在のことが補足されていた。

改めて自分がどういう葬儀をのぞむのか、家族をどうやって送りだしたいのか考えるきっかけになった。

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2018年10月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

会社にある本。
朝早くいって10分ぐらい読み進めている。
志望校だった学校が出ていて、身近に感じた。またそこに書かれている授業内容もほぼ初めて知ることが多く参考になっている。
葬儀業界の見本市が描かれている。湯灌についての記述があり、最近あった御体の状態が悪い個人様とご家族を思い出した。ご家族は、湯灌前後の変化に大変喜ばれていたのが印象に残った。エンバーミングを実施できる施設は日本で数か所ほどとベテランの社員に聞いた。日本ではなくなってから火葬するまでの日にちが少なく、エンバーミングの必要性は低いかも知れない。しかし、外国の方で亡くなった場合長期輸送に耐えられるようにエンバーミングをする必要がある思う。外国人労働者の増加に伴い需要は今後増えていくのではないだろうか?
火葬場の話も参考になった。
本の中で今後の未透視について、市場は縮小するのではないかという内容があり、確かにと思った。

今日は会社の最終出勤日、さいごにこの本を読み終えてよかった。葬儀業界に就職して良かったと思った。

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2018年07月19日

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「死を迎えたら、結局みんな平等」
だからこそ生きている内に、微小で良いので何か後世に残る足跡を残したい。

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2018年06月30日

Posted by ブクログ

葬儀業界で働く人々を題材にしたルポタージュ。ハードカバーの頃から気になっており、文庫化は正に渡りに船。葬儀社、湯灌師、エンバーマー、火葬場…と様々な【葬送】の仕事に密着取材した全六章構成の本作。誰しもに訪れる【死】と365日向き合う精神的にも肉体的にも過酷な業務ながら、故人と遺族に対し真摯に向き合う【仕事師】たちの姿に目頭が熱くなるばかり。自殺者の遺体を前に「救えたかもしれない命」と語る復元師とエンバーマー両名に大きく心を打たれた。怖気が立つほど壮絶な仕事師たちのプロ意識を語る言葉を今の私は持っていない。

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2018年06月20日

Posted by ブクログ

葬儀に関わるいろいろな場面でお世話をしてくれる、その道のプロの人々へのインタビュー。

昨年前半に自分と妻の親3名が相次いで他界し、連続で葬儀を行うこととなったのですが、その際に、葬儀社のスタッフの皆さんにはとても親身で細やかな心遣いをしていただいたことを思い出します。また、納棺師さんのプロ技にも感心しましたし、火葬場スタッフの方の対応や説明も分かりやすく丁寧でした。
遺族・親族は大なり小なりオタオタしているので、こういう場で心強いプロの人々が支えてくれるのは、なんとも心強いものです。

・・・・・ま、しかし、戒名代はなぁ・・・(※宗派による ※個人の見解です)。

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2018年02月13日

Posted by ブクログ

母の葬儀はいくらだったかな。
満足いく仕上がりだったから値段覚えてない。
火葬は11,000円だったらしい。
安いよな。
綺麗に死んですぐ通夜、葬式だったから
エンバーミングもなく
看護師の妹たちのケアで綺麗にできたけど、
いろんな人がいてくれるんだな。

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2022年03月03日

Posted by ブクログ

一応、葬式に参列した経験はあるのですが、こんなに丁寧に見送って下さる方がいるとは存じませんでした。
お棺の窓から覗いた故人は、寝ているような安らかさと美しさの中に横たわっていました。あれは綺麗にして下さっていたのですね。
本来の死は、九相図にあるのだとも知りました。

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2021年02月20日

Posted by ブクログ

読むのがしんどかった。
こういう方たちがいてくれるおかげで、遺族が少しでも落ち着けるのだなぁ、、。

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2018年09月24日

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