【感想・ネタバレ】ライシテから読む現代フランス 政治と宗教のいまのレビュー

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Posted by ブクログ

2章まではかなりよい.ヴォルテールなどを含む歴史的な宗教に関する論争,現代フランスの宗教問題が手際よくまとまっている.その箇所は現代フランスに興味がある方だけでなく,政治哲学や社会科学徒にも.
ただ,3章は,扱う立場がフランスにおいてどれほど影響力のある立場かをはっきりさせてから話を進めないせいでわかりにくい.また一応客観的にいろいろな立場を語ろうと努力しているが,おそらく筆者の立場であるライシテ擁護派からの視点が見え隠れしていて,冷静な分析になっていないように感じられた.まず各々の立場の位置づけをはっきりさせ,その後筆者自身の評価をはっきりと打ち出した方が見通しがよかっただろう.最後に終章のカナダの事例はもっと詳しく知りたかった.わかりにくい3章のところで,比較としてカナダの話をした方がよかったのでは?

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2018年12月31日

Posted by ブクログ

ライシテ(laïcité)とはフランス独特の世俗主義(俗権主義)・政教分離の原則・政策のことらしい。ローマカトリック教会が国教会だった大革命前の時代からフランスの宗教政策は大きく変貌してきている。プロテスタント迫害のカラス事件(1761年)、ユダヤ人迫害のドレフュス事件(1894年)、そして現代ではムスリムとの間で(迫害ではなく!)発生しているスカーフ着用禁止事件はフランスがライシテをルールとして確立してきたことから逆に摩擦を呼んでいる!カラス事件に対してはヴォルテールが、ドレフュス事件に対してはゾラが弁護に立ち上がったという。これらの歴史を経て、ライシテを確立してきたフランスがそれゆえに、イスラムから目の敵にされているように感じるのは気の毒。ライシテ大国・日本はイスラムが身近になってきた場合には他所事ではなくなるように思う。ヴォルテールの言葉「謙遜と平和のうちに生き、侮辱の赦しを説いた申請にして甘美な宗教は、我々の欲望と熱狂によって、あらゆる宗教のなかで最も不寛容で野蛮な宗教になった」とキリスト教を批判している言葉は皮肉で重い警告だ。サルトルのユダヤ人定義の言葉がこれまた皮肉で、含蓄深い。「ユダヤ人とは。他の人々がユダヤ人と考えている人間である。これが単純な真理であり、ここから出発すべき。反ユダヤ主義者が、ユダヤ人を作るのである。…一口に言えば、近代国家のうちに、完全に同化され得るにも関わらず、国家が同化することを望まない人間として定義される。」クリスマスの飾り付けがライシテ違反として裁判になるフランスに対し、クリスマスは勿論のこと神道・仏教的な行事が慣習として抵抗なく受け入れられる日本とは何なのだ!と思う。最後に引用している憲法学者・宮沢俊義氏の指摘の通りである。今まさに日本の現状を示している。「日本国憲法は徹底したライシテを採用した。…思想の自由や宗教の価値に対する強い信頼がなければ、そのライシテの基礎は極めて弱い」

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2018年05月16日

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