【感想・ネタバレ】真夏の犬のレビュー

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Posted by ブクログ

戦後間もない頃(高度成長期くらいか)の阪神地区(主に海側)の下町を舞台とする短編集。生まれ育った環境との「地縁」と、人間の「性(さが)」を強烈に描いた作品。
その日暮らしが精一杯の少年時代・少女時代を過ごした登場人物たちが、大人になって昔を思い出したり、再会したりする話。当然、大人になるまでの間に、彼らは人生の辛苦を舐めているのだが、まだ10代前半くらいの段階で世の中のいろいろな場面を知ってしまうのである。
彼らは子供の頃に、日雇い労働、イカサマ詐欺師、水商売、ギャンブルなどなど、さまざまな職業の大人たちを見て育つ。仕事内容だけならまだしも、お金の使い方、ドロドロした人間関係、窃盗・嘘・恐喝など、大人たちの背徳も知ってしまう。そして、そのような大人にならじと「反発心」を抱いていたはずが、大人になってみれば同じような振る舞いを繰り返してしまうもの。(例:親の不倫を知って嫌悪感を抱きつつ、いざ自分が大人になったら不倫してしまう)

次の言葉が印象に残った。
「俺がお前たちの年齢の頃はな、世の中の裏の裏までとうに知っとったんやで」

暗いテーマの短編集なのだが、思わずページが進んでしまう、ぞっとする一冊であった。

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2023年08月30日

Posted by ブクログ

九篇の小説が収められている短篇集。阪神尼崎駅が舞台の作品がいくつか収録されている。かつての「煤煙と汚物の街」尼崎は猥雑な街だったようで描写が強烈で、すっかり小綺麗になった今の街との違いに驚いた。

文庫版巻末の「解説」で作家の森絵都氏が語る宮本文学への愛着についての記述が、自分が普段宮本作品について思っていることがうまく言語化されていて腑に落ちた。
「清も濁もなみなみ湛えた底なし沼みたいな、比類なきその作品世界にときどき無性に浸かりたくなる」

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2021年12月21日

Posted by ブクログ

関東の地方都市にまだスーパーアリーナなんてなかった頃、町には普通に野犬がいた。
あの頃のムッとした暑い夏の匂いとか、雑然とした商店街とかを思い出す小説。

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2020年07月22日

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