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幕末の「尊王攘夷派」「佐幕派」「公武合体派」の三つ巴の混乱の中に、商人ならではの戦いがあったことを知った。商人には、朝廷派だとか佐幕派だとかの政治的側面よりも、どちらに就くことが事業の存続につながり、どちらのほうが儲かるのか(損をしないのか)の判断が重要であり、つまりは先見の明が必要であった。
この難しい時期に、豪商三井から大阪の両替商「加島屋」に嫁いだ広岡浅子がこの小説の主人公。一言でいうならば女性剛腕実業家だが、ほとんど100%男性社会と言えるこの時代にあって、女性でこれだけのことを成し遂げた人物がいたとは驚きだ。
幕府による政権、廃藩置県、明治維新、西洋の経済の仕組み導入、新政府の強引な負債解消政策、これらのあおりで、これまで強制的に資金調達命令に従わされてきた豪商たちは、勝手気ままな新政府のやり口の為、莫大な貸付金を帳消しされたり、約束を反故にされて利益が得られなかったりで、よほどの体力がない限り倒産に追い込まれていった。
そういう状況の影響をうけて、大手両替商である加島屋も、財政的な危機的状況に追い込まれる。これが加島屋の経営を切り盛りすることとなった浅子の最初の障壁である。
商才ある浅子は、加島屋の財政再建のため、蒸気機関の動力として必要となる「石炭」の将来性に着目し、筑豊炭田の炭鉱買収に全精力を費やし、炭鉱で加島屋の経営再建に賭ける。
買収した筑豊の炭鉱の男衆から、女経営者ということで軽く見られバカにされるが、毅然と立ち向かい、最終的には工夫たちの信頼を勝ち取る。その全身全霊で壁に立ち向かっていく姿が感動的なのである。
浅子はその後の人生も同様に誰もが不可能と思えるような課題や目標を、信念と実行で切り拓いていく。「九転十起」が浅子の異名であるゆえんである。
自身の幼少期から懐いてきた矛盾の一つ「女性に学問の機会均等がない」ということがあった。成瀬仁蔵との運命的な出会いにより、それを日本女子大学創設という形で実現しようとする。
目の前にはだかる資金調達の大きな壁に対し、今でいうクラウドファンディングのアナログ版と言えるだろうか、すなわち持てる人脈を一人一人地道に足で歩いて交渉し賛同を得て、資金を集めるというとてつもない労作業を買って出る。これもシナリオ通りにはいかず、それでも最後まで諦めない精神が、硬い壁を打ち破るのである。
難波銀行破綻に伴う経済恐慌のあおりをうけ、加島銀行も倒産の危機に巻き込まれていく。風評被害がさらにその状況の悪化を加速していく。経営破綻を恐れる銀行は、預金者の集中的な預金引き出しを制限し、それが庶民の不安をあおり、益々経済恐慌がスパイラルしていく。その歯止め、銀行の信頼維持のため、浅子は預金引き出しを実行する決断をするが、そのために考えた大口預金者獲得というプランの難航に、これまた苦悩のどん底まで落ちてしまう。
そこに現れた救世主は渋沢栄一であった。金融業界の危機は国家経済の危機、政府が放置しておくはずはないという渋沢の大局的な助言を信じ、これまで行ってきた地道な預金者獲得の歩みを貫き、渋沢の予想通り為された日銀の金融政策に状況が一転し、浅子の地道な活動が一気に実を結び始めた。またしても捨て身で現実と戦う浅子の信念の活動が、大逆転をもたらすこととなった。
浅子は、自らの乳がんをものともせず事業に打ち込み、病もその勢いに収まっていたが、晩年徐々に進行してきた。浅子の最終事業の一つとして、大同生命の社屋移転(土佐堀川肥後橋前への移転)の大事業があったが、このビルディングは加島屋の事業の大成功、そして広岡浅子の生涯を通じての成果の大きさを象徴するかのような巨大かつ近代的な大阪一のビルディングであった。
病んだ体を最期の精神力で超越しながら、このビルの完成祝賀会に出席し、挨拶を終えたあとに倒れこむ浅子の最後まで全力でことを成し遂げるシーンは感動的である。
その挨拶の内容が、広岡浅子の人生を物語っている。
「うちは、どんな困難に出遭おうとも、いつもこれからが本番や思うてやってきました。生涯が青春のような気いで、事業に取り組んできました。これからも加島屋のために、大阪の実業界のために烈々たる気概でいこうと思うてます。本日はほんまにありがとうはん、本日はほんまにおめでとうはん」
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幕末から明治、大正という激動の時代に「九転十起」の精神で様々な苦難を乗り越え実業家として、女性の社会進出の先駆けとなった広岡浅子さんの生涯を描いた作品。
男女関係なく、浅子さんの気持ちの良い性格に惹かれてしまうのは私だけではないでしょう。
ドラマの原作にもなったみたいですね。
オススメです♪
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朝ドラ「あさが来た」の原作です。
ドラマが面白くて本作を読んだのですが、ドラマもビックリな生き様にひたすらページを繰っていました(笑)
炭鉱に単身乗り込んで事業を始めたり、女子の高等教育機関を創る顧問になったり、中小会社の互助機関を創ったり、自分の病気(ガン)を吹っ飛ばしたり。
豪商三井家の後ろ盾があったとしても、そのバイタリティに驚かされます。
ましてや浅子が生きた時代は幕末から明治、大正期の、女性の地位がとんでもなく低かった頃でした。
浅子な後の世代の女性たちの地位向上のために、自身の人脈を繋げたり、今でいうセミナーを開いたりします。そこに市川房枝や村岡花子がいたということが、なんというか、すごい。
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朝ドラの原作ということで知った作品でした。大同生命を作った人のドラマらしいといことで、ほとんどドラマも見ていなかったため、どんな人かと読んでみたら、想像以上にすごい人生だった女性の話でした。
こんなに広い視野をもって、先を読んで、世の中のためになることをと考えながら、日本が近代化していく時代の中を生きたのは、本当にすごいと思いました。
幕末~明治、大正と日本が経済的に大きく変わっていく様子が、主人公が次々と進めていく事業を通してよくわかります。ただ、もう少し主人公の広岡浅子さんの目に映る日本の様子や大阪の経済事情、起業者にとって大切な、人とのつながり、相手との信用を詳しく描写してほしいという欲が出てしまいました。
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転んでもタダでは立ち上がらない女性。広岡浅子。
男尊女卑の文化が残る時代、自らの才覚を元に起業家として邁進する浅子の姿にたくましさは女性起業家の魁とも言える。
・自分から始めたことやないか、頑固にやり通すしかない。
・仕事は命がけや。死んでも仕事は残る。そういう仕事をしなあかん。
・勝たなあかんで。負けの人生は惨めや。
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あさが来たのヒロイン広岡浅子さんの半生を描いている本です。あの時代に女性が強く生きるという事は難しかったはずですが、どんな困難があっても突き進むあさの姿はかっこいいです。「九転十起」をモットーに普通より二回多く転び二回多く立ち上がる。最後まで読むとあさの人生そのものだなと感じました。恵まれている今の時代に甘えて中途半端な自分が恥ずかしくなるくらい、あさは時代を変えていきます。そんなあさの周りには助けてくれるたくさんの方達が集まってきてそれこそが財産だと感じました。時代を変えた人の本をもっと読みたいです。
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著者、古川智映子さんの丁寧な取材と描写で、広岡浅子の生涯がイキイキと伝わってきます。
振袖の袖をまくりながらガニ股で歩いた姿、肺病をおして嫁ぎ先の資金繰りのために走り回った姿、融資を断った恨みを買い刺されながらも一命をとりとめた姿など、当時の様子が生々しく想像できました。
幕末から明治、大正と時代が変わる中で、炭鉱、銀行、輸入業、保険、女子大学など事業を形にしていく様子は読み応えがあり、元気づけられます。
発刊から27年間も経っていますが、これまで注目されなかったのが不思議なほど名著です。
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朝ドラ「あさがきた」主人公の広岡浅子が三井家から加島屋に嫁いだのちの生涯を描いた作品。母校の創立に関わった女性の話と聞いて、興味を持って読んだ。
在学中、「男性と同等に学ぶこと、社会に還元するために働くこと」を強く教え込まれたのを思い出す。女子大学校創立の契機となったのは成瀬先生自身の梅田女学校時代の経験と西洋の女子教育に感銘を受けたこととされているが、浅子の生き様にも多大な影響を受けたのではないかと感じる。
数々の事業を興し、幾度もの危機に瀕しながらも「九転び十起き」とただでは起きず、チャンスの種を見つけて立ち上がり続けた強い女性の人生に、学生時代に抱いた夢をふと思い出しながら、明日への活力をいただいた。
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あさちゃんにに元気もらった。
自分の子供が生まれたら、名前は『あさ』と『えん』にしようと思っている。
後、小藤【ともちか】って、信五郎さんとの子供産むのね。
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以前に読んだ玉岡かおるさんの『負けんとき』に出て来た広岡浅子さん。とても懐の深い女性で、魅力を感じていました。その後、NHKの朝ドラ「あさが来た」で、彼女の生涯が描かれると知り、ドラマをほとんど見ない私が、毎朝欠かさず見ています。ドラマの原案本ということで手に取りましたが、激動の時代に、女性が色々な難題に挑む姿勢は圧巻です。ドラマはかなり脚色されてますが、それはそれで楽しみたいと思います。
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・口答えはあかん。人間、修行中は、無理なことかて工夫してやる気にならなあかんのや
・環境が悪い、条件が悪いいうて不満いうたかて、人間大きゅうはならん。自分を深めるためは、悪い条件の中でうんと苦労することや
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「あさが来た」原作本。懐かしいな…。
広岡浅子の生涯を描いたノンフィクションだが、
彼女の豪快で気高い生き方は抜群に面白い。
ドラマも良かったが、浅子さん本人もスゴイお方や。
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古川智映子 さんの初読み。
朝ドラが放映されていた頃、どこの書店へ行っても大量に平積みされていた作品。そもそも朝ドラに興味が無い人間なので、当然この本も、完全スルー。
先日、たまたま、古書店にて程度の良い本が安価で売られていたので試しに読んでみようかと・・・。
いやあ、圧巻。
広岡浅子さん、すごいわ。江戸から大正にかけての、完全男尊女卑な世の中で、あんな生き方ができるだなんて!!!
戦後しばらく経ってから生まれた自分の父母たちの時代ですら、やっぱり男尊女卑の考え方は抜け切れてなかったのを思えば、さらに驚き。
朝ドラが観たくなった。
★4つ、8ポイント半。
2016.08.31.古。
※夫の広岡信五郎・・・日和見で世間知らずな、金持ちのボンボンかと思いきや・・・いいやまあ、金持ちのボンボンには違いないけれど・・・なかなかどうして、素敵な夫だった(笑)。きっと、浅子が思う存分に力を発揮して偉大な仕事を成し遂げられたのは、「女だてらに」と反発することなく彼女の力を認め、信じ、それでいて愛し続けた彼の存在があってこそだったのだろう。
※自分を慕っていて、自分も心から頼りにしている小藤を、自らの意志で夫の側室に・・・という心理は、最後まで理解できなかったけれど。
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ドラマを見ていたので読んでいても勝手に脳内で映像化されていきました。
私は当たり前に学べる時代に生まれたけど、あまり学ぼうとしていなかったな…。
彼女のように学ぶということに貪欲になっていたら現在とは異なる人生になっていたと思います。
いや、今からでも遅くないから貪欲に学び続けよう。
商売人として成功したことも素晴らしいですが、それ以上に学ぶことを大切にしていた彼女の姿勢が素晴らしいと思いました。
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2015年後半の、NHK朝の連ドラの小説版?原作?のような本。ドラマとは違い、より史実に近いみたい。
展開の速さは、連ドラを想起させる。とにかく読んで、新幹線のような感じだった。面白い。
主人公の広岡浅子氏が、ドラマ以上にパワフルですごい。彼女の影響を受けて、後の婦人参政権運動につながるのも頷ける。
一方で、小説の氏からは、ビジネスや何かで大業を成すということは、ある程度、家庭にかける時間は限られ、代わりに家庭の様々を支えてくれる環境があってこそなのだと、考えさせられた。
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「自分は商人である」という強烈な自覚
何が正解なのかを自分の物差しできちんと考えること
圧倒的なエネルギー
これが彼女の輝かしい業績を作ったのだと思った。
文の書きぶりはプロっぽくないけど、人となりは十分伝わった。
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ドラマを見る前に読みました。
当然ですが、こちらの方は全て真実。
妾の存在や、浅子の死に様など、ドラマに出てこなかった重要な場面が書かれています。
ドラマで気になった人は、これで本当の広岡浅子を知りましょう。
ドラマは、あれはあれで好きでしたよ。
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朝ドラでやってたねぇ。
アタシは見てなかったけど、それでも面白かった。
浅子がね、パワフルでパワフルで。
どこに、こんなにパワーがあるんやろう。
どこから出てくるの?
十分の一でも見習いたいwwww
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いがいとたんたんと進むストーリー。
ドラマが脚色されているんだなと思いました。
五代さまの登場がそこだけかい?ってかんじで驚きでした。爆
そして、ラストはこうなるんだ~と思い、あさこすごいなって女性は強いですね。
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NHK朝ドラ「あさが来た」の原作本らしいが、かなりサラッとしか書かれていないので、少々物足りない
(もともと歴史に名を残された人物ではないようだが)
在学中は全く興味がなかったが
今更ながら
成瀬仁蔵先生も勉強中
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豪商三井家から17歳で大坂の両替商・加島屋に嫁いだ浅子。傾いた加島屋のため、鉱山経営へと乗り出す。明治という時代に、女性が事業で成功するには「九転び十起き」程の気構えが必要。
浅子を支える信五郎も無くてはならない存在。
負けん気で、夫や周りの人たちに甘えることが出来ず、時に悪いうわさも立てられたとか。
それでも、世のため女性のために奔走する浅子さん。すてき過ぎる。
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NHKの朝ドラ“あさが来た”の原案本『土佐堀川』
脚色されているドラマはドラマとして楽しみ
実在の人物ならば
少しでもその本当に近づきたい~と
映像を観る場合は原作は外せません~
『大日本女性人名辞書』の二段組紙面で
わずか一四行の記載しかなかったという“広岡浅子”
興味を惹かれた作者の古川智恵子さんは
そこから三井文庫に通い
加島屋本家の子孫や浅子の孫の生存を知り
写真に触れたり聞き書きもし
この小説を完成させていきました
出版後(1988年10月初版第一刷)、小説はラジオドラマ化、そして舞台化され
今回のNHKの朝のドラマ化となって
広岡浅子はさらに多くの人に知られるようになりました
“颯爽”という言葉が相応しい
青空を見上げて胸いっぱいに
薫風を吸い込んだような女性の一生です~
女性が生きづらかった時代にあって
“九転び十起き”の精神で
前へ前へと歩いて行く様は
浅子の不屈の精神と共に
夫、義父等、周囲の理解者の存在がありました
小説はドラマの後半部分(現在放送部分)を中心に
浅子は村岡花子や市川房枝とも関わっていきます~
文庫版の解説は作家宮本輝さん
最後の言葉は深く頷かされます
“今、『小説 土佐堀川』があらためて世に躍り出たのは、たかだか数十年かでいやに姑息になり、
こぢんまりとしてしまって、勇気や気迫や
向上しようという意欲を失くしたこの国と民衆に、
生きるとはなにか、命の力とは何かについて
考える時間を取り戻させるための、
天のはからいではないかと私は思っている”
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前々回のNHK朝ドラ「朝が来た」の原作
ドラマもちょいと見たりしていたので内容はわかっていたが
明治維新前から商才を発揮して、危急存亡、転んでもただ起きない人生
女性の活躍もママならぬ時代に大正8年まで果敢に生きた、 こんな勇ましい頭のいい女性が存在していたとはすばらしい
また
この作者の簡潔な書きっぷりが、なお好感度であった
初版は1988年だそうだから、朝ドラに取り上げられたのはよかった、失礼ながらうずもれていた作品であったのであろう、 とにかく歯切れがいいのに感心した
思うにこういう前向きなガンガン進んでいくような小説が今のわたしには好もしい
ひと昔前は結構悟ったような小説を好んでいた気がする
たとえば、 ジェームス・ヒルトン『チップス先生さようなら』とか田辺聖子『姥ざかり』 主人公はお年寄りで、妙に達観したような作品にね
自分がそのような年齢になってみると
そのようなのを読んでのんびりと過ごせないような気分になっているのである、勝手なものだ
Posted by ブクログ
大阪の女性実業家、広岡浅子さんの生涯。
今、ジェンダーがどうのと話題になっているけど、この時代にここまでできるのは豪胆で尊敬できる。
病もはねのける気概、すごいな。
大阪のよく知ってる場所が舞台なのでそこも面白い。
Posted by ブクログ
朝ドラは観ていません。
秀でた実業家であり女性の在り方を
一変させた人物。
存在自体も初めて知ったのでとても
新鮮な史人と出会えたような気分で
した。