【感想・ネタバレ】命のまもりびと―秋田の自殺を半減させた男―(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

本書の主人公はNPO法人「蜘蛛の糸」を創設した佐藤久男である。佐藤が始めた「いのちの総合相談会」では、弁護士や司法書士、臨床心理士など専門家と一緒に相談を受けるのが特徴だ。
佐藤はもとは経営者であったが倒産し、自殺の寸前まで追い込まれた。自殺を図るとき、人は誰かに誘導されるような感覚になったり記憶がなくなったりすることも多いという。
日本の年間の自殺者が初めて3万人を超えたのが1998年。バブル崩壊で銀行は大量の不良債権を抱え、97年11月に北海道拓殖銀行が、98年10月に日本長期信用銀行が破綻した。98年4月から自己資本比率を引き上げることが求められた銀行が「貸し渋り」や「貸し剥がし」をするようになり、中小企業は資金が回らなくなった。そのために、98年に中小企業経営者の倒産自殺が増えたのだ。
秋田県の自殺対策は1999年の寺田知事(97年就任)の決断であった。初めて予算を付けて本格的に取り組み始めた。「秋田モデル」と呼ばれるようになったその後の取り組みは、
・行政(秋田県):計画
・大学(秋田大学):研究
・民間(NPO):実践
の三位一体の対策で、具体的には、
①啓発活動→自殺予防リーフの全戸配布
②相談体制→相談窓口「ホットライン」の設立
③うつ病対策→メンタルヘルスサポーターの養成
④予防事業→秋田大学との自殺予防モデル事業
⑤予防研究→秋田大学自殺予防研究プロジェクト
の5つである。
さらに、2006年発足の「秋田・こころのネットワーク」でNPO同志の連携が、2010年発足の「秋田ふきのとう県民運動実行委員会」で三位一体の連携が強化された。

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2022年12月10日

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