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切なさいっぱいのSF短編集。
狭義のSFにこだわる人は受け付けないかもしれませんが、この作品におけるSFはギミックに過ぎないと思います。
時に聖性すら帯びる小悪魔的な少女の媚態、ユーモアとエロスが織り交ざる独特の雰囲気など森奈津子が森奈津子たるゆえんがたっぷり堪能できる隠れた名作。
収録作もバラエティーに富んでいて楽しめます。
個人的に好きなのは「いなくなった猫の話」。
場末の酒場の女(といっても十分若い)の回想から幕を開ける異色な冒頭からしてちょっと毛色が違いますが、淡々としながらもしっとりした艶を含む語り口にいつしか魅了され、拾った猫の子との間に愛情を育んでいく姿が目に浮かびます。
「人生って、得ることと失うことの連続だと思わないかい?
獲得と喪失の繰り返しって言えばいいのかな。
形あるものはいつかは壊れるって言うじゃないか。
それと同じだよ。
手にしたものは、いつかは失う。
愛した者とも、いつかは別れる。
得たり、失ったり。それの繰り返しさ」
少女は砕瓜を迎え大人になる。
それは神秘に包まれた少女性を喪失し、「女」という別の生き物に生まれ変わる事。
大きな喪失を体験した小夜の言葉に、森作品に通底した「喪失と再生」のテーマを見るおもいです。
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表紙や扉絵のイラストがキュート。濃密にいやらしいのに、対象が美少女、美少年、レプリカントなので淫靡なのにどこかツルリとした印象。どれも奇想天外で面白かった。
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SFエロ小説。
この人の書く少女もまた好き。
少女が少女でなくなることのトリガーを処女喪失に結びつけることが多々あるがそうじゃないんだと切々と語りたくなる。私は語りたくなった。
そしてまた、本自体の表紙また各話の扉絵にもなっているタカノ綾のイラストが合いすぎてたまらない。
Posted by ブクログ
耽美なわしらのノリとはまた違う新たな森先生の発見(これの前にも1冊読んではいるけれど)。ピンクなにおいがムンムンする作品ばかりだけれど、そんじょそこらのおピンク小説じゃない。涙が出てしまう作品もあって、胸がキュンキュンします。こんな気持ちをずっと持っていられたらと思います。
Posted by ブクログ
性愛SFというだけあってかなり直接的な性的表現が出てくるので苦手な人はいるかもしれないが、好きな人には深く刺さるであろう、独特な雰囲気を持った短編集だった。
「からくりアンモラル」☆☆☆
思春期を迎えた少女が自分を性的な目で見られることに嫌悪感を覚えるというのは物語でよく見る描写だが、そこからロボットを通して自分を見ることで愛のようなものを得るというのはおもしろい。
「あたしを愛したあたしたち」☆☆☆☆
思春期を迎えた少女が自分を性的な目で見られることに嫌悪感を覚えるという構造は「からくりアンモラル」と同じ。
過去・現在・未来の自分たちで互いに自分を慰めるというのは、一見ひねくれた自己愛のようだが、それがとても真っ直ぐなものに感じてしまう不思議。
「愛玩少年」☆☆☆☆
私にはマゾヒスティックな趣味はないので直接的な性的興奮を覚えることはなかった。
しかし、ラストシーンで唯一の理解者となりうる存在が奪われたときには何か変な高揚を覚えた。
とても残酷で悲しい出来事のはずなのに、Mのひととかいわゆる寝取られ趣味の人の気持ちが少しだけわかったような気がした。
「いなくなった猫の話」☆☆☆☆
私の好きなロマンティックSF。
「繰り返される初夜の物語」☆☆☆
無意味と知りながらロボットに恋して振り回される愚かな話。
「一卵性」☆☆☆
一卵性の双子を愛するというのはこれまた変わった自己愛か。
「レプリカント色ざんげ」☆☆
SFにありがちだが、変わった世界の出来事の紹介のような物語で、あまり登場人物の精神に触れた気がしなかった。
「ナルキッソスの娘」☆☆
美談のように書いているが、私はヒロシのような適当な男が苦手なので、感情移入できなかった。
「罪と罰、そして」☆☆
サディストの愛というのは、言わんとしていることはわかるのだが、私には理解しがたい感情だ。
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短編集。SF。エロSF。恋愛。
SF設定は、ロボット、タイムスリップ、吸血鬼、キメラ、記憶移植、共感能力、アンドロイド、記憶の共有など、さまざま。
エロいし、SF設定ではあるけど、基本的には切ない恋愛がメインだと思う。
なかでも特に切ない「いなくなった猫の話」が素晴らしい。
「繰り返される初夜の物語」「レプリカント色ざんげ」もとても好き。
Posted by ブクログ
どの物語にも勢いがあって、一日で読み終えました☆
だいぶエロチックですが、この作者様の文体はわかりやすくて好きです。
親しい友達にオススメしてしまうかもしれません☆
Posted by ブクログ
森奈津子、最新文庫本と言う事でウキウキと購入。「西城秀樹のおかげです」のノリを期待したら見事に裏切られた。いい意味で。静謐な文章、そしてやっぱり卑猥。SF官能小説とでも言うのでしょうかね?うかつにも涙しました。表題作の「からくりアンモラル」で。これは女性にしか分からない。初潮が訪れた時の気持ち。心の痛み。少女から女性への変化は喪失感を伴うものなのです。私は子供の頃はずっと男の子に生まれたかったと思っていたので。その時の気持ちを代弁されてる気分になりました。
Posted by ブクログ
からくりアンモラル
SFを舞台装置にした、性愛をテーマにした短編集です。
タイムトラベル、レプリカント、人と動物のハイブリッド、吸血鬼、テレパシー。いろいろな舞台装置の上でいろいろなアイデアが盛り込まれています。
でも、何か違和感があるのは、視点が偏っているのと、物語が紡がれていない点なのかなあ?と思います。
ちょっと長めのショートショートという感じですか。
ちょっとエッチ(結構エッチかも)で軽いノリで楽しめて、その後に少し考えさせられるという本をお探しの方にはお薦めします。
竹蔵
Posted by ブクログ
解説で漫画家の榎本ナリコさんが書いていてはっとしたのが、この本の中の世界では、男も女も性的でありつつも性と隔絶されている。去勢されているという部分。
性愛をメインテーマとして扱いつつも、生々しく感じない、美しさとある種の悲しさ・憐みを感じるのはそれが根底にあるからなのかもしれません。