感情タグBEST3
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タイトルからの直感のみで棚差しから購入。
解説まで読んではじめて、この作品集の肝が理解出来た。
一見すると全くバラバラに独立した五つの短編集のようで掴み所がないが、丁寧に読み込むことで物語同士が共鳴するとは驚き。読み手が気づく事で、各物語の’孤独’が救われる。
第一印象では「オムレツ少年の儀式」「猫舌男爵」が好き。結局、猫舌男爵についてはわからずじまいだったが、みんな幸せな結末を迎えてなにより。
繰り返し読み必至。
1刷
2021.6.12
Posted by ブクログ
面白かったです。
SFとコメディと幻想と…いろいろな色のお話たちでした。
表題作は笑い過ぎました。皆川さんこういうのもお書きになるんだ。ハリガヴォ・ナミコが皆川博子のアナグラムって気付かなかったけど…そして皆川さんの初期?に針ヶ尾さんのお話あるのですね。
「私は猫です」の活用…確かに、これ読んでると日本語ってつくづく変わってるなと思います。
結局誰も「猫舌男爵」を読めていないし、話も噛み合わないのに、ラストは皆さん幸せになる。良いなぁ。
「水葬楽」がとても好きでした。
死が近付くと容器に入り、液体の中で暮らす人々。それを見詰める兄妹は結合児で…。選別された妹だけど、なかなか衰弱が始まらないのがゾッとします。Back Ground Poemがとてもいい雰囲気です。
「オムレツ少年の儀式」もラストの鮮やかさ!と思います。
「睡蓮」も良かった…書簡を時系列の逆から描いていく。これは狂う、と思いました。エーディトの絵、見てみたいです。
「太陽馬」の作中作が好きです。ナチュラルに、内戦中のロシアの描写と繋がるのにおおっとなりました。
解説がヤン・ジェロムスキくんだ!熱い文章で笑ってしまいました。訳者の垂野さんは実在するようなのでこの方の文章なのかな?面白いです。
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皆川博子は長編2冊読んでから本書を読んだけど、ほんとに巧いし面白い。重厚な背景が毎回素晴らしいから長編向きかと勝手に思っていたが、短編でもその世界観を作れ、そのうえ作風も変えられるとは。表題作はイロモノっぽいのでズルいが最高に面白いし、「水葬楽」は廃退的な空気感に埋没させるSFでいい。ほかの3篇も皆川カラーがしっかり出ている佳作だった。そして最後の解説にもひと仕掛けというニクさ。
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「猫舌男爵」三周目。文庫化をきっかけに久しぶりに読んだ。
やっぱり「睡蓮」と「オムレツ少年の儀式」が好きすぎるんだけど、別のアンソロジーで読んだ「猫舌男爵」にどんどんはまってきた。ページが進むにつれてすべてが滑稽にとっ散らかるように感じて、けれど最後はみんな(たぶん)解放されて幸せ、みたいな。千街さんとか日下さんとか実在の人物が登場したり。あと解説ヤン・ジェロムスキって目次で見てすごくわくわくしてた。ヤン・ジェロムスキ文体そのままだった。ヤン・ジェロムスキ、架空の人物。
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5篇の短編集。
読後に「ヤン・ジェロムスキ」の名前をググったのは私だけではないはず。
それから「エーディット・ディートリヒ」と、「ジークムント・グリューンフォーゲル」の名前も。
引用形式というスタイルで、史実や実在人物名もちょこちょこ出てくるもんだから、これははたして創作なのか? それとも史実なのか? と、訳が分からなくなってしまった人がいるに違いない。
「オムレツ少年」と「太陽馬」は歴史ものに分類できると思うのだけれど、これらも「史実」と「創作」の境目が非常に曖昧だったように思う。
特に後者の方では、ロシア・ソヴィエトの歴史を淡々と語る割と長いパートがあるのに、読後の印象としてはやっぱり幻想的なのだ。
それから「水葬楽」。読んでいるとふわふわした気持ちになって溶けて流れて行ってしまいそうな難解な幻想小説だけれど、
BackGroundPoemとしての詩句の引用が要所に挿し込まれることで、現実に引き戻されるような感覚があって、尚更頭が揺さぶられる。
この引用句が旧仮名遣いで書かれていることもあって、その所為か、時間軸も行ったり来たりさせられる感じだ。
こんなふうに、「実在と非実在の境目」、「史実と創作の境目」、「現実と幻想の境目」を曖昧にしてしまう仕掛けや効果が随所に在って、
それがこの作品集の、寧ろ皆川作品すべての特徴であり魅力なんだろうな、と思ったりした。
だからこそ、皆川作品を読んでいると、不安にもなるのだ。
物語の中のこの人は本当にいたのだろうか?
どこにいるのだろうか?
どこにあるのだろうか?
と、現実と小説の区別がつかなくなってしまうから。
そう思いながら文字を追って、彼らの後を追いかけていると、
いつの間にか自分自身が物語に迷い込んでしまって、
果たして自分は今、どこにいるのだろうか?
ということが、分からなくなってしまうのだ。
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5編の短編のうち「睡蓮」「猫舌男爵」が特に面白かった。
どちらも地の文がなく、手紙や日記をめくりながらストーリーを埋めていく文章で、その開き方が鮮やかで気持ちい。
皆川さんの著作を読んでいく中で、鶴屋南北や鎌倉権五郎などのモチーフに複数回出会えるのが少し嬉しい。
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短編集。表題作は、読めない日本の稀覯本『猫舌男爵』を巡る外国人翻訳家ヤンと関係者の話。ヤンの余計な気遣いで家庭崩壊しかけているコナルスキ氏が、最後に一応の平穏を取り戻してよかった。「睡蓮」手紙を遡るごとに女性画家の真実が見え、その生涯を噛みしめながら、彼女の美術展に赴いた気持ちになる。「太陽馬」ロシア内戦下で、少尉に随従するコサック兵の秘話。物語を託された側は生き抜いて欲しい。他二作品。
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表題作があって、解説がそうなら
各作品のなかで現れる現実と幻想の境は
この本を読みおわった時点で、さらにあいまいで
ふとした瞬間にグニャリと歪んでしまいかねない。
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多彩で美しくて後味の良い短編集。扱うジャンル、文体、世界観、人物像なんかが見事に合致していて、ああ文で味わえてなんて嬉しい、とにやにやしてしまいました。
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相変わらず素晴らしい。
『オムレツ少年の儀式』と『睡蓮』が特に好き。
表題作は皆川さんの小説としてはなかなか珍しい感じでしたが、純粋に笑えて面白かったです。
『太陽馬』はラストの情景を頭に浮かべるとなぜだか涙が出そうになりました…。
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怪しい雰囲気漂う短編集。
個人的に『水葬楽』『睡蓮』が好きでした。『水葬楽』は未来の死の概念のようなお話ですが、この先あり得るような怖さを感じました。どのお話にも時代が分からないところに感じる不安なような怖さを感じました。
表題作『猫舌男爵』は想像してなかった内容で、純粋に面白かったです。
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初読みの皆川博子作品。なんとも濃密な短編集だった。幻想的であったり笑いがあったり…。正直難解な部分が多いが、それでも魅せられてしまう。「睡蓮」「太陽馬」が特によかった。この作家さんの、ヨーロッパを舞台にした話をもっと読んでみたいと思って早速購入!楽しみだ。
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「水葬楽」
「猫舌男爵」
「オムレツ少年の儀式」
「睡蓮」
「太陽馬」
皆川博子の幅の広さよ。
「水葬楽」「太陽馬」はどちらもひと捻りした幻想文学の手本。
Posted by ブクログ
皆川博子は過去の異国へ誘ってくれるから好きだけど、何かしらのトラウマを残していくので、もうちょっと当分はいいかな…という気持ちになった。『水葬楽』、『睡蓮』は良かった。