【感想・ネタバレ】世界の果てに、ぼくは見たのレビュー

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Posted by ブクログ

著者の長沼毅氏は、生物海洋学、微生物生態学を専門とする生物学者。極限環境に生きる生物を探索調査する、極地・僻地でのフィールドワークを中心とする研究を行っており、「科学界のインディ・ジョーンズ」の異名を持つ。
本書は、「生きるとは何か、どう生きるのか、人生の本質は何か」というテーマを深耕する月刊誌「MOKU」(2016年休刊)に2008年から連載された「時空の旅人」をまとめて2012年に書籍化された『時空の旅人 辺境の地をゆく』を文庫化したもの。
書名の通り、主に著者が世界の辺境(サハラ砂漠、南米アタカマ、オマーン、北極、南極等)を歩いたときのことが綴られているが、著者自ら「ぼくのエッセイは収束するというより発散しがちだ。語る内容があっちへフラフラ、こっちへフワフワして、ちっとも落ち着かない」と書いているように、著者の興味と知識は恐ろしく広範である。
例えば、「世界で最も乾燥した場所」である南米アタカマに行ったときの話。アタカマ→南米の形「南の錘」→自分が米国に住んでいたときの鉛管工→アタカマの鉱脈「虹の谷」→アタカマの積み石(アパチェタ)と呪術→イヌイットの積み石(イヌクシュク)→2010年バンクーバー冬季五輪のロゴ→モンゴルの積み石(オボ)→琉球の御嶽→SF作家・藤崎慎吾の『ハイドゥナン』→木星の衛星・エウロパ→ガリレオ・ガリレイ→アタカマの巨大望遠鏡・ALMAと、わずか7頁の中で話題が次々と変化する。しかも、専門的な言葉が出てくると、その語源の説明もある。
なんとも博覧強記。そして、その知識・情報を書き尽くす姿勢。。。
エッセイとは言いながら、次々と知らないことが出てくるために、さらりと読み流しにくいが、その分様々な興味を掻き立てられる、密度の濃い作品である。
(2017年8月了)

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2017年08月13日

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