【感想・ネタバレ】日本語はなぜ美しいのかのレビュー

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Posted by ブクログ


人工知能エンジニアとして自然言語解析の専門家、2018年には『妻のトリセツ』がベストセラーになった著者が 「発音体感」という言葉の語感に着目した日本語論

心に残った内容 感想

① 母国語とは語感と情景がしっかりと身体感覚に結びついている
「朝よ、おはよう」と赤ちゃんの頃から声をかけられて抱きあげられていたら、日本の風土のまぶしい朝日と活動が始まる躍動感を経験の中で認識する
朝の「あ」はノドも口も開ける開放感、「さ」は舌の上に息を滑らせて口元に風を作るSの組み合わせ
「おはよう」は第2音の「は」に弾むような感覚があり
親と赤ちゃんは同時に爽やかな空気と朝の光と語感を感性の情報としてインプットしている

情景と語感が一体化している発音体感の例として、擬音語・擬態語
カラカラ・クルクル・コロコロ  サラサラ・スルスル・ソロソロ  タラタラ・ツルツル・トロトロ
Kは固く乾いた感じの固体 Sは空気をはらんで滑るような感じの気体 Tは水分を含んで粘り気がある感じの液体
Kはノドの奥をいったん閉じて、その接着点に強い息をぶつけて音を出すノドの破裂音で
口の中を早く突き抜け、唾液と混じらない乾いた音
擬音語だけでなく、硬い キツイ、キリ、剣、かたくな など意味と語感が結びついているものも多い
ケンスケ・キイチ・ケイコ・小林・加藤などイニシャルKには強くて速くてドライなクラスのみんなから一目置かれているイメージ
クヨクヨは? YaYuYoは二重母音の特殊な構造で緊張を緩和するゆらぎの優しい音
ヒヤヒヤ・すやすや・そよそよ・くよくよはすべて揺らぎの意味を含む
Hは気管をこする息の音、大量の音をノドにぶつけて喉元が熱くなるほどで体温を感じる音
ヒヤヒヤは熱さ・冷たさ・緊張を緩めるゆらぎがある
Sは息を滑らせて、前歯でこすって音を出す口の中の風の音だから爽やかで涼やか
切ない・寂しい・颯爽・すっきり・スピード・スポーツなどの外来語も日本語のSの語感に合致しているので定着した
Tは上あごに舌をつけてはがすときに音を出すので最も濡れてねばる感じ
タラタラ・たっぷり・たらふくなど豊かさ充実感を表す言葉が多い

3人姉妹「ミカ(仕切り屋の長女)・ミキ(個性的な次女)・ミク(内気な末娘)」語尾の母音の違いでイメージが違ってくる

② 母音を主体に音声認識する言語は世界的に見て 日本語とポリネシア語のみ、言語脳・左脳で言語を認識

その他の欧米、アジア諸国はすべて子音主体・アラビア語は最も子音に頼っている言語で砂漠の民は悠長に大きな口を開けて母音を発音しない
子音を骨格として認識する世界の大多数の人たちは母音を音響効果音として右脳で聞いている

自然の音の音響波形は母音と似ているので、風や雨、小川のせせらぎ・木の葉のこすれる音や虫の音を歌声のように聞き、自然と調和し会話しながら生きてきた
一方、子音語族は自然の音は語りかけてくるとはとらえずに自然と対峙して、統制を取り、または保護するという発想になる

③ 潜在意識で母音骨格をつかむ日本人は、話しているうちに相手と融合してしまう
合意が得られていなくても、なんとなくわかり合えた気になってしまう
合議制という名前の下でお互いの落としどころを探り合っている

子音語族の人たちは、相手との境界線がある
それを超えて理解し合うには権利と義務について話し合う合議制が合っている

確かに日本語は音の響きだけでイメージをとらえることができたり、和歌や俳句の短い言葉で広い世界を表現する文化が合ったり、気持ちを汲み取ったり、共感するのが得意な言語だと思う
そして、主語を言わずにぼかしたり、自分の意見なのか世間の味方なのか立場をあいまいにする会話も多い

親しい間柄ならそれでも済むが、ビジネスや公式の場所、あるいは日本語が母国語以外の人には、もっと詳しく説明しないと伝わりにくい

長い歴史の中で土地を追われたり、母国語を奪われることなく、日本語をはぐくんでこられた事に感謝しつつ、違う文化や言語体系を持つ人たちとも言葉で分かり合えるような柔軟性を身につけたいと改めて感じた本

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2023年05月17日

Posted by ブクログ

優れた言語論だと思う。
日本語は母音系の言語で世界の超少数派と言う指摘に納得。ソクラテスの言う、この世のどこかにある最美な言語、と呼んだ要素を余すところなく持っているのが日本語だと教えて貰った。

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2020年05月28日

Posted by ブクログ

おもしろい!やっぱり私は日本語が好きやなぁとしみじみ思いました。言葉は人をつくる、とは前から感じていましたが、科学的にも正しいんですね。

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2012年03月09日

Posted by ブクログ

「私の長年の疑問を、この本が答えてくれた」。
そんな気がします。

日本語を母語とする私たちは、日本語の言葉を発するとき、
息の流れを体感し、
そして言葉そのものにストーリーを頭に描いているのですね。

「なるほど!」という実感を、得ることができました。


著者の黒川さんは、「脳とことば」の研究者
人工知能の開発にも携わった方なのです。
言語学一筋という研究者と、
また違ったアプローチがこの本でなされているのが
とても新鮮でした。


「おはよう!」は、日本に風土に似合った朝のあいさつ。
「Morning!」は、イギリスの風土に似合った朝のあいさつ。

日本を母語とする人にとって、日本語は美しい。
イギリス語を母語にする人にとって、イギリス語は美しい。
風土に似合う、言語があるのですね。

その中、日本語の特異性にも触れたあったことも
見逃せません。


この本から、お互いの風土に根ざしたことばや
文化、習慣を
お互いに尊重していきたいな、と感じさせてくれました。

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2011年10月21日

Posted by ブクログ

この言語を母国語とする日本で生まれ、育てられ、そしてその言語を自由に使えるということを嬉しく幸せに思えるようになる一冊。

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2009年10月22日

Posted by ブクログ

日本語の音と体感、体験、イメージの親和性がとても面白い。土井先生がよく言う「すむ」に然り、日本語の綺麗さ、曖昧なのにしっくりくる感覚に最近は会う機会が増えてきたように思う。

K、S、T行の音と日本語の表現、体感の一致さはすごく共感できる。
「さくら」と"Cherry Blossum"で同じものを指しているのに、言葉や文化の違いで全く別もののように感じるのもわかる。

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2022年09月19日

Posted by ブクログ

# 日本語は美しい。そして未来への祈り

## 面白かったところ

- 著者の文字からあふれる日本語愛が感じられて素敵だった

- 「英語を子供に習わせるか」の問いに対する著者の意見が、かなり納得の行くもので面白かった

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

日本語の美しさは、ひらがな一文字にすら埋め込まれている色や情景から始まる。

そんな印象を受けた一冊だった。

「あさ」という言葉と「morning」では連想される景色が異なる。こんな感じで日本語の美しさを綴っており、新たな視点を日本語に対して持つことができた。

いつも読んでいる論評や専門書とは違った文化性の強い一冊だが、たまにはこういう本も良い。

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2022年07月19日

Posted by ブクログ

日本に生まれ育った人はもしかしたら日本語に1番接する機会が多いのではないでしょうか。普段何気なく話す単語一つ一つの発音から感じるニュアンスって文字に起こして目で改めて確認することで頭に入ってきます。(これ私にとってすごく学びでした)
母音、子音のもつニュアンスを知るだけで、話し方をもっと良くしたい!と思える一冊です。

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2020年09月21日

Posted by ブクログ

日本語は発音体感と結びついた言語。
大陸の東の端にあり、侵略もされなかったので、他の言語の影響を受けず、そのまま風土を取り込んだ。

日本語の美しさ、貴重さ、凄さがわかる。
最後の方の7-8章が特に面白かった。

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2019年09月02日

Posted by ブクログ

この人の本はいつも面白くてどんどん読み進められる。
読むと、英語の早期教育のヤバさとかについて考えさせられる。あ、2歳の子供に英語を覚えさせようとしている友人に教えてやらねば!英語は12歳からでええんやで〜。て、小学校でこれから科目に入るんやったっけ。日本語の美しさについて科学的に教えてくれるこの本を勧めなければ!

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2019年06月30日

Posted by ブクログ

『日本語はなぜ美しいのか』(黒川伊保子)
母音で成り立つ日本語の美しさを、日本の地勢、歴史、環境、そしてそこに暮らす民族の骨格から解説し、説明してくれる本。
この母音語が世界の言葉の中では稀な言語で、その対局にある子音言語(英語をはじめとする大陸言語)が世界の多数派になっていること、そしてその違いがものごとの見つめ方、思考のしかたに影響を与えている。……概略をいってしまえばこんなまとめになってしまう。
でも、それではこの本に託した黒川伊保子さんの熱が伝わらないので、その部分を補おうと思います。
以前に読んだ『怪獣はなぜがギグゲゴなのか』のなかでも日本語の言語の成り立ちやその構成、そして日本語発音体感について述べられていた。重なる内容もあったけど、あの本で伝えられた、『熱量よりももっと遠くに、先に届けたい』そんな熱量を受け取りました。
言葉の発生背景を、歴史的、科学的な知識をもったうえで、それを創造力で補いながら、そのことばを使う国や地域の人々を想い起すということを一度始めてしまうと、今まで見えてこなかったものがあらゆるもののうえに見え始めてくる。
それぞれの国の歴史を振り返ってみても、本を読んでみても、映画を観ていても、そこにでてくる登場人物たちには、彼らの使うことばを生み出した民たちの感情構成や思考基盤みたいなものが覆いかぶさっているのが見えてくるから不思議だ。
これでは、世界史を学んでひと段落したある時期に、この本を読んでみることをお勧めせざるおえない。勿論、『サピエンス全史』(ユヴァ・ノア・ハラリ)でも、『銃・病原菌・鉄』(シャレド・ダイアモンド)も世界を重層的に俯瞰するのには読んでもらいたいが少し忍耐がいる、でもこの本ならしっかり著者の願いに寄り添えば、あっという間にあなたが感じている歴史の世界にひとつの色を加えることができる。本来の著者の意図はそんな大それたところにはない、ほんとにカジュアルに仕上がっている本ですが……。
そして何より、この本の読者へのプレゼントは巻末にある【日本語への祈り】の部分。『幸福の王子』(オスカー・ワイルド)に込められた美学を解くことから始まって、“生きる力”と“美学”の違い。“技術力”と“事業力“の違いと関係性を語ったメッセージ。
それらは、日本語を操る私たちに自信と信念を与えてくれる是非味わって欲しい。

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2019年01月04日

Posted by ブクログ

今から2週間前(2017.7上旬)に、初めて黒川伊保子女史によって書かれた本を読んだのですが、凄い衝撃を受けました。彼女の考え方を知りたく思い、二冊目の本を読みました。

今回の題材は、日本語という言語を、他の言語(具体的には、英語・中国語がメイン)と比較して、何が違うのか、および、言語脳を構成するのは子供のいつ頃までなのか、それを踏まえて、子供に与える言語教育はどのようにすべきか、まで論が展開されています。

黒川女史は人工知能の開発にかかわる仕事をしていると、最近読んだ本に書かれていましたが、それを研究する過程で「ついで」に研究した内容をまとめたのがこの本の様です。

日本語のどの言葉(具体的にはどの行、例:ア行、カ行等)には、どのような気持ちが込められているのかが解説されています。これはある感情を言葉にするときに、その言葉が相手にどのような影響を与えるかを考えるうえで役に立つと思いました。あまり後悔をしたくない性格ですが、この本に書かれている内容をもっと若いときに知っておけば。。という思いを強めた本でした。

以下は気になったポイントです。

・人生最初に出会った言葉と、後に習った外国語とでは、脳内で言葉に関連付けられた感性情報の量が圧倒的に違う(p11)

・まぶしい朝を迎えることの多い日本人は、朝にアサAsaという言葉を与えた。喉も口も開けるAに、舌の上に息をすべらせて口元に風を作るSの組み合わせ、まさに爽やかな解放感の言葉である。オハヨウも、ハの開放感が目立つ、弾むような挨拶語である(p12)

・その国の風土と人々の意識とによって、長く培われてきた言葉が、母国語である(p14)

・日本と英国は、言語の構文、狩猟民族か農耕民族か、宗教、風土等の違いを超えて、母国語のありようという点で、似ている。前者は神の住む国で、後者は妖精の住む国。どちらも、ファンタジーを作られたら超一流。男の美学を、言葉ではなくスタイルで提唱するのは、この二つの国の男たちの特徴かもしれない(p16)

・日本人が欧州由来の、ピ・ヴィなどの音を使い始めて400年余になるが、いまだに欧州由来の、F音・V音が日本人の本名に使われることは殆どない。言葉の音が民族に根付くのには時間がかかる(p17)

・アメリカ英語は、様々な骨格の人々が発音しやすいように、イギリス英語に比べて子音が軽やか、ノリもよく外国人にも覚えやすい(p20)

・全ての子音を母音とともに発音し、母音の響きでニュアンスを伝えあう日本人は、直後の母音が微調整しにくい破裂音、強い摩擦音が苦手。これらの音は、息を強く使わなければ出せない、直後の母音の音響をやわらかく制動できないこれらの音を、日本人は乱暴で下品な音だと思っている、しかし砂漠・土挨の舞い上がる大地では、口をあまり開けずに強い音を出せるこれらの音は重宝される(p23)

・現在、日本語と同じように母音を主体に音声認識をする言語として確認されているのは、ポリネシア語族(ハワイ語もこの仲間)のみである(p30)

・欧米、アジア各国の言語においては、すべて子音を主体に音声認識をしている、脳において母音は、ことばの音として認識されておらず、右脳のノイズ処理領域で「聞き流して」いる。話者の音声を、母音で聞く人類と、子音で聞く人類とに二分される。日本語は圧倒的に少数派の方式の言語(p31)

・風土や、そこに住む人々の骨格から生み出された土着の言葉でない言葉を使うのは危険であると、強く感じている。風土と乖離した言語を使うということは、母国語を捨てるということ(p33)


・英語交じりの日本語で育てられた子供の母語は、ゆがんだ言語モデルを手に入れる。ただし、外国で育った場合や、両親の母語が異なる場合は違う。(p36)

・脳に母語の機能が定着する12歳を越えたら、何語でも何か国語でも、好きなだけ勉強ができる。大人たちが英語を公用語にすることは問題にならない。問題は、そういう制度にすると、若い母親達の気持ちがはやって、子供たちの日本語習得の環境が脅かされるところにある(p39)

・ヒトは3歳までに、母親と肌を合わせ、呼吸を合わせ、笑ったりすることで言語の基礎を獲得するとともに、外界認識の基礎、コミュニケーションの基礎を作り上げる。母語形成の道のりで、人になっていく(p44)

・子供の母語形成を豊かなものにしたかったら、この時期、夫(子供の父親)は、子供のことより、むしろ妻の精神状態に注意を払わなければならない(p45)

・日本人は、主題にあたる句の後には、ア段の助詞を添える。これからこの話をするから、まっさらな気持ちでありのままに受け入れてね、という暗黙の了解を求めている(p48)

・さくら、は、息を舌の上にすべらせ、口元に風を作り出すSa、何かが一点で止まったイメージのKu、花びらのように舌をひるがえるRa、で構成された語である。つまり、語感的には、風に散る瞬間の花の象(しょう)を表す名称である。なので、日本人は、散り際を最も愛する(p51)

・母親の視線は、散る花びらを追っていて、豊満な枝ぶりのCherry Blossomsを凝視していない。娘は母親の視線を追うので、ことばの象と合っていない花の風景を見ることになる。母親の母語でないことばを、子供の母語に採択するのには相当の覚悟が必要であると主張する理由である。母親の母語出ない言葉で子供を育てると、ときに、言葉の語感と母親の意識がずれる。つまり、言葉の語感と、母親の所作や情景がずれる。子供の脳は混乱して感性のモデル(仕組み)を作り損ねる(p52)

・言語脳が完成する8歳までは、パブリック(公共)で使う言葉と、ドメスティック(家庭)で使う言葉は、同じ言語であることが望ましい。理由として、母語獲得の最終段階は、言葉の社会性を身につけることだから。母語獲得の臨界期は8歳であり、それまでに仕上げておかないと、未完成な母語で生きていくことになるから(p56)

・子供の脳のうちは、2つ以上の言語モデルを詰め込むと、母語の仕組みが壊されてしまう。子供脳が大人の脳に変容するのは12歳、特に、科学・設計・デザイン・芸術のよな分野で子供にクリエイティブな才能を発揮させようと思ったら、12歳までは脳を1つの言語モデルに閉じておく必要がある。オペレーション能力やコミュニケーション能力で生きていくなら、言語脳完成期を過ぎた8歳ころから始めても構わない(p63、64)

・ヒトは、耳ができて聴覚機能が揃ってから言葉を獲得し始めるのではない、体感で受け取る言葉には、聴覚は要らない。赤ちゃんは、母親の体感と意識に共鳴するので、言葉の意味だけを取り繕ってもダメ。喜びの言葉は、母親の湧き上がるような喜びと共にでなければ意味がない(p65、67)

・4歳から7歳までは、ことば・所作・意識の連携を学ぶとき。特に、所作の基礎が出来上がるときなので、様々な分野の洗練された所作を、子供の目の前で見せてあげたい(p71)

・9歳から11歳までの3年間は、感性と論理をつなげ、豊かな発想と戦略を生み出す脳に仕上げていく、いわば子供の脳の完熟期になる。この3年間に脳が獲得する機能は、コンピュータのOSのようなもの、これに比べたら12歳以降に手に入れる知識は、データファイルにすぎない。つなり脳の性能を決める大事な3年間である(p73)

・東洋の舞と、西洋のダンスとの違いは、自分が世界の中心にいる感覚(西洋)と、世界に対して自分を位置づける感覚(東洋)である(p82)

・フランス語は、比較的「拍」の概念がわかる言語なので、日本について成田でのアナウンスを聞いて機関銃の連打のように聞こえたのだろう。拍の概念を持たない英語人は、拍を認識してくれない。「さくら」と聞いても、三拍には聞こえず、勝手に、Sack・lerの二つの音韻の組み合わせに聞いている(p110)

・外国にいってしばらくすると、不思議とその国の言葉が聞き取れるようになる、それは、会話のリズムの規則性を脳が覚えて、その国の音韻単位で、相手の音声を認識できるようになるから(p111)

・大きなものに意識で共鳴するとき、「おー」は、最もしっくりする発音体感である。これに対して、退く意識が生じたとき、すなわり客観性・揶揄の意識が混じると、退く発音体感をもつ「へえー」となる(p127)

・中国由来の音読みの熟語の中には、ときとして、発音体感がずれているものがある。美女(中国語:meinu)の語感には、透明感やすっきりとした感じはなく、ぬれた思いイメージがある(p128)

・擬態語、擬音語において、Kには硬い固体感(カラカラ、カンカン、カチカチ、キラキラ、キリキリ、クルクル、ケラケラ、コロコロ、キッパリ)、Sには空気を孕んですべる感じ(サラサラ、シットリ、スベスベ、スルスル、ソロソロ)が、Tには粘性のある液体のイメージがある。これらは発音体感によって生じたもの(p131、133、139)

・Y音は、母音イから他の母音への変化で発生する、二重母音ともいうべき特殊な子音である。母音イからアへの変化「イア」で発音しているのが「ヤ」、母音イからウへの変化で発音するのが「ユ」、同じくオへの変化で発音するのが「ヨ」である、揺らぎの様相を表す(p134)

・H音は、気管をこする息の大戸、一度に排出される息の量が多いので、体温を感じさせる発音体感である。人間性のある安心感の音である(p135)

・二重母音型の子音として「W」がある、ウからアへの変化で発音する「ワ」と、ウからオへの変化で発音する「ヲ」だけ、整然とした動きを攪乱・膨張する役割をする(p137)

・Kには、硬く、強く、乾いた感じ、丸い感じが含まれている。Sには、爽やかさ、すべる感じ、適度な湿度感、切なさ、寂しさ、嫉妬、しめやかさ、不安感、Tには、粘性、充実感、確かさ、を表現する(p138-140)

・喉で息を溜めて発射させるのが、KとG、舌に息を孕ませてはじき出すのが、TとD、唇の破裂音が、PとB、息を喉壁でこするとH、上あごに滑らせて歯茎でこすると、SやZになる。Rは、巻き上げる舌で息を邪魔する。鼻腔側に息の力を抜いてしまうのが、MとN(p146)

・言葉の音のうち、子音が質感を、母音が三次元イメージ(動きを伴う空間イメージ)を作り出して、ことば全体のイメージが出来上がっている(p147)

・開放する「あ」尖る「い」内包する「う」おもねる「え」包み込む「お」、Kは「きっぱり」、Sは「爽やか」、Nは「親密、粘る」(p150)

・あいづちを打つときも、母音と一緒に言ってあげると相手は親密さを感じる(p160)

・英国人は母音を省かれても意味を解釈するには支障がない、母音には音響効果があるので省くと、ボリュームが上がらず、静かな場所でしか通じない(p166)

・心やすらかな語感のことば(親密な大和言葉)をどれだけたくさん交わしたかに、感性上の意味がある(p170)

2017年7月23日作成

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2017年07月23日

Posted by ブクログ

おもしろいけれど、納得があまり行かないところが随所ある。というか、根拠不足に思える。…と思いつつ、最後のあとがきまで読んで、作者の持つ性格のギャップがおもしろかった。うん、この人、おもしろい。この本をかわぎりに、もっとこのテーマを誰か掘り下げてはくれないかしらん。

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2013年12月10日

Posted by ブクログ

 大学の講義で,日本語に関する小論文の執筆を求められたので手に取った一冊であるが,200項足らずのコンパクトさで,しかも文面がまるでエッセイのように綴られているので,非常に読みやすい書物であった.
 タイトルは『日本語はなぜ美しいのか』となっているが,本書の内容は,早期英語教育への批判(本書の発行は2007年)を切っ掛けとして,脳とことばの関係に着目しながら,日本語とその美しさについて論ずるというものである.
 経済的要請とグローバリズムの観点から,我が国で早期英語教育どころか英語の第2公用語化まで,狂ったように叫ばれ始めて既に久しいが,本書はこの際,ほとんど無視されているといって良いような問題を多く取り扱いながら,こういった流れに対して批判を展開していく.
 多少,展開が強引に感じられる箇所もあるが,筆者の主張には共感するところも多く,面白く読むことができた.特に,本書で披歴される,ことばを軸とした世界観と文明論は非常に興味深いものであった.
 英語(外国語)教育に関心のある読者はもちろん,TOEICや英検などに執心することばかり教えられてきた若年層の読者にとっても,本書は一読の価値がある書物である.

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2013年11月03日

Posted by ブクログ

母語についての考察に納得
子育て中のお母さん(養育するまわりの方)が
機嫌良く快の状態で、お子さんの脳に日本語はを惜しみなく注いであげること。三歳児神話のホントの意味。
思いがけずふれることができた記述に、感謝→嬉しくなりました。

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2012年06月21日

Posted by ブクログ

フォトリーディング&高速リーディング。日本文化についてのシントピックリーディング。フォトリーディングで面白いと感じた。日本語が好きになる本。

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2011年02月16日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
「発音体感」つまり言葉の語感の大切さに着目した画期的な日本語論である。
日本語はなぜ美しいのか。
実は、母音を主体に音声認識する言語は、世界的にみても日本語とポリネシア語のみであり、その他の欧米及びアジア諸語は、すべて子音主体で音声を認識している。
日本語は希有な言語なのである。
本書は、この日本語の特殊性をふまえて、情緒の形成という観点から、ある個体の脳が最初に獲得する言語である母語の重要性と早期英語教育の危険性を説き、風土と言語の関わりから言葉の本質に迫っていく。

[ 目次 ]
第1章 母語と母国語
第2章 日本語の危機
第3章 母語形成と母語喪失
第4章 脳とことば
第5章 母語と世界観
第6章 ことばの本質とは何か
第7章 ことばの美しさとは何か
第8章 ことばと意識

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2014年10月26日

Posted by ブクログ

タイトル通りに日本語を賛美するようなものではなく、
日本語とそれを母語とする話者の表現力との結びつきを重視し、
昨今の児童の英語教育に警鐘を鳴らすもの。だと思います。

日本語だから、日本人だから見えるものがきっとある。
日本語って良いなぁと改めて思える一冊です。

後半はちょっと難しいですが。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

日本語の美しさについて、音という点から論を展開しています。音とイメージの違いから「おはよう」と「God morning」の違いを論じるなど、とても面白く読める本だと思います。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

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誰に母国語を奪われたわけでもないのに、自ら母国語を捨てようとする国。26
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日本人にも、見えなくなってしまったのだろうか。あの、日本語の語感が作り出す、豊かな情感の世界……意味を突きつけ合う合理的な会話の裏で、語感によって交わしている、意識の対話があることを。33
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優劣をうやむやにして、気配で譲り合って暮らしていけるのは、日本人だからだ。傍流といわれても、あえて反論せずに、こつこつと組織に貢献し続ける美学がわかるのは、日本人だからだ。38
――――――――――――――――――――――――――――――○
何より怖いのは、「その風土で培われなかった言語」を使う民族になることだ。風土と言語が乖離することは、風土と人々の意識のありようが乖離するということに他ならない。日本列島に生きて、国語として英語をしゃべる民族となってしまったら、日本人はほどなく自然と対峙するようになる。常に何かと戦い続けなければ生きていけない民族になってしまう。そうなれば、何かの宗教にすがるようになるはずである。34
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2012年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最近、大人な恋愛小説を読むようになったからか、日本語はきれいだなあ、と思うようになった。(そして韓国語はかわいい。)

日本語は世界でも珍しいほうの部類に入るらしい。
母音を主体とする言語で、日本語の他にはポリネシア語くらいしか確認されていない。他は全部子音主体。
例を挙げると、Christmasを、「ク-リ-ス-マ-ス」と5音で認識する日本人に対し、アメリカ人は「Christ-mas」と2音節で認識するということ。
そりゃー日本人は英語苦手だわ、と自分をフォローしつつ、、でもやらないわけにはいかんのよー

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2011年09月21日

Posted by ブクログ

こういうタイトルの本は好きではないのだが、お勧めされたので読んでみた。

少し、というかかなり主観的なところがあるが、なかなか面白い。
日本語の独創性を語ってどうなるのか、とも思うが、ひらがなに隠された語感についてのくだりは読む価値あり。

新しい分野を切り開いたというところは評価すべき。
これからこの分野の研究が進めば、子供の名前の付け方とかかわるんだろ~なぁ。

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2010年08月03日

Posted by ブクログ

ここまで理論化しておきながら、なぜもっと体系だてて深めないのか、単純な日本語論ではなく、もっと違った視点で日本語と他国の関係のありようを論じられたのではないかと残念に思った。トンデモ学説とは一線を画しているはずの知見も深められなければただの思いつきである。

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2010年06月02日

Posted by ブクログ

就活で追い詰められてるので、なんか軽い本を読みたいと思って購入。
世界史に対する言及はほぼこじつけ。
脳科学とか眉唾物だが、読み物としては面白い。

日本語は素晴らしい。
早期の外国語教育は危険。

これにつきますな。

個人的には英語偏重教育もどうかと思うがね。
何カ国語かから選べるようにすればいいのに。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

テーマとか、研究分野に関しては面白いんだけど・・・
脳裏によぎる、「どこまで本当?」
脳科学がどこまですごいのか、半信半疑になる書き方。

あと、息子さんの話とか、妊婦の話とか、余計だと思う。
イラッとくるので、あまり最後まで読む気になれませんでした。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

著者に会う前に読んでおかないとということで。
洞察力・観察力・多岐にわたる知識と、んーこんな女性には憧れます。って、本のレビューじゃないけどw

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

著者の自身たっぷりの「言い切り」が気持ちいい。少々こじつけな感もあるが、それでも納得できることが多い。日本語を大事にしたい。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

日本語の単語というより、日本語の成り立ちや発音、そして日本語のみならず日本人としての教育のあり方(「こうあるべき」というより、「こうした方がいいのでは」という、強制型ではなく提案型)について述べられている本です。
僕としては、もう少し日本語の単語に対する美しさについて述べられても良かったな、と思います。が、あまりやりすぎると自己陶酔の極地に陥ってしまう可能性がありますので、それはほどほどの方が良いでしょう(笑)

大学進学以降、様々な国籍の方と話をしたり活動したりしていましたが、やはり皆さん一様にして、「日本語は本当に美しい」と仰ってくださいます。と同時に、「一番日本語が難しい」とも……。。。
それもそのはず。この本を読んで改めて認識したのが、欧米諸国を始めとする各国の言語(特にインド・ヨーロッパ祖語系)は、子音を強調する言語であるため、母音を強調する数少ない言語である日本語は不慣れである、ということ。
加えて、様々な言い回しや活用法も複雑に存在するのが、日本語に対する難解なイメージを持たせているのでしょう。
でも、だからこそその難解の中に潜んでいる音の『心地よさ』、むしろ『雅な心』が、諸外国の方々の琴線に触れているのかもしれません。大脳皮質に蓄積された、言葉を自在に操る前の、原始動物の名残である『自然を感受する力』が、そうさせているのでしょうか?

ただ、この本はどちらかというと「女性の視点で」且つ「子育てを機軸として」述べられているため、男性で、且つまだ家庭を持つ身でない人にとって見れば、捉え難い内容に感じます。日本語を母語として幼児期に取り入れるべきと論じる以上、そういった視点と機軸は必要不可欠ですが、もう少し、老若男女幅広い視点で述べられたほうが、色々な人に『日本語の美しさ』を感じてもらうことができたかもしれません。

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2009年10月04日

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