感情タグBEST3
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それぞれの立場での苦しみや葛藤が描かれていて、徐々に明かされていく過去を知るたびに胸が締め付けられる。
自分から見えるもの全てが正しいわけではなくて、むしろ相手の全てを共有することができないからこそ、理解しようとしなければ関係は拗れたまま。
雅雪と俊夫、俊夫と親方、舞子と郁也、過去の孤独や辛さが絡み合って起きてしまった事件で、誰が悪いともいえずやりきれなさもあり悲しい。
そんな事件の末に償いとして関わるようになった遼平との日々は、舞子が気づいてくれた雅雪の幼い頃の孤独をやり直すようで心温まる。雅雪の立場を知った遼平が、騙されたと感じ自分の気持ちを整理できず雅雪と向き合えなくなるのは当然だし葛藤する様子も凄く苦しい。それでも二人がまた向き合えるようになって本当によかった…
ラストに多くを語らずとも舞子と再開しご飯を食べれたところも、本当によかった、ここからまた生きてほしいと強く願えた結末だった。
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圧倒的な孤独。こんな描き方があったのか。
結末が全くわからない段階でもう喉がヒクつくくらい胸が締め付けられる。家だったら絶対泣いてた(病院待合室で読んでた)
どうか神様、と願うように最後まで読んだ。
はじめの方は何があったかも語られず、ちょっとイライラしたがちょっと我慢して良かった。傑作だった。
ドライブインまほろばでこの作者ただものではない!と勝手に目をつけてたのが間違いでなかったと証明された気分
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全体を通してかなり重い雰囲気の物語でしたが、最後は希望の見える終わり方で少し救われました。親にきちんと愛されることの大切さ、罪を償うとはどういうことかを教えられた気がします。個人的には、原田さんの優しさが胸に沁みました。雅雪の想いが遼平に伝わって良かったなと思います。
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登場人物達の感情が濃ゆい! そしてどこか壊れた人間ばかり。雅雪の祖父がそもそもの、この悲劇の引き金のような気がする。この壊れた祖父さえいなければ、雅雪の父もああはならなかったし、舞子の家族に深入りすることもなかった(そもそも雅雪も庭師になってなかったかもしれない)はず。何とも気色の悪い人物。それと文枝! なんじゃこのババアは。腹が立つ。しかし、最後は希望を持たせる終わり方で良かった良かった。
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孤独な若い庭師・雅雪は、ある事件の贖罪のため少年・遼平の面倒を見続けていた。しかし、雅雪が隠してきた過去に気づいた遼平は、彼を怨むようになるが…。愛と憎しみの連鎖の果てに、人間の再生を描く衝撃作。
電車内で読み終えたこの作品、涙を堪えるのに必死だった。怒涛のように込み上げてくる感情の根本にあるのは、恐らく人間として如何に生きるべきかという問いかけだろう。愚直過ぎる雅雪の全ての辛苦が報われた時、私の心の中にあった憑き物も取れたような気がした。
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贖罪の理由がわかるまで、まるで東海テレビ制作の昼帯ドラマを見ているような熾烈な仕打ちになんとか救われますようにと願わずにはいられず、ページを繰る手が止められませんでした。終盤の展開は胸に迫るものがあります。本の厚さにびびりますが読まないと損ですよ
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重たすぎる話だし、悲しい。でも読んでよかったなと思わされる。家族に愛されたいと願いながら、家族だからこそ難しく、鬱屈した感情があるからこそ、他人をも巻き込んで悲劇を生んでしまっている。それでもラストには救いがあった。
受けた仕打ちに、許せない気持ちになるのも理解できるけれど、私は人を許して生きよう。そんな気持ちになった。
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初めて読む作家の作品でしたので、その厚さに少し身構えてしまいましたが、あっという間に世界に引きずり込まれました。
重苦しい話です。
主人公の雅雪は、血のつながりのない中学生の少年の保護者のような存在だ。
実際にはその少年・遼平は祖母と住んでいるわけだし、なぜ反抗期で手に負えない他人の子の面倒を見るのか。
それも、なじられても何をされても、黙って受け入れるだけだ。
そこに心の交流はあるのだろうか、と、読んでいて不思議だった。
徐々に明らかになる二人の背景。
どうも遼平は何かの事件の被害者で、雅雪は加害者側の人間らしい。
雅雪が遼平をかばうほど、遼平は雅雪に反発していく。
でもそれって、「本気でかまって」っていう遼平の叫びなんじゃないの?
雅雪の家には祖父と父がいる。
女たらしの祖父と父は、雅雪のことを可愛がってはくれなかった。
家族の愛情を知らずに育った雅雪が、家族を失った少年の面倒を見る。
その歪な関係がなぜ始まったのか。
親の愛情を知らない雅雪、親のいない遼平の他に、過剰に親から期待をかけられた郁也と、親から無視され続けた舞子。
そしてもう一人、親の愛情を欲して欲して、でもついに与えられることのなかった男がもう一人。
事件の真相が明らかになるにつれ、雅雪の贖罪は自己満足なのではないかと思えてくる。
事件は決して雅雪のせいで起こったものではない。
何なら、雅雪も被害者だったと言っていい。
それでも、甘やかせるだけ遼平を甘やかせる雅雪の行為は、誰のためにもなってはいないではないか。
雅雪が初めて遼平に向き合って本音を語った時、本当の気持ちがわかった時、誰が雅雪の行為を自己満足と糾弾することができるだろう。
”おまえの面倒を見るのは嬉しくて面白かった。おまえのおかげで、俺はずっと幸せだった。”
”俺は自分が子供時代に経験できなかったことを、おまえの世話をすることで経験できた。おまえのおかげで、俺は子ども時代をやり直すことができた”
雅雪も、遼平も、郁也も、舞子も、そうして彼も哀しい子どもだった。
けれど雅雪は遼平を育てることで自分を育て直し、遼平は雅雪に育てられてここまで大きくなった。
それは互いにとって幸せでもあり、苦しいことだった。
そしてこの先、雅雪は自分の幸せをつかみ、遼平は雅雪を故郷として世界に踏み出していくのだろう。
後半の怒涛の展開に涙ぐみながら読んでいたけど、最後の一行でもう駄目だった。
涙があふれて止まらなかった。
”はじめて人前で泣いた。犬でよかった、阿呆でよかった、と思った。”
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庭師の雅雪が隠している過去が何なのか、遼平との関係は何なんだ。ずっとドキドキしながら読み進んでいった。二人が話をするようになるエンディングもよかった。
最初に読んでから3年経ってまた読んだ。歪な人間関係が起こした事件は偶然ではなかったのかもしれない。贖罪ではないし、懺悔でもない、雅雪の一途な想いに揺さぶられた。遼平の未来も応援したい。
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たらしの家系って…
どんな家系やねん!
多少、羨ましくもないではないけど^^;
努力せんと、家系だけでモテるのなら!笑
主人公の周り、ココロが壊れてる人ばっかり…自身も含めて。
おじいちゃんなんか、情が分からんって、サイコパスか?
ある殺人事件(無理心中)が原因で、自身を含め、周りの皆んな崩れていく…
しかし、凄い空回りというか、12年もの償いは、何やったんやろ…
自身が起こしたというより、自身も傷を負った1人とも言えるのに。
自己解釈やけど、償いやないんやろうな。自分の居場所というか、そういうのを求めてやってた気がする。
事件とか起こす前に防ぐとしたら、あのおじいちゃんを覚醒させんとあかんのやろな。この人が、トリガーになって色んな人の人生が台無しやもん。
寺で修行するとかして治らんのかな。本人はする気ないけど、周りが何とかしてやらせるしかないんやろうけど…
光が見えたような終わり方で少し安心やけど、これを起こしたのは、凄い空回りのお陰かも?
そういう意味やと理由はともあれ、やった事は正解やったんかな。
自分がこんな環境で育ったら、どうなってるか…
…キツい…_| ̄|○
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『緑陰深きところ』が良かったので他の作品を読んでみたくなった。
読み始めて、『緑陰深きところ』と構成が同じでがっかりして、テンプレかと思った。
でも読み始めたからには読み切ろうと思い直してページを捲る。すると、1/3くらいから面白くなって、結果的に一気読みしてしまった。
内容はかなり突飛というか、なかなか居ない立場の登場人物ばかりに思えたけど、殺人事件や事故や自殺は頻繁に起こるのだから、私の周りで起こっていないだけで世の中には作品の中のようなことが多々起こっているのかもしれない。悲しいことだけど。
認めることと頼ることはとても大事だと改めて思う。
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久しぶりの遠田潤子だけど、変わらぬドロドロだな。北上次郎さんが1/24に亡くなりました。本作も北上次郎氏が解説を書いていて、それが信頼の証です。3.8
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通称たらしの家。
祖父と父が日々、代わる代わる女を連れ込む。
そんな家庭で育った主人公。
造園業を営む家系だが、祖父は親方として、父は上司として。仕事以外での会話はない。
ネグレクトの祖父、ネグレクトの父の元で育つ。
二十歳の頃から13年間、両親のいない男の子の面倒を見続ける。その男の子の祖母から屈辱的な日々を送る日々。
その裏にある贖罪。
登場人物は少ないが、それぞれが際立ち、構成も含め熱量が尋常ではない。
始まりから中盤までは、主人公の過去はまだ語られず、中盤からの展開が怒涛だ。
絶望した時に出る人間性、贖罪という詭弁、親切という偽善。善人が必ずしも正しいわけではない。
物語の中で語られる言葉の数々が苦しい。
子供の頃から食事はいつも一人勉強机で。
食べ終わった食器が吸い終えた煙草の灰皿代わり。
ある時に出会った女の子に「あなたは壊れてる」と。
何が悪いのかが分からない。教えられていないから分からない。分からないことが分からない。
仕事上では、礼儀正しく、また非常に勉強熱心だが、常識というあやふやだが社会生活上必要なことが分からない。
悪人と呼べる悪人は登場しないのだが、愛憎ゆえに、たった一つのボタンの掛け違いゆえに、壊れてゆく様は儚い。
主人公の設定が造園という生業が効いてくる。
物語の最後の最後まで気が抜けない一冊でした。
初めて読む作家でしたが、その他の作品も読んでみたい非常に興味深い作品でした。
分かるけど…
雅雪の気持ちは分かるけど、ちょっとそこまでするのは逆になぁ。許せないと言うのは娘夫婦が亡くなったことに対してじゃなくて雅雪のそこまでの態度に対してじゃないのかなぁ。
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しんどい本だった。描かれる登場人物ほとんどの人の人生が不遇すぎる…。それなのに誠実であろうとして、必死で、なのに幸せになれないっていう状況。終始息苦しいのに、気になって読むのを止められない、すごいしんどい本だった。幸せに一歩踏み出せそうなラストで本当によかった。
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ずっと読みたかった本。
少しずつ語られ明らかになる過去はあまりにも重苦しく、それでも続きが気になり手が止まらない。
何故?何故そこまでして?と、全てを知りたくなる中毒性も含む、愛を知らない男が人生をかけた壮絶な物語だった。
絶対的な安心感や安らぎを幼少期から与えられないまま成長し、一般的な常識を知らず、他人との関わり方も知らず、独りで生きてきた男が彼女と出会って惹かれ、「人間にしてもらった」。
初めて自分を見てくれた。
初めて関心を持ってもらえた。
そんな温かい目を向けてもらった事がなかった。
疎まれ、蔑まれ、好奇の目にさらされながらの13年という年月はあまりにも長い時間であったが、身代わりの贖罪というだけでなく、共に過ごす中で自分をもまた育て直す事が出来た貴重な時間だったのだろう。
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本のタイトルから想像する情景をわざと裏切るかのように、最初のページを読み始めると、そこには夏がある。
祖父が経営する曽我造園の庭師として働く曽我雅雪は、どうやら7月7日に何かがあるらしい。
ーあと何年。あと何日。
その日を指折り数えるかのように繰り返される雅雪の心の声のつぶやき。彼が心待ちにしているのか、話が随分進んでも分からない。それが彼にとって一体どのような存在であるのか、知らないのは読者であるわたしと、赤ん坊のときに両親を亡くして祖母と二人暮らしの遼平だけだ。
遼平はずっと雅雪に面倒をみてもらっている。それなのに、なぜか雅雪を激しく憎んでいる。遼平の両親の死に雅雪が関係しているようなのだが、雅雪が加害者というわけでもないようだ。全身を覆う火傷の痕は、そのことに関係しているのだろうか。
今、かろうじてわたしに見えるのは朧げなシルエットだけ。この向こう側に何が潜んでいるのか分からない。苦し気な息遣いはさっきからずっと耳に届いてこの胸を締めつけるが、もしかしたらそれは見るに堪えないものなのか。
すべての登場人物がでてきたあとに、やっと真実がわたしと遼平にもあきらかになる。そして、ここでようやく細木老人が言っていたことや、原田が雅雪をあんな風に責めるようなことを言ったのかが理解できるのだ。
こんな生き方って、あるのだろうか。
自分の人生を自分の思うように生きられない。
そんな雅雪にわたしは何度も苛々し、心無い言葉を投げつけてしまう遼平に対して腹を立て、数々の人たちを軽蔑しながら読んだ。
自分が苦しみの真っ只中にいるときは、他人の辛さなんて想像しようとしない。でも世の中の大抵の人が、自身の痛みを抱えながら生きているということを忘れないようにしたいと思う。
日本庭園の美しさに想いを馳せた。
壮絶過ぎるラストに圧倒された。
最後の一行まで読み終わった後、脳がジーンと痺れて息が詰まった。
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前半は、ただひたすらに耐える男雅雪の過去が分からず、重苦しい不安を抱えながら読み進める。
すぐに自分を悪者にして、謝ることで物事を対処する雅雪にもやもやするが、そんな雅雪に優しくも厳しい言葉をくれる人が周りにいてくれるのが救いだ。
過去の出来事が語られ始めてからは、物語が動き始め、どんどん引き込まれていく。
個人的には、簡単に感想がまとめられない、色々な思いが胸の中に溢れる作品だった。
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人は誰かに認められたいと思いながら生きている。
構成に圧巻。
遼平は素敵な大人になるだろうな。
舞子の「なにもかもこれからやから」に頑張れと願った。
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いったい何がそうさせるのか。
誰の何をどこまでどう償おうというのか。
一生懸命な姿というのは、時に周りをいらだたせる。
鬱陶しい押し付けがましいといわれても、逆なでしても、自らが傷ついてもやめないやめられない雅雪。
事件だけではない、また彼だけでもない、それぞれの心に蓄積されてきたものが少しずつ明らかになってゆく。
全容がわかったあとには、疾走感のあるシーンがラストへと導く。
親方にだって何かがあったのかもしれないな。
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初めて遠田さんの作品を読みました。
読書は、通勤電車、昼休みだけと決めているが、仕事中まで雅雪のことがチラついて、続きが気になって仕方なかった。
雅雪は何をしてしまったのか?なぜ遼平の親が関わっているのか最後まで分からず、一気に読み切ってしまった。
遠田さんの作品に出会い、これからたくさん読めることが嬉しくてなりません。
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贖罪、愛憎、光。
13年前に何があったのか?
なぜ主人公はそこまでしなければいけなかったのか?
気になって一気読み。
自己満足の押し付けの償いであれ、
遼平がその中でもちゃんと愛を感じ取ることが出来たのなら間違っていなかったんだろう。
やるせないし、もどかしく思うけど最後まで読み切れて良かった。
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俺は完璧な乳房を想像した。この女は全身が乳房だ。なめらかで、まろやかな乳房そのものだ。きっと中には甘い乳が満ちている。
どんなやねん。。。ちょっとついていけなかった。
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物語は、事の真相が全くわからないまま、半ば以上まで進む。主人公はひどく屈折した愚直な男性で、終始イライラさせられっぱなし。もう読み進めるのを止めようか?と思ったあたりで、急速に一つ一つが明らかになってゆく。その引っ張り加減が絶妙で、結局最後まで読まされてしまった。
正直、人に薦めたくなる作品ではないし、誰にも共感できない。だが、棘のように刺さる。妙に忘れ難い。
煩悶、懊悩する人々に、自身が重なるようになり、まるでロシア文学を読んでいるように感じた。
人間とは、文学でどこまで深く潜っていけるのか?作者の挑戦心のようなものを感じた。
心に余裕があるときに一読を。
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肉親からの愛情を知らずに育った中年の庭師が、過去にとらわれ苦しみながらも未来に進もうとする姿を描く。
血のつながりのない中学生の男の子を、憎まれながらも自分の子のように慈しむのはなぜなのか。序盤から一貫して陰鬱で、さらに過去の事件が明らかになるにつれ、その救いようのない辛さは増すばかり。
自己満足の押しつけは相手にとってマイナスにしかならないのに、それがいちばんいいと信じて突き進む。特異な生育歴を思うと仕方ないのかもしれないが、同情こそすれ主人公の生き方はやはり理解できない。
というよりも、現実で緊急事態宣言が出され鬱々とした日々が続いているため、これでもかと矢継ぎ早に苦しみばかりが襲ってくる作品を受け入れるだけの余地が、私の中にはないのかも。力量のある作家だとは思うけれど、心が拒んでいる感じで。
気分の沈みがちな今は、読みながら笑ったり、優しい気持ちになれるような、軽やかな作品が読みたい。
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『たらしの家』で育った雅雪。
両親のいない少年・遼平の面倒を見続ける日々。
遼平の祖母からは恨まれ、酷い仕打ちを受けるも
献身的に遼平の面倒を見る。
その裏に隠されているものは…
何が起きてるの?という感覚で
早く読み進めたくなる一冊。
終盤、雅雪が自覚していない感情も次々と出てきて
感動の最後となる。
構成がとても好き。楽しく読めました。
Posted by ブクログ
そんな家族だと他所からレッテルを貼られたら、そうでなくてもそんな気分になってしまいそう。ま、それだけ魅力的な人々なのかもしれないけれど、だらしがないとも言えるわけで。他人のためにここまでやれるかなぁ?