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ソ連をモチーフにしたツィルニトラ共和国連邦と、アメリカをモチーフにしたアーナック連合王国の宇宙開発競争をテーマにした作品。舞台は共産主義国家ぽい(あんまり唯物してないとかの差異はあるけど)が別にレフトノベルではない。時代は近現代だが、吸血鬼という人種を加え、仄かにファンタジーな香りが漂う。ボーイミーツガールとして普通に面白く、実験のモルモットたる吸血姫への葛藤がよく描かれている。スケートのシーンの通り抜けるような吸血姫の美しさ、夜空を衝くような美しさ、月軌道ランデブー方式の想像、いずれもバレエのような美しさとても好き。アメリカではなくソ連を選ぶことでオーロラの麗しさ、氷の湖、雪国など日本人のあまり詳しくない要素がたくさん出てきて、さらに妖しく甘美な吸血鬼という異種を加えたことで物語に神秘性が増している。
ライトノベルというガワを被ってはいるが、テーマは人類史上最も人の命の軽かった国のラブストーリー。しかも片方は人間以下の存在とされている。あらゆる人間に人間以下とされながら高潔さを一切失わないヒロインには尊敬すら覚える。好き。『愛しのあなたへ』はちゃんと英語歌詞でやってくれよ。
ライトノベルのガワを被っているが、描いている中身はレイシズム、東西冷戦、宇宙開発の暗部、キューバ危機など、ヘヴィノベルと言ってもよかろう。
作者は相当な宇宙好き。火星の衛星のフォボスとダイモス(『不安』と『恐怖』)は人工衛星なのではという話を持ってきた。50~60年代の有名な話でかのカール・セーガンも人工的要素を指摘していたらしい。
そして2巻の最後。あまりにも革命的。革命勢力に対する革命勢力として仕事を果たす。そしてそれがゲルギエフやリュミドラの想定通りなのも恐ろしい。二人は本当に月に行けるのか。
共和国編が終わり3巻からは連合王国編へ。
今度は共和国の「ライカ」ではなく、連合王国の「ライカ」でのストーリーになる。こちらは資料が多いせいか描写が丁寧。また、当時は新技術のcomputerの話や、人種差別(厳密には異種差別?)、男女差別の話など、知的流暢性の高いストーリーが繰り広げられる。
設定がとても深い。独特の諺や葬儀、食物など、世界が深まる。
っべーーーー! レイシズムやキューバ危機やら、一個人はどうしょうもなく無力になってしまうような問題に立ち向かうバートやカイエ、小心者のくせに豪胆で手に汗握る。本当に面白い。作者天才か? 天才か。
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久々にあらすじだけでときめいた小説。値下げもされていたのでその場で買って一気読みした。興奮した。
<1960年代の旧ソ連を舞台に、実験飛行で宇宙ロケットに乗せられる吸血鬼の少女と、飛行士候補生の少年が出会い訓練を供にする>という、抜群すぎるログライン! 読み終えても、ほとんど期待した通りの内容で、そうそうこういう感じ欲しいよね! みたいなのが素晴らしいシェフの献立のように用意されていた。二人がバディになるまでが早い分、訓練生としての日常パートは必要最小限かつちゃんと面白いものになっていて、ぐいぐいと最後まで読ませてくれた。ちゃんと資料をあたったであろう部分は特に出色だった。
逆に、ライトノベルだからなのかもだけれど、キャラクターの心情をかっこ悪いくらい明からさまに地の文に書いていたり、セリフが色々直接的すぎていたり、もうちょっと伏線が丁寧に出来るはずじゃないか、と思える場所がとにかくあって、「よしよし! ここからは大人の力でさらに直していけば完璧だね」みたいな……感じがあった。後半にあるどんでん返しもぜんぜんサプライズじゃないしな……。小説というより、超ー長いアニメ映画の初稿プロットのようだった。終わり方もロマンティックだけれど、盛り上がりには欠けていたと思うし、何より飛躍がまったくなかった。
しかしとにかく食材が一流なので、がっかりするというより充実感のほうがずっと上回るし、何なら自分ならさあどこを直そうか、みたいな建設的な頭の回転が始まるので、やっぱりこれはシンプルにいいアイデアの話だと思う。「ラノベでしょ?」って多少食ってかかれば、ちゃんと想定年齢の読者以上でも楽しめます。……どうしても『とある飛空士への追憶』がちらついたけれど。あっちは「小説」としてもパーへクトだったんだよな……(逆に言えば、あらすじだけならあの作品以来くらいの衝撃でした)。
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赤月ゆにが紹介していたので買って積んでいたのを読みました。
人間は愚か…。
宇宙系は読むのが初めてでしたが、人物描写多めで楽しく読めました。
ソ連、おそロシア。