【感想・ネタバレ】数学ガールの秘密ノート/やさしい統計のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 平均、偏差値という言葉について、日本人の多くはその数値が持つ意味を理解していると思います。特に平均についてはその意味は正確に理解しているはずです。一方偏差値については教育の現場で使われていたし、自分のテストに対して「国語のテストの偏差値は60でした。数学のテストの偏差値は65でした。」といったようにスコアリングされていたので馴染みがあるものだと思います。
 
 しかし偏差値がどのように算出されるか?については数学を基礎から学んだ人しか説明できないでしょう。

 (偏差値)
 偏差値=50+10×(Xk -μ)/σ
 ただし、平均点=μ, 標準偏差=σ, Xkは本人のテストの点数
 例えば 平均=60、標準偏差=5、Xk=70とすると、
 偏差値=50+10(70-60)/5 = 70
 となります。

 ここで標準偏差=σ(シグマ)という耳慣れない用語があります。これはどのように求められるかというと、
 (標準偏差)
 σ=√V
 ただし、Vは分散。分散の平方根(√)のうち負でないほうを標準偏差とする。

 ここでまた分散=Vという用語が新たに出てきてしまいました。

 (分散)
 V = ((X1-μ)^2 + (X2-μ)^2 + … +(Xn-μ)^2) / n
 ただし、平均点=μ, X1,X2,,,はそれぞれの生徒のテストの点数、nはテストをうけた生徒の総数
 
 分散の意味はそれぞれの生徒のテストの点数が平均とどれだけ乖離しているかをプラス、マイナス両方について考慮できるように各々の差の2乗をとって計算したものであり、今回行われたテストは平均値と比較してどれだけ乖離が大きいか、データの散らばりが大きいかを平均的に表したものになります。
乖離の状況は各々の乖離の状況について2乗した形となっているため、その平方根をとった値が実質的な乖離状況を表しておりそれを「標準偏差」としています。用語が表す意味としては「全部のデータを見たときに、標準(平均点)と比べてどのような偏りの状況にあるか?」と理解するとよいと思います。

 さて偏差値の定義に戻ってその値がとる意味について考えてみると、
 偏差値=50+10×(Xk -μ)/σ という式で表されますから、
 自分のテストの点数Xkが平均から離れていればいるほど、50という偏差値の中央値から乖離します。また分散が小さければ小さいほど自分のテストの点数は50という偏差値の中央値から乖離します。
 他の生徒のテストの点数が平均と比べてばらつきがないほうが自分のテストの点数のばらつきが際立って偏差値は50という中央値から外れていくことになります。

 さてこういった統計を考えるにあたって基礎的な用語について計算を通してしっかり理解した上で、コインを何度か投げた時に表、裏が出る確率について考えます。ここでとても面白い考え方が示されます。コインを投げた時に表が出る確率はいくつか?という大変基本的な問題です。コインの裏表に有意な差がなければ、その確率は50%です。しかし、その試行回数が少ないとき(1回)と多いとき(例えば100000回)で違いはあるのでしょうか?違いはありません。しかし期待値を使って導出する式を見ると、また違った意味が現れるのです。ここはぜひこの本を読んでその不思議に触れてほしい部分です。自分は読んでいてぞくぞくしました。

 導出までの説明は省略しますが、
E[Y] = p 
(Yは確率変数、Eは期待値、pはコインの表が出る確率)
V[Y] = p(1-p)/n
(nはコインを投げる回数)
√V[Y] = √p(1-p)/n

さて最後の式は分散の平方根ですから、標準偏差を表しています。nはコインを投げる回数です。分母が大きければ大きいほど標準偏差は小さくなるということが読み取れます。つまりコインを投げる回数が多ければ多いほど標準偏差が小さくなるということです。とても不思議であるとともに、コインを投げる回数が多くなるほどに表、裏が出る回数に偏りが小さくなるというのは経験的にも納得がいくものではないでしょうか。これは「大数の弱法則」と呼ばれるそうです。

 

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2021年10月31日

Posted by ブクログ

扱っている範囲はそれほど広くない。これでも文系には難しく感じる人もいると思う。文系の粘り弱さは想像を絶するから,このように工夫された本でも,落ちこぼれる人は消えない。そういう人は分からない原因を外に帰属するからタチが悪い。

***
グラフは《パッとわかる》けど,それこそ危険なところなんだ。わかった気になっちゃうからね。そのグラフが何を表しているのか,目盛りと軸は正しいか,隠れた条件は何か,別の描き方ができないか……それを考えないと大変なことになるんだよ (p.43-44)

物理的な性質や,社会的な現象に対して,数学が直接的な証明を与えることはない。数学はただ,数理モデルをどう扱うべきかを教えてくれるだけだ。私たちはコイン投げを扱っているようで,実はコイン投げを扱っているわけではない。私たちはコイン投げの数理モデルを扱っているのだ。コイン投げに限らない。何らかの現象を《確率pで起きることをn回繰り返した結果》のように数理モデル化して扱う。そして,前提条件を整え,数理モデル化された現象に対してなら,数学的にいえることはある (p.201)

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2019年06月30日

Posted by ブクログ

数学ガールの秘密ノートシリーズ第8弾。グラフのトリックや分散、偏差値についてわかりやすく説明されていて、さすがです。 後半は、二項定理や期待値、仮説検定など内容は難しくなりますが、話は面白いですよね。 ぜひ、学生に読んでほしいです。「統計」の基本書としてもお薦めではないでしょうか。

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2017年01月02日

Posted by ブクログ

これを読めば高校で学習する統計についてはかなり理解が深まる。(もちろん受験を考えれば別で問題演習等しなければならないが)解法の暗記ではなくなり、公式の意味がきちんとわかるようになる。
嫌でも標準偏差という言葉が頭に残るので、統計データを見るときに「平均」だけを見てしまうというやりがちな誤りはなくなると思う。
第5章はちょい難しかったかな。

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2021年08月28日

Posted by ブクログ

「秘密ノート」シリーズが自分のレベルにあってるけれど、後半になると難しくなってしまうこともある。今回は自分が最も使う分野なので気楽に読み通せた。

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2019年12月26日

Posted by ブクログ

数学ガールシリーズはどれを読んでも、面白く、興味深く、専門的で知的探求心を刺激してくれます。
今回は統計とはいえ、最近流行りの統計学の話ではなく、基礎となる『標準偏差』の意味や考え方、使い方に重点を置いているところが、やはり流石の一言。
平易な文章なので読むだけでも楽しい。もっと深く理解するために繰り返し読むのも苦にならない構成。問題を解いていけば実力も付く。本当に素晴らしいの一言。

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2018年04月07日

Posted by ブクログ

大学の統計の授業の前にこの本に出合っていればもっと楽しめたろうになぁと思った。
なんとなくしかわかってなかったけど分散、偏差値、仮設検定の式的な定義だけじゃなくそれらの意味もかみくだいて解説してくれていておもしろかった。

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2016年11月09日

Posted by ブクログ

統計は正直苦手でした。問題を解いたり本を読んで理解は出来るものの、本当のところはわかっていないような気がしていました。この本を読んで、少しその本当のところに近づけたような気がします。

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2016年11月07日

Posted by ブクログ

副題の通り、統計を対話形式でやさしく説明しています。本書を読む前は偏差値について、わかってはいたけどなんとなくモヤモヤしていたところがありましたが読み終わって、とてもクリアになりました。このシリーズはいつも良書です。

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2016年11月03日

Posted by ブクログ

数学ガールの統計についての本
数学ガールの中ではかなり簡単側
確か秘密のノートは割と知識なくても行けるのが多かった気がする。
ちょっと物足りない気もする。
おいてかれるのは寂しいけどそれを求めているのもある

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2020年07月28日

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