【感想・ネタバレ】あいだのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

木村は、精神科医であり、思想家でもある人で、その豊かな臨床経験と、哲学の概念をうまく調合して、独自の生命観を記述している。
この本は木村は、生命一般の根拠というものを記述している。以下は、自分の簡単なまとめ。

コモンセンスは日本語では「常識」って訳すけど、これだと成文化が可能な何らかの知識だと思ってしまう。例えば事務マニュアルに載ってる諸規則は、これに該当する。なら、事務マニュアルを全て暗記することによって、初めてその仕事のコモンセンスを習得することができ、仕事が円滑に進むのかと言うと、そうでもない。第一、そんなこと不可能。一方、コモンセンスを直訳するとい「共通感覚」。哲学者ヴィーゴはコモンセンスを、ある集団が共有する、成文化が難しい「世界との実践的・行為的な関わりの感覚」として考えた。知識ではなく、本能的な感覚。それは「頭」で習得するよりも「身体」で習得するようなもの。これさえ習得してしまえば、どんな状況でも、「正解」を導き出せる。ただ、こうしたコモンセンスは、座学の研修だけでは習得できない。その世界へ滑り込み、今までの「自己」を殺して、新たに自己を誕生させていくという、「転機(Krise)」の連続によって取得していく。

木村は、生命現象を、転機として捉える。全ての有機体は、外部環境の働きかけに対して、こうした転機を繰り返すことによって、世界と関わっていると言う。これまでの自分を殺して、新しい自分を誕生させる。いわば、「不連続の連続」。こうして、その都度、世界との実践的・行為的な関わり方を更新して、その世界での「自然さ」を身に付けていく。(ちなみに、分裂症患者は、こうした「自然さ」を喪失した人たち。始終、急激な「転機」が要請される現代社会の犠牲者である。)

0
2011年03月21日

「学術・語学」ランキング