【感想・ネタバレ】功利主義入門 ──はじめての倫理学のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

功利主義入門にふさわしい。実例を挙げながらわかりやすく功利主義の全体像や、ベンサム、ミルの思想に加え、リベラリズムとの関係性なども説明されており、スッキリとした内容になっている。

0
2022年03月06日

Posted by ブクログ

道徳科の勉強のために読みました。

今まではトロッコ問題とかについて話すと主観のぶつけ合いだったのですが、
理論的に倫理学について学ぶことで、
客観的な判断基準が出来ると思いました。

0
2021年07月31日

Posted by ブクログ

かなり面白い。が、考え得るケースが膨大にあり、思考を放棄したくなる。

功利主義では全ての人は一人としてカウントされる。首相だろうと身内だろうと一人であり重み付けされない。社会全体という俯瞰的な視点から個人を観測する、さながら最大利得を目指すマルチエージェントシミュレーションのようなもの。

功利主義の3つの特徴。1.帰結主義。こう行為するとこういうことが結果として起こるだろう、という事前の予測に基づいて行為の正しさを評価する。2.幸福主義。何かの役に立つという理由からではなく、それ自体に価値があることを内在的価値と呼ぶ。幸福主義によれば、この世界で内在的価値を持つものは幸福だけであり、それ以外は手段としての道具的価値を持つに過ぎない。3.総和最大化。各人を一人として数え、誰もそれ以上には数えない。

ーメモー
倫理学とは「倫理について批判的に考える」学問である。よりよく生きるために社会の常識やルールを考えなおすための技術である。ある党派的な諸原則を押し付けられるのではなく、批判的な思考能力を高め、自分で思考できるようにすることが、本書の狙い。

ー倫理の学び方ー
1つ目は守るべきルールを学び実践できるようになること。2つ目はルールについて疑問を発し、自分なりの答えを出せるようになること。

批判的に考えることの主目的は、ルールの根拠を確認することにある。みんなが従っているルールだから従うのではなく、確信をもって従うのだ。

倫理的相対主義・・・俺の中ではOK、あなたの中ではNG。人それぞれ規範が異なる。他人の倫理観についてとやかく批判すべきではないとの考え。
→倫理は相対的か?元をたどると共通のルールがあることがわかる。
→倫理的相対主義への批判。他人の倫理観についてとやかく批判すべきではないというのなら、その倫理観を他人に主張すべきでない。

動機は倫理における一番大切な事柄ではない。なぜなら人は善い動機から非倫理的な行為をすることもあるし、利己的な動機から倫理的な行為をすることもある。動機の善し悪しではなく、倫理的な行為がなされるかどうか。動機の問題ではなく、その行動に主眼がある。

人間は利己的だから倫理は無駄。
これに対する反論は2つある。1つは倫理は動機(利己/利他)によらないとの見方。利己的であっても倫理的/非倫理的な行動をとりうる。もう1つは人間は常に利己的ではないとの見方。利己と利他は対義的ではない。倫理/非倫理と利己/利他で見るといい。

ジェレミーベンタム・・・政治においても道徳においても、何をなすべきかを考える際に指針となるのは、功利性の原理において他にない。最大多数の最大幸福を指針として行為せよ。自然は人間を苦痛と快楽という2人の王の支配下に置いた。

なぜ最大多数の最大幸福を追求したければならないか。
→社会全体の幸福の実現のため。実現に向けて:功利主義に従う人はそれでいい。それ以外の人は?→サンクションによって拘束する。


功利主義の3つの特徴。帰結主義:結果ではなく、事前に予想される結果に基づいて評価される。幸福主義:行為が人々に与える影響こそが倫理的に重要な帰結。総和最大化:各人を1人として数え、誰もそれ以上には数えない。


メタ倫理学:「〜は正しい」と言うときの正しいとはどういうことか、「〜は善い」と言うときの善いはどう言う意味か

0
2019年07月19日

Posted by ブクログ

とにかく親しみを与えてくれる 興味持てたらもっと深めてくれたらええんやでという優しさがある すぐ読めるので何回も読んじゃう

0
2019年06月19日

Posted by ブクログ

臓器移植の是非についての記事を読んでいた時に、功利主義の話が出てきて、もっと深めてみたいと思い読みました。功利主義の基本的な考え方や、批判を経て思想として強化されていく過程、政治や公共事業への応用、幸福とは何か、などについて書いてありました。特に、幸福についてという人生における大きな問題へのアプローチとして、功利主義という立場の存在を学べたことが大きかったです。

0
2019年05月08日

Posted by ブクログ

なんかようやく倫理学に入門できた気がする。功利主義に絞っているから、ふつうの『倫理学入門』みたいな本には書いてないこともあれこれ書いてある。田上孝一先生の本のタバコ批判とかもああこういう話かと納得。

0
2018年12月04日

Posted by ブクログ

功利主義という言葉からは、なんだかわかりやすいけれど身もふたもない思想という印象を受けるわけだが、この本を読むと、現実の社会の中で倫理的に真っ当にものを考えるというのは、まさにこういうことではないか、という気になる。ベンサムやミルの思想についても誤解されやすい部分(私が誤解していた部分)を的確に指摘し説明してくれている。巻末のブックガイドも有用。

0
2015年11月08日

Posted by ブクログ

功利主義的なものの見方の初歩を教わった感がある。論理的に話すためには、何がしかの筋の通ったものの見方が必要。倫理学の本をもう数冊読んでみることにする。

0
2015年05月01日

Posted by ブクログ

功利主義は我々の生活や資本主義を考える上で重要な概念であることを知った。人の教育に関するスタンスを考える上でも興味深い。

0
2014年02月18日

Posted by ブクログ

明快な解説、豊富な事例くわえて洗練された文体を備えたすぐれた倫理学の入門書である。

著者の前作『功利と直観』を読んだ時には功利主義の論敵であるロールズの描写があまりにもヒロイックでそちらに目を奪われてしまったが、この新書ではあくまで功利主義の魅力が十二分に描かれている。これを読むと功利主義は、功利計算によって既存の道徳規範を批判的に検討する基盤を与えてくれるし、まさしく同じ手法のゆえに著しく常識的な道徳感情から逸脱したものを安易によしとすることもない、非常にすぐれた理論に思われる。

特に印象に残ったのは第5章の公衆衛生に関する箇所である。人間はそれほど合理的ではなく、最善の行動をとれるとは限らない、という理解のもとで公的な介入がどこまで許されるかというリバタリアン・パターナリズムの現実的な観点が魅力的だった。いってみれば「自己責任」と「パターナリズム」のバランスをとろうという発想かもしれない。確かにわれわれは行動を強制されることに抵抗をしめすが、同時に何かしらの指針も欲するものである。

社会における具体的な問題でもよいし、個人の人生についてでもよいが、倫理的判断について考えたいとき、本書はすぐれた導入になってくれるだろう。

0
2012年08月10日

Posted by ブクログ

功利主義に興味があったので。大変わかりやすく、功利主義や倫理学一般について分かりやすかった。考えさせられる一冊

0
2012年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中学の時、生徒会に入り、当時の生徒会会長のK君の提案によって「語る」という企画をやった。追試制度など、生徒にとって嫌な学校のルールについて先生と討論するというものだ。私もパネリストとして参加したが、言いたい放題の参加者を眺めながら終始沈黙し、最後になって結論めいたことをぼそっとつぶやいていいところを持っていくという、おいしい役回りをやっていた。


その時にはたと気がついたのが、ルールや統治というものは、社会の原理として存在しているのではなく、それがあるとみんなが信じているから成立しているだけで、個人的なルール違反そのものは倫理上問題ないということだった。全裸で逆立ちして学校に通おうとも、それはわいせつ罪で警察に捕まるというだけで、その行為自体はなんら自分だけの倫理として問題ない。そう感じた。


その瞬間から目が開けて?、社会の前提を疑ってみるどころか、ありとあらゆるものが気のせいだという考え方で今日まで生きてきてしまったので、客観的な物事の判断というものの客観的な存在に対して、全く信じないようになってしまった。


しかし、やがて科学の道を志すようになるが、自然の摂理を自分の自然な好奇心によって学ぶとはいえ、現代社会においてそれを職業とする場合、究極のところ社会との接点の問題を避けて通れないということに再びぶち当たった(小5の時に一度ぶつかっていたが、理論物理に進めば解決可能だと信じていた)。


現在は、さらに社会と関わるところで生きてしまっている。こうなると、公共の利益とは何かとか、政治に参加するとは何かということを、改めて考えなおさざるを得なくなっている。


さて、本の内容にはいる。素晴らしくわかりやすく面白い。


まず最初の部分で、興味深いデータが紹介されていた


人間が幸福になるためには自然に従わなければならないと考えている人26%(1953年)→19%(1968年)→51%(2008年
自然を制服してゆかなければならないと考えている人23%(1953年)→34%(1968年)→5%(2008年)(統計数理研究所の国民性調査)



このデータが示すように「やっぱり自然がいちばん」というように考える人は、高度成長期を底に現在はかなり増えてきていて、逆に自然を征圧する対象と考えることから遠ざかっていることが分かる。かなり時代精神を反映しているように思われる。1968年の頃といえば、原発の建設がはじまったり万博が開催されたり、まさに科学万能主義がピークだった頃ではないだろうか。


老荘思想が言うような「無為自然」という行動規範は、小賢しい意図を排除する個人の生き方としてとても魅力を感じるが、何をもって自然とするかということは、実はかなり主観的だし、時代によっても異なる。


筆者は、我々がここで自然と呼んでいるものは実は、


(1)自分が慣れ親しんでいること
(2)自然の側面の中から自分が都合がいいこと


にすぎないのではないかと言う。もし人間の行動規範が、「自然が一番」であれば、倫理など考える必要もなくなってしまうが、「自然が一番」では基準にならないということがわかる。



本書で中心的な人物の一人であるベンタムの言うように「最大多数の最大幸福」を理屈で考えると、部分的な不幸や基本的な不正義も正当化される。これはベンタムが、当時他の思想家達が主張していた禁欲主義や共感・反感を重視する傾向に対する批判しようとしていたからだが、確かにちょっと行き過ぎな気もする。
ウィリアム・ゴドウィン(メアリ・シェリーの父):身内びいきを批判




そこから、功利主義の修正として、義務や規則はやっぱり大事だよねとか、家族も大事だよねと、様々な角度から功利主義およびそれに基づいた公共政策をより洗練させるための議論が始まるわけだが、煎じ詰めるとこれは、それぞれの人が(時空的に)どこまでの範囲共感・反感持つかという(動的な)境界の前提と、社会の構成員がどこまで合理的に現在や未来を考えることが出来るという前提に立つかで、決まってくる。



政策面の話では、公共の利益の為にどこまで政府が介入して個人の自由を縛るべきか、うまいやり方はないかという問題にも派生する。例えば、リバタリアン・パターナリズム(自由主義的な父権主義(おせっかい))の考え方によれば、喫煙や飲酒、過度な広告による誘導など、人間は必ずしも社会合理的な行動を取らないので、行動の自由は与えつつ、非合理な行動をとりにくくするためのインセンティブやディスインセンティブなどを設けて、行動を誘導するという考え方などがある。
エドウィン・チャドウィック:パターナリスティックに英国の公衆衛生を改善しようとして反感を買う



つぎに、そもそも「幸福とはなにか」という議論に入っていく。倫理学の世界は20世紀前半の言語哲学の流行を背景に、個人の幸福の問題よりも、「善い」とは何か、などを問うメタ倫理学が盛んに研究されてきた。ジョン・ロールズの登場により、倫理学と密接に関わる政治哲学側からのアプローチが出てきたが、そこでも社会のあり方を問うだけで個人の幸福までは立ち入らなかった(自由主義的な個人の幸福に対する不介入主義)。その為、幸福とは何かという重要な問いは、ラッセルが言うように古代人の議論から殆ど進んでいない。



ここから、ミルの快楽の高級・低級説や、客観的幸福感の話が出る。


大学一年の時、文系科目の単位が取れず、仕方なく心理学の講義を受けた時、レポート課題が「幸せとはなにか」だったので、とても腹がたって書き殴るようにレポートを書いた事がある。そのレポート内容は、本書のこの幸福に関する章とまったく同じ議論をたどっていて驚いた。最終的には、個人の幸福についてどれだけ追求しようと、客観的な視点が入った瞬間にご破算になってしまうという結論だったが、当時のレポートまだ残ってたらまた読み返してみたい。


色々と考えていくと、結局のところ幸福を考えるよりも不幸を考えた方がどちらかというと難しくないということがありそうだが、その考え方にも限界がある。確かに、様々な価値観で異なる幸福よりも、病気や貧困といった不幸は分かりやすい。そこで、社会の不幸を最小化することに政治介入を集中すべきという、カール・ポパーらの積極的功利主義の考え方がある。しかし、民主主義社会においてそうした考えが受け入れられる為には、適度な格差と弱者に対する共感の両方が十分になければならない。また、一部の人に強い負担がかかることに対して、仮にその「一部」が自分が共感しない他者であって、そうした人が大多数の場合、社会的な集団いじめが正当化されてしまう危険がある。スケープゴートもその一例だろう。


また、無神論者の経済学者アマルティア・センは、例えば今米国のテロ事件でも話題のシク教の信者が、非常に厳しい戒律の中の限られた自由の中で幸福を感じている状態を「適応的選好」と呼び、果たしてそれを幸福と呼んでよいのかと問いかけた。これは、「足るを知る」にも繋がるので、必ずしも悪い(誰にとって?)わけではないが、客観的幸福感の問題でもある。ベストセラーにもなった「選択の科学」の著者、シーナ・アイエンガーも、厳格なシク教徒の両親にしつけられながらも、アメリカ人として育つなかで「制約の多い宗教は人をみじめにするのか」という疑問から調査をするが、幸福感が高いのは寧ろ厳しい教えの信仰を持つ人達だったという結果がある。幸福感にとって重要なのは、自分で決定しているという意識だという。


こうなってくると、意思決定としての民主主義のシステムの問題がまた出てきてしまう。自分たちの将来を、自分たちの意志で決めているという意識があれば、多少苦しくとも幸せ、ということもあり得るのだろうが、今の日本や先進国のようにここまで政治不信が進んでしまうと、民主的な意思決定そのものの効用はかなり低そうに思われる。さらに厄介なのは、現在日本で議論されているエネルギー政策の選択においては、安価なエネルギー供給の存在そのものが民主主義体制の根幹であるので、高価なエネルギーを選択すればするほど、民主的な意思決定は不健全な方向に向かってしまうという自己矛盾だ。


また、選択的効用の逆もあり得るだろう。つまり、よりよい選択肢があると事前に信じこまされたのちに、それが虚構であったと知らされた場合の失望という不幸である。民主党のマニフェストはまさにその典型例だったと言ってよいだろう。クリストファー・ノーラン監督の実写版バットマン三部作完結編「ダークナイトライジング」において、悪役のベインが「希望があれば、人はそれを夢見ながら朽ち果てる」と言ったが、長続きしない希望を提示して選択させて幸福感をもってもらう事が民主政治の限界なんだろうか。


様々な問題を議論している時でも、常になにか前向きなことはないのかと探してしまうが、そうした性向が議論を歪めてしまっていないかということによく遭遇する。


最後に直感と認知的判断のジレンマについて述べられている。たとえば、特定された個人の命についてはとても大切に感じるが、統計になった瞬間に感覚が麻痺してしまうという問題。マザーテレサも「群衆を目にしても、私は決して助けようとはしません」と言った。このジレンマを説明する考え方として、スロヴィックの「心理的麻痺」という考え方を紹介している。マサチューセッツ大学のエプスタイン教授の考えによれば、人間の思考には経験的システム(直感的思考)と分析的システム(合理的思考)がある。つまり、個人の命の問題の場合は直感による働きが大きいが、統計になると働きにくいということだ。また、fMRIによる脳の研究によって、直感に反する認知的判断を行う場合、時間がかかるということもわかっている。「道徳的思考における感情の役割はそう簡単には退けられない」のである。


人間の思考をこのような2つのシステムで考えると、現在の反原発デモに参加する多くの人や、そうした動きを批判する方々の思考パターンが異なっている、という説明もできそうだ。例えば、反原発を批判するブロガー藤沢数希は、「恋愛工学」という考え方も提示しているが、経験的システムによる働きが弱く、合理的に物事を考える志向(およびその能力)が強いように想像される。


だからといって、集団における意思決定において、直感的な判断と認知的判断のどちらが優れていると一般的に結論つけることは出来ない。認知的判断が、結果として多くの利益・便益をもたらすとしても、アイエンガーの言う自己決定の幸福を奪ってしまったり、パターナリズムに陥る批判からは逃れられない。


折衷案としてのリバタリアン・パターナリズムの立場をとるとすると、大きくわけて2つのアプローチがある。つまり、指導者側が大衆の直感に訴えることにより結果として道徳として合理的に正しい道に導くというアプローチと、大衆側を教育してより道徳における合理的な判断をできるようにするというアプローチである。しかし、このふたつのアプローチにも問題がある。前者は、情動に訴える手法によって人を倫理的行為へと誘導しようという発想が自体がどこまで受け入れられるかという問題がある。また、あまりに情動に訴えすぎたために「共感づかれ」を引き起こしてしまうという問題もある。後者は道徳における合理的な思考をさせる教育というものがそもそも可能なのかという問題である。これは不可能で、合理的思考は一部の人間にしか無理と考える人もいる。


確かに、自分が考えぬいた結論に社会を導くために、表面的に大衆迎合するポピュリズムも問題だと思う一方、何らかの課題い対し広く関心をもってもらって正しい情報を発信することで、多くの人に合理的判断を期待するというやり方も広くなされており、どちらも限界があるということは明白である。どちらも行き過ぎると逆効果を生み出す。しかし、逆効果が発生する境界を知ることはとても難しい。


倫理学や功利主義がここまで公共政策や政治哲学に関わっているとは知らなかった。巻末のブックガイドの所に、政治哲学は文学部なら倫理学で、政治学科なら政治思想や政治理論で、法学科なら法哲学で研究されているとある。マイケル・サンデル「白熱教室」の人気により、政治哲学にも注目が集まっているが、日本で政治哲学があまり注目されてこなかったり、どこの学部にあるのかすらわからない状態になっているのは、小林正弥千葉大学教授が著書「サンデルの政治哲学」でも触れているように、日本では究極のところ皇室・天皇陛下まで話が行き着いてしまい、正面から取り上げにくいということも影響しているように思う。


こういう理屈を学んでしまうと、物事をすぐに単純化して捉えようとしがちになるという危険性も孕んでいるが、本質的な問題を捉えようとするとどうしてもそうならざるを得ない。今回、この著作を通じてある程度自分の思考の整理が進んだような気がするが、まだわかりかけてわからないことがわかっていないという状態だ。


それでも、あと少しというところまで来ているような気もする。その時は、エネルギーとは離れてまたなにか書いてみたい。

0
2012年08月08日

Posted by ブクログ

とあるところで紹介されていたので読んでみました。

功利主義というと、「最大多数の最大幸福」の実現を目指す考え方と思えばよいのですが、「最大多数」が誰を指すのか、そこから漏れた人はどう扱うのか、「幸福」とは何か、「最大幸福」にあたって「幸福」は数値化できるのか、など、いろいろと実現にあたって定義すべき問題があります。

また、「最大多数の最大幸福」の考え方が広く知られるようになってから200年ほど経ちますが、この200年の間で科学(とくに生命科学で中でも脳科学、あるいは心理学)が大きく進歩した結果、倫理学や哲学(道徳哲学)においても、科学の知見を取り入れざるを得なくなってきており、功利主義は、どんどん洗練されてきています。

そういった経緯をわかりやすく丁寧に説明してくれているのが本書、といえると思います。
著者が言うには、本書は、入門書としてまだまだ難しいようで、さらなる入門書を紹介するなど、そういった面でも親切な一冊です

0
2023年11月12日

Posted by ブクログ

読みやすくて、倫理学の知識を体系的に学ぶ事が出来た。引用してくる倫理学者の古典文章を、わかりやすい所を分かりやすく引っ張ってきてくれてるのが助かります。今まで麻薬で出す快楽と、知的活動で得られる快楽の違いをずっと考えていたけど、本文の「それが客観的な快楽かどうか」という文書で何となく腑に落ちた。

相対主義批判の矛盾 根本的ルールは同じ
自然は正しいの?
ジレンマに対して備えておく より洗練された倫理

共感 反感の原理 自分の好きなことだけ
ベンサム 道徳と"立法"の諸原理序説
帰結主義 行為の帰結を評価 幸福主義 幸福だけが内在的価値を持つ

ゴドウィン 政治的正義 婚姻制度批判 「わたしの」という発想をなくせ 公平性 結婚後は変わる
家庭の人間関係のうちに暮らす人は、他の人に快を与える機会を持つ

規則的功利主義 規則や義務に2次的に採用 間接功利主義 行為功利主義 個々の行為に ゴドウィン
道徳的に重要な違いがあれば 異なる仕方で ピーターシンガー 貧しい国への援助 最大多数はどこまで含むのか

公共政策における功利主義 最小不幸社会 トリアージ 優先度 ロールズ「功利主義は人格の個別性を無視する」どんぶり勘定 長い目で見たら

ミル 自由主義的 長期的に見て社会全体が幸福に ロックの自然権は根拠 他者危害原則
チャドウィック 権威主義的 パターナリズム 当人の意思に関係なく、当人の利益のために
どこまで正当化されるか
リバタリアンパターナリズム ナッジ 人間は合理的に行動しない 人々を取り巻く環境を変更して自然と正しい選択肢を

高級な快楽とは 高級な苦痛は 快楽ソムリエ マトリックスは幸福? 我々は客観的にも幸福でありたい
快楽とは選好 選好功利主義 適応的選考の形成 選好の充実が幸福なのか 吾唯知足 厚生功利主義

特定の命を救うことに大きな共感 募金 思考は直観的な経験的システムと分析的システム mri
デブトロッコ実験 落とす派は認知的活動を司る脳の部位が活性化 落とさない派 感情を司る脳が活発

ビル・ゲイツの寄付のやり方 j美







0
2023年02月09日

Posted by ブクログ

世間の功利主義者への風当たりは強い。「最大多数の最大幸福」をスローガンに掲げる功利主義者は、みんな(つまり多数派)の幸福を大事にするから少数派を置き去りにするし、権威主義的で非道徳的だと。いやいや、まあ急進的な原理主義的功利主義者はそうかもしれないけれど、功利主義ってそんな悪魔の経典みたいなんじゃなくてね、という話。直感的には、目の前の困っている人を助けてあげたいけれど、国を統治する人がそれをしていたらキリがないですね。むしろ、統治者の目に見えていない人たちが犠牲になっている。そのための指針として「最大多数の最大幸福」という基準で測ってみるのはどうですか?ほとんど無視されていた労働者、奴隷、女性などの多くの人々の幸せを等しく勘定に入れましょうよ、という考え方です。原理主義的になりすぎるとどうかと思いますが、真っ当な指針だと思いませんか?

本書では、功利主義の説明に続いて、幸福と快楽の関係性や、「人間は非合理的な意思決定を行いがちだ」という心理学的・行動経済学的な知見にもとづいた考え方と功利主義の関係についても解説されています。全体的に読みやすく、小ネタも面白くて好き。最後の「ブックガイド」もおすすめです。

0
2022年02月13日

Posted by ブクログ

倫理とは何か、について、功利主義という主義に入門してざっと全体を眺めてみようじゃないか、という本。

最近、自動運転で流行りのトロリー問題から始まり、豊富な例題と読みやすい文体で一気に読んでしまった。

功利主義とは、簡単に言ってしまえば快楽の総和を最大化することが目的であり、純粋に言えばトロリー問題で言えば迷わず5人の命を救うのだろうけど、実際に功利主義の原理主義みたいな、最大幸福の実現のために少数を犠牲にするような考え方は古く、その起りもむしろ少数のないがしろにされている人間も平等に扱うべきだというところがあることが理解できた。また、それに対する批判もあった上で、どう変遷していったかがわかりやすい。

特に興味深かったのが公衆衛生の章。この本はコロナ以前に書かれた本だが、政治と功利主義の関係性について現実と照らし合わせるとよく理解できた。コロナに罹患した状態、というのをどう定義するかによるけれども「他人に危害を与える状態」という立場をとれば確実に公衆衛生上隔離や強制的な治療といった措置は免れないし、ただしその場合でも功利主義の最大幸福のために公権力からの個人への介入をどれだけ許容するのか、という議論になる。ほぼ最大限に介入しているのが中国で、自由主義を極端にいっているのがアメリカ、ととらえられるかなと。日本は、というと、その中間というか、自粛という言葉も何もかも「ナッジ」という考えで実行されているとするとある程度は納得できるかなと。公衆衛生は守りたいのでコロナがうつりやすい状況は変えたい(緊急事態宣言や自粛)が、個人の自由は最大限に尊重したいのでその環境は整える(GoTo)みたいな。まあ、ただそのやり方がどこから見ても非常にまずいという気はするけれど、極端な立場から批判できるものでもないかなという気はする。

参考文献も面白そうだったので、倫理学というか功利主義についてもうちょい理解を深めてみたい。

0
2021年02月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

思想が誤解されがちな功利主義を改めて入門する本であると同時に倫理学の入門書として本書は位置付けられています。結婚制度に絶対反対の立場であったゴドウィンがウォルストンクラフトと結婚することで転向し、結婚制度に積極的な態度をとるようになったエピソードはとても面白かったです笑

2人から生まれた子供がフランケンシュタインの著者で有名なメアリー・シェリーで近代フェミニズムの先駆けとなった母親の意志を受け継ぎ(当初母国の英国では全く受け入れられなかったけれど)、フランケンシュタインの中で家庭の天使とされた女性を批判し、フェミニズムを見事に描き出しています。

本書中では、倫理学の分野ではもはや忘れ去られている?幸福論についても言及が行われています。幸福とは何かについて再度問いをたて検討を行っています。著者の見解では、政治レベルでは最大幸福原理を追及、個人レベルでは時には己の際限なき欲求を戒めつつも、自分が現に持っている欲求を追及すべきだそうです。
うーん全ての人間の欲望が満たされるのが先か、地球が人類が真っ当な生活を送れる水準を保てなくなるのが先か、もはや地球環境レベルの話もふまえて議論していくべきかなと個人的には思います。
いわゆる先進国における欲望の肥大化を戒め、他の国々・地域に資源の分配を行うのであればすぐにでも達成できそうな話ですが・・・。本書中でも心理的麻痺の話がありましたが、意外とそこまで考えが至る人がまだまだ少ないということですかね。

また本書末のブックガイドが良かったです。次読む本の参考にしたい。

ところでJ美さんは序盤と最後以外全く出てこなかった気がしますが気のせいですか?

0
2020年03月28日

Posted by ブクログ

功利主義の概要とそれにまつわる諸問題を、わかりやすくていねいに解説している入門書です。

著者はすでに『功利と直観―英米倫理思想史入門』(2010年、勁草書房)を刊行しており、そちらではかなりていねいに功利主義と直観主義の対立を軸に倫理学の思想史を紹介していますが、これに対して本書では「体系性はあまり重視せず、むしろ倫理学に対する読者の関心を高めることに意を注いだ」と「あとがき」に書かれているように、より親しみやすい内容の入門書となっています。

倫理学は、いったいどのような立場から、どのような方法にもとづいて、倫理についての考察をおこなっているのかという基本的なところから説きはじめています。著者は、功利主義の立場から公衆衛生の諸問題に対してどのような解決策を示すことができるのかという問題に対しても、アウトラインにとどまってはいるものの、みずからの見解を示しており、さらに幸福度の評価という困難な課題についても一定の見通しを提出しています。もちろんこれで完全に問題が解き明かされたというものではありませんが、読者を倫理学的な議論の場へと招き入れることには成功しているように思います。

0
2019年09月20日

Posted by ブクログ

功利主義についてわかりやすく軽くつまんで説明してある
重要そうなところは話していると思うので、倫理学について考えるとしたらこれである程度十分だろう。
倫理の難しさもわかって良い

0
2019年01月06日

Posted by ブクログ

タイトル通り、功利主義の入門書で倫理学についての新書らしい新書。不用意に深く踏み込むことなく、また著者の価値観を大量にちりばめることなく書かれているので身構えることが少なく読みやすい。しかもリファレンスとして使えるレベルでまとまっている。
知識レベルで功利主義について知るならこの一冊になる。

0
2017年10月16日

Posted by ブクログ

功利主義入門できた。ブックガイドもすこし気になる。監視社会ものを勉強するため、というか前提知識として読んだ。

0
2015年12月14日

Posted by ブクログ

面白かった。功利主義を通して倫理学全体を考えると言うことで、判りやすかった、ともう。
分析的システムと経験的システムは、人間と動物の相克ですかね。

0
2014年12月29日

Posted by ブクログ

今日をもって私は功利主義となる。個人として、道徳的な慣習を守り、大きな判断をするときには、たとえ特定の個人が犠牲になったとしても社会全体を優先するべきである。自由主義とちがうのは、人類は犠牲を支払うという痛みを忘れてはいけないという自戒の念を含ませるためだ。もちろん、明日私にその番がやってきたとしても、それは人類全体の責任であるとして受け止める。またそのためには準備をしなければいけない。なにをどのように責任をとるのかはを考え続けないといけない。

0
2014年10月25日

Posted by ブクログ

新書ということもあって、とても平易に書かれている。人間の倫理観を疑うような事件が次々と起こっているが、倫理というものは『学ぶ』ことではなく『考える』、『考え続ける』ことが重要であることがわかる。「いつわりの世界で幸福感に浸って生きるよりも、真実の世界で不満を感じながら生きていた方がよい」(P152)。不満があるということは人間として『正常』であるということなのかな。

0
2013年09月10日

Posted by ブクログ

タイトルの通り、功利主義について様々な事例を用いわかりやすく解説するとともに、倫理学を学ぶ手引きとなるような一冊。
本書をきっかけに批判的思考を身につけ、実践して欲しいとの思いが込められている。
また巻末のブックリストが充実している。

功利主義については、古典的功利主義から現代の発展した(対応した)功利主義まで具体例を用いて説明されているので非常にわかりやすい。功利主義をはじめとした倫理学が「理屈なかりで人情が足りない」と言われるのは、誤解であることもわかる。


また6章「幸福とは何か」が最も印象に残った。
最大多数の最大幸福を唱える功利主義において、では何が幸福なのかということは最も大切なことであるからだ。

「太く短い人生がいい」と言い暴飲暴食をする人に対し、健康を気遣い食事制限を提言することは果たして当人にとっては幸福なのだろうか。個人の幸福の定義については人それぞれとしかある種言えない。個人主義の話である。ただ、ミルの他者危害原則でもいうように、「他者に迷惑がかからない範疇で」自分の幸福を追求するという考えは大切である。

またミルの「満足したブタよりも不満足な人間の方がよい。満足した愚か者よりも不満足なソクラテスの方がよい」という発言は納得半分と反対半分である。
確かに食欲や性欲など低次欲求を得ることよりも、知的欲求など高次の欲求を得る方が幸福度も違うかもしれない。が、だからといって知的欲求が最上と考えるのはいささか疑問を感じる。
まだ私の考えが足りていない段階の疑問なので、これから勉強のしていきたい。

総じて、読みやすく良本であると思う。

0
2012年08月15日

Posted by ブクログ

「道徳」の本質を批判的に考察していく倫理学。倫理学にはスタンスの異なるいくつかの理論があるが,中でも分かりやすい「功利主義」を中心に据えて,他の理論についても触れながら解説。
 功利主義は帰結主義,幸福主義,総和最大化という三つの特徴をもつ。初期の徹底した功利計算は,「偉人を救うためなら親を死なせる方が良い」など常識はずれの結論を出していたが,このあたりはいろいろ修正が施されて,そんなに突拍子もない理論ではなくなってる。にもかかわらず,しばしば功利主義に対する批判は「藁人形攻撃」になってしまっていたりして,功利主義はイメージが悪い。しかし,「津波てんでんこ」や医療現場でのトリアージに見られるように,現実に採用されている政策・ルールにも功利主義的なものは多く見られるし,結構有用な理論。
 現代の功利主義は,功利計算の結果を権威主義的に押し付けるようなものではなく,自由主義を擁護する。しかしその自由はあくまでも手段であって目的ではない。道徳や法律を自然法や自然権に基礎づける自然法思想とは,この点で一線を画する。
「最大多数の最大幸福」というが,「幸福」とは何かというのも大きな問題だ。個人の選好が充足されたことをもって良しとする立場は,「高望みしない人々」を多く作って低いレベルで満足させれば目的達成ということになってしまうし,幸福とは快楽の追求ということにすると,「快楽の質」の問題が生じて,選良たる「快楽のソムリエ」による道徳の支配という危惧があるし。幸福とは利益と言ってみても,利益にも絶対的な基準がない以上,それは同語反復にすぎないことになりかねない。
 なかなかもどかしい。というか,いろいろと理論が洗練されているんだろうけれど,想定する状況がいかにも人工的で(トロリー問題とか),なんだかなじめないな。いやでも事態に直面してから考えている暇はないし,事前に考察を深めておくのは良いことだとは思うけど。やっぱり理系だなぁ,自分。
 何がトロリー問題で気になるって,「このままだと5人死ぬけど進路を変えれば死ぬのは1人で済む」ような状況が現前してるなんて,一瞬で判別できないよねってとこ。ましてや「巨体の男を進路に落としたらトロリーは停まって死ぬ人数が減る」なんて,ホントに停まるって確信できる状況が想像できない。

0
2012年08月11日

Posted by ブクログ

ゴドウィンはウォルストンクラフトとの出会いで功利主義思想に修正を加えた。その娘はフランケンシュタインの作者。

現代の功利主義は、家族や道徳的規則も考慮する間接功利主義。行き過ぎを戒める規則功利主義。
元祖は、直接功利主義で行為功利主義。

同性愛と異性愛に道徳的な違いはない(ベンサム)
男女に違いはない(ミル)
動物と人間に違いはない(シンガー)。
最大多数の中に、どこまで入れるか。
常識的な規則が、功利主義的に見ると不公平に扱っていることがある。

幸福は多様だが、不幸は同じ=ホバー。最小不幸社会を目指す。
医療現場のトリアージは、功利主義的な考え方。

津波のときは、てんでんこで逃げる。自分のことだけを考えて逃げることが一番効率的。

リバタリアンパターナリズム=自由だが、望ましい方向が自然と選べるように導くべき、という考え方。
トゥルーマンショーの主人公は幸福か。薬で幸福感を得ることは幸福か。

群衆を見ても助けようとしないが、個人を見ると助けようとする。人間の命の重さが等しいと考えると功利主義的には非合理。

ビルゲイツは寄付先を選ぶとき、多くの人に影響を及ぼしていて、過去に無視されてきた問題、に対して寄付する。功利主義的な考え方。直感を排除する。

0
2020年03月18日

Posted by ブクログ

再読。脳みそがたっぷり刺激される好著。批判的な考え方が分かり易く学べる。娘にも十代のうちに読んでほしい。

0
2017年03月03日

Posted by ブクログ

基本的なお勉強をおろそかにしているのがベースの人生なので、ありがたいです。なんというか、無い頭で自分勝手に考えてきたことが、素晴らしい叡智によって巧緻に体系化されているのをいただいては「あーそれそれ!そうそう!」ってキャッキャはしゃぐっていうそういうゲームになってやしないかと小一時間(

功利主義の概念はいろいろな思考のベースになるものではないか、中高生にだってこういう思考の授業はしていいんじゃないかと強く思いました。

0
2013年05月02日

Posted by ブクログ

功利主義を学ぶことを通して倫理を考えさせてくれる内容。
自分にとっては、ちょくちょくむずかしい内容で読みづらい部分もあり。
自分がよく考える「公平性」についてはゴドウィンという哲学者が考えていたようです。哲学は歴史を通していろんなことを考えてきたんやなあと思わされた。
「幸福について」の章がおもしろかったかなあと思う。
著者が優しい物言いで書いてくれていて、すごく良心的なものを感じた。一度だけでは覚えられないのでまた読みたい。

0
2012年08月13日

「学術・語学」ランキング