【感想・ネタバレ】暢気眼鏡のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 ひどい生活の中で芳枝が割に暢気でいることは,現在助かると思いながら私としては一方絶えず追い立てられる気持ちだった。この暢気さが何時まで続くか,ゴム糸が延び切ったらそれでおしまいだ。そうならぬうちにと,平気な顔の奥で焦り続けている私のそばで,暢気な芳枝は暢気なお饒舌りばかりする。殊に好んで幼時の話をする。今の惨めさに追われて意識せぬながら憶いが暢気だった昔に返るのかとも思われ,私は気が沈むのだった。云うことは全でたわいなく,多くの場合相槌ばかりで私は何も聞いてはいないのだが……。
(「暢気眼鏡」本文p40)

0
2009年10月04日

「小説」ランキング