【感想・ネタバレ】マンガでわかる永続敗戦論のレビュー

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Posted by ブクログ

「自分が生きている世界とは一体どうなっているのか」という問いに対して,理系的なアプローチと文系的アプローチがある。歴史は概ね後者に属すると言えるだろうが,「今ここ」を当たり前のものとして思考停止にならないことが,実はリスクマネジメントとなるのだろう。公認された歴史情報は,国の都合が含まれるので,歴史を知ることには自主性・積極性が肝要となる。迷った時には本書にあるガンジーの言葉に立ち返ろう。

“あなたがすることのほとんどは無意味であるが,それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは世界を変えるためではなく,世界によって自分が変えられないようにするためである。”

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原爆は天災ではない。日本は絶望的な敗け戦のはてにアメリカに原爆を落とされたのだよ。言い換えれば…原爆を落とされるような事態を招き寄せてしまう政府しか日本は持たなかったんだ…。(p.37)

 歴史研究が明らかにしてきたように,1945年8月,核兵器は,人種差別や人体実験,ソ連への牽制といった要因にも促される形で日本に対して使用された。私たち日本は,新兵器の実験台の道具にされた。ゆえに被爆体験は「悲惨の極致」であるとともに「恥辱の経験」でもあったはずだ。
 しかし,現代の日本人は,原爆投下を「恥辱」と感じることはほぼない。本来,原爆投下を「恥辱」と感じることは,そのような事態を招き寄せてしまうような「恥ずかしい政府」しか日本は持ちえなかったことへの自覚へとつながるはずである。(p.48)

 「敗戦」を「終戦」と置き換えたように,あらゆるところで「敗戦の否認」は行われている。まずは,その事実を自覚すること。それこそが「永続敗戦」を理解するために,大切なことだ。(p.51)

 [鳩山政権の]退陣劇を通して露呈したのは,この国では,選挙による国民の支持を大部分取付けている首相でも,「日本国民の意見[基地の県外移設という沖縄の民意]」と「米国の要望[辺野古新基地移設]」とのどちらかをとり,どちらかを捨てなければいけない,という二者択一を迫られた場合,後者をとらざるをえない,とうう構造だ。言い換えれば,日本の主権は大幅に制約されていると言える。つまりいまだに「敗戦後の状態から抜け出せておらず,主権が回復していない」という事実が明るみに出た。
 しかし,主要メディアはどれひとつとしてこの厳しい事実に向き合おうともせず,「首相の個人的資質」をひたすらあげつらい,「敗戦」から目をそらした。ここにも「敗戦の否認」がある。(p.98)

 今日,沖縄県が日本で最も先鋭な永続敗戦レジームへの批判者となり,政治的に先進的な地域となっているのは,同地がこのレジームの外部に位置するからにほかならない。翁長雄志沖縄県知事の掲げる「オール沖縄」というスローガンは,「県民一丸となって永続敗戦レジームを拒絶する」という姿勢の提示である。(p.99)

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2023年10月12日

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