【感想・ネタバレ】霧町ロマンティカのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年05月08日

この本を読見終える少し前に、友人の父親が亡くなったことを聞かされていた。あまりに突然の死に対し、友人は驚くほど普通の態度だった。そのことに私は戸惑っていた。

人はいつか人生を終える。

中年の50歳の主人公、岳夫は勤めていた会社のリストラに遭い、定年前に職も家族も失い独り身になってしまう。そこで訪...続きを読むれた軽井沢の古い家に引っ越すことになるが、幼少期行方不明だった父の謎や、その地で出会うさまざまな人たちと関わるうちに次第に心境が変化してゆく。

ラストでは、物語始めから一緒だった捨て犬のロクが亡くなって行くまでが感動的だ。ロクの寿命が近づくと共に、周りの人たちとの別れや新たな決断が印象的である。

「過ちは誰にだってあるだろう。俺だって過ちばかりの人生を送ってきた。でも、人には過ちを償うチャンスもあるんじゃないのかな。」
「生きるって何なんだ。死ぬって何なんだ。俺はこれからの人生を青臭く生きようと思う。」

物語冒頭では生きる活力すらなくしていた岳夫がロクを通じて生きることにもがき、意味を模索しているシーンが感動的だった。

私も、ふと友人のことを思い出した。置いて行く者、置いていかれる者、互いにどんな気持ちだったのだろう。どんな気持ちで別れていったのだろう。普段通り毅然と振舞っていた友人の隠れた本心は。彼女はどんな景色を見て、どんな思いを感じていたのだろう。

私はまだ20代だけど、いつかは老いていく。今だって十分人生を模索しているけど、まだまだ終わりじゃない。安定な人生なんてない。これからも選択の連続だ。でもだから生きるって面白いんじゃないか。

山に例えるなら、私はまだがむしゃらに頂上を目指して登っている途中。岳夫は山を下山しているところだろう。意外と登る方が簡単で何も考えずただ突き進んでいけばいい。下る方が転んだら怪我は大きいし、足だってもつれやすいし、後半の人生のほうがより慎重に行かなきゃって思ったりする。同時に今まで登ってきた道を振り返りながら、逆にこれからどんな道を行くのか未知の若者とすれ違いながら、自分のことだけでなく若者とも関わりながら、自分のことだけでなくいろんな人と関わって生きていく、なかなか難しく面白い年代なのかもしれない。

生きること、人生の選択、そして希望。
実に読み応えのある力強い小説だった。
いつかまた自分が中年になったころ読んでみたい。きっと今とは違った心境でこの物語を楽しめることだろう。

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