【感想・ネタバレ】グランドマンションのレビュー

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Posted by ブクログ

ブレない人だなと思う。デビュー作以来殆どの作品を読んでいると思うのだが、叙述トリックを書き続けるということで一貫している。これだけ続けているとネタが尽きそうなものだけれど、本作を読むと、ますますさえわたっているという印象を受ける。建物を使ったトリックは筆者がよく使うパターンだと思うのだが、発想が変わっていて新しさがある。もっと有名になってもおかしくない人だと思うのだけれど。

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2015年11月26日

Posted by ブクログ

☆3.8

グランドマンション一番館には様々な人が住んでいる。
そこではトラブルが起こることもままあって……

流石、折原一。
こういうことかなと考えながら読んでも、いつでも予想の上を軽々と行ってくれるので、こちらとしても気持ちよく騙される。
登場人物たちは、ちょっとこの人近所にいたらイヤ〜!となる人もいて、その微妙に遠ざけたくなる気持ちもわかっちゃう。
絶妙な人間関係。

最初の一編「音の正体」を読んで、うん、そういう感じねとウムウム頷く。
そういうの、好きよ。
「善意の第三者」がとても良い衝撃でした。

「リセット」と「エピローグ」が連載を単行本化した際に書き下ろしたというだけあって、それまでに起きたことや出てきた人物たちが関係してくる。
このまとめ方もなんだか豪華に見えて、『グランドマンション』ってタイトルにふさわしい感じがした。

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2024年02月14日

Posted by ブクログ

思っていたよりどんでん返し多め。

グランドマンションというタイトルだけあって
登場人物は多いけれど、そんなに読みづらさは感じなかった。文章が自分に合っていたのかもしれない。

ページ数は文庫にしては多めだけれど
3時間ほどで読み終えた。

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2023年10月02日

Posted by ブクログ

「折原一」のミステリ連作集『グランドマンション』を読みました。

『漂流者』に続き、「折原一」作品です。

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「グランドマンション一番館」には、元「名ばかり管理職」の男、元公務員、三世代同居の女所帯から独居老人、謎の若者、はてはかなり変わった管理人までと、アクの強い人たちが住んでいる。
騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣──次々に住人が引き起こすトラブル。
そして、最後に待ち受けていた大どんでん返しとは……。
希代の名手が贈る必読の傑作ミステリー連作集。
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隣人問題、騒音問題、虐待、不法侵入、年金不正受給、振り込め詐欺、火事…… アクの強い住人たちが、これでもかとばかり次々に問題を引き起こす「グランドマンション一番館」を舞台にしたミステリ連作集、、、

奇想と騙りが炸裂する、不可解で愉快なグランドマンション… 叙述トリックの連続で、何が起きるかわからないドキドキ感が愉しめる作品でした。

 ■音の正体
 ■304号室の女
 ■善意の第三者
 ■時の穴
 ■懐かしい声
 ■心の旅路
 ■リセット
 ■エピローグ
 ■解説 杉江松恋

202号室に住む騒音に敏感な「沢村英明」は、真上の302号室に住む子どもの足音や赤ん坊の泣き声等の騒音に悩んでいた… 「沢村」の我慢は限界に達し、育児放棄や虐待を繰り返しているらしい母親に苦情を、、、

その後、子どもの生活感が全く感じられなくなり、子どもたちは母親の手で殺められたのでは!? という疑惑が「沢村」の頭に浮かぶ… 被害者かと思った人物が、実は加害者だったという、どんでん返しが愉しめる『音の正体』。


303号室の「松島有香」は、グランドマンション二番館の販売事務所に勤めており、所長の「大田原浩平」と二人で事務所をやりくりしていた… ある日、「牧野麻子」と、その婚約者「杉崎大介」が事務所を訪ねてきて304号室を成約、、、

その後、「有香」は、鍵の紛失、携帯の紛失、さらに、不審な電話と不穏な出来事が続き、そして、「麻子」が「大介」と「有香」の不倫を疑い、ある罠を仕掛けてくる… 「麻子」や「大田原」の住居について、意外な結末が愉しめる『304号室の女』。


206号室の「高田英司」は、高齢の母親「筆子」と暮らしていた… 彼は民生委員をやっていて、305号室に住む「久保田綾香」に想いを寄せていたが、ある日偶然、「綾香」の婚約者「立川茂樹」の浮気現場を発見し、その事実を善意の第三者と名乗り、手紙と証拠写真で「綾香」に知らせる、、、

さらに正義感の強い「高田」は、「綾香」の祖母「ミヨ」の年金不正受給を暴こうと、ある行動を起こすが、それによりある事実を知ることに… 叙述トリックを使って、30年の時間軸の差を巧く使った『善意の第三者』。


203号室の「瀬沼富男」は無職で家賃滞納中、ミステリマニアで多数のミステリ稀覯本を持っている「瀬沼」は204号室の老人「佐久田芳子」が多額のタンス預金をしていることを知り、ミステリ作品の密室犯罪を参考にしながら「佐久田」の金を奪うことを計画する… しかし、「瀬沼」は犯行を実行する前に自室で殺され、しかも、そこは完璧な「密室」であった、、、

「瀬沼」は殺される直前、警察に電話して犯人は管理人だと告げていたが、管理人にはアリバイがあった… 密室を扱うという本格ミステリのパロディっぽさが愉しめる『時の穴』。


105号室の「多賀稲子」がオレオレ詐欺で500万円を騙し取られ、続いて106室の「塩崎俊夫」が200万円を騙し取られ、301号室の「塚本ハル」のところにもオレオレ詐欺らしい電話があるが、「塚本ハル」は騙されず、逆に犯人を出し抜こうとする… 民生委員の「高田」は104号室の「岡安亮太」が怪しいと疑う、、、

意外な人物が犯人でしたね… 被害者かと思った人物が加害者だったという叙述トリックを愉しめる『懐かしい声』。


103号室の「武藤留子」は、突然、部屋を訪れた男を思わず殴ってしまった… その男は救急車へと運ばれていくが、その後、「留子」は男が落としたであろう鞄を拾い、鞄の中に入っていた手帳に書かれていた、ある少女の壮絶な日記を読むことになる、、、

叙述トリックを使って時間軸を錯覚させることで、謎めいた物語りに仕上げてある『心の旅路』。


105号室の「多賀稲子」は、窓のカーテンを開けると戦慄が走った… なんと、目の前にあったはずの「グランドマンション2番館」が消えてなくなっていたのだ、、、

「稲子」は痴呆が始まっており、他の住民と話がかみ合わない… そんな中、民生委員の「高田」が年金の不正受給で逮捕され、106号室の「塩崎」も事故に遭う。

「グランドマンション1番館」と「2番館」を誤認させるトリックと、管理人を誤認させるトリックの、二つの叙述トリックを愉しめる『リセット』。


『エピローグ』は、放火で焼失し、新しくなったグランドマンション1番館を売りに出している「大田原浩平」と「松嶋有香」の後日譚ですかね。


8つの物語の連作となっているのですが… 印象に残ったのベスト3は『音の正体』と『304号室の女』、『懐かしい声』かな、、、

そして、『時の穴』が次点かな… サクッと読めて、叙述トリックを堪能できる一冊でした。

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2023年03月31日

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 初めての一っちゃん( ´ ▽ ` )ノ
 何の前知識もなかったから無心に楽しめた( ´ ▽ ` )ノ
 本格ミステリの人と知ってたら、むしろ敬遠してたかも……ああいう、人間が記号化してるような小説は苦手だから……(´ε`;)ウーン…

 あんまりミステリに詳しくない人間でも容易に先が読める展開で、とにかくスラッスラ読める( ´ ▽ ` )ノ
 遅読の自分でも3~4時間で読めちゃった( ´ ▽ ` )ノ
 社会問題や現代人の心の闇も描いてはいるけど、それはあくまで薬味ていど。(むかし学習雑誌の別冊ふろくによくあった)推理クイズブックというか、さまざまなトリックの それこそモデルルームみたいな連作短編集( ´ ▽ ` )ノ
 肩がこらず、どこでも区切れて、出張新幹線のおともなんかに最適な一冊( ´ ▽ ` )ノ

 まあ、あの人とこの人、よくおなじマンションに住めるもんだなとか、こんなに犯罪が連発してたら完全に大島てる物件じゃないかとか、無理や不自然やご都合主義のオンパレードではあるけれど、こういうもんだと割り切っちゃえばどってことない( ´ ▽ ` )ノ


 マッコイの解説、ひょっとしたらふれないままで終わっちゃうのかとハラハラしたけど最後の最後でちゃんと「グランドホテル」の名前があげられていてホッとした( ´ ▽ ` )ノ
「グランドマンション」ってタイトルだもの、みんな「こういう形式」の作品を期待して本書を手に取るよね( ´ ▽ ` )ノ

2019/11/25

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2019年11月25日

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「グランドマンション一番館」には、元「名ばかり管理職」の男、元公務員、三世代同居の女所帯から独居老人、謎の若者、はてはかなり変わった管理人までと、アクの強い人たちが住んでいる。騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣―次々に住人が引き起こすトラブル。そして、最後に待ち受けていた大どんでん返しとは…。

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2019年01月21日

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ネタバレ

大好物の連作短編。
時間軸や年齢や場所や人物や…アレコレ思いつく限りの叙述トリックオンパレードだけど、繋がり方がしっくりきて、テンポよく読める。
高田さんの話、「善意の第三者」好きだな〜。おとめさんもお幸せに!最後まで残った組に幸多かれ!!

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2018年07月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

濃いわ。
よくもまぁこんだけ次々とクオリティの高い叙述トリックが書けるもんだ(褒めてる)。

グランドマンション一番館の住人たちの短編集。
とにかくほとんどの住人がヤバイ。親殺しアリ、幼児虐待アリ、年金不正受給アリ、オレオレ詐欺アリ、孤独死アリ、……一作一作がけっこう現代社会の問題にリンクしてる。
「地の文で嘘を書いてはならない」ってなことを言ったのは誰だっけ? 実は部屋が違ったり、時間軸が違ったり、ヒトが違ったりと、折原劇場やりたい放題な作品になってる。
叙述トリックって短編の方が効果的なのかもしれない。一編一編充実してて、濃いなぁ、と思える本だった。
最初は「こんな犯罪者と死人ばかりのマンション住みたくない……」と嫌悪感いっぱいだったけど、民生委員の高田さんが真面目に仕事をこなして(褒めてない)住人間の交流が見えてきて以降(その前から老人たちは独自のネットワークを築いていたことも分かってきて)、最後は滑稽にすら思えるようになった。
あ、全然ハートウォーミング系じゃないです。

なかなかの良作なのに、本棚登録が少ないのが意外に思った。
もっと読まれていい。

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2017年06月30日

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ネタバレ

*グランドマンション一番館」には、元「名ばかり管理職」の男、元公務員、三世代同居の女所帯から独居老人、謎の若者、はてはかなり変わった管理人までと、アクの強い人たちが住んでいる。騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣―次々に住人が引き起こすトラブル。そして、最後に待ち受けていた大どんでん返しとは…。希代の名手が贈る必読の傑作ミステリー連作集*

この方の作品は初めて。叙述トリックの名手なのですね。確かにトリック満載で、久しぶりに頭をフル回転させました。重くはないけれど、じっくり読み込みながら進める感じなので、読み応えはたっぷりあります。読後感も悪くないです。

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2017年06月15日

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この人の作品を読むのはこれが初めてです。
どんな話を書く人なのかなどの前知識なしに読んだので、最初は油断してぼ~~っと気楽に読み始めてしまったんですが、そうすると時系列や整合性がこんがらがってしまって、あ、これは心して読もうと、途中で姿勢を正して一気に読みました。
うまいこと出来てるなと感心しきり。
ゾワっとしてむむーっと唸ってハっと気付いてまたハテナ?となって…と、振り回されるのを楽しめた1冊でした。
連作小説であり長編小説です。

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2015年12月28日

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グランドマンションの住民たちの連作短編ミステリー。叙述トリックが効いてて私は結構好きな部類(*^^*)。それぞれのストーリーにぴりっと仕掛けが効いてて最後までワクワクして読み進め、ラストにそういうことだったのかー、と楽しく読めた。

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2022年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白さはまずまず
古い集合住宅の1番館隣に新築マンション2番館が建設されることとなり、その建設を巡り1番館居住者のストレスが募って行くところから話が始まる

短編なのに、読み進めるとマンション内の住民があちこちに登場し始め、あらゆるところで事件が起きる。
最終的に、1番館は放火で全焼し残った住民は2番館に移り暮らし始める
2021/03/08 22:44

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2021年09月20日

Posted by ブクログ

 「グランドマンション一番館」でおきる不思議の数々。

 まぁ、一番館っていうのがミソだよねって思っていたら…。
 でも、この住人がなかなか手ごわいのである。

 つか、マンションって普通、似たような家庭や収入の人が住んでないの?
 って思うのは、私が田舎にいるからな…。

 話がぐるぐるして、なんだかんだと着地するのが面白かった。
 うん。
 人生って、ある意味同じところをぐるぐるしているメリーゴーランドみたいなもんだもんね。
 
 不思議と読後がほんわかしたのである。
 全く、ほんわか要素なかったんだけどな。
 なぜ??

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2020年08月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かったが、提示されている謎の答えが分かる話も結構多かった。

民生委員の高田が事件解決のために動き回る話は、本筋と関係ない気持ち悪さがあって苦手だった(この人こそ問題ある人間なのに、と思ってしまって、素直に本筋を楽しめないというか)。そういう捻った感じが好きな人もいると思うので、好みの問題とは思うが。

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2020年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

お勧め度:☆6個(満点10個)。8章からなる連続短編集なのだけれど、微妙にそれぞれが繋がっていて、最後にはそれこそマンションの住人リストを作らないとわからなくなるような感覚に陥った。その上、話が複雑に絡み合いながら、認知症の老人目線で書かれていたりするので、よけいわからなくなった。内容はグランドマンションとは名ばかりの4階建てマンションに起きる様々な問題が浮き彫りにされまさに最後は老人ホーム的なマンションになってしまい、さらに放火事件も起こり、ごたごたしてくるし、読んでいて??と思えてくる終わり方だった。

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2019年07月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 概要
 グランドマンション1番館には,元「名ばかり管理職」の男,元公務員,三世代同居の女所帯から,独居老人まで,さまざまなアクの強い人達が住んでいる。騒音問題,ストーカー,詐欺,空き巣―グランドマンション1番館の住人達が引き起こすトラブル。そして最後に用意されているのは,どんでん返し。折原一らしさ満点の連作短編集

〇 総合評価 ★★★☆☆
 「グランドマンション1番館」の住人にトラブルが相次ぎ,住人がどんどん減っていく「そして誰もいなくなった」テイストの味付けがされているのは面白い。民生委員の高田が出てくるまでの作品,「音の正体」と「304号室の女」の段階では,最後の部分までのアウトラインはできていなかったように思えるが,高田が登場してからの作品は,より,連作としてのつながりが強い。
 登場人物が全体的に高齢であり,後半の作品は,やや悪ふざけが感じられるが,叙述トリックの名手らしく,個々の作品でちょっとした驚きが用意されていて,そこそこ楽しめる。折原一の文体,作風が嫌いな人だと,嫌悪感を感じてしまいそうな描写があるが,折原一が好きならそれなりに楽しめる佳作だろう。時制トリック,人物誤認トリックなど,いろいろな叙述トリックが楽しめる。★3かな。

〇 メモ
〇 音の正体 ★★★☆☆
 202号室に住む「沢村」という男が主人公。37歳,無職。かつては居酒屋チェーン店の店長をしていたが,「名ばかり管理職」として過酷な労働をさせらてた上で退職している。上の階である302号室の子どもの足音などの騒音に悩み注意をするが,302号室の子どもの母親は育児放棄をしているように見える。子どもが死んでいると思い,管理人を連れて踏み込むが…。
 実は,沢村は離婚を求めてきた妻を殺害し,自分の部屋の風呂に死体を置いていた。102号室の住人がその死体を発見し,警察を呼ばれるところで終わる。折原一らしい叙述トリックが用意されており,沢村達が302号室に入るシーンと102号室の住人が202号室に入るシーンが誤解されるように描かれている。
 折原一らしいえぐさが垣間見える佳作。

〇 304号室の女 ★★★☆☆
 303号室に住む「松島有香」という女が主人公。グランドマンション1番館の隣にできるグランドマンション2番館のモデルルームで勤務している。まるで,グランドマンション2番館の304号室に住み始めたように見える「牧野麻子」の手記が挿入される。麻子は,夫が有香と不倫していると思って,罠を仕掛けるが…。
 実は,麻子達は,グランドマンション2号館の304号室ではなく,モデルルームに住んでいたというオチ。叙述トリックが仕掛けられており,最後の場面で,どうしてモデルルーム勤務の店長である大田原浩平が,麻子を拘束できるのか,混乱してしまう。
 これも,めちゃくちゃな話だが,折原一らしいえぐさがある。

〇 善意の第三者 ★★★★☆
 206号室の,元公務員の高田英司が主人公。高田は退職後,地域の民生委員をしている。高田は,306号室に住む久保田綾香が会社の同僚と結婚しようとしていたとき,たまたま結婚相手がほかの女とホテルに入ろうとしているシーンに出くわし,写真を撮って綾香に送ることで,結婚をさせなかった。
 高田は,高齢者の所在不明が社会問題になっていることから,グランドマンション1号館内の老人の様子を見て回る。そこで,306号室の綾香の祖母のミヨが,既に死んでいるのではないかと疑問を抱く。年金の不正受給をしているのではないかと。
 高田は,306号室に忍び込む決心をする。306号室に忍び込んだ高田が見たのは,既に死亡しており,ミイラの姿になった久保田ミヨ…ではなく,高田の母,高田筆子だった。筆子は,高田英司に手を上げられたショックで,306号室に逃げていたのだ。また,綾香はミイラのような姿になって生きていた。綾香の結婚が破断になったのは30年前の話だったのだ(ここで,時制の叙述トリックが仕掛けられている。)。
 高田は責任を取り,綾香と結婚する。久保田家は,実際に年金の不正受給をしていたが,そのことは見逃し,高田筆子は久保田が面倒を見るということになった。
 叙述トリックの冴えは,この短編集の中でも随一。まさか結婚の破断が30年前のこととは思わなかった。オチも強烈。折原一らしい,えぐい話である。

〇 時の穴 ★★☆☆☆
 203号室の瀬沼富男が主人公。瀬沼は家賃を滞納している。瀬沼は,かなりのミステリマニアで,多数のミステリの稀覯本を持っている。
 瀬沼は,204号室の老人,佐久田芳子が多額のタンス預金をしていることを知る。瀬沼は佐久田の行動を監視する。また,地震により,203号室と204号室の間の壁に抜け穴ができたことに気付く。そこで,密室を利用し,金を奪うことを計画するが…。
 実際は,瀬沼が密室で殺害される。容疑者として逮捕されたのはグランドマンション1号館の管理人。凶器は,ロバート・エイディーの「Locked Room Murders」という稀覯本だった。
 その後,204号室の佐久田が心臓発作で死ぬ。瀬沼を殺害した犯人は佐久田だった。佐久田は,瀬沼が204号室に忍び込んでいたことなどを知り,用意していた合鍵などを使って瀬沼を殺害し,その後,殺害したときのショックなどで,心臓発作で死んでしまった。瀬沼が殺害をしたような導入部分であり,管理人を瀬沼と思わせる叙述トリックがある。また,密室を扱うという本格ミステリのパロディっぽいつくりというところも折原一らしい。とはいえ,トリックらしいトリックはない(地震でできた,抜け穴とは…。)。平凡なデキ。
 
〇 懐かしい声 ★★★☆☆
 301号室の独居老人,塚本ハルが主人公。オレオレ詐欺がテーマ。105号室の多賀稲子は500万円をだまし取られる。また,106号室の塩崎俊夫が,200万円をだまし取られる。301号室の塚本ハルのところにも,オレオレ詐欺らしい電話があるが,塚本ハルは,だまされない。民生委員の高田は,104号室の岡安亮太が怪しいと疑う。
 真相は,301号室の塚本ハルがオレオレ詐欺の犯人だったというもの。104号室の岡安は,そのことに気付き,逆に,塚本をだまそうとしていた。塚本は,娘の夫の借金を返すために,この騒動を起こしていた。
 塚本ハルもオレオレ詐欺の被害者だと誤認させる叙述トリックが仕掛けられている佳作。そこそこ。

〇 心の旅路 ★★★☆☆
 103号室の武藤留子が主人公。留子は,グランドマンション1号館の老人会の世話役を頼まれる。留子のところに謎の訪問者がやってきて,留子が返り討ちにするシーンが描かれる。
 訪問者のバックから零れ落ちた手記には,ある少女が,父親のもとを出て,状況する話が描かれていた。
 実際は,その少女は留子だった。留子は,グランドマンション1号館の8階に住む立花百合子の娘で,母親達に会いに状況したのだが,自堕落な生活をしていた母親達には愛想を尽かし,武藤ヨシの養女になっていた。
 今回訪問してきたのは石垣晋太郎。立花百合子の夫であり,留子の父だった。
 これも叙述トリックを駆使して描かれている。まるで,少女が今,状況してきて,103号室を訪れたように錯覚させている。話自体はむちゃくちゃな上に,ミステリ的な要素はなし。叙述トリックだけの話

〇 リセット ★★★☆☆
 105号室の多賀稲子が主人公。謎の犯罪者の視点が挿入される。多賀稲子は,建設されていた「グランドマンション2番館」が無くなっていると騒ぐ。
 多賀稲子は痴呆が始まっており,他の住民と話がかみ合わない。そんな中,高田が年金の不正受給で逮捕される。
 また,106号室の塩崎も事故に遭う。
 周囲の人の言動と,多賀稲子の言動がかみ合わない。稲子は「事件」の犯人が管理人だと言っていたとのことだが,管理人にはアリバイがあるという。
 「事件」とは,放火。実はグランドマンション1番館は火事で焼失し,多賀稲子達は,グランドマンション2番館に移っていたのだ。
 放火の犯人は,かつてのグランドマンション1番館の管理人だった。グランドマンション2番館の管理人は石垣晋太郎。前の管理人は職を失っていた。
 ここまでの作品で管理人の名前を出さず,管理人を誤認させる叙述トリックと,グランドマンション1番館と2番館を誤認させる叙述トリックが仕込まれている。

〇 エピローグ
 再び松島有香が主人公。新しくなったグランドマンション1番館を売りに出している。大田原浩平と松嶋有香は,どんな汚い手を使ってもいいから,グランドマンション1番館から住人を追い出せと言われていた。前の管理人を陰で操ったのは松島有香だったのか…。

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2017年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

過去と現在が入り混じって書かれていたりするので、ちょっと頭が混乱します。
折原一さん、初読みなんですが「叙述トリックの名手」と呼ばれている方なんですね~
「叙述トリック」って、頭が混乱するものなの???

しかし、ここまで犯罪者の多いマンションとは・・・・
住みたくない(笑)

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2016年12月28日

Posted by ブクログ

グランドマンションに住む人々を書いた短編(だが、連作)
登場人物に老人が多いため、高齢化の社会問題が多く、その他、子供の虐待、ストーカー…とにかくいろいろあり、飽きさせない。欲張りな内容となっているため、分かり辛い(連作な為)所もあったが、概ね面白く読めた。初読の作家さんだが、他のものも読みたくなった。

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2016年07月17日

Posted by ブクログ

ここまで訳ありな人達がひとつのマンションに集まるとは思えないけど、近所付き合いも程々がいいかもしれないし、ちゃんとしていないといけないのかもしれないし、他人を信用してもいけないし、信用してもいいのかもしれない。難しい。

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2016年06月01日

Posted by ブクログ

あるマンションの複数の住人がそれぞれの立場で起こすハプニング短編物語。ストーリーは、関連性がないように思えるが、場面場面では相互に繋がってる。まるで幕の内弁当のような味わいのあるまとまった作品。叙述トリックでそれぞれアッと驚くエンディング。登場人物の関係性が脳裏にある間に時間をかけずにいっきに読む事をおすすめ。

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2016年05月28日

Posted by ブクログ

マンションの部屋で起きる出来事が、それぞれミステリ小編になりつつ、全体で一つのストーリーにもなっているスタイル。叙述トリックっぽい内容が続いて、面白いのだけで頭の中がちょっとごちゃごちゃになってしまいました。

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2016年05月06日

Posted by ブクログ

短編のお話がいくつかあり
個人的にはどれも楽しめました。
話の最後に「そうだったんだ。」と思わず
つぶやいてしまうくらいには騙されました(笑)

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2016年04月03日

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