【感想・ネタバレ】ミニチュア作家のレビュー

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ネタバレ

ネラ・オールトマンはアッセンドルフトの古い屋敷からアムステルダムに出てきた。裕福な商人の妻となるために。しかし迎え入れられたのは冷たい屋敷。義姉であるマーリンは冷たく、夫たるブラントは家に帰ってこない。ようやく帰ってきた夫は彼女と夜を共にしようとしない。そんな花嫁にと夫は豪華なドール・ハウスを贈り物とした。そしてそこには精巧な家具だけでなく自分たちと同じような小さな人形が送られてくる。それも細分もたがわずに似せられた人形が。このドール・ハウスの作者は自分たちの生活を覗き見しているのかとも疑われるほどに。そして作者の作ったものが自分たちの運命を暗示しだしたとき、ネラは若い何も知らない花嫁から、一家の秘密を探る道へと知らずに歩みだしていた。

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2018年10月20日

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物語の主人公「ペトロネラ・オールトマン」と、夫の「ヨハンネス・ブラント」の名前、そして〈ペトロネラ・オールトマンのドールハウス〉は実在したもので、著者の「ジェシー・バートン」は、そのドールハウスを見て、着想を広げたとのことですが、まずは、その想像力の凄さに感服いたしました。

心情的には辛い内容だったのだが、物語としての完成度は、大変素晴らしいと思います。

序盤から中盤にかけては、登場人物が本当に嫌な人ばかりで気が重いなと感じた反面、人の見られたくない内面をこそこそ探っていくようなサスペンス的展開が同居し、また、それにミニチュアハウスの作品を送ってくる、謎めいた予言の薄気味悪さも重なり、やや後ろめたい思いをしつつも、読んでいて、奇妙な恍惚感がありました。

しかし、それらの登場人物の裏の顔が、後半に明らかになるにつれて、序盤の表の顔が伏線であったことを実感し、そこに当時のアムステルダムの、規律や監視で縛り付けられた時代背景が結び付きます。

そこには、男性優位や人種差別に、不自由な性といった、当時の歴史ものの作品としては、よくある展開だとも思われるが、そんな時代の中でも自分の生き方を貫いてゆくこと・・きれい事でなく、生々しい生への思いが私の胸を熱くし、また、それが周りの事情を思いやりながら、ささやかで強靱な意志を毎日維持していくことによる、心労的辛さも計り知れないものがあるだろうと、感じさせられました。

また、序盤は中途半端な佇まいに、可哀想とは思いながらも好感を持てなかった、主人公の「ネラ」も、後半の降りかかる災いが重なるに連れ、強く柔軟に逞しくなっていく姿には、勇気づけられるものがあり、またそれが、最初は不審の塊だった周りの人達(コルネリアやオットー含む)から影響されていることにも、感動を覚えました。

そう、おそらくブラント家の人々にとっても、最初はネラの同居を快く感じてはいなかった。
特に、ネラの夫「ヨハンネス」の妹「マーリン」にとっては。

しかし、それは彼女にとって、ブラント家をやりくりするための苦悩と、その裏にある秘密が重しとなっていたからであって、奇しくも、ネラが秘密を明らかにしたことが、逆に彼女らの人間関係を変えるきっかけになったことには、人生の不思議な面白さを感じました。

たとえ、その後の人生がどうであろうと、マーリンにとっては、最も幸福を感じられたときだったのではないかと思われ、そこでの最も彼女らしい姿に、人生の素晴らしさを称えたい気持ちで、いっぱいになりました。

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2022年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

描かれているのは1686年10月から1687年1月まで。
没落した名家の18歳の少女ネラ(ペトロネラ・オールトマン)が
豪商ヨハンネス・プラントに嫁ぐところから物語は始まる

ネラを顧みない夫、癖のある義妹、使用人との生活で孤独を
感じながら、正体不明の作家によるミニチュアに導かれ
彼女は成長してい

ミニチュアハウスという可愛い小物からは
かけ離れた重厚な雰囲気の漂う小説

大きなテーマにがっつりと取り組む元女優の作家さん
2作目も楽しみです、ドラマがヒットして日本で放送されないかなー…

この年代のオランダは馴染みがなくて
どうしよう…と思ったけどフェルメールが
17世紀でした(^ ^;)

主人公ネラの活躍が少なくて個人的には
義妹マーリンと使用人コルネリアのほうが
魅力的な人物に思えるのが残念

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ペトロネラ・オールトマンは実在の人物
ただし経歴(前夫から莫大な財産を相続し
ヨハンネス・プラントと再婚)を見る限り
本作はほぼフィクション

(裏表紙から)
英国書店チェーンの2014年ブック・オブ・ザイヤーに選出され
全英図書賞の新人賞と最優秀賞に輝く、TVドラマ化が決定

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2015年09月07日

Posted by ブクログ

AXNミステリーでドラマ化してたのを見て原作があると知って読んだ
ほぼドラマ化通り
とても面白いんだけど、見たドラマ以上があるかと期待して読んでしまったのでちょっと残念

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2024年05月10日

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BS11で放送された海外ドラマの方を先に見ていたのだが、個人的にはドラマの素晴らしさに軍配をあげたい。
ただ、原作の良さがあってこそ、のドラマなので、ぜひとも両方とも触れてほしい。

17世紀のオランダ。
黄金時代を築き上げた華やかな時代。
18歳の主人公ペトロネラ、通称ネラがアムステルダムにやって来た。
彼女は名家だが没落した家を救うため、大商人たるヨハンネスに嫁いできた。
が、夫は仕事が忙しく家にあまりいない。
幸いなことに夫は妻を大事には思っているようだが、なぜだが夫婦生活が営まれない。

家にはヨハンネスの妹、マーリンと使用人のオットーとコルネリアが一緒に住んでいる。
マーリンは信心深く、融通が効かない。
コルネリアは噂好き。
そして…夫がくれたドールハウスの中身を送って来てくれる謎のミニチュア作家。
人々の思惑が絡まり合い、ネラをどん底に突き落とす。
夫の秘密、マーリンの秘密。
薄衣を剥ぐような物語の展開に目が離せない。

ミニチュア作家は本作では姿をほとんど表さない。
だから、この不思議なミニチュア作家が送る物たちを心待ちに、あるいは恐怖する人々がいる。
だが物語ははっきりという。
自由意志、と。
受け取ったものをどう使うか、それは各人に委ねられている。

本作の主人公のネラは、少女から大人へ変わっていった。
この不思議なミニチュア作家に後押しされ、幸せを待つでもなく、絶望の底に沈むでもなく。
自分の人生に降りかかる苦悩を受け止め、希望へと昇華させる、強い女性に。

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2022年07月03日

Posted by ブクログ

VOCとかキャビネット型のドールハウスとか17世紀のアムステルダムとか、なかなかにときめく要素が多かったです。
ミニチュアに夢中になってしまう気持ち、わかるわー…。
読み終わって、また冒頭を読み返してしまいますね。
解けない謎や気になるその後が多すぎるけど、これはこれで良かったかも。

訳者あとがきで紹介されてたこれも読んでみたいなぁ。やっぱり17世紀オランダが舞台。
・チューリップ熱 デボラ・モガー

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2017年05月22日

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絶望の中からも、最後はほのかな希望と人々の強さ。個人的には美味しそうなお菓子やミニチュアがいっぱい出てくるところで楽しい。

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2015年10月04日

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夫は留守がちで、義妹は尊大、ただでさえ鬱屈をおぼえる不可解な結婚生活の中、主人公を更に不安にさせる、ドールハウスとミニチュアール。頭の中で勝手にフェルメールの光と影、その影を多めに盛った情景を思い浮かべて読む。
さまざまが破綻していくなか、人の悪意がおぞましい。
ミニチュア作家が謎のまま。その謎を隠れた軸に、別の人生も読ませて欲しいし、謎にももう少し近寄らせて欲しい。

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2015年09月30日

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ネタバレ

イギリスの作家ジェシー・バートン、2014年発表の小説。1686年、繁栄するオランダ、アムステルダムの裕福な商家を舞台に、18歳の新妻の成長と自立を描いた作品。面白いです。

オランダの田舎町の零落した名家の娘ネラはアムステルダムの裕福な商人、20歳年上のヨハンネスと結婚します。しかし、期待と希望を胸に訪れた新居では、優しいけれど留守がちで寝所を訪れることも無い夫、冷たく居丈高な義姉、図々しい使用人、等々に戸惑うばかり・・・。
ドロドロの昼メロのような舞台設定ですが、そうはならず、一家の危機を前に家族の絆を強めて行く、という物語。ミニチュアハウスやミニチュア作家がミステリアスでオカルティックな小道具として登場するけれど、本筋にミステリー的な仕掛けはありません。ミニチュアはネラを自立へと導く鍵であり、登場人物の心を映す鏡のような存在でもあるのですが、そのオカルト趣味は基本リアリズムの物語の中でちょっと浮いていると思います。
繁栄と自由を謳歌しているようなアムステルダムで、しかし宗教的社会的くびきはまだ人々をしっかりと捉えており、そんな中でネラの一家は崩壊して行く・・・ネラは今後強くたくましく生きて行くのだろうと思えるエンディングではありますが、結局の所誰も救えず、誰も罰せられることもない物語。面白いけれど、虚しさを感じる物語でもあります。それが歴史のリアル、なのかもしれませんが。

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2015年07月14日

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