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Posted by ブクログ
警視庁捜査一課、碓氷弘一。48歳。
腹の出た体をくたびれた背広に包み、薄くなってきた頭髪を気にするサエない中年男だ。近ごろ警部補に昇進し、第5係最年長ということもあって、鈴木係長の番頭的な存在になっている。
そんなベテラン刑事が事件解決に奔走する警察サスペンス。シリーズ5作目。
◇
その一報を受けたのは、やはり当直の碓氷だった。駒込署管内で死体が発見されたと言う。
自分の引きの強さを呪いつつ、碓氷は係長の鈴木に連絡をとった。時計は午前2時を指しているがやむを得ない。
寝起きの声で電話に出た鈴木から、事件性があり、第5係の臨場ということになったら再び報せるよう指示を受けた碓氷が待機していると、案の定出動の指令が出た。
事件現場は高級マンションの1室。リビングには1人の女性の死体。大きく目を見開いたまま息絶えていた。
通報したのは帰宅したばかりの夫で、沈痛な面持ちで捜査員からの事情聴取に答えている。
1人で室内を見回していた碓氷は、後輩の梨田が鑑識と何ごとか話しているのに気がついた。2人は壁の1箇所を気にしているようだ。
碓氷も近寄って梨田が指さした場所を見てみると、そこには何かの紋様が 20 ㌢ 四方ぐらいの大きさで刻まれていた。
( 第1話 )全26話。
* * * * *
殺人現場に刻まれた不思議な紋様。妻の遺体を発見した鷹原道彦によると、朝の時点ではなかったということでした。
さらに鷹原は、その紋様について、ペトログリフと呼ばれる古代文字に似ていると言いました。鷹原は順供大学教授で考古学者であり、殺された妻は鷹原研究室の元教え子だということです。
以上から、その紋様は事件と何らかの関わりがある可能性があるのではと、碓氷たちは考えます。
ということで今回もミステリー色の濃いワクワクするような幕開けです。
そして駒込署に捜査本部が設置され、例の紋様については碓氷が専任で調べるよう特命が下ります。地取りや鑑取りといったオーソドックスな捜査とは違う方面からのアプローチは、もはや碓氷の専売特許といったところです。
さてそうすると問題は、専門的なスキルを持ち碓氷を輔けてくれる相棒をどうするかです。困ったことに今回は、『触発』の岸辺和也や『エチュード』『マインド』の藤森紗英のように、最初から用意されているわけではありません。鷹原研究室は捜査対象となるため、除外されます。
碓氷が苦労して見つけ出したのは、なんとユダヤ人考古学者のジョルジェ・アルトマン博士。ただし、日本の大学で教鞭を執る研究者であり、日本語も実に流暢に操ります。
しかもこのアルトマン博士、民俗学や言語学にも精通しており、多角的な見地から事件と向き合えるため、紋様の謎解き以上に碓氷の捜査を支えてくれます。
ということで、あとはいつものパターンです。碓氷がアルトマンに能力を最大限に発揮させ、紋様の謎を解き犯人を特定し、事件を解決に向かわせます。いつもながら心地よい終盤でした。
本作で印象的だったのは、アルトマンが碓氷を評した2つのことば。
1つ目は「あなたはまったく刑事らしくない」です。
基本的に人というものを信じている碓氷に対する感慨です。(「俺は基本的には性善説だ」の半沢直樹とよく似たスタンスですね )
2つ目は「あなたは、不思議な人だ。媒体のような人だと思います」です。
捜査に不慣れな専門家に居心地の悪さを感じさせることも萎縮させることもなく、事件そのものや捜査本部との仲立ちをしてくれる碓氷に対する称賛です。謂わば碓氷という OS が、専門家というアプリケーションソフトの利便性を十二分に活かしているような感じでしょうか。
裏方に徹し相棒の活躍をお膳立てするという碓氷が、とてもカッコよく見えます。
そんな碓氷弘一シリーズ。なかなかのおもしろさでしたが、 2015 年出版の6作目『マインド』以来、続編は出ていないようです。
このシリーズの特性を考えれば、テーマの設定自体が大変そうなので仕方ないのかも知れませんが、やはり淋しさが拭えないのは確かです。
こうなれば、他のシリーズに碓氷がゲスト出演するなんてことを願っています。
碓氷弘一警部補、とりあえずはお疲れ様でした。
教授が好き
毎回変わったスペシャリストとコンビを組まさせれる碓氷さんですが、今回のアルトマン教授は特にキャラが濃くて面白かったです。ペトログリフの謎も良い感じ。また教授が活躍するお話出して欲しいな。
Posted by ブクログ
面白かったよー!
殺人現場に残された古代文字なんて謎解きイベントマニア好み過ぎる設定。
久しぶりに夜更かしして読み切ってしまった。
今野敏さんの小説読むのも初めてだし、このシリーズ読むのも初めてだけど、最初から読みたくなって第1作目の「触発」をさっそく買ってきてしまった。
主人公の碓氷刑事の個性が薄い気がするけど、相棒のスペシャリストを際立たせるにはこんな感じでいいのかも?
Posted by ブクログ
碓氷刑事と協力して捜査のお手伝いをすることになった大学教授。考古学の専門家が刑事とは違う視点で事件を解決に導くところに、東野圭吾のガリレオを思い出した。シリーズ第5作らしいので、前作も読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
シリーズ5作目、今回は2つの殺人事件とその現場に残された古代文字を巡る物語です。毎度おなじみ、今回の碓氷の相棒は大学教授で考古学を研究するアルトマン教授。
現場に残された古代文字・ペトログリフそのものは前作、前々作ほどの興味はわきませんでしたが、それでも事件の裏に潜んでいたいきさつにはもの悲しさを覚えます。
大学の研究室という閉鎖的なコミュニティに巣食う複雑な人間関係が事件の引き金の一つになっているわけですが、と同時に研究者であればこその「事実の確認と検証」という本来とるべき行動の欠如ももう一つの引き金になってしまった。事象があまりにも身近すぎて、研究者といえども適切な距離感を保った態度で物事に接することができなかった結果ということでしょうか、なんとも皮肉な事件だったものよのう、と思ってしまいます。
事件解決後、去り際にアルトマン教授が残した言葉、「あなたは触媒のような人だ」の一言は本シリーズを象徴するかのような言葉ですね。どの作品でも碓氷が相棒の力を引き出し、事件を解決に導いたことは間違いありません。
それと、個人的にはアルトマン教授が浅井に対して指摘した「学者としての事実の確認と検証を怠った」というセリフが印象深かったですね、学者に限らず、こうしたある種、淡々とした態度はとても重要なものではないかと感じました。
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『俺が当番の夜には、必ず何かおきる。』お馴染みのフレーズから始まる碓氷弘一シリーズ第5弾。今回は考古学の先生とのコンビで事件を解決。安定の今野敏作品というところかな。
Posted by ブクログ
2022年6月13日
物知りだなぁ、今野敏。
ペトログリフや神代文字。
記紀より以前の古代史、
キリスト教の12使徒。
逆さ十字
アルトマンや尾崎、浅井が博識なのはもちろんだが、それを書いている今野敏が更に博識なのだ。
そして、碓氷やアルトマンの人となり、
職業らしさも書き分けている。
魅力的な人物像。
母語でない字を正しく書くのは難しいというのは実感するこの頃だ。仕事と直結した感想だ。
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読んでいるうちに、ダン・ブラウンの小説を読んでいるような不思議な気分に。
今野敏の小説にはいくつかの気づきがいつもある。人のキャラクターに関することだったり、モノの見方・視点であったり。
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4月-15。3.0点。
碓氷弘一シリーズ。考古学者の妻が殺害される。
現場にはペトログラフと言われる古代文字。
妻は学者の教え子。大学の研究室の人間関係が複雑。
そして次の殺人、ペトログラフもあり。。
学者が捜査に参加し、大活躍。
サラッと読める。
Posted by ブクログ
高名な考古学者の妻と弟子が相次いで絞殺され、現場には古代文字「ペトログリフ」が残されていた。この文字について調査を任された警視庁捜査一課の碓氷弘一警部補は、専門家を訪ね歩くうちに最強の助っ人とめぐりあう。それは、考古学、民俗学、言語学に通じる不思議な外国人研究者、アルトマン教授だった。考古学界を揺るがす惨事について、いにしえの文字が伝えようとしている意味とは?刑事と学者、異色のコンビが、殺意の正体に迫る!
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殺人事件の現場にペトログリフという古代文字が残されていた。というわけで捜査に古代文字の学者が絡んでくるという、日本版ラングドン教授のようなお話。
面白いけれど、古代文字やキリスト教の逸話を犯人探しに活用するのは、ちょっと現実味がないような、こじつけなような気も。
Posted by ブクログ
う~ん。悪くはない。
悪くはないけれど、今野さんに対する期待度がいつも高いせいか、ちょっとだけ残念感も。
碓氷にしてもアルトマン教授にしても、個性的ではあるけれどいまひとつパッとしない。
印象が薄いというか、あっさりしすぎていて後々まで印象に残るようなキャラクターではないような気がした。
碓氷のシリーズは「エチュード」しか読んでいない。
警察外部の人間と協力体制のもと捜査をしていくのがシリーズの特徴なのだろうか?
「エチュード」ではプロファイリングの専門家が協力者として捜査に参加していた。
珍しいせっかくの考古学もの。
ペトログリフを題材に選んだのだから、もっとそこを中心に物語が展開してほしかった。
なのに題材を料理しきれずに、適当に「〇〇らしさ」を盛り付けて完成品にしてしまった感じがどうしてもしてしまう。
もったいないなと思う。
今野さんならここからいくらでも物語を深く拡げていけただろうにと。
肝心の結末部分も消化不良のようなスッキリとしない感じが残った。
事件現場に残されたペトログリフも、それを残した理由も、いまひとつしっくりと来るものではなかったし、何よりも「この教授である必要がある?」という疑問も。
「エチュード」では視覚と死角という題材が上手く活かされていて面白かった。
一般にはあまり馴染みのない考古学をもっと題材に取りあげたのは珍しかったけれど、それだけにやはり「もったいないな」と思ってしまった。
Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ推理小説。2時間ドラマでお馴染み警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズ。
『おれが当番の夜には、必ず何かが起きる。』から始まる普通ではない事件に、必ずスペシャリストの相棒がつくシリーズ。今回は考古学者のアルトマン教授。
設定は面白いが、2時間ドラマでお馴染みの作者なので、そんな感じの気軽な内容。さらりと何か読みたい時にはよいかな。