【感想・ネタバレ】最澄と空海(小学館文庫)のレビュー

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梅原氏が書かれた天台宗の本覚思想についての本や、空海の思想に関する本は別々に読んでいたのですが、本書は、最澄と空海を対比している本、ということでとても興味深く拝読しました。最澄と空海は平安時代に生きた日本仏教の二大巨頭で、この二人の交流関係自体もドラマになりそうな波乱の展開を見せます。

私自身、それぞれの教え(天台宗、真言宗)についての基礎知識はあったのですが、梅原氏の明快な解説で理解がさらに深まった気がします。そして本書の最大の特徴は、題名にもあるように両者の対比です。本書を通じて感じたのは、当たり前かもしれませんが、両者には共通点もあれば相違点もあること。共通点は、例えば山岳への想い(梅原氏によれば山にこもる動機は異なりますが、いずれにせよ山岳仏教を切り開いたこと)。これによって日本古来の神様と外来の仏教が融合し、山川草木悉皆成仏のような思想が生まれたことです。また何より二人の共通点は、衆生済度、つまりいかにしてより多くの人を救いたいかという強烈な想いではないでしょうか。空海という人は、まさに大日如来と合一された存在のようで、見方によっては非人間的(非感情的)な印象も受けるのですが、こと衆生済度については最澄と同じくらいの純粋で強烈な想いを抱いていた気がします。

他方、相違点はかなり多いといえるかもしれません。梅原氏は最澄を円(中心点が1つ)、空海を楕円(中心点が2つ)というメタファーで表現されていますが、これは面白かったですし納得できました。1200年も前の日本にかくも偉大な思想家が2人同時に存在していたこと、しかもその記録についても、豊富とは言えませんが十分残っていることは日本の凄さではないかと感じました。

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2023年05月02日

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これはもうとにかく最澄像が素晴らしい。弟子が守りたくなるような師。ものすごい納得した。初期天台が好きな私にはたまらない内容で。前半の最澄様がすごかったのですみません空海の印象が漠然としている…。本当に梅原先生空海派なんですか?

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2012年09月10日

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哲学者である筆者が、最澄と空海について自身の視点から人物像を描いている。鈴木大拙のイメージで読み始めたけど、予想よりカジュアルで読みやすい。

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2021年12月22日

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最澄と空海、同じ時代に行きた僧でここまで差異がかるのが面白い。
とても分かりやすく書かれていて読みやすかったが、真言宗はやはり難解だな...と。
高野山は行ったことあるので、今度は比叡山、神護寺に是非行きたい!
また、徳一という人間も凄く気になった。謎だらけのようだが、彼の資料が今後出てきてくれるといいな...。

重複して説明してあるところが多かったので☆マイナス1にした。

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2020年05月06日

Posted by ブクログ

○最澄と空海の人物学と思想を分かりやすく理解出来る一冊


過去に梅原さんの他の書を読んで、最澄と空海についてもっと知りたいと思い購入しました。

本書では二人の生い立ちと天台宗、真言宗の成り立ち、お互いの確執などを梅原さんの考えを交えて解説しています。(もともと解説は難しいと思いますが、現代の私達にも分かる様に易しく解説していると感じます。)

この後に続く鎌倉仏教はこの本を読んだあとだと良く理解出来るのではないかと思います。

私も仏教学についてはまだ勉強不足で理解しづらい所が多かったですが、彼らが日本仏教にもたらした物と今日まで続く日本人の神仏習合の心の一つを創造していったのだと勉強になりました。

この本を読んだうえで、比叡山と高野山に行って二人の考えに更に触れてみたいと思いました。

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2020年03月22日

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ネタバレ

最も澄める人ー最澄   空と海のような人ー空海

誰がつけたが知らないが、名前が人柄のすべてを物語っている。この偉人二人が同時代に存在した経緯とかを知ると、何かに導かれているようにしか思えない。

 タイトルの通り最澄と空海の詳しい概略をまとめてくれている本。これだけで二人のことがだいぶわかる。これに加えて、司馬遼太郎や陳舜臣の空海の伝記小説を読むことを進める。最澄の伝記小説はなんか無い。誰か書いてくれないかな。
 天台宗と真言宗の教義についても簡単な解説があるんだけど、そこはやはりハードルが高い。これ以上ないくらい砕いてくれているけれど、素人には難しい。とはいえ、そこを飛ばして読んだとしても非常に勉強になる一冊。

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p61  最澄と空海の出会いの意義
 最澄にとって空海は、自分が学ぶことのできなかった密教の知識を唐から持ち帰ってくれた恩人。
 空海にとって最澄は、無名だった身を取り立ててくれた恩人。彼がいなかったら唐から18年も早く帰った罰を免れがたかったであろう。もはや命の恩人。

p72~79  法華経について
 法華経は、声聞(釈迦の教えを直接聞いた教徒)や縁覚(釈迦の直弟子ではないが仏教徒として修業する者)が救われる小乗仏教とすべての民が等しく救われるという大乗仏教を統一すべく登場した一乗仏教を説いている。

p86  徳一
 会津若松、瑠璃光山勝常寺に建つ像がある。最澄と大論争を繰り広げた南都仏教の代表が、徳一。
 よく知られていない人物らしいが、会津というだけで興味がわく。

p122  親鸞は最澄の門下
 肉食妻帯OKの宗派を作って有名な親鸞和尚。かれも延暦寺から出てきた。
 最澄は真の信仰を人の内面に求めた。戒律に囚われて無を目指しているのは本末転倒。外面よりも内面を磨くことに注力せよ。言いかえれば、心が完成されていれば体裁なんて気にしなくてもよい。
 これを拡大解釈していった結果、親鸞に行き着く。
 「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」

p136  未完の最澄
 最澄は性格からいっても学問の面からも未完である。しかし、それ故にその弟子が師の学問を完成させようと尽力し、深め、後世に継いでいくのである。
 逆に空海の真言宗は、空海自身が天才であるあまり一代で完成されてしまった感が強い。

p147  森と神道と仏教
 日本に密教が浸透したのは、日本古来の自然信仰が関わっていそう。密教はヒンズー教に強く影響された自然に関わる仏教である。

p257  仏教の変質

p347  不動明王が日本で好かれるわけ
 アイヌの土着宗教では火の神が珍重された。火の神はすべての神々と人をつなぐ役割を持つ。不動明王も大日如来の現生身であり、憤怒を表し火を背負っている。日本に古来からある形と似ているから受け入れられやすかったのだろう。

p364  天台宗vs真言宗
 天台宗は可能性⇔真言宗は完結
 これは最澄と空海の人柄そのままである。

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 悲しみの人、最澄 ⇔ 自信にあふれた人、空海
 
 こういう二人の対比は面白いなぁ。いくらでもでてくるんじゃないだろうか。


 泰範をめぐる略奪愛は本当にもぉ…

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2014年06月27日

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最澄と空海。鎌倉新仏教に対する、加持祈祷の古い仏教として教科書では扱われていましたが、平安の2巨人を梅原猛さんが偲びます。彼らの生い立ち、思想までをカバーしてるので、どんな宗教家だったのかを理解する一助になるかと思います。

個人的に発見だったなと思うのは空海。空海のえらくポジティブな仏教は、閉塞感ある現代にこそ意味がありそう、そんな気がします。

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2010年08月11日

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高野山で買って帰ってきてようやく読みました。
本当は高野山に行く前に読んでおけばよかったかな~

とりあえず最澄と言う人はすごい人だと思いました。そして空海はものすごいカリスマですね。当時の日本で文化の最先端を担っていた僧という存在は本当に考えに考え抜いて自分の信仰と言うものに向き合っていたんだろうと思います。それだけでもすごいな。

今の感覚で考えてはいけないのでしょうが確かに弘法大師は何でもありの方ですね。神格化されても無理ないかなあ。その分最澄の方が人としてすごいな、と思いました。今度は比叡山にも登ってみたいなあ~

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2010年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史の教科書では、どっちが何教を広めた偉い人
というのを覚えさせられるぐらいが関の山だった最澄と空海。
無宗教な上、6年間ミッションスクールに通っていた自分にとって
仏教というのはまったくの未知の存在。
入門編としてとてもわかりやすく、面白かった。

シュメールの神話で、都市文明を作った英雄ギルガメシュが
最初になしたことは森の神の殺戮、というのは興味深い。

自分がどうしても仏教に馴染めない所以として
この中にもあるがすっかり葬式仏教になったせいなのだろうと思う。
逆に山は神と死者の住処であるという本来の考え方には
すんなりと入っていける。

戒律の軽減化というのは、広めるにあたり大切かもしれないが
仕来たりを守ってきた者からすればとんでもない異端であり
反発するのも当然と言えるだろう。
キリスト教を学んだときも感じたことだが
なぜ他の宗教をけなすのだろうか。
愚問と言えば愚問なのだが。
どうしてもそのあたりへの疑問が、宗教というものを
異質にしてしまうように思う。

入門編として次へのステップにするには、
丁度いい難易度の本だと思う。

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2011年07月13日

Posted by ブクログ

■空海を知るには最澄を知るべし■

 空海は、同時代の先輩格であり、エリートであった最澄との対比で見ることで、輪郭がより際立つ。二人は偶然にも同じ遣唐使団で唐に渡っています。最澄は国費で、空海は自費。まずは本書でこの辺の事実関係を押さえた上で、HNK取材班の「「空海の風景」を旅する」を読むのがオススメです。

 この著者、梅原猛さんの文章は、他の著作もそうなのですが、何とも心が和みます。瀬戸内寂照さんが、「小説を書いたら私くらいにはなれる」と言ったとか何とかいう話もなるほどと思います。

 なお、最澄の偉業を知りたい方は、本書の後に「三人の祖師―最澄・空海・親鸞」を読まれる事をお勧めします。

 本書は、それぞれの彫りは浅いですが、まとめ或いは入門としては好いと思ひます。

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2010年06月07日

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