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感情タグBEST3
Posted by ブクログ
恐らく今までの例に漏れず不定期に小説誌に発表された短編を寄せ集めた作品集であろう、内容も怪奇小説、人情小説、はたまたエッセイめいた私小説などヴァラエティに富んでいる。
それらの作品に通暁しているのは透明な視線で描かれた抑揚のない文章。ただこれはけなし言葉ではなく、そういった文章であるのにも関わらず登場人物達の彩りが鮮やかであること。
特に紋章上絵師を主人公にした一連の作品群はもう縦横無尽ぶりの独壇場である。それ故、それらが最も印象に残ったことは云うまでもない。
ただ、不思議なのはいやに「死」を結末にすること。特に美しい女性に対し、その色が濃い。
これは、使い古された言葉だが、「滅びの美学」を泡坂氏が老境に入った今、如実に意識しているのではないだろうか。紋章上絵師として、奇術師として、そして作家として去り際は粋で美しくありたい、そういう願望が見え隠れしているように私は思えるのである。