【感想・ネタバレ】ディアスポラのレビュー

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Posted by ブクログ

難解さで知られるイーガン作品のなかでも、比較的とっつきやすいと思います。
人間の、というより知性のアイデンティティを極限まで突き詰めた小説です。

ちなみにとある漫画で「イーガンを理解している人はいないけど、理解したふりをするのが通の読み方」みたいなことを、さもSFあるあるっぽく言ってました。
そういう斜に構えた読み方はせず、純粋に楽しみましょう。

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2019年07月07日

Posted by ブクログ

グレッグ・イーガンの作品は、それを読む前と後で読者の考え方を大きく変える程の力を持っているが、この本も例外ではない。

ストーリーを支える設定としての科学的考察があまりにも専門的すぎる(しかもあらゆる科学ジャンルを横断する)ため、1ページめくる毎にWikipediaを開くなんてことがしょっちゅう起こる。

しかし、文章の向こう側で何が起こっているのか、用語を調べながら必死に内容を咀嚼するのは、それでとても楽しい作業だった。
どうしても理解できないと、ものすごく悔しいし、もっと理解したいと思う。それで関連する本を買って読み漁ったこともある。

もちろん詳しい考察は適当に読み飛ばして、想像力でストーリーを補うこともできる。そしてそれでも十分に内容を楽しむことが出来る。

表面的にストーリーを楽しんだり、反対にどこまでも科学的考察に深入りしたりすることも出来る。つまり複数のレベルで楽しむことが出来る。何度読み返しても新しい発見があるので飽きない。
「ディアスポラ」は、そのように複雑な魅力を備えた良書だと思った。

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2018年10月14日

Posted by ブクログ

30世紀を舞台に、ソフトウェアによって生み出された
主人公ヤチマの冒険譚。

ヤチマの誕生を描いた第1章では、
ソフトウェア上での知性・人格・自我の生成プロセスが丁寧に記述されており、
難解ながらも読み応えあり。

その後、章ごとに、情報科学、数学、遺伝子工学、天文学、と、
多岐にわたる科学分野を横断しながら、
人格をアップロードしなかった肉体人とのコンタクト、
宇宙へのディアスポラ、ワープ航法の技術開発、といった旅が展開。

物語が進むにつれ、身体的、時間的、空間的な制約が次々と外され、
人類はどこまで行きつけるのか?、想像力をかきたてられた。

本作にテーマや世界観が近い作品を、関連順に。
 ・『アッチェレランド』(チャールズ・ストロス)
 ・『順列都市』(グレッグ・イーガン)
 ・『都市と星』(アーサー・C・クラーク)
 ・『know』(野崎まど)
 ・映画『マトリックス』シリーズ

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2017年08月20日

Posted by ブクログ

まさに、ハード・SF。圧倒的な時間とスケールの世界が描かれる。章立てが変わるたびに次元が変わってその世界観にクラクラした。

原子やワームホールの理論的に難しい話はさておき(しかも話の核ではなかったし、よく出てくるコヅチ理論の位置付けも謎だった)、肉体を離れた後の人類が、ソフトとして「生み出され」、人の「意識」や「思考」を持ち「交流する」。肉体を持つ人々は肉体、遺伝子、神経に手を加え進化を遂げている。
そんな世界の話だけでも充分夢中になれるのに、次々に高次の宇宙が現れて、その宇宙の真理を知っているのは、真理は何なのか…私たちの想像を超えた思考と宇宙の話。ひたすら圧倒される。

でも物理空間をせっかく脱却できたのに、自分たちがトカゲ座の二の舞にならないよう肉体に近いCZポリスとクローンで、宇宙空間に出なければならないことが皮肉な感じがした。肉体を持たずに広域に散らばるイメージがなんか矛盾している。


理論やストーリーが、綿密で面白いかはちょっと微妙だけど、こんな宇宙の捉え方、発見があるのかもしれないと垣間見られただけでも熱くなれる!
アーサークラークの「幼年期の終わり」をちょっとだけ思い出した。

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2017年07月20日

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これでもかとSFが詰め込まれつつどんどんとスケールが大きくなっていく物語が、よくわからない部分がありつつもとにかく良い。

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2016年10月29日

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 この頃、星空を見上げると、ある感慨にうたれる。この宇宙にはいろんな世界がある。他の星の生命もいるかも知れない。宇宙人もいるかも知れない。
 もしかして自分もそこに到達できるかも知れない。と思ったのは子どもの頃。
 星々の世界があると思っても、もはや自分にはあの星々に到達することはあり得ないと今は思わざるを得ない。そのことにある感慨を覚える。ましてやこの宇宙の外など。しかしそんな小説を読もうという気はある。なぜだかよくわからない。

 すごいSFだけど、とても読みにくい。
 という評言はまあ正しい。私も最初の三分の一くらい読んだまま、数年うっちゃっておいた。
 まず最初のアイディアは、人間がその精神をソフトウェア化し、ヴァーチャル環境に移り住み、肉体人と二極化するという未来(ソフトウェア化しつつも、機械の身体にその精神を収めるグレイズナーの存在も)。そのヴァーチャル都市、《コニシ》ポリスで人工知性ヤチマが生まれるさま、ヤチマが《コニシ》ポリスを見聞きするさまが描かれる。
 次のアイディアが中性子連星の想定外の崩壊によるガンマ・バーストで地球上の生身の生命が死滅してしまうというもの。当然、ポリスに逃げ込むしか生き延びる方法はない。私はこの辺で挫折していたのだが、このあとあたりから、疑似科学理論はとても難しいものの、話は快調に進んでいく。作品世界での時間もどんどん流れていく。
 現実世界との接触を失うまいとするポリス《カーター・ツィンマーマン》に舞台が移る。ここで登場するのがコズチ理論という物理学。空間に時間を加えた4次元にさらに6つの次元を加えた10次元がこの宇宙であり、素粒子はそれらの次元を結ぶワームホールの口であるという理論。コズチ理論に基づき、ワームホールを抜ける超高速航法を生み出して,他の知的生命を探しに行こうとするがうまくいかない。そこでポリス住民の志願者すべてが千のコピーを作って、千の方向に宇宙船を飛ばす「ディアスポラ」計画が発動する。
 「ディアスポラ」計画により、知性体・トランスミューターの足跡が捉えられ、彼らがこの宇宙より上位の宇宙に移動していることがわかり、修正コズチ理論を駆使して、彼らもその宇宙、時間1次元と空間5次元の宇宙に移る。ここの描写がまたすごいのだが、トランスミューターはさらにその宇宙もすでに去っている。ここから先、『タウ・ゼロ』以上のスケールになって、唖然と口を開けている他ない方へ話は進んでいく。
 そして結末まで開いた口がふさがらないものと覚悟すべし。

 そして、今日もまた口を開けて夜空を見上げるのだ。スカイツリーを、じゃなくて。

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2016年02月05日

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色々な作品、映画をみても、これ以上の切なさを感じさせるラストは出会えないかもしれない。イメージの極致。

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2015年07月28日

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圧倒的スケールにして緻密。読者を選ぶ物語ではあるけれど、量子力学と認知科学のある程度の知識があれば、何とかついていける。ただし、これは宇宙オタクを満足させるためだけの衒学的な語りなのではなく、こういった舞台の中でしか語り得なかった物語なのではないか。知性とは何かということを読みながらたくさん考えた。
非知性ソフトウェア創出が作り出したヤチマという個体が〈私〉を獲得するまでの18-54pのくだりで心を鷲掴みにされ、そこからは理論的な部分が少々わからなくても一気に読み進められた。一気に読む、ということが褒め言葉ではないと思うけれど、読まずにはおられない、この物語と少しでも多くの時間結合していたい、そう思わせる素晴らしい読書体験。

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2013年04月26日

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すごく難解で世界観が理解できるのかあやふやなまま読み進めましたが、ハマリました。
とてもスケールが大き目の前に広がる宇宙が頭の中に浮かんできます。さすがに多次元の空間は想像しがたいですが・・・
人が肉体を捨てて生きていく世界、孤児として創出されたヤチマが宇宙の果てまでも追求する真理。
何度読んでもあきません。
読めば読むほどもっと理解したくなる作品。

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2012年08月19日

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とにかくスケールが圧倒的。
それぞれのパートで用いられる個々のアイデアが非常に独創的でよく練られており、それだけでも楽しめたが、特に最後の1節、結末の感動は他の小説では絶対に味わえないものだったと思う。

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2011年10月04日

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理論が……理論が……わたしゃ、アホや。

「ワンの絨毯」あたりまでは何とかイメージできたけど、そこから先は読みながら、WEBでいろいろと調べる(翻訳の山岸氏もそういう読み方もありと訳者後書きに書いている)。

ラストが好きです。孤児が帰っていくところが。

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2010年10月09日

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悶絶すほど難しい、が要所要所に見られる、人々の生き方に大きな感動がある。

また、スケールが大きすぎるがゆえに、一人の人としての生き方が非常に良く描かれた作品だと思った。すべてを読み終え、最初のくだりを読み直した時、読んで良かったと強く感じた。一度目は理解に精一杯だったからだ。二度目は風景を感じた。再読が非常に楽しみだ。

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2010年07月28日

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最初から最後まですばらしかった。
文系の自分には科学的な話はまったくわかりませんが、そんなことは関係なく面白い。
(解る人にはもっと楽しいのだろうな、と思うと羨ましいですが)
たった二文字にこめられた作者の哲学に感動。

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2009年10月04日

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肉体に縛られない、肉体無しでの出発点で個を獲得するというものとは。
ヤチマは長い長い旅をして吸収しては切り離し、時にとんでもなくのんびりしてみたり、でも割と大冒険。
わたしは文系脳なので、理数脳の文はチンプンカンプンですが、一番良い方法は読み飛ばすことです(笑)

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2009年10月04日

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めちゃくちゃ読むのに時間かかった。そして全部理解できたとは言い難い。それでも「読んでよかった、SFってすごい」と唸らせる。宇宙はどのように広がっていて、人類はそれをどのようになら体験・知覚できるだろうかという想像力の限界に挑むハードSFの極地。

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2022年12月22日

Posted by ブクログ

あまりの壮大なスケール。はっきり言って難しすぎてついていけない所があるが見事な大法螺イーガン節である。すばらしい。

これまで読んだ作品と比べるとユッタリとしたストーリーで、解説の大森望氏が指摘するようなビークル号的古典的冒険譚の香りもある。もう少し異世界の細部をギリギリ書いて冒険譚風味を出して、という気はするが、それじゃテーマとそれるし冗長か。

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2018年11月05日

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ネタバレ

大変な大作。作者はもちろんのこと、読む方にも根気と体力が強いられる。
好きな場面はヤチマが自身の精神を統合し、「ヤチマ=自分」と理解する場面。というか、それまでの分裂した自我と子宮プログラムの中での精神の産出の描写。嵐の中の船のような気分になるけれど、いつ、どうやって私たちが、自己という世界とのリンク媒体を手に入れたのかが想起される。

グレッグ・イーガンの小説では、緻密なSF描写・設定に加えて、人間の心理を暴くような哲学的命題が魅力の一つになっている。今回は哲学的・心理的描写は二の次に置かれ、高次元宇宙への限りない飛躍を主題にしている。(ただし、それが出来るのはポリス生まれのヤチマのみで、肉体を持っていた人類は自身の変化に限界を見いだして果たせない。その点が人間の心理と科学との摩擦を扱うイーガンらしい)
人間の好奇心の可能性を最大限に描き出す内容は訳者解説者等の言にあるように王道SFでもある。ただその主題を全うさせるための設定が難解すぎて、万人受けどころか、SF好きにも読むにはかなりの苦痛を強いられる。正直ワームホール理論あたりは全く理解できなかった。

でも! グレッグ・イーガンのそんな作品への真摯な姿勢は、私は個人的に大好き。気の遠くなる宇宙への冒険は、読むだけで辛いしキツいし大変だけど、壮大で好奇心を満たしてくれる。自分を複製して宇宙の果てへ送り出すところと、5次元だったかな、ヤドカリが高次元生命体として出てくるあたりは「アッチェレランド」に似てた。また「ポリス」の住人であるガブリエルとブランカのカップルが、その知能のために生きていくことに意味を見いだせなくなって自殺してしまうのも好き。
個人的にはポリス生まれの生命体の心理描写をもっとして欲しかったかなぁ。人類の模倣でなくて、もっと独特な思考形態の生き物として。そういった意味で、「絨毯」の閉じた精神世界は興味深かった。

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2020年08月21日

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初めてグレッグ・イーガンの作品を読んだ。想像以上にハードSFだった。最初から難しい。脳のシナプスを活性化させ、目から入ってくる文章から画像を生成し、脳みそに汗をかきながら読んだ。涙ぐましい努力(自分的には)の結果、最初の部分はかなり楽しめた。

この最初の部分は、非常によくできていて、生命の誕生(コンピューターの中の世界だが)のプロセスを臨場感と共に思い切り楽しめる。その部分があるからこそ物語に引き込まれ、最後までドキドキしながら読むことができた。

後は大宇宙を移動しながら、時には次元を越え、時には別宇宙に飛び、自分のクローンを作りながら永遠の旅をする。

数学やら物理やら、やたら難しい単語が出てくるが、分からなければ、自分が感じた語感を信じて「こんなものかな」と思いながら読み進めればいいのではないだろうか。そういえば、用語解説が後ろの方にあるので、分からない単語や概念が出てきたら参照するとよい。ただし必要最小限の単語しか解説されてないので、後は読者の努力が必要になる。読んでいて大きな迷子にならないためにも、イーガンの作品に馴染みがない人は最初に目を通しておくといい。

ハードSFは細かいことは気にせずに、分からない部分も含めて分かったふりをして、なんとなく著者の描きたい世界観を楽しめればいい、と個人的には思っている。ディアスポラも感覚で読んだ。それで楽しめたのだから、これはこれで正解だったのだろう。

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2015年10月25日

Posted by ブクログ

最近(一部で)超話題のウルトラハードSF『ディアスポラ』を読破!!「近年のSFでは最高」だとか、「イーガンの頂点の一つ」だとかの評価があったので、ずっと読みたかったんですよ。
グレッグ・イーガンって人はすごい作品を書くのはわかってました。『万物理論』は難解ながらもとんでもない方向に行っちゃうところが刺激的だし、『しあわせの理由』や『祈りの海』なんかは「技術とアイデンティテイ」という問題を考える上で重要な事柄を扱ってて興味深い。とにかく、いまホットな人なんですよ!(力説)
『ディアスポラ』の評判は聞いてたんですが、近くの本屋になかったので、いままで読んでなかったのです。この前、渋谷による用事があったのでついに購入しました。
で、読み始めたんですが。。。やばそうなニオイが。500ページあるのは最近のSFの風潮でいいんですが、20ページの用語解説・・・。しかも、用語解説よんでもわけわかんない・・・。
まぁ、こんなのは読み始めりゃ何とかなるもん!



・・・・僕が間違ってました。


のっけから「ソフトウェア生命体の誕生」というわけわかんないパートだし・・・。この世界にいる三種類の知的存在は肉体人、グレイズナー(ロボット)、ポリス市民(コンピュータ生命体、ソフトウェア)なんだけど、主要登場人物は一番感情移入しにくいポリス市民がほとんどだし。話はもっぱら電脳上ですすむし(物理法則無視のよくワカラン世界)。場合によっては5次元とかにいっちゃうし・・・。

すごかった!(わからなさが)

いや、SFは読みなれてるつもりでしたが、甘かった・・・。こんなふやけた自分はレンズマンから読み直します。ありがとうございました

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2014年12月14日

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グレッグ・イーガンのソフトな人々が描かれたハードなSF作品です。
人類の多くが肉体を捨て、意識をシミュレートできるコンピュータ上に生活環境を移した世界で、問題に直面した人類の外宇宙への進出が描かれます。
そして、ハードなSFだけに、その辿り着く果てである結末も、ハードボイルド(煮詰り過ぎ)です。

<そんなに簡単に、ヒトが身体を捨ててコンピュータに移り住むの?>
”私”という意識は、身体ではなく、脳内の電気的、化学的な変化自体でもない。
脳内の電気的、化学的の変化が、連続的な意味のある変化の場合に、生み出される現象…雷とか風とかと変わらない…と思われる。
同様の変化が起こるなら、例え機械であっても、再現される意識は同じはずある。
元より、意識が不連続なヒトが、意識の同一性なんて問題を気にしても仕方ない。
<要は・・・慣れなんじゃない?>

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2014年09月15日

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 1997年発表、グレッグ・イーガン著。仮想現実都市ポリスに住む、ソフトウェア化した人類。ソフトウェア化を拒み、肉体を保ったまま地球で生きる肉体人。地球を襲う天文学的危機をきっかけに多次元空間へと逃れた人類は、遠くの星へクローンを飛ばす「ディアスポラ」を開始する。その果てに未知の生命体と接触する。
 とんでもない小説だった。全力で理詰めだ。ストーリーの流れは何となく分かるのだが、冒頭の孤児ヤチマが生まれるシーンなどはまだしも(このシーンが個人的には一番面白かった)、幾何学やワームホール、多次元の話など、大学で物理科や数理科を専攻でもしていないと完全には書かれていることを理解できないに違いない。だから、理論のどこまでが本当でどこまでが虚構なのか、よく分からない。だが虚構をそれっぽく描くこと自体がSFなのだから、分からずとも圧倒されていればいいだろう。
 肉他人、ドリームエイプ、ワンの絨毯、ヤドカリなど、とにかく怒涛のように溢れる発想。そして六次元など、全く想像のつかない巨視的・微視的なスケール。これらを楽しむだけでも読む価値はある。
 読み終えて、数学や物理学への興味がわいてきた。ちゃんと勉強してから、もう一度読み直してみたい。そうすれば著者の仕組んだ嘘に気づくことができ、ニヤニヤしながら読めるのだろう。

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2014年09月19日

Posted by ブクログ

知性の進化の極み、だがそれが人の身には叶わないというのは悲しい。だが、おおいに考えられることだ。
肉体を持たない意識はその時点で、人類とは呼べず、それが人間の精神構造を模倣したものであっても、AIと呼ぶべきだと思う。
人類はAIを生み出すための存在でしかないのではないかとも思えてくる。
未来の行く末について、思考が広がる作品を書ける。現代SF作家で、この人は最高峰だ。

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2013年08月09日

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これだけの宇宙を見せられて、人間ひとりひとりの物語に価値が見出せる人がいたら会ってみたい。
価値はないけれど意味はあるよね。個人的に重きをおきたいのはヤチマの人間性について。人によって色々思うところがあるんじゃないだろうか。私は彼(彼女?)が『何の曇りもない笑顔』を浮かべられることと故郷を捨てて一人で真理を求め続けることから見える 無邪気さ を持っていることに大きな意義がある……気がする。引用したとこが心に残ったのは、ヤチマのセリフだからです。
物理とか数学をやったことのない文系の人には読みづらいかも。でもわかるとこだけ読んでればおkです。
あと5回くらい読んでちゃんと理解したい。

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2010年09月26日

Posted by ブクログ

ディアスポラ=離散
宇宙(多次元)の様々な方向に自分たちのコピーを1000個派遣して知的生命体、生存をかけて可能性を探検する。


人間存在が究極に不滅になったときの最終的な人の行き先。
これを作者なりに推し進めている
・自分の全ての可能性を探索しつくす(完了)
・自分の人生の中で不変の箇所を探し続ける(アイデンティティの探求)
・自我を維持できなくなり消滅、霧散、停滞

自分の夢想した問題意識が表現されていて興味深かった。
”価値”は、自分の視点中心に”現れる”のであって、それ自体存在しない
残るのは、自分への探求か、全て(個々に優劣が無いため)の外部の探求。

やはり不死/長命は、普通の人間存在(=自分)には耐えられない。言いかえると、自分のアイデンティティは維持できない(ある意味での死)
あらためて有限の生(死)に向き合う生き方をしたいと感じた

グレッグイーガン全てに通底するテーマであるが、改めておもしろかった。

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2021年06月24日

Posted by ブクログ

久々に衝撃を受けた、ハードSF。
部分的に今の理論とかと違うところもあるけど、もう10年以上前の作品だから許す。

読後感想
「人間って根本的にはバクテリアと同じなんだなぁ」

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2009年10月04日

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ネタバレ

順列都市が私達の精神がデータ化されるまで、また自律するAIが誕生するまでの話だとしたら、これはデータ化された私達が幾重にも別れて(データ化されているので、クローンを生み出すのは簡単です)さまざまな宇宙に拡散し、探索をするさらに未来のお話でした(根源的には、未来の滅びを避けるための手がかりを探索の目的にしています)。
私達が気づいていないだけで、私達の生きる空間はトランスミューターのような存在とは既に繋がっているのかも。トランスミューターが進化の果てに獲得したのが、あらゆるものに干渉しすぎない「自制」の力であったことがとても印象的でした。
3次元以上の世界って想像するのが難しいですが、かなりイメージが掻き立てられます。
あと、主人公のヤチマのようにマイペースに生きることは辛くなく生きるコツなのかなと思いました。イノシロウ、オーランド、パオロ…様々な人物の末路が描かれますが、自分の中に生きることの答えを見出したヤチマの行き方は最も自分自身という存在にとって幸福なことのように思います。

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2021年05月06日

Posted by ブクログ

いやー、まいったまいった。全然わからんかった!わけのわからんことを考える人が世の中にはいるもんだなぁ。
人格をソフトウェア化して、仮想都市で生き続ける世界。星の終わりによる不可避の終末。それから逃げる/新たな世界に進出する過程「ディアスポラ」を描く。
なんやようわからんかったけど、最後の方に主人公たちは一応の安全への道を手にいれるのね。新しい世界への切符を手にいれる。でもそれを得る過程でみつかった、さらに先を行く人「トランスミューター」を追いかけることを選ぶ人がいて。まだ見ぬものを求めるって、なんなんだろうね。こんな世界に生きている人がいるんだろうなぁ。

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2015年12月29日

Posted by ブクログ

あ〜やっと読めたよ。前に一度第1部第1章だけで挫折して、いつか再挑戦と思っていたウルトラハードSF。解説の大森氏のアドバイス通り、わからないところは大胆にとばし読み、最後の方はほとんど具体的なイメージがつかめないまま、それでも充分入り込めた。

この長編の一部であり、おそらく核となった短編「ワンの絨毯」をSFマガジンで読んだ時の何とも言えない感慨を思い出す。「何が書いてあるのかよくわからないが、何かすごいことが書いてあるのはわかる」という読書体験は後にも先にも他にない気がする。大体よくわからんものは途中で読めなくなるものだし。

宇宙とそれを認識するものについて、徹底した思考が繰り広げられ、イーガンの切り開いた地平では、従来の宇宙SFがすべて古色蒼然として見える。気力十分な時に再読したい。

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2013年03月11日

Posted by ブクログ

イーガン面白いよといわれ
絶賛されていたので購入。

初読は追いかけるのに精一杯。
頼むよ、幾何学持ち出さないで(泣
現在3周目、やっと輪郭がつかめてきましたよ
(ヲイ
「長炉」の長さに目まい。惑星間ぶっちぎる加速器ってさ・・・

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

こてこてのハードSF。ハードSF好きの私にとっても、なかなか骨のあるヤツだった。
 舞台は1,000年後の未来。人類の大半が生身の肉体を捨てて、コンピュータ上のシミュレーションとして生きている世界。肉体を捨てていない人間も大半はDNA改造して特殊能力を備えているし、ソフト化しているけれど、ロボットボディーに入っている人間も居る。
 そして主人公は人間ではない。
 ソフト化した人間もシミュレーション世界の中で子供を作って繁殖しているのだが、主人公はコンピュータ上の管理ソフトが「DNAの未知の領域のテスト」用として定期的に生み出している「孤児」なのだ。人間と等価では有るが微妙な存在だ。
 物語の最初のヤマ場は、DNAの情報がコンピュータのメモリ上に展開され、物理的な「発生」の段階をシミュレートして生み出される過程の描写である。
 ようするに、この世界の人間は「人格」がシミュレートされているわけではなくて、「人間を構成する分子の一つ一つ」までを全て演算で作り上げている。
 コンピュータサイエンス的にいえば、とてつもない力技だけで構成されている世界だ。
 現実世界とのコミニュケーションは、世界中にばら撒かれたナノマシンが入力を担っているらしい。
 肉体人をスキャンしてデータとして取り込むのもナノマシン。分子の一つ一つまでスキャンしているという設定なので、スキャンされると生身の人間はバラバラのドロドロに分解されて死んでしまう。その描写はほとんどスプラッタ。
 ただ、この設定では一人の人間を生かすにも、とてつもないコンピューティング・パワーが必要なのは容易に想像がつく。現代では数えるばかりの分子の振る舞いをシミュレートするにもスーパーコンピュータが必要なほどだ。例えば、製薬会社が新薬の実験をするのは良い実例だ。
 この時代の「都市」は、シベリアの永久凍土の地下数100メートルに隠されていたりするのだが、どんなに進化したコンピュータでも人間の分子の振る舞いを丸ごと計算させるとなれば、とてつもないエネルギーを消費し、発熱するはずだ。
 まあ、作者は別の作品では人間をシミュレートするにはとてつもない計算資源が必要だというテーマの作品(順列都市)も書いているので、こちらの作品の矛盾は、 魔法として処理しているのだろう。
 そういういみでは、これはとてつもなくハードな仮面をかぶったファンタジーSF というのが正確だろう。
 しかしこの作品、後半は「宇宙論」になってしまう。
 近傍の中性子星が起こしたX線バーストの影響で、肉体人が滅びてしまう事件を受けて、超光速航法の研究をしたり、都市のコピーを1,000個作って、銀河に新天地を目指して離散してしまう。
 とにかく話のスケールがでかい。
 話はこれで終わらず、問題のX線バーストは、一中性子星が消滅するに留まらず、銀河のコアがバーストしてしまうことが分かり、銀河系をどれだけ逃げても絶滅は回避できない…ということから、異次元に逃げ込む話に進む。
 地球より進化した異星人が「平行宇宙」を渡っていった痕跡を追って、異次元から異次元にほとんど無限の平行宇宙を渡り歩く話になる。
 ここまで来ると、あまりの話の大きさに意識が朦朧と…(笑)
 主人公たちは、コンピュータ上のプログラムなので、銀河や平行宇宙を旅している間は動作速度を落として「主観的早回し状態」で居るので、何万年経過しようと苦にならないのがまたなんとも。
 とにかく、話の大きさでは群を抜く作品で、人類がコンピュータ化して不死になっているのも、普通ならそれでけで一本の作品のネタだが、この作品にとっては、後半のとてつもない宇宙の旅に主人公が立ち会うために必要な単なる設定とも言える。普通の人間では、何千、何万年も生きないからね(^^;
 …と、スケールは大きいこの作品だが、一方やたらと「ナノマシン」 が活躍する。
 仕舞いには「フェムトマシン」で原子を直接いじっちゃうとか、とにかく小さいほうにもとてつもなく小さな話が出てくる。
 まあこれはどこから見ても「魔法の粉」みたいなものだ。
 エネルギーの供給はどうなっているかとか、自力で移動できないだろうとか、無数のナノマシンを統一した意思の下で動かす方法が無い(通信出来ない)だろうとか、サイエンスの部分からはかなり無理がある。
 イーガンは「ナノマシン」大好きみたいなのだが、何しろ便利すぎて作品が軽くなってしまうのは欠点だ。全編にいくら物理学用語、コンピュータ用語がむき出しで散りばめられていても、あるいは、ナノ、フェムト、ギガ、テラなどのスケールを展開しても、魔法の粉(ナノマシン)で問題解決しているのでは腰砕けというか反則技っぽい。
 もちろん、ワープ航法や人工知能も「ウソ」だが、ナノマシンは便利すぎて、節度を持って使うのが難しいという感じだ。

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2009年10月04日

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