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アンドロギュノスの話の原典が気になって購入してみた。
小難しい哲学書なのかもしれない…と少し身構えていたのだが、平易な文章で非常に読みやすく、登場人物それぞれの語り口も個性的で、文学作品として楽しむことができた。巻末の丁寧な解説のおかげで時代背景や文化の理解もしやすい。
「子孫を残すこと(体に宿す子を産む)・知恵や思想を遺すこと(心に宿す子を生む)、これらは不死性への欲求であり、エロスとは美しいものを永遠のものにしようとする欲求である。」という主張は、クリエイターである自分にとってかなり腑に落ちる考え方だ。
私は美のイデアに触れることができるのだろうか。私は美しいものを永遠に残すことができるのだろうか。
紀元前に書かれた本なのに、現代の私の心に深く問いかけてくる。読み終わったあとに、なんだか壮大な物思いに耽ってしまった。
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古代ギリシャの饗宴(飲み会)でのオッサン達による戀バナ。
テーマはエロス(愛)古代ギリシャなので当然少年愛(パイデラスティア)エロさえも哲学なのだ。
成人した男性が少年と恋愛する事こそが最高の教育とか流石古代ギリシャレベル高すぎ。
今作ではソクラテス自身ではなくマンティネイアのディオディマ(多分腐女子)の言葉として語られている。
曰く戀とは、善きものと幸福への慾望である
エロスとは美しさと醜さ、良さと悪さの中間にあり、神と人間の間にある精霊である
エロスは既知の神ポロスと貧乏神ペニアの間に生まれた存在(マジで?)
肉體の美から精神の美、知識の美、美のイデアへと至るなどプラトン先生らしくここでもイデアは健在。
アンドロギュノス(両性具有)の元ネタはアリストファネスの演説だったのか。本書では解説が充実していて分かりやすくて助かる。
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今までの対話編と違って、宴会で一人ずつが愛の神エロスについて話を披露するという形式。ソクラテスの話の内容も、今までのように論理的な対話形式でなく伝聞の話を延々語るというもので面食らった。しかし構成やストーリーとしてはいままでになく凝っていて面白いので、二重に面食らうことになってしまうのだ。ソクラテスの語るのは「エロスの奥義」という一見何ともうさんくさい話なのだが、中身はプラトンのイデア論につながる哲学的談義になっている(ただ、神話的・直感的な話が多い)。
美を求めるエロスとは人と神との中間である聖霊であり、美や良いものに欠けるがゆえにそれを激しく求めるという性質を持つ、というところから始まり、美の中でも肉体的なものではなく知恵が最も美しく、求められるということが示される。人間は永遠に生きて美を自分のものにすることはできないけれど、肉体的には子供を作ること、精神的には哲学的対話により徳を生むことで永遠が実現する。そのように肉体、精神、そして知恵へと上昇しながら美を追い求め、究極存在のイデアへ至る(ことができるかも)という話らしいのだが、なんだかいままでの著作の現実的な徳の話はいったい何だったのかと思うような壮大な、幻想的な話でとまどいがまず先に来てしまう。解説を読んでよくよく考えると、よくできているな、と思うのだけど。
最後に乱入者によって突如ソクラテス擁護の賛美演説が始まるのもご愛敬だが、当時の少年愛の習慣やソクラテス批判の状況などこれも解説を読んで勉強になったし面白かった。光文社訳、すごく読みやすくて親切丁寧で大好き。
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ソクラテスやプラトンについて語られる時によく出てくる逸話が、もともとどんな文脈で語られたものかがわかって面白かった。訳者による時代背景等の解説も有用。
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古代ギリシャ当時のエロス観と、ソクラテスの哲学的エロス観との対比が、物語調で書かれた本です。
当時の少年愛という風習があることは知っていたし、ギリシャ神話を少しかじっていたことが理解の助けにもなり、読みやすかったです。
訳者による、時代背景や登場人物一人一人のエロス論への丁寧な解説があるのはとてもありがたいですね。
エロスとは、「何物とも比較できない、独立した普遍的な美」を追い求める欲望である(と解釈しましたが正しいのかはわかりません笑)、というソクラテス(プラトン)の考えが、後のプラトンのイデア論へと繋がっているそうです。
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古代ギリシャの哲学者・プラトンによる、師匠であるソクラテスの物語のひとつで、エロス論です。
舞台となるのは詩人・アガトン邸での饗宴(飲み会の一種)の席。アガトンが大勢の大衆を前に見事な詩を披露して優勝したお祝いの饗宴です。そこに出席した者たちが順々にエロスについて語っていきます。途中、演説の順番が来たアリストファネスのしゃっくりがとまらず、次の順番をひとつ飛ばしてもらうアクシデントがありますが、これはこの哲学議論物語にユーモアで彩ったアクセントなのかもしれません。
まずはじめのパイドロスの話からもうおもしろかった。
「自分がなにか恥ずべき状態に置かれている状態を愛する者に見られるとき、最も恥ずかしいと感じるのです」
つまり、臆病な振る舞い、醜いふるまい、そういったことをしなくなるために、エロスが働いていると説いているのです。これは僕個人にも思い当たるものです。思春期になったときに、それまではふつうに感じられていた周囲の友人たちの汚い言葉や言動そして行動と、それらに溶け込んでいた自分というものに疑問と嫌悪を感じるようになりました。そのことについて、僕は自分がただ好い格好をしたいだけであって、そういった醜いふるまいを避けるようになったのだろうと、やや自嘲気味に考えていたのですが、パイドロスの説に照らしてみると、きちんと言えることが出てきます。すなわち、次のようなことになる。愛する人と釣り合うため、相手からの尊敬を勝ち取るためには、醜いふるまいを捨てねばならない。そうしない振る舞いは、愛に背くことになる、と。古代ギリシャの時点で答えが出ていたんですね。そのあたりがはっきりしないまま僕は成人しましたし、ある程度見切りをつけるまでにもそれからかなりの時間を要しました。
解説によると、口火を切ったパイドロスの議論はレベルの高いものだとは言えないとされていました。確かに、他の者たちの議論に比べると、話が短く、奥行きだってそれほどではないかもしれない。でも、本書をこのあと堪能するための基点として、見事な視点をまず与えてくれていると言えるでしょう。きれいなスタートのきり方に感じられました。
そうしてパウサニアス、エリュクシマコス、アリストファネスの議論を経て、詩人・アガトンは彼の議論のなかで言います、エロスは「最も美しく、最もよき指導者」。醜さから逃れさせるのがエロスであり、美しいふるまいをさせるのがエロスだからだというパイドロスの議論から繋がる言葉でした。
そしてクライマックスとなるソクラテスの議論がはじまります。ソクラテスがディオティマという名前の女性から「エロスとはなにか」について教えを受けている場面を、ソクラテスが回想するかたちで議論を進めていきます。これまでの5人のよる議論よりも高次で力強い議論が展開されていくのでした。
そのなかでソクラテスが、あたかも0と1の間のものの話ととれる内容を話していて恐れ入りました。エロスは自分に欠けているものを求めているのだし、美しさを求めているのだから、ではエロスは醜いのか、という論理展開に対して、いや、美しさと醜さの中間に位置する精霊(ダイモン)なのだ、という答えがそれです。それでもって、精霊が、両極を繋ぐ役割を持つという議論にも結び付いていく。このあたりを類推して考えると、昨今の二分法的な考え方に大きく一石を投じる内容だと思えるのです。0と1だけじゃなく、白と黒だけでもない、量子論的なそれらの間の部分に着目する考えです。
さて、ソクラテスの議論は、エロスの究極の形にまで行きつきます。個別の肉体的な美への愛から、すべての肉体的美の共通性への愛へと目覚め、それから精神性の美に目覚めて心を愛するようになり、そこから発展して人間と社会のならわしのあいだにある美に気づくようになる。次には知識の美しさへの愛に進み、知恵を求めるはてしない愛の旅の中で、思想や言葉を生んでいく、その境地が愛の最終地点なのでした。これらは「美の梯子」と呼ばれ、有名な理論なのだそうです。
また、「美の梯子」の前には、子を産むことが愛の目的であることも明かされていました。永遠を求めるのがエロスであり、子孫を残すことは人間という種の永続のための行為です。また、生命というかたちではなく、ソクラテスが言うには「知恵をはじめとするさまざまな徳」を生むこともエロスによることだとされている。つまりは創作すること、クリエイトすることも、エロスが関係することなのだ、というのです。予期していないところで創作論にも結び付いて、わくわくしました。愛、知的好奇心、創作はみなエロスでつながっているものなのかもしれません。
というところですが、読みやすい翻訳でしたし内容もつよく興味を惹くものでした。
今読んでも新しい古代ギリシャ。紀元前の知が、2000年以上を超えて、現在を新たに照らしくれます。
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面白い!エロスの賛美をしていく中で、前半は神としてのエロスの賛美を。後半は神ではなくダイモンとして、美しいものよいものを目指す存在であることがかたられる。この欠如しているからこそ、欲し、追い求める姿こそがエロスだという解釈に帰着させるために、様々な視点からエロスについて語られる。途中のアガトンとソクラテスの対話でアガトンのエロス解釈が誤りであることを気づかせたソクラテスの手法は、部下との面談の場でも活かせないものかと思う。
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これは解説無くして読めなかったな。パイデラスティアという風習がどんなものか全く想像できないし、それ以前に寝椅子で横になって食事っていうことすら???だったしな。(多少横になってたほうが消化にはいいのか?)
まあこの少年愛の理解は難しいだろうから、それはそういうものだということで受け入れて読む。
でも結局エロスは何なのかが、ディオティマなる巫女?の話で説得されて終わってしまった。うーむ、、もうちょっと考えてみたい。エロスについてはパイドロスでも議論されるみたいなのでそちらをみてみよう。
アルキビアデスのソクラテスに対する感情は、何となく理解できる。ああ、そう、美少年繋がりのせいかもしれないが、ドリアン・グレイを思い出した。弱さ。ガラスのような美しさ、透明さ、故の脆さ。
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読みやすい。そして結構面白い。(文庫のくせにやたら高額なのが気になるけど)
エロース賛歌、そしてかの有名な美のイデア論について。
角川ソフィアだとたしか「恋について」って副題がつけられてたけど、なんかそれだと語弊があるような気はする。
アリストファネスの神話がすごく好きで、それ目当てだったけど他の人の話も興味深かった。
それにしてもソクラテスのおっさん、いけ好かねえなー。
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美へのエロスが高まっていけば、それが美のイデアの発見へと至る、というところか。
イデアとは何か、まだ構築しているところ、という感じ。読んで面白いけども、読むべきなのかというと、そうでもないか?ゴルギアスもそうだけども。
「国家」「ソクラテスの弁明」「パイドン」あたりを読めば、一旦はそれでいいのかもしれない。
他のも読むと、発見や楽しみはあるけど、そのあたりを読み始めたときの驚きはもうあんまりないのかも。
また、そのうち読みたくなったらプラトン読もう。もう次にいっていいかな、と思う。
アリストテレスにいこう。
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パイデラスティア、美の梯子
本文もさることながら、解説が詳しく書かれているのが本書の良い点である。歴史的背景と文化的背景がわかりやすく、理解の助けとなった。なかでも、パイデラスティア(少年愛)について誤解を与えぬよう配慮しながらの記述に多く学んだところがあった。
古代ギリシャ人の性は、現代における性とは異なる側面をもっているため、現代的な価値観を通して評価するのは危険である。古代ギリシャ人の愛は近代的な価値観の枠組みの外にある。彼らの性的な愛は対等な関係を前提としておらず、不均等な優劣の中で成立する。それは少年愛に限らず、女性との関係においても動揺で、彼らにとっての性は能動—受動という関係によって把握される。そうした関係性が重要であり、性別は二次的なものとなる。
アンドロギュノスの話をしたアリストファネスに興味が湧く。おもしろいし、なぜか納得できる。男男、男女、女女の組み合わせ。
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有名な哲学の古典。美のイデア、善のイデアにつながるように恋愛について語られている。少年愛のことをうまく変換できれば詰まることはないと思う。様々な言い方や角度から述べられるので飽きずに読むことが出来た。又、当時の風習については巻末の解説が割合丁寧なので、キリスト教以前のギリシャを考えさせてくれる。
Posted by ブクログ
最近金のことを考えてたら、日課であった知的探求が完全にストップしてしまっていた。価値観は人それぞれかもしれないが、いつも内面に疑問を抱き続ける2か月ほどだったので、うまく脱却できまたプラトンに戻ってこれたことに、なんだか感謝の思いにまで至る。
解説に助けられながら、「饗宴」読み終わった。エロスについての対話。人間の欲望、愛、性。人生に欠かすことができない要点ともいえるエロス。結論としてはまだ不確かなところがあるが、肉体の欲望➡心の欲望➡関係からの欲望➡知的欲望と、エロスも段階的により価値があるものへと高められていく、という感じのところが印象的だった。「知」を幸福に至る最高の方法として置くが、性もそれと無関係ではなく、ある意味の秩序として地続きであるように語られているところが面白い。
17.11.13
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ソクラテスらによる、愛の中でも性的な愛を意味するエロスについての演説。平易な言葉で臨場感が伝わってくる本編訳に加え、舞台背景やなどについて約100項にわたる詳細な解説が理解に深みをもたせてくれる。とはいえ、考えが大きく変わることはなかった。
私は、人間を「よい」と認識するのは肉体と精神の相互作用によるものであり肉体の美しさを軽視すべきでないと考えている。
本書に、あらゆる体における美しさは同一、とあるが論理の飛躍としか思えない。
真理を語ろうとするから、美しい体は瓜2つとなるのは必然だろう。黄金比のそれだろうから。そして、真理だから、それを愛するべき、となる。此処が決定的に間違っている。誰もが黄金比の体に恋い焦がれる訳ではないし、かといってそれは、体なら何でも良い、では決してないだろう。
真理に向かうことは真実を見失うように思う。
解説に違和感を覚えた箇所もある。エロスが求める「美しいもの」「よいもの」を「善」と解説されるのだが、「善」とすると道徳という名の臭みがついてしまわないだろうか。
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エロスについて1人ずつ語って行き、最後にソクラテスが登場し、弁証法的にまとめあげる。それぞれの人がどのようなロジックで論じているかを整理すると、ロジカルシンキングの勉強にもなる
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エロスについて、饗宴の参加者が順番に賛美していく、対話とはまた違った面白さ。
まさかプラトンで涙するとは思わなかった。感銘ってこのことなんだろうな。
一神教以前の生き方はなんて豊かなんだろう。
アリストファネスの話にすごく刺激を受けた。
登場人物が生き生きと描かれていて、読み物としてもすごく面白かった。
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なぜ男は女を求め、女は男を求めるのか?愛の神 エロスとは何なのか?悲劇詩人アガトンの優勝を 祝う飲み会に集まったソクラテスほか6人の才人 たちが、即席でエロスを賛美する演説を披瀝しあ う。プラトン哲学の神髄ともいうべきイデア論の 思想が論じられる対話篇の最高傑作。
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哲学書だけど、面白い話が多く、そこそこ読みやすいと感じた。
愛(エロス)とは何なのかを何人かの弁論を通して掘り下げていく。
美しいものとよいものを愛す。
そして「美のイデア」に到達するのが奥義だそうた。
気になったのは幸せはよいものを永久に所有し続けることと読み取れたことか。
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読みやすかった。
文庫となるとやや古い訳が多く、初めて読む人に薦めにくいところがあったが、これは気兼ねなくオススメできる。
これからは、プラトーンに興味をもった人には本書から薦めたいと思う。(ほんとは『弁論』から読んで欲しいとも思うのだが、前知識がないと退屈な気もするので)
また、、訳者あとがきにあるように、解説も比較的詳しく、専門的な議論まで踏み込まないもののそれがむしろプラトーン初心者にはちょうどいい。
特に、当時の少年愛について簡潔にまとまっていて、我々が言うところの「同性愛」との差もわかりやすく説明されていて、勉強になった。
古典新訳文庫相応のお値段だけれど、読みやすい文庫が新たに加わったのはうれしい。
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素直におもしろく読めた。情景が浮かんでくるようで、哲学者らの人間味や関係性も伝わってくる。それでいてエロスをそれぞれが真剣に語り合う。自分もその中に放り込まれた感覚になる。一気に読めるが中身は深い本でした。
Posted by ブクログ
プラトン中期の作品。対話編
仲間内の宴の中でエロスについてそれぞれが賛美するという催しを始める。
アガトンのエロスについての賛美は現代の私たちの感覚からすれば退屈なものであるが、当時の弁論家たちの手法は音の響きの美しさなどで説得力を持たせたそうで、ギリシャ語で読めない以上はただ美しさだけを連ねて内容の無いものに見えてしまうのが残念だった。
少年愛について自己弁護的な賛美(当時社会的に妥当とされていなかった成人後にも関係を持つ行為を正当化するなど)をする者、喜劇作家アリストファネスのオレンジの片割れの由来となる神話など、それぞれの主張は当時の習慣や考え方を私たちに教えてくれる。
印象的だったのは、ソクラテスが外国人の女性の話をそのまま引用したことだった。
また、ソクラテスの弁明では、ソクラテスはギリシャ神ではなく精霊を信じているとされ訴えられていたが、ここに精霊の話が出て来たのも驚いた。
個人的な印象としては、ソクラテスは神をすべて肯定もしていなければ否定もしていないという姿勢に見える。よって精霊も否定も肯定もしない、という姿勢が他のギリシャ人達には奇異に見えたのかもしれない。
Posted by ブクログ
哲学書ということで読み辛いものを考えていましたがまぁびっくり。一級の文芸作品でした。
本文の注釈及び巻末についてる時代背景含めての解説が潤沢で、さらに理解が捗る良い一冊でした。
Posted by ブクログ
私達はエロスについてどれだけの事を知っているのだろうか。
神としてのエロス、少年愛、男と女、美しいこと、醜いこと。それぞれの登場人物が思うエロスをお酒の席で語っていくお話。下ネタも此処まで深く真剣に考察すると芸術的になるんだなと思いました。