【感想・ネタバレ】天災と国防のレビュー

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Posted by ブクログ

今に通じる内容。
陸海空軍以外に、第4ジャンルとして新たな天災対策軍を作った方が良いのでは、というのには納得させられた。今ではそういうのもあるんだろうけど。
あと、旧来からの建物がなぜ壊れないかと言う論で「自然淘汰」の話が出てきたのが興味深かった。天災に逆らおうというのは現実的ではない。だからその天災から安全地帯に逃げた結果、被害が少なくて済む場所に自然に集落ができた、と。
今回の大震災の津波被害も、沿岸部から山に集落が移動するきっかけになるんだろうか。どこが安全だなんて言い切れないのが現実だが。

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2013年09月26日

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地球物理学者にして、夏目漱石の文学上の弟子でもあった寺田寅彦のエッセイ。

特に、昭和八年に東北を襲った大津波に関するエッセイ『津浪と人間』は、そのまま今回の東日本大震災に用いることができるものだ。三陸大津波、昭和八年の大津波での教訓を、後世のわれわれに伝える内容である。

逆に言えば、われわれは何も進歩していないということか。

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2012年03月24日

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 本書は大正~昭和初期にかけて発生した天災等を題材にして、物理学者・寺田寅彦氏が科学的視点から考察・分析した随筆・論評の短編が12編収められています。
 
 取上げられている題材は80~100年前であるにもかかわらず、その切り口、分析、問題点の指摘等は現代でも色褪せる事無く同意できる部分大であることには驚きます。さらに、その天災・災害の根本を問う姿勢は人間の拭い難い特質や神話・民族・宇宙・進化論様々に思い巡らして思慮に思慮を重ねており、文脈の端々から当時最先端であった量子論を意識したと思われる洞察や、果てはまだその存在すら科学的立場からは意識されていないはずの”複雑系”を匂わせるような見識も持ち合わせているように見受けられます。もっとも”複雑系”に関する感覚は科学的見地とは無関係に東洋的伝統から発したものかもしれませんが。

 また、本書の特徴の一つに、科学者独特の感性で、(不謹慎承知でストレートに表現すれば)天災をある意味楽しんでいる(悪い意味ではない)表現が散見され、本音ベースで(なんてやつだ!)(ううむ、気持ちはわかる。。けどそれ言うと顰蹙かいそう!)(やっぱり、そう思うよね!)等々見解がわかれそうな表現があります。


 本書で取上げられている主な天災・事故は以下の通り。寺田博士は、これらに関して自身の体験や現地に赴いての調査等の十分な裏づけの元に論評されています。
 
 関東大震災(1923年9月1日)
 静岡地震(1935年7月11日)
 白木屋火災(1932年発生、文脈から判断して、東京都心の劇場か博物館か何かのビル火災)
 航空機事故(日本航空輸送会社の旅客飛行機白鳩号というのが九州の上空で悪天候の為に進路を失して山中に迷い込み、どうしたわけか、機体が空中で分解してばらばらになって林中に墜落した事件)
 浅間山噴火(1935年8月4日)
 函館大火(1934年3月21日)
 三陸地震(1933年3月3日)

 また、本書巻末の解説も40ページ近くあり、かなりのボリュームがあります。この解説を読んでさらに「そうだよ。それだよ」と腑に落ちると思われる分析があります。やや長くなりますが、一部引用します。

 必須の6つの視点
  寺田の随筆の面白さは、正確なものの見方に起因しているものと思われた。寺田は身近な現象を科学的に考察することを意識して行っていたようだが、それがいつもきちんと正確に行われているから、そこから導き出される考えも非常に豊かなものになっているのだろう。この点は大いに参考になる。
  どんな事柄や現象を見るときも同じだが、対象の正しいモデルを自分の中につくるときに欠かせない必須の視点というものがある。大まかにいうとそれは、「構成要素」「マイクロメカニズム」「マクロメカニズム」「全体像」「定量化」「時間軸」という六つの視点である。
  これらのうちの一つでも欠けていると、その見方なり考えは抜けのある不完全なものになる。裏を返せば、寺田のものの見方にはこの視点がすべて入っているから、古い時代に書かれた随筆でも非常に豊かな考えを含んでいると感じられるのだろう。



 一般のジャーナリストや文人からは発し得ないような解析力・表現・捉え方。また一般の技術系理学系専門家からは表現しえない文章力、その二つを備えた稀有な文章です。これを堪能したい方、また昨今記憶に新しい大震災と重ね合わせながら天災に関する随筆を読んでみたい方にはお勧めです。
 

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2011年10月06日

Posted by ブクログ

今読んでも古典たるにふさわしい名文だ。科学的態度を身につけるとはどのようなことかを考えさせる。中の一節、「科学の効果が滑稽なる程度にまで買いかぶられているかと思うと、一方ではまた了解のできないほどに科学の能力が見くびられている。」現在の状況を喝破したような文章である。

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2011年08月07日

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各社から寺田虎彦の同類のエッセイ類を集めた本がいくつか出版されているが、畑村先生の解説と併せて読めるといった点で、本書が一番ではないか。
東日本大震災のことを後世にいかに伝えていくかということを考えた時、収録されている「津波と人間」をテキストとして子どもたちに伝え考えさせるということをしてはどうだろうか。
畑村先生の『未曽有と想定外』(講談社現代新書)と併せて、是非読んでほしい一冊である。

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2011年07月29日

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天災にあうと人はなぜ、と理不尽な思いをするが、天災は一定のスパンで一定の確率で必ず起こるものだし、それを防ぐための科学的思考が大事なのだと思う。本書の刊行は2011年なので東日本大震災を機に改めて脚光を浴びたものと思うが、それ自体我々の忘れやすさを表しているようにも思うが、少なくとも科学的思考をもって意識することはできるのだと、そう前向きにとらえたい。

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2022年02月24日

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いかにも科学者的で冷静な文調で、妙にいきりたっていないところに好感。寺田寅彦だったら、今の原発事故について、どう分析するのだろう。畑村洋太郎さんの解説文も読みごたえアリ。へたな原発本より読後にすっきりできた。

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2018年10月09日

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東日本大震災から2年を過ぎ、あのときのこわい思いを少しずつ忘れている。こわい思いを忘れることは、前を向いて歩いていくためにはよいことでもあるけれど、やはり忘れてはいけないこともある。
この本は大正~昭和に書かれたものであるのに、今なお、私たちに教訓を伝えてくれる。地震や津波だけではなく、火事についても示唆に富んでいる。マスコミのあり方も、当時も今も全く変わっていないようである。もともとは物理科学者だけあって、とても冷静で分析的な文章で、説得力に富む。個人的には、関東大震災について、当日から数日間の様子が書かれた「震災日記」が大変参考になった。やはり経験しなければ書くことができない内容だと思う。
一方で、解説については、もっと解説に徹するべきだと思った・・・解説を担当した畑村洋太郎氏の自説の量が多く、これでは解説にならないのでは?と思ってしまった。もちろん、畑村氏の自説は大変参考になるのだが、それならば畑村氏の本として読みたいわけで、あくまでも解説を担当しているわけだから、もっと解説に徹するべきなのではと感じてしまった。

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2013年10月10日

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寺田寅彦の災害に関する随筆集。文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈な度を増すこと、平生からそれに対する防御策を講じなければならないことを再認識できた。

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2012年07月01日

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事象に対する向き合い方が、寺田さんは徹頭徹尾『科学者』だね。人間の性質による社会現象さえも、自然現象だといいきっちゃって、スパスパと気持ちいい随筆でした。

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2011年10月27日

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天災を『国防』という言葉で表現しているという、筆者の視点が面白い。かつて天災⇛国防、という捉え方ができるということを始めて知った。考えてみれば”定期的に”地震、台風、津波がやってくる日本。であれば、外的に備えて海岸線を防御するのと同様、天災に対しても自衛の手を持つべきなのかなと思う。このように認識を変えることで、自衛隊の存在も天災に対する国防と広く捉えられたりして。また、「天災は”愚直に”定期的にやってくる」と書いてあったが、この”愚直に”という表現がいい。人間は忘れる生き物。脆弱な人間の記憶と、天災をすごく対照的に比較している形容詞だ。

元々物理学者のはずなのに、エッセイが面白いのは意外。ところどころ物理学者的思考が見えるけど、非常にわかりやすい。天災は忘れた頃にやってくる、とはよく言われることだけど、本でも読んで面白かった、とかためになった、とかいう感情とその記憶をもっておくことで、リスクマネジメントの役割を果たしてくれればいいなと思う。

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2011年09月14日

Posted by ブクログ

全部で12編からなるエッセイ、小論。地球物理学者としての寺田虎彦が、科学者の視点から、天災に対して人間が常日頃から持っておくべき意識について書かれている。畑村洋太郎が解説でとてもうまく説明してくれている。太平洋戦争の前に書かれたものだが、全く色あせていない。
■「構成要素」「マイクロメカニズム」「マクロメカニズム」「全体像」
 「定量化」「時間軸」 の6つが、寺田寅彦が事柄や現象を見るときの視点。
■文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向がある
■誰の責任かを問うよりも大切なことは今後同様な災難を少なくしていくかが重要
■「地震の現象」と「地震による災害」は区別して考えなければならない。現象の方は人間の力でどうにもならなくても、災害の方は注意次第でどんなにでも軽減されうる可能性がある。

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2024年05月17日

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ネタバレ

 本著も「ドストエフスキイの生活(小林秀雄著)」同様、「地震と社会〈下〉(外岡秀俊著)」に言及があったので読んだ。
 ほんと、寺田寅彦の「「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考えなければならない。現象のほうは人間の力でどうにもならなくても「災害」のほうは注意次第でどんなんにでも軽減されうる可能性があるのである。(p 38)」のひと言は、当たり前ながらも、秀逸だ。
 でも、学者が前もって警告しても被災者(一般人)は時が過ぎれば覚えてられないということを「つまり、これが人間界の「現象」なのである。(p137)」と至極ニュートラルな立場で語る。でも寅彦は悲観して終わることなく、「教育」の大切さを説く。
 一方、「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を十分に自覚して(後略)」という寅彦の言葉、これをどれほどの現代人が心して科学技術を享受しているのか...。寅彦にしてみれば氏の憂はより確実なものになっている。透徹した見識を持つ寺田寅彦に、改めて、会えた一冊だ。

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2023年11月16日

Posted by ブクログ

名大の福和先生が著書で何度も引用していたけれど、そこまでの濃密さがある訳ではない。
むしろ、雑記的な性格の強い本と思った。

そんな中でも、
「人が絡んでいるからこそ完全な対策は無理」
「優先学的災害論(防災できる人が生き残る)」
「災害とメディア(大げさに切り取る?)」
といった点は印象的。
また、ラストの「厄年とetc.」は、40前後にして惑っているような哲学的内容。

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2018年09月15日

Posted by ブクログ

関東大震災の頃に書かれたとは思えないくらい今の状況にぴったりと当てはまる意見が多かった。人間は学ばないいきものなのね。

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2012年12月03日

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