【感想・ネタバレ】移された顔のレビュー

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Posted by ブクログ

顔移植について短編、戯曲、解説と3部構成になっています。


短編では散弾銃で顔を撃たれ眼と鼻、頬
上顎と上唇を失った女性のお話


顔の中で残されたのは額、上瞼、下唇、左目のみ上の歯は
すべて吹き飛ばされ口蓋もなく口で息ができないため
喉に穴が開けられる。半年の間に受けた手術は25回
頬を造るために肋骨が切り取られ、上顎は足の骨

それでもそれは顔の最低限の形を保つだけの役目


しかし彼女は顔と引き替えに命拾いしたと前向きに生きていきます
事故から7年後、彼女は顔移植を受ける。


彼女は口から息ができ、コップから飲み物を飲め、
食べる事ができる、匂いも戻ってきている
そして何より一番うれし事は口ができ笑えること
顔がないとどうやって笑っていいのか分からない
という言葉が印象的でした。


戯曲では交通事故によって脳死となった親友ユリの顔が
大火傷を負った私、ユミの顔に移されることになる。


ユリの家族の葛藤、ユミの親は、そして私はこれまでと
同じように暮らしていけるだろうかと苦渋する
移植後、鏡の中の親友の顔を見つめるユミ
誰もがユミではなくユリを見ているという感覚
自分がなくなっていくような感じにユミは移植した顔が
剥がれてしまってもいいとまで思いつめてしまいます。




顔移植が世界で最初に実施されたのは2005年のフランスで
顔の下半分を移植する部分移植が実施されたそうです。


全面顔移植になると顔の下にある骨も一緒に
移植される場合もあり、2012年までに二十例ほど
実施されているとのこと。


日本での移植もそう遠くない未来に行われるように
なるのかなと思いますが、問題点も多いようです。


技術が確立されていないこと
拒絶反応によって剥がれた場合の対処
術後も生涯に渡って免疫抑制療法を受けなければならない
癌や感染症、糖尿病などに罹患する確率が増える
どの程度の損傷で顔移植が許されるかの線引き問題
手術そのものが大がかりで医療チームが30人がかりとなり
医療費の問題とと術後の費用の負担
法整備も必要となってくる

そして何より新しい顔に患者自身、家族、友人たちが適応できるか


越えなければならない山は多い
術後、移植された顔との違和感は肉体的、精神的に及び
想像以上のケアが必要とされることが分かる


それでも事故や事件で顔を損傷された方々には
希望の光だ。
医師でもある著者の解説はわかりやすく、読み応えがありました。

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2017年09月20日

Posted by ブクログ

夫に猟銃で撃たれ顔を移植する妻の短編と、医師の婚約者の運転中事故で脳死になった友人から皮膚移植を受ける表題作は戯曲

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2013年10月21日

Posted by ブクログ

映画『フェイス・オフ』もどきの医療が、これから増えていくのだろうなあ。
医学の進歩は、未知の世界・・

この著者の本は、コレが初めてで、こんな人がいたんだあ~と驚きです。
東大文学部卒→TBS入社→退社後医学部へ→医者+小説家
彼の頭の中、どうなってるんだろう・・

もっと他の本も、ぜひ読んでみたい

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2013年10月19日

Posted by ブクログ

『顔のない顔』『移された顔』の二編。
表題作は著者初の戯曲である。

『顔のない顔』アルコール依存症の夫に顔を奪われた「わたし」。
人々の好奇と恐怖の目を弱った視力の中でぼんやりと捉えながら「わたし」は生きている。
「モンスター」と幼い子は言った。
「わたし」はそれを優しく諭す。

顔の移植などという大掛かりなものが、本当にできるのだろうか。
顔を失った「わたし」は見知らぬドナーからもらった顔だった。
だから受け入れられたのかもしれない。
しかしそれが知人、親友だったら。

戯曲『移された顔』はそれを描いている。
事故で植物状態になったリナ。
ユミは顔をなくしてしまった。
唯一大けがを負わなかったのはリナの恋人、リョウ。
リナの顔はユミに移植された。
そのことでいったい自分自身はどこにあるのか、ユミは悩んでいる。
自分自身がどんな顔だったか思い出せなくなっている、とユミは語る。
実際そうなのかもしれない。
好むと好まざるに関わらず、私たちは自分の顔を毎日見ている。
そのことで、これはわたしだと認識する。
しかし、自分の顔が全く他人の顔に置き換わってしまったら、私が私だとどうやって思うのだろう。
物語はハッピーエンドで終わる。
しかし、我が身にそれが降りかかってきたとき、ハッピーエンドになるかどうかは、誰にもわからない。

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2015年05月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編と戯曲。
短編は主人公の強さに感動した。戯曲はやや感情移入し辛かったけど、目先が変わって面白い。
手術シーンは生々しくてなかなかきつかった〜
医療技術が発達しても、顔を移植するということには心理的に大きな負担がかかるんだなあ。自分だったら耐えられるかどうか。。
「人」は「顔」。中身は関係ないというわけではなくて、顔が変わることの力は強すぎる。しかも知らない人ならまだしも親友の顔になるなんて。

帚木さんもお医者さんだから、後書きも興味深い。現実に顔を移植して強く生きている人がいるってことが衝撃的でした。

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2015年03月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

医療エッセイなのかなと思っていたら創作だった。
夫の暴力で顔を失った女性の短編、事故で脳死状態の友人から顔をもらった看護師と青年医師とのロマンスあふれる戯曲。顔移植は現実化しているらしいが、臓器移植とは異なる心理的な拒絶があるのかも。

着想はおもしろいが、やや凡庸なストーリーだった。
顔を変える、ペルソナ願望って珍しくないのかもね。

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2014年11月08日

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