【感想・ネタバレ】神を見た犬のレビュー

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Posted by ブクログ

イタリアが生んだ奇才の作家ブッツァーティが書く不可思議なお話を集めた短編集。

テーマは多岐に渡るが、全てにキリスト教的世界観が通底にある感じがして日本のホラーや怪異とは全く違うのが面白い。
特に聖人が出てくる話が多く、さすがカトリックの中心であるお国柄だと思った。
どの話も面白いが
 ・アインシュタインとの約束
 ・七階
 ・神を見た犬
 ・呪われた背広
 ・秘密兵器
 ・天国からの転落
 ・驕らぬ心

はとても面白く、教訓めいたものがあった。

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2024年04月05日

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新聞記事のような癖のない文章でつづられた幻想的な短編小説集。傑作選ということで、どれもこれも印象深い作品ばかり。スイスイ読めて鮮明なイメージが残る不思議な作風だ。表題作の「神を見た犬」では、椅子の下に置いたパンの描写だけで色々思わせて涙が出た。これ含めて、昔ながらのキリスト教徒の精神世界を感じさせる作品が多くて興味深かった。

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2024年01月22日

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ブッツァーティ『神を見た犬』。全22編が収録されている。
かなり好み。幻想的な事や物語を、ジャーナリストとして長年記事を書いていた腕を生かし、平坦かつ事実を伝えるような文章で書くので、あたかも現実的に起こった物語のよう。
わたしが特に気に入ったのは、天地創造、コロンブレ、7階。
不条理や破滅などへ向かって描くこと、悲観さがブッツァーティの特徴らしいが、短編ということもあり、ただ苦しい、悲しいだけではなく進む。
素晴らしいストーリーテーラー。

ブッツァーティの『タタール人の砂漠』も読んでみよう。

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2021年12月12日

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ブッツァーティは初めて読んだけどとても良かった。
恐怖・不安・不条理をえがきながらもあまり暗く辛い気持ちにはならず、幻想的でありながらも実生活に寄り添っていて絶妙だった。

一番好きだったのは『コロンブレ』。
これは本当にカフカに通ずるものがあるとおもう。

他は『アインシュタインとの約束』、『七階』、『グランドホテルの廊下』、『神を見た犬』、『小さな暴君』
あたりが特に好き。
『小さな暴君』が一番胸がムカムカする話かも。

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2021年05月25日

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ネタバレ

ブッツァーティは初めて読むが、非常に良かった。
幻想的、と帯には書いてあったが、どちらかと言えば、昔話の様な雰囲気があり、不思議な気持ちになる。

だが、様々な強迫観念や死への恐怖と生への執着(とまではいかないかも知れない)、そして理不尽さが描かれている。

表題作について。
神を信じない村に現れた、不思議な犬。
彼と狡猾なパン屋の男、隠修士を中心にして、人々の間に疑心暗鬼が広がっていく…
その互いを探りながらの駆け引きの様子がとても良かった。
結局、神を信じず、口からは罵倒の言葉が出るような人々でも、知らぬ内に深層では信じている、みたいな話が面白かった。

どれも面白い話ではあったが、特に7階、グランドホテルの廊下は秀逸。
ただ、小さな暴君はひたすらに胸糞が悪かった。

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2020年09月02日

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「天地創造」神と天使が生物をつくりあげる際、人間は不恰好で厄介ごとを生み出すと却下となるが...
生み出しちゃったね。

「アインシュタインとの約束」アインシュタインがある路地で死の天使に会う。今は重要な発明の最中だと1ヶ月、死を延ばしてほしいと願う。三回延ばし、ある発明を完成させた。その発明に死の天使=悪魔は喜ぶ。
あの発明ですね。

「神を見た犬」修道士についてきた犬は、修道士が死んだ後、不信心な人々が住む村に降りてくる。そして村中を歩き回り、人々の行動を見つめるのだった。
お天道様はいつも見ている。

最初は面白かったものそれぞれ、書き記そうと思ったのですが、読み終わったら次を読みたくなって、中途半端に。

聖人の出てくる話が好き。

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2020年03月26日

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短編集で不条理を描いたもの。星新一に系統は似てるけどそれをもっと文学的にしたような。人の持つ社会的心理から返って個人が苦しんでしまう様な様を描いたものが多い。

1. 天地創造。キリスト教ネタがいくつかあって分かりにくいものもあったけど、これはシンプルで、地球にある一切は神によってデザインされたとされるが、こんな裏話があったのではないかという話。作者がいかに人間を醜いと思ってるかが一作品目で分かる構成なのが良い。

2. コロンブレ。親や世間の謂れを真に受けて信じ込んでしまった為に人生を棒に振る寓話。

3. アインシュタインとの約束。偉人に勝手に性格をあてて描くのは何だか気持ち悪かった。

4. 戦の歌。これは本当に訳がわからなかった。解説が欲しい。国は一体何処と戦っているのか?なぜいつまでも戦争は終わらないのか?歌は何を言っているのか?

5. 7階。これも訳がわからないと言えばそうだが、書いてあることをそのまま読めば分かるし、面白かった。それは不名誉なバロメーターであるが主観的な評価であり、またあらゆる言い訳に負けて、ずぶずぶと最高級の不名誉を負ってしまう話。

6. 成人たち。キリスト教を知らないので聖人が何かよく分からなかったけど、仏みたいなもんだろう。そんな聖人の中でも人間的な悩みがあるという話

7. グランドホテルの廊下。急に話が小さくなった。人間臭さを描いた笑い話

8. 神を見た犬。表題。神を信じない村の人たちだが、ふとしたきっかけで一匹の犬を恐れてしまう話。宗教臭い。

17. 病院というところ。これはすごく好き。これが病院というところなのだ。

19. クリスマスの話。いい話。

21. 戦艦トート。これだけすごく長い。内容の割に。

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2018年10月19日

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上手くいかないから不幸なのではない、貧しいから不幸なのではない、それだから不幸なのだと思ってしまう考え方が不幸なのだ。ブッツァーティの小説は読者に主人公の人生の最後に立ち会わせそれを問いかける物語だ。一元的な物の見方を否定し物事に違う観点を与える。10代の頃彼の長編「タタール人の砂漠」で頭をガツンとやられた。それと同じ感覚がこの短編集にも詰まっている。謎の怪物コロンブレに殺されまいと逃げ続けた男の話、護送大隊をたった一人で襲撃しようとする年老いた山賊の話。ラストですべての不幸が幸福に代わり、幸福が不幸に入れ替わる。この世界のことはすべて脳内で起きている。他人の視点は何の意味もない。自分の人生が幸福か不幸かは誰が決めるのか。自分の脳が決めるのだ。ザックスナイダー監督が私のお気に入り映画「エンジェルウォーズ」で伝えたかったのもそれだと思うがリアルな映像ゆえに成功したとは言い難い。でもテーマは同じ。自由への鍵はそこにある。

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2022年04月08日

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ブラックユーモアが好きなのでこれらの作品は
本当に面白かったです。

実際にはありえないお話なはず、なのです。
だけれどもきちんと人間の心理を捉えているせいで
現実にありそうな気がして、恐ろしいもので。

表題作はまさに人というものの弱さを
露呈させている作品です。
人は「枷」がなくなるように望みますが
その「枷」がいざ取れてしまうと
どのように行動してよいかが分からないのです。

結局人にはそれ相応の
「秩序」が必要なんだと痛感させられます。

それと不条理な作品も多いです。
「風船」なんかはそれの典例。
幸せが望むように続かないのと同じ。

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2013年09月14日

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人間臭い、気軽な神が登場し、日常から非日常へと知らぬ間に誘われ、ときには残酷なオチをつける。
日本の読者なら、少し長い星新一を読んでいる気分になるのでは。

非常な日常観察力(グランドホテルの廊下、小さな暴君)、純粋な想像力の飛翔(呪われた背広)、人生の危うさ(マジシャン)という本を読む楽しさを思い出させてくれる本。すごくいい。

描写も非常に綺麗(神を見た犬、戦艦《死》)。

解説も気がきいている。
「映像的な幻想と現実とが交錯し、両者が入り交じった特有な世界における、はかなさや哀しさにみちた美。そこでは、現身の人間と死せる者とが別れの挨拶を交わし、実在の戦艦が幻の戦艦に攻撃をかけるのだ。」
これだけしびれる。

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2012年11月25日

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モノトーンの哀切きわまりない幻想と恐怖が横溢する、孤高の美の世界22篇。日常的、現実的な事柄を摩訶不思議な幻想的な世界として描き出す独特の世界観。漫画家でもある著者の文章の運びがまるで漫画の1コマ1コマを見ていくように進んでいき、読み手の想像力を膨らませてくれます。少し宗教色が強いお話もあるけれど、人の恐怖や不安を幻想的に描き、しっかりオチもあるので読んでて面白い*

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2012年04月04日

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イタリアでは有名な童話作家らしいが日本に来ているものが少ないのが残念。モヤリと残る終わり方、それぞれの短編が実に皮肉っぽく面白かった。

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2012年03月06日

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どちらかと言うと避けてきた「幻想文学」と言うジャンル。歯医者の待ち時間の寄った本屋で手に取って、「古典」の響きに惹かれて手に取ったんだけど、ジャンルとしてはほぼ初体験に近かったが、食わず嫌いはあかんで、と思い知った一作。特に「七階」の空恐ろしさは秀逸。一度でも内科に入院した事のある人間には…。表題の「神を見た犬」では、やはりキリスト教と言う宗教を理解した頭で読みたかった、と思う。しかし、ブッツアーティって覚えにくいし読みにくい(笑)

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2010年03月10日

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『タタール人の砂漠』で有名なイタリアの作家であり画家でもあるブッツァーティの短編集。『タタール人の砂漠』と同様、幻想的と評される作風で不条理さや不安感、安定のなさ、不思議、奇跡などを描く。それは現実的ではないがゆえに逆説的にリアリティをともなっている。本人はカフカ的と呼ばれることを嫌がっていたようだけれど、作風的にはカフカのようで、この世の何ともならなさを描くことに卓越している。
映画監督フェリーニとの映画制作も構想されていたようだけれど、実現はしなかったとのこと。フェリーニの作風も夢や幻想に仮託しながら無意識や奇跡などを描くものであり、親和性はあると思われるだけに実現しなかったのが残念。同時代人のモラヴィアが実存主義文学的作風だったのに対抗することを意識していたようで、その対立も興味深い。
光文社古典新訳文庫がブッツァーティを改めて世に出してくれたことに感謝。

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2024年01月21日

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帯には「奇想」とあるが,童話や寓話のような話が多い.またキリスト教の影響が色濃いなあ.といっても,敬虔ではなく皮相的.

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2022年08月20日

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短編集ですが、この中の「病院というところ」を読みたくて購入しましたがどれも秀逸です。
日本でいうなら星新一さん作品がお好きならきっと気に入ることと思います。

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2020年05月30日

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ネタバレ

小説というよりは、寓話集。というか昔話集、と言いたい趣きすらある。
というのもマックス・リューティの所謂「昔話3回」の方程式があるからだ。
またカフカに比されるのは作者としても不本意だろうが、しかたない、と「変身」および短編数作しか読んでいない者でも感じざるをえないくらい、カフカチック。
というか同じグラデーションに安部公房も星新一も筒井康隆もいて、その源流を仮に想定するならカフカと言わざる得ないくらい、カフカのすそ野が広いせい、なのだろう。
寓話的な短篇の中にあって、やはり個人的な好みは、比較的長めの小説的な数作だ。
「コロンブレ」「神を見た犬」はまだ寓意強めだが、「七階」「護送大隊襲撃」「小さな暴君」「戦艦《死(トート)》」は極私的短編アンソロジーに入れたいくらい、短編小説の見本として輝いている。
というより、そのエグさ・涙腺刺激度数は他に類を見ない。
このへんにこの作家の良さを見出してみたい、そして今後「タタール人の砂漠」を読もう。

■天地創造……天使がデザイナーという視点は面白いね。
■コロンブレ★……近づいたら死ぬと言われた海に、むしろ憧れてしまう。そして老いてから相対する、これも死そのものだ。最後はひどく皮肉。
■アインシュタインとの約束……地獄の大悪魔たちの望みなのだ」……早く原爆を造れ、という人類史的悲劇の暗示?
■戦の歌……人物も群衆も匿名の、山尾悠子が好みそうな。
■七階★……これは凄まじく怖い! 役場のたらい回し的なもどかしさを飛び越えて、もはや死と老いそのものを描いている。この窓のブラインドのSEは「悪魔のいけにえ」の鉄扉の音かもしれないくらいだ。
■聖人たち……聖人が死後「納められる」という発想は一般的なのだろうか? 独特なオトボケ感。
■グランドホテルの廊下……コントだね。関係ないけど、全裸でビジホのドアから出てしまったときの、酔い醒める瞬間よ。S県のアパホテルにて。
■神を見た犬★……ディストピアを描くのはだいたいSFというジャンルだが、この作品は相互監視という現実にある集団心理を、SFに頼らず描く。なおかつディストピア、ニアリーイコール、ユートピアなのだ、という視点は保持されているのである。ユニークに皮肉を描いており、面白い。
■風船……すべてを見通せるかわりに、とある感覚を失っている、という設定は、まるで「ベルリン・天使の詩」のようだ。その設定を引き破るかのような悲鳴の、強烈さ。
■護送大隊襲撃★……頑固一徹親父の幻覚に過ぎぬのかと思いきや、幻想が現実を食い破ってくる! 浪花節と言えば言い方は悪いが、そのギリギリ手前のリリシズムおよびダンディズムがある、かと思いきや、なんというラストの軽やかさよ。とても映像的な幻想文学。イーストウッドに任せたい。
■呪われた背広……星新一ブラック味120%。源流はたぶんカフカなんだろうけれども。
■一九八〇年の教訓……「神を見た犬」の同工異曲。
■秘密兵器……星新一よりは筒井康隆の味か。
■小さな暴君★……これは怖い! 単純な癇癪ではなく、ひと呼吸おいて、大人の持つそれぞれへの悪意を観察しているところが。サイコパスと一言で言って片づけることは、この作品ではできない。家族の持つ歪みを、敏感に吸収して歪んでしまう少年の歪みを、歪みをそれでも取り繕おうとしていた大人のうちで「綻び」になってしまった祖父が、暴いてしまう。暴かれた姿はもはや大人の手に負えない、もとは大人が熟成してきたものなのにもかかわらず。実写にするなら「危険な遊び」のころのマコーレー・カルキンくんだね。
■天国からの脱落……本作では「ベルリン天使の詩」だけでなく、「かぐや姫の物語」をも彷彿。
■わずらわしい男……この作家の描く神や天使や聖人はひどく人間的に辟易している。
■病院というところ……この作者で病院といえばもはや「七階」だが、迫り方の角度は結構違う作品。
■驕らぬ心……サキやオスカー・ワイルドの短編にもありそうな、皮肉と温かみの綯い交ぜ。
■クリスマスの物語……他人に不寛容を示した瞬間に、その場にいた神が消えてしまう、という描き方が面白い。あったかい気持ちこそが神なんだよ、と言い出せば神学的に話がずれてしまうかもしれないが、ブッツアーティは厳密な一神教という感じはしないね。
■マジシャン……作家ならではの寓話。
■戦艦《死(トート)》★……「護送大隊襲撃」と同工異曲だが、本のレビューという枠物語がある。とはいえ安穏としたレビューではなく、結論はない。世界へ開かれている。投下された爆弾を、読者が受けざるを得ない作りになっている。(漱石「こころ」の第4部があえて書かれなかったように)
■この世の終わり……忽然と現れるのはモノリスだったり、ばかうけ(小説「あなたの人生の物語」=映画「メッセージ」の)だったりするが、本作では割と凡庸に握りこぶしなんだな、と連想。

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2019年05月12日

Posted by ブクログ

味のある短編集。
イタリアの星新一。

七階、の心理描写は素晴らしい。
護送大隊襲撃、表題作の
神を見た犬も素晴らしい。
他の作品も読みたい。

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2016年04月17日

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すごい。ブッツァーティは汲めど尽きぬ後悔も吐き気を催す徒労感も、こんなにも目の前に届けてくる。僅か数頁の内容も含むこの22作の短編集は、いずれも文体も内容もリーダビリティ溢れているのに、遊園地のフリーフォールばりにすとん奈落へ落としていく。これぞ不条理、生きるのって楽じゃないよ。しかしながらその落下感と後味が癖になってしまうような、不思議な魅力が本作には込められているのだ。「コロンブレ」「グランドホテルの廊下」「風船」「秘密兵器」辺りが素晴らしいが、皮肉的な肯定感に溢れた「マジシャン」がマイベストか。

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2015年07月05日

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神、巨大な科学兵器などに対する畏怖が人を操るという話が多く面白い。
アインシュタインと悪魔の話が好き

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2013年06月23日

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短編集だけど、印象に残る作品が多い。
7階、戦艦(死)など、ありえない設定も
寂寥感とともに読ませる。

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2012年08月13日

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ブッツァーティは、『タタール人の砂漠』と『待っていたのは』を以前に読んだ。

あまりにも『タタール人の砂漠』が名作で、ブッツァーティの深い思索の集積をみた気がした。

『待っていたのは』は、河出書房新社から出ている短編集で、光文社から出ている本書と重複している短篇もいくつかある。

本書はブッツァーティの残した膨大な短篇のなかから代表的なものを選び二十二篇を編んでいるもの。
そのうち、十篇は未邦訳である。

『タタール人の砂漠』は、いつ攻めてくるやもしれぬタタール人の襲撃に備え、辺境の砦でそのときを待ち続ける兵士を細かい筆致で丹念に描く。
兵士とともに読み手をこれでもかこれでもかと待たされ、、終盤に落涙必至のエピローグが用意されていた。

本書におさめられた短篇の中で、傑作なのはいくつかあるが、私が特に心惹かれたのは、「神を見た犬」「コロンブレ」「七階」「護送大隊襲撃」

「神を見た犬」は、まず、短篇といえどもその奥行きの深さに驚かされ、偶然以上の必然をこの小説のなかに見出すことが出来る。
一匹の白い犬が神格化されてゆく不思議な光景を読者は目撃する。
ブッツァーティの筆は、小説を見事にビジュアル化させる魔法を持っているのだ。
「神を見た犬」はこの短編集のなかで一番優れた作品だと感じる。

「コロンブレ」
船乗りの父とはじめて出た海で、餌食にするまでターゲットと決めた人物を付け狙うコロンブレを見てしまう。コロンブレは謎に包まれた恐ろしい鮫。
いくら狙われているとはいえ海にでなければ主人公が襲われることはない。
しかし、海から遠ざかった主人公は海への憧憬をおさえられず、危険を承知で海にでる。
コロンブレから逃げ回り世界中の海を航海した主人公は、ついにコロンブレと対決することにした。年老いた主人公の前に現れた年老いたコロンブレが差し出す真実とは?
絶対に近づいてはいけないといわれるものに近づいてしまう人の心理や、恐怖を感じながらも抗がうことのできない運命を巧妙に描いている。

「七階」は、イヤな予感がどんどん真実になっていく恐怖が充溢している短篇。

「護送大隊襲撃」は、用なしになった山賊の親分が主人公。
昔の威厳を漲らせるための花道とは?

ブッツァーティの短編は長編とはまた違った引力を持っている。

ブッツァーティの作品のうち、『ある愛』『七階(映画タイトル 「鼻の鳴る音」)』『タタール人の砂漠』が映画化されているとのこと。『七階』は戯曲化もされているという。
ブッツァーティの作品は演劇にも向いているかもしれない。

「ブッツァーティ流」と称される痛烈なアイロニーは、舞台ではさぞや映えることだろう。

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2012年02月01日

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いろんなアイディアがつまった、魅力的なSF短編集。表題作の『神を見た犬』と『戦艦《死》』が特に秀逸。

ただ、オチがよく分からないものもままあったので星4つ。

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2011年06月16日

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「七階」と「グランドホテルの廊下」は面白かった。そういう、何か得体の知れない力が働いてしらぬ間に身動きがとれなくなったり気づいたら運気が下がっていることってやはり世界中誰でも感じることはあるんだな。

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2023年03月13日

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イタリア文学を読んだのってはじめてかもしれない。「コロンブレ」「アインシュタインとの約束」「聖人たち」「驕らぬ心」あたりが結構すき。「アインシュタインとの約束」は冒頭のプリンストンというところでわかる人はわかるんだろうなと思った。自分は検索したけど。「聖人たち」はちょっとかわいそうだけどほのぼのとした。これからも仲良くいてほしい

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2021年06月20日

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頭木弘樹さん「絶望読書」で、「絶望するときに読んではいけない本」として紹介されていた「七階」が収録されている短編集。

シニカルともブラックユーモアともいえない、切なくてぞっとする幻想的なお話がたくさん。
お目当ての「七階」は結末を知っていたけれど、それでもぞっとした。
表題作「神を見た犬」はどシニカルな感じでよかった。「グランドホテルの廊下」「病院というところ」あたりがすき。

テーマが幅広い。古代から現代、神と宗教、ありふれた日常。政治と戦争。

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2020年11月03日

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ネタバレ

イタリアの作家ブッツァーティの短編集。「タタール人の砂漠」が非常に良かったので読んだ。「タタール人の砂漠」ほどは揺さぶられなかった。

幻想的な雰囲気が漂う作品が多い。時代設定が少し昔だったり、物語の舞台が田舎がだったりすることで、今自分がいる世界とは地続きのようだが実際に見たことはない世界のストーリーとして感じられるからだと思う。
特に「護送大隊襲撃」は、ヘミングウェイの「敗れざる者」を彷彿とさせる佳作だと感じた。


護送大隊襲撃
捕らえられた山賊の首領プラネッタが(微罪のみしか問われなかったことから)3年後に釈放される。しかし刑期に衰えた彼を昔の仲間が迎えることはなかった。一人過ごしていると、山賊志願の若者が弟子にして欲しいと言って来る。自分の現況を細かく話さずにいたプラネッタだが、若者もいつしか現在のプラネッタの状況を知ることになる。失意の中、プラネッタは税金を積んで都に向かう護送大隊を襲撃することを決意する。

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2018年11月29日

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はじめの2作は軽快で、ピウミーニの『キスの運び屋』みたいだな、と思った。聖人が天から人の世界を見下ろして…という設定は、私はピウミーニで初めて読んだのだが、勿論ブッツァーティの方が古いので、ピウミーニが真似したのかもしれない。しかし、そもそもイタリア人は、こうしたことをしょっちゅう考えているのでは、とも思った。幼い頃から、「聖人さまがご覧になっていますよ」と戒められて育つ、とか。
告解のシーンも多く、カトリックの国の作家だなぁ、とも思う。
ロダーリやピウミーニほど明るくないし、カルヴィーノほど寓話的でもナンセンスでもないが、やはりイタリアの作家らしく、解説にあるカフカなんかとは全く違う。
「病院というところ」はちょっとカフカっぽかったが、不条理というよりは社会批判。日本なら役所が舞台で書ける。
「七階」は、筒井康隆の「乗越駅の刑罰」を思い出した。「秘密兵器」は星新一風。
やはり傑作は表題作。一番面白いのは「七階」。
その他「コロンブレ」「グランドホテルの廊下」「驕らぬ心」「クリスマスの物語」が良かった。

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2015年08月22日

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20世紀のイタリア文学。幻想文学の鬼才、と称されているらしい。イタリア文学はイタロ・カルヴィーノしか知らなかったので、このブッツァーニさんは初体験の22篇。
勝手に濃ゆいのを想像したが、星新一みたいな愉快な話も多く、読みやすかった。
七階、聖人たち、驕らぬ心、マジシャン、この世の終わり、の5篇がお気に入り。

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2012年07月09日

Posted by ブクログ

レーヴィの短編に比べると全体的に若干シリアス。ツボにはまる作品があったり、毛嫌いしてしまいそうな作品があったり、というように、この 『神を見た犬』 の編集は統一性が欠けているように思える。関口英子訳はとても素敵だと思うけど、ロダーリのイメージが強くてどうかと思うし、短編集からいくつか作品を取り上げて新たに短編集を編むというのもどうかと思う。原文で 「七階」 を読んだ時はもっとドキドキしたけどなあ。

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2011年02月22日

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