【感想・ネタバレ】思想をつむぐ人たち 鶴見俊輔コレクション1のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

●本の概要
様々な人物の思想を鶴見俊輔が語ったものを編集者が纏めている。そのため、テーマとして何かしら一貫したものはない。それぞれの枚数もバラバラである。何名かを書きだそう.
イシ(先住アメリカ人ヤヒ族最後のひとり)、ジョージ・オーウェル(英国人作家)、金子ふみ子(アナキスト)、ハヴェロック・エリス(性心理学者)、ガンジー(インドの弁護士、思想家、政治指導者)、由比忠之進(エスペランティスト、反戦運動家)、新島襄(同支社創立者) etc

●好きな場面
いくつかを抜粋、※で補足や所感を記述する
尚、長文が多いため、一部を省略し、辻褄を合わせるために、文章を一部編集している

イシは文明人を知識はあるが、知恵のない人達だと考えていた。彼の最後の言葉は「あなたは居なさい。私は行く」である。死に対して平然とした態度を崩さない。文明人には稀なことだ (イシが伝えてくれたこと)
※イシが持つ文化を人類研究者であるアルフレッド・L・クローバーは研究、のちに妻が、イシの伝記を書く。その娘は「ゲド戦記」の著者である。鶴見俊輔は、ゲド戦記とイシが伝える知恵との関連を説明する

「たとえ私達が社会に理想を抱けなくても、私達自身には私達自身の真の仕事がある。それが成就しようがしまいが関係ない。私達は、その真の仕事をすればよいのだ」 (金子ふみ子 無籍者として生きる)
※この言葉は鮮烈だ。鶴見俊輔は、金子ふみ子の人生をシンプルに語り、彼女を知らない読者に彼女を知ってもらおうとしている。金子ふみ子は大逆罪で捕まり、獄中で手記を纏め、獄死した

私は人生を全体としてみる。そして人生が終わったことを嬉しく思い、もう一度、この人生を繰り返したいとは思わないまでも、人生を全体として眺めると、喜びをもって、うっとりとして眺めるのだ
(ハヴェロック・エリス 人生の舞踏)
※美しい人である。間違いなく変態、変人ではあるが、美しい人だったのだと思う。

私はある種の老人のように青年たちから理解されようとも思わない。人生教訓を授けようとも思わない。ただ人生を漠然たる一場の夢と感じて死にたいのだ。死は夢の続きであり、望みうる唯一の生かもしれないと、一度でも思ったことがあるだろうか?若者よ、諸君は私に関係なく、私は諸君に関係がない。私と諸君の間に言葉も不要である (親子相撲)
※森於菟が73歳に書いた文章。彼は森鴎外の息子である。確かに、この文章は毅然としていて良い

戦後、日本全体は明るくなって、灯りをともしているところを見分けにくくなった。私が、そう言うと、武谷三男は、こう返した。「闇の定義を変えれば、見える」 (武谷三男 完全無欠の国体観にひとり対する)
※今回の抜粋は「死」を意識したものにしたが、これはそのテーマに属していない。しかし、闇を知ることで、光を知るという観点ではなく、「何が闇なのか」から自分で考えるんだ、という、この返しは、まさに今の時代にも通じる

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2020年07月05日

Posted by ブクログ

 伝記的な作品を集めたアンソロジー。ジョージ・オーウェルからミヤコ蝶々まで、あくまでも共感をもとに描かれる人物像よりも、むしろその共感ぶりに共感してしまいます。
 読み物としても面白い伝記であると同時に、共感される思想の連鎖から、氏の膨大な著作群を読み解いていく糸口を見たような気がしました。

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2012年10月15日

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