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『三四郎』『それから』に続く、前期三部作最後の作品。親友であった安井を裏切って、その妻である御米と結婚した宗助が、罪悪感から救いを求める様を描く。
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前期三部作と言われる三作の中では世間的評価が最も低いかもしれないが、それはこの作品が恋愛成就後の現実を描くからだろう。
二人は共犯者としての過去を共有するが、その罪をそれぞれに見つめた結果、ある意味最も遠い存在同士になってしまう。
それでも人生は容赦なく回り続けるため、その現実を受け入れ、慣らされていく(そして時に過去に慄く)。
この作品は決して諦めを描いているのではなく、生きるということの本質を抉りだそうと漱石がもがいているのだと思う。
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前期三部作、三作目…
三四郎、それからと大きく違うのは、最初から夫婦である、と言う点である。
ただ、略奪愛という面では、それからの流れを汲んでいる。
弟の進学問題など色々ありながらも、二人で慎ましくと暮らす夫婦。彼らには"罪"があり、あることがきっかけで夫は禅に救いを求めるが、結局上手くいかずに戻ってくる。そして…という。
夫婦の日常生活の描写がとても綺麗だなと思った。
ただ単に、仕事に行ったり食事をしたりとか、その辺をぶらぶらしたりとか、ありがちな生活を送っているだけなのだが…。
多分だけど、夫は元々、禅とかそういうのは興味がなかったんだと思う。
だけど、自分が親友の妻を略奪して結婚し、その親友の行方は知れず。でも、隣人から久しぶりに、かつての友人の名前を聞き、怖くなったんだろうね。
だけど、友人の名前を聞いたことを妻にも誰にも言えず、何かに縋りたかった。それが禅だったんだろう。
こういうのって、誰にでもあると思う…。私にもある。だから、この点は夫にちょっと親近感を覚えた。
最後の方で「鶯が鳴いているのを聞いたと誰かが言っていたよ」と弟と妻が話していて、妻が「もう春の兆しが来ているのね」と喜んでいたが、友人の件もあり、でもすぐに冬が来る…なんて言う。不穏な終わり方。
彼は、この先も不安から逃れることが出来ないんだろうな。
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『それから』の「それから」の話が、『門』に繋がっていくのかと改めて思った。罪がどんなものか、詳細が語られていないのが謎で、少し難しい話だった。