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領土問題について体系的に知ることができた
北方領土竹島尖閣それぞれ違った課題がある
北方領土 歴史問題
竹島 政治問題
韓国は異常なまでの熱量
日本が侵略してきたときの状況と同じで、また竹島を奪うことで韓国を侵略してくるのではないかと言う思いを持っている
尖閣 資源問題
石油が出る所から問題となった
尖閣はエネルギーを共同開発する方が良いのではないか
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著者は、元外務省の職員で、ソ連、ロシアと直接北方領土問題の交渉を行っていた人物。そのため、北方領土問題については、実際的な経緯は、この本から詳しく知ることができる。
尖閣問題、竹島問題についても、基本的なことはわかりやすく書かれている。
また、感情的にならず、冷静に交渉することの大切さを述べ、日本の国益となるような「実」を取ることを考えている内容であると思った。
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このところの国境問題について、入門書としてあちこちに取り上げられている2冊の新書がある。一つは昨年5月初版の「日本の国境問題」(孫崎享著、ちくま新書)であり、もう一つは今年2月初版の本書だ。私が本書から教えられたことは、①韓国人があれほど竹島支配に心情的にこだわるのには歴史的背景がある、②北方領土問題・尖閣諸島問題では、相手方政府のメンツをつぶす日本政府のナイーブな言動が日本の立場を極めて悪くしてきた、③ロシアと日本は対中国で利害を共有しうるのだから、北方領土問題には解決の糸口はある、という3点。 もちろん、北方四島・竹島・尖閣の三問題についての歴史的経緯も分かり易く記述されていて、読む人それぞれが多々得るところがあると思う。 ご一読をお勧めします。
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現行の領土問題として知られる、北方領土、竹島、尖閣諸島について、歴史から現状までを幅広く記述した一冊。
日本の見方はとかくこれらをどうやって奪回(尖閣諸島は維持)するかというところだが、実際には世界のパワーゲームの中で様々な見方があることを知った。
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日本の領土問題のポイントを知るには手軽な本。外務省官僚らしく、どちらにも片寄らない引用はさすが!放置したらどんどん悪化する領土問題、、、北方領土返還のチャンスがこんなに沢山あったなんて、、、
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日本が抱える3つの領土問題の本質について,分析しています。
特に,元外務省官僚だった著者の東郷氏が,当時,当事者として関わった「北方領土問題」について語っているのを読むと,「領土問題は,双方の歩み寄りが,色んな形で必要なんだなあ」ということがよく分かります。「両国間には領土問題は存在しない」「もともとここはうちの土地だ」なんて言っているだけでは,外交は進まない。
日本は「武力による問題解決をしない」と決めた以上,少しずつ前進する如かないのだと思います。
ナショナリスティックな構えだけで突き進むのは大変危険です。
本書を読んで,冷静な対処が一番大切なんだなあって思いました。
そして,あきらめないことも…。
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全部で2部構成、第1部は東郷和彦さんの主張が丁寧に、こってりと。
第2部は、お2人での対談という構成となっています。
その東郷さんは元外交官、佐藤優さんの上司として、
主に北方領土問題に携わってこられた方です。
凄く頭の良い方なんだなぁ、、と感じました。
それだけに、部下としてついていく方は大変そうだ、とも。
その東郷さんの主張、読み解くのはなかなかに骨でした。
一点して、保阪さんとの対談となった第2部はわかりやすかったです。
印象に残ったのは、徹底的にリアリズムを貫いているとの点でしょうか。
外交の最前線におられただけに、なんとも説得力のある言葉として響いてきました。
“交渉で決める以上は、双方で「これでよかった」という案を見出さねばならない”
外交の最大の目的は“戦争を避ける”ということ、
そのためには、彼我の国力差を冷徹に見つめる必要がある。
そして、結果としての譲歩もやむを得ないとは、
共感するかどうかは別として、、理解できる筋立てでした。
“(武力で来る相手に対する)唯一の抑止力は、
自ら適切な武力を行使してたたきかえせるかということ”
日本の“今”の抑止力がどの程度あるのか、
そして、周辺諸国との相対的な国力の差をどう把握するのか、、
フラットに相手の立場を俯瞰していき、その上で、
個人のプリンシプルと重ねて、譲れない部分をフォーカスする。
交渉とはこういうものなのかなということを、なんとなく。
そして、“力なき正義は無力”ということもあらためて、なんて。
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北方領土
1年ちょい前に本書が発刊されたときには北方領土交渉の糸口は無かったが、東郷氏は2011年10月3日のラジオ「ロシアの声」でプーチンはガスプロム社長に「日本、韓国、中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう支持した」と発言した話を紹介し、この紹介順が日本に対するメッセージになっていると言っている。
ともかく昨年の森元首相訪問、に続き安倍首相訪問で交渉再開ができることにはなった。ただし東郷氏の見立てでは四島一括返還にこだわる限りは交渉は決裂するし、メドベージェフ訪問以降北方四島のロシア化は進んでいる。少なくともプーチンは平和条約締結後に色丹、歯舞諸島の返還をするというのは過去にも認めている。2島先行返還でも択捉、国後への道はつながると信じると言うがそれは正直な所わからない。四島一括と言う正義の御旗をかかげていれば国内的な批判は受けずに済むかもしれないが過去の交渉は何度かこの国内向けの強気な表現で決裂している。
対談での保坂氏の爆弾:2島返還で決着するのはどう考えるか?
竹島
韓国からみると1905年の島根県の竹島編入はその後の1910年の韓国併合とワンセットで捉えているらしい。歴史的にどちらの領土であったかと言うとどちらの主張にも瑕疵はあり(韓国の主張は位置的に無理があり、日本も編入までは日本領とは見なしていたとは言えない)、結局20世紀の初めは無主の地であり国際法上は編入は有効で日本の領土であったとしても、韓国からすると力関係上文句が言えない際に取られた土地と言う感情があるのだろう、1950年以降は韓国ナショナリズムのシンボルになってしまっている。逆に日本からしても敗戦後どさくさ紛れに武力支配されたと言う思いは残っている。韓国にある独島ナショナリズムあるいは独島憧憬主義には東郷氏もどうしてそこまでと理解しがたい物はあるらしい。
2010年京都産業大学で開かれたセミナーをきっかけに名古屋大学池内教授の「竹島/独島と石島の比定問題・ノート」と言う論文と嶺南大学金秀姫教授の「竹島の日制定後の日本における独島研究動向・石島解釈論」と言う批判論文が鉢合わせした。(大韓帝国勅令41号:1900年に韓国政府は鬱陵島を鬱島と改名し管轄地域を鬱陵全島と竹島石島とした。この竹島石島が何をさすかという話、江戸時代の鳥取藩は鬱陵島を竹島、竹島を松島と呼んでおり1696年幕府に対し松島は鳥取藩に属さないと答えている。名前がかぶるのでややこしい)だがこの二人の意見は真っ向から対立しているにも関わらずお互いの研究の進め方に敬意を払いそれぞれの意見を尊重した議論が出来たそうだ。
対談での保坂氏の爆弾:主権を放棄し経済利権だけ確保するのでどうか?
尖閣諸島
これは日本がチャレンジを受ける立場、東郷氏は領土問題があると言う認識に立つべきではないかと。そして武力衝突につながらないように緊張緩和策を検討すべきだと言っている。(国有化で緊張は高まってしまったのだが・・・)しかし同時に武力衝突やむなしと覚悟して十全たる準備もすべきだと。
その上での東郷氏の爆弾:主権は維持するとして日中台共同で石油開発をしてはどうか?
保坂氏からの逆提案:3つの領土問題をあわせて国際司法裁判所に提訴してはどうか?
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領土問題を作って退去するのは、戦勝駐留軍のおやくそく。日本では、北方領土、竹島がその役目。尖閣諸島は資源問題なので、チト違う経緯。これからの外務省は、いかに戦争を引き起こさないかという、明治時代の外交官の立ち回りが求められるとのこと。自衛隊と中国との非公式チャネルが継続されていたことで、なんとか踏みとどまってる状況だが、状況は不安定。
Posted by ブクログ
●は引用、→、無印は感想
領土問題(外交)は、時代とともに、歴史的背景(太平洋戦前・戦中、占領期、冷戦期、冷戦後)、経済的背景(日本のバブル期・ソ連の崩壊直後・中国の経済開放直後とそれ以降)によって変わっていく。
北方領土、竹島、せんがく諸島。同じ領土問題でも、それぞれ問題点(歴史的、領土的、領土的)が違う。そのことを理解させられる。
北方領土問題については、その歴史的事実を認識していたが、竹島、及びセンガク諸島問題がそれぞれ日露戦争(韓国併合)、日清戦争(台湾割譲)という日本帝国の植民地の歴史としての認識は欠けていた。
●私は、特に、この孫副隊長の発言には、仰天した。もしも中国が本当に管轄権の主張を実力で示そうとするなら、行き着く先は、武力衝突の道しか残っていない。それが、この時の私の直感だった。
●私は、民主党政権が、たとえ無様な姿であっても船長の釈放という形で事態を旧に戻さなかったら、何度目かのステップには、かならず軍艦がでてくるだろうと思った。軍艦は、当初は威嚇のためにでてくる。しかし、その威嚇が効果を持つためには、万一の場合は撃つということでなくてはならない。2008年12月の海事当居の発言とあわせ読んで、私は、最も本質的な意味で、戦後は終わったと思った。2010年9月7日、日本は、新しい時代に入ったのである。憲法9条というイデオロギーで日本を守っていた時代は終わった。外交の先に武力衝突がありうるという時代が始まったのである。戦前の外交官は、戦争にならない外交のために命を懸けた。この日以降、日本の外交は再びそういう時代に入ったのである。その後の日本の安保政策は、おおむねこのラインで進んでいる。2010年の「防衛計画の大綱(NPDG)」が国防の重点を南方にシフトし、海上自衛隊の力を増強しているのは当然の動きである。
→2013年2月、海上自衛隊護衛艦が中国海軍フリゲート艦から射撃管制用レーザーの照射を受ける事案が発生した。本書の指摘どおりに事態が展開している。以下の引用にあるようなバックドアは開いているのだろうが、ちょっと怖い。
●東郷 はい。今尖閣に関して勇ましい議論をきくと、この方は本当に考えたことがあるのかなと思ってしまいます。戦後外交で私は初めて、戦争のリアルな危険性が出たと思っています。(略)安保条約第5条によって日本施政下にある尖閣が攻撃されればアメリカは防衛に参加する条約上の義務がありますし、そのことに疑問を呈する理由もありません。しかし、こういう話の言葉にならない根本常識は、日本自らが国を守って血を流すという覚悟と実行あってのことです。
●東郷 先日テレビで見て知って驚いたのですが、30年ほど前から自衛隊の幕僚長クラスのOBと中国軍部の佐官クラスが、日中関係全般に関する対話を行っているんですね。この30年間、常に日中関係は良好だったわけではないのですが、にもかかわらず、一度も欠かさずに対話を継続してきたということです。(略)東郷 30年前の中国は、経済力も国力も今と比べようもないほど小さかったのですが、当時から自衛隊は将来の中国を見越していたのかもしれません。それが30年にもわたるチャンネルにつながった。これはまさに戦後の自衛隊のあるべき姿だし、心から尊敬を表明したいです。
→”先日テレビで見て知って驚いた”とは。部課が違うとこういったインテリジェンスコミッティーとは関わりがないのか?
●保坂 自衛隊幹部や防衛大学校の関係者と話をしますと、彼らは必ず、「われわれは戦争をするためにいるんじゃなくて、戦争を抑止するために存在する集団なんです」と言いますね。総じて今の防衛省は、シビリアンコントロールの下で抑止の視点からの防衛を真剣に考えているのではないでしょうか。旧軍のそれゆけ、やれゆけの体質はありません。→疑問
Posted by ブクログ
前半は東郷氏による講義形式で、後半は保阪氏との対話形式で各領土問題を解説、解決の糸口を探ります。
東郷氏は領土問題には「法的」「政治的」「歴史的」な3つの側面があると分類し、各問題に対して、前提となる史実、条約文書などをあげながら、一つずつわかりやすく解説してくれます。領土問題は「政治的」な解決しかありえなく、しかしそれが「歴史的な」問題からくるナショナリズムと結びついたときには、その問題を解きほぐし何らかの解決に導くという事にはきわめて大きな困難が伴う、と指摘します。
ナショナリズムとの結びつきという側面でとらえると
竹島>尖閣諸島>北方領土
という評価になるのでしょうか。
こと竹島に関しては、現在の日本が韓国同様竹島問題をナショナリズムと結びつけた際の危機的状況を、韓国側にも冷静に想像して考えてほしいと指摘し、本件のように政治的に冷静な議論ができにくい状況では、民間レベルでの冷静な意見交換が必要であるとしています。
韓国にとっては1905年の竹島併合を1910年の韓国併合の布石としてとらえられている状態であること、尖閣もまたその領有が下関条約による台湾併合の前座とみなされ得る時期にあることを踏まえ、尖閣は早期の対策が必要になります。「グロムイコの屈辱」を中国に味わわせることをやめなければならない、という氏の指摘には尖閣問題がナショナリズムとの結びつきに落ちることを回避する意味合いがあります。が、実際にその問題性を認め、道筋を作るには相当な胆力が必要となりそうです。しかし、今後中国との協力体制を構築し、中国に脅威を感じるすべての国との信頼関係を構築するためには尖閣問題の深刻化は避けなければなりません。
島国である日本に育つと、国境・領土問題に鈍感になってしまうきらいがありますが、逆にそれは自国の領土問題に対する冷静さを保ってくれるものとも思います。竹島に関する韓国の発狂ぶりを見て、その背景となっている国民感情、教育の実態を知り、自分が同様に発狂した際にどうなってしまうかを冷静に想像してみる、その素地が日本にはあると思います。
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19世紀から20世紀の前半まで世界の常識は帝国主義で、日本も例外ではなく軍事主導で多くの領土を獲得した経緯がある。
ちょっと前まで国境は、武力で決まっていたんだよなぁ。
この本では三つの領土問題を取り上げているが、実はこれらはそれぞれ力点が違う。北方領土は「歴史問題」であり、竹島は「政治問題」、そして尖閣諸島は「資源問題」だ。いずれの問題も、当時のような軍事主導体制での解決はできないので、外交や政治の問題になってくるのはいうまでもない。
マイケル・ウォルツァーの“Politics-short-of- force may depend on force-short-of-war”が思い出されたが、この理解が我々には圧倒的に欠けている気がします。東郷先生は外務省辞めたんだったらもっといろいろ言っていいじゃないの。82点。
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北方領土、尖閣諸島、竹島について書かれた本。かなり勉強になった。外交や領土に関する問題は、歴史の事実を確り学び、事実関係を理解することが大事だと痛感。今後の解決策とか対応方法も勉強になった。外交や領土問題は難しいが、国民として考え続けることは不可避と痛感。
Posted by ブクログ
最近、大きな問題としてクローズアップされている、日本の領土問題について、3代続けて外交官の東郷氏が、外交官としての北方領土の解決にあたった経験を踏まえての交渉等を含めて説明している。
内容としては1部は東郷氏が、北方領土、竹島、尖閣諸島について、それぞれの歴史的経緯、それぞれの宣言などについて説明し、外務省としてはどのように当たってきたかを解説している。2部は保坂氏との対談形式で、それぞれの問題について、意見交換をしている。
読んでいて、国ごとの交渉というのは、どこかで妥協点があるわけで、その意味では原則論だけに則るのはどうかなと思った。また、欧州の交渉だと領土にはこだわらない解決法を考える人もいるようだ。それぞれの場所の歴史的経緯を考えると、北方領土は「歴史的問題」、竹島は日本にとっては「領土問題」であるが韓国にとっては「歴史的問題」である、尖閣諸島は領土問題(資源問題)と考えることもできる。
人でも2者間の妥協点を探すのは大変だけれど、国家同士でも大変だなあと今更ながら思った。領土問題は、知っておくべきだと思う。
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北方領土、竹島、尖閣諸島。これらの問題を同一に考え、強行に抵抗することの危うさを指摘した良書だと思った。北方領土は歴史問題を孕み、竹島は政治問題を、尖閣諸島は資源問題を内包している。強行であることの危うさは、「北方四島」というコトバがその原因かもしれない。歴史上あった「面積等分」や二島返還が実らなかったのはよ四島への固執が原因だったのかもしれない。領土問題はこれまでの歴史の熟知なしには相対することのできない問題。日本、韓国、中国、その発言する順序でさえも重要なファクターになりうるように。今後、外交関係の発言に注視したいと思った。「時間が解決する」のではなく「時間が経つほどに危機的状況を迎える」と認識し、まずはこの本の上梓後、急に緊迫感を帯びてきた尖閣諸島の問題にたいしては、いかに戦争を回避するかに慎重になるべきであり、石油資源の共同開発をも視野に入れた解決を討議すべきだ。そういう意味で、中国へのファイティングポーズをむき出しにする日本のマスコミは非常に危ういと思った。
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日本のこれからの20年の基本戦略は明らかである。一つは、中国との間で、相互の基本的国益を害し合わず、可能な協力を実施する関係を構築することであり、それは本質的に中国の利益でもある。もう一つは、そのためにも、中国の台頭に顕在的・潜在的脅威を感じるすべての国とできうる限りの信頼関係を作ること。これは、いかなる意味でも「反中包囲網」をつくることを意味しない。安定した二国間の協力関係をつくるということ、との問題意識から書かれた一冊である。
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【書評】
本書の筆者である、ロシア担当の元外交官が語る声には重みがある。領土問題を語る場合、現在の日本がおかれた状況に、筆者は並々ならぬ危惧を抱いている。筆者が深く関わった北方領土返還交渉を始め、竹島、尖閣諸島を巡って、一連の関係国の日本への風当たりはどれも強くなっている。これは、日本の対外的な力が落ちていることを意味するとともに、世界が異なる秩序に入りつつあることを示している。
実務家として領土返還交渉に携わった筆者によると、北方領土交渉の失敗の幾つかは日本の側に帰せられ、戦後の日本政府と外務省の進めた領土交渉は「ミッドウェーに匹敵する敗北」を喫してきた。「交渉者の判断を曇らせた大きな要因は、歴史の大きな力関係の中での、日本の力に対する過信である」(p69)。
そして、日本は周りの環境が著しく変化する中でも、領土問題へのアプローチは「敵」の不当性を叫び、我が方に正義有りと「一貫」したものでありつつけている。しかし、領土問題への解決は、時間によっては果たされないどころか、日本の相対的国力の低下によって不利に働いている。「今なによりも必要なことは、交渉敗北の事実を仮借なき眼で見据えることである。それができなければな、今後の交渉にいかなる展望も開き得ない。起きる結果は、一層の敗北のみである」(p67)。
【感想】
複雑な背景を持った領土問題に関心のある人は少ないか、関心があっても自国の正当性を疑わず、頑な態度を変えない人であるかのどちからだ。どちらの態度も領土問題解決にブレーキをかける存在となることを認識した上で、基本的な歴史的経緯を抑えつつ、枠にはまらないアプローチはないか模索した本であると言える。本書では、政治的、歴史的、法律的に絡まり合ったそれぞれの領土問題の特色が分かりやすい。基本的な歴史文脈を説明した上で、決して有利には働いていない現状を打開するために、幾つかの提言が成されている。
それら提言は必ずしも、日本にとって耳障りの良い物でもなく、日本の正義を疑わない人には面白くない内容だろう。しかし、そうやって、かつての主張にしがみ付くことが解決につながらなかったことは火を見るより明らかであり、時間は有利には働いていない。実務家として実際に交渉に携わり妥結一歩手前までこぎ着けた者の主張には、少なくとも敬意を払うべきものがある。特に北方領土交渉に関しては、日本の国際社会でおかれた状況、そしてその弱さを冷徹に見つめるリアリズムが必要であり、その上で共同開発などで自然保護などを通して日本のルーツを探る必要もあるのかもしれない。もう残された機会の窓は多くはないのだから。
Posted by ブクログ
日本の領土を如何に守り解決するか? 太平洋戦争終結後、日本は一貫して領土問題を避けて来た。 いや、逃げて来た。 もし私が結論を出せと言われるならば、淺知恵といわれてもひとつの結論を持っている。 まず、領土問題は、北方四島・竹島・尖閣諸島を並行して処理する方法。 まず、北方四島(択捉・歯舞・色丹・国後)は、歴史問題からしても、まず間違いなく日本の領土であり、譲る事は出来ない。 ロシアの不法占拠である。 尖閣諸島も歴史的にもこれも日本の領土である。 日本が実行支配してる。 しかし、竹島に関して言えばICJに訴える方法もあるが、韓国は竹島に関しては、非常に強行だ。 まず、韓国と妥協して竹島を認めるが商業権も認めさせる。 さらに、北方四島・尖閣諸島に関しては日本側の味方に付ける交渉をするべきである。
Posted by ブクログ
本書は、ゴルバチョフ以降、ソ連・ロシアと領土返還交渉に携わってきた東郷和彦氏が前半に3つの「領土問題」についての経緯並びに現状を解説・論評を行っている。後半は東郷氏と近現代史に造詣の深い保阪正康氏の対談。
お互いにタブーを恐れず、何故それぞれの問題に進展がないのかを忌憚なく討論している。対露では「四島一括」の一人歩き、竹島・尖閣では「日韓併合」「日清戦争」がキーワードであるとしている。
北方は新プーチン政権のサインを見逃さないこと。竹島については政府間交渉が現状不可能であることから、学術や文化交流のレベルでの信頼醸成を図ること。尖閣については非常に武力衝突が危ぶまれることを指摘しながら、ここ30年自衛隊幕僚長クラスと人民解放軍佐官クラスが定期的交流を行い。緊張が強まる時期も中断せず行っていることに注目をしている。
中身はかなり「タブー」と言われる事に踏み込んでおり、関係者には必読の書である。また、内容も平易でわかりやすく一気に読むことができた。
Posted by ブクログ
領土問題。
政治問題、歴史問題、資源問題。
感情論に走ると収集がつかないのは当然だが、見る角度によって変わってくるよなー。
太平洋戦争後、サンフランシスコ平和条約を基準にするのか、その後の各共同声明、日露共同、日中友好か。はたまた、1903年か、1905年か。
最初に見つけた方が所有者、実行支配した方が所有者、最初に見つけたという現存する歴史書がある方が所有者...
仲良く出来んかね。北方四島の時には共同開発の妥協案が出たが、日本敗戦後のプライドなのか強引に撥ね退けたな。
遡れば、パンゲアなんて大陸が地続きだった時代は誰のものでもなかったのにな。市場経済主義に戦中戦後の歴史問題が絡むと果てがない。白人の開拓精神しかり、日本の満州しかり。アメリカだって、マルコポーロのものでもコロンブスのものでもなく、ネイティブ・アメリカン達の土地だったのにね。アメリカなのに、ニューイングランドなんて名前が今じゃそのままだし。
国境。国連憲章で一国が持てる面積はこれだけ。緯度経度は何度から何度までとか決めりゃ良い、なんてのは暴論ではあるけどもさ。
グローバル社会で、金の流れだけは国境越えて世界中飛び回ってるけど、民族アイデンティティってのはあるのが当然か...
問題提起の一冊。飲み屋で触れる話題じゃないだろな。
Posted by ブクログ
北方領土、竹島、尖閣諸島の問題は、考えるたび虫の居所が悪くなるというか、気持ち悪い、すっきりしない、…どういう表現が適切なのかわからないのだが、とにかく嫌な気分にさせられる問題である。しかし、本当に最近の動向は憂慮すべき状況であり、少しでも見識を深めなければと思い、読んでみた。
「(2008年の教科書と竹島問題に関する)韓国の反応は、韓国事情をフォローしている人から見れば、予見されたものといってよいと思う。
しかしながら、である。この韓国世論の盛り上がりぶりのなかに、考えこまざるをえないものがあることも、否定できない。戦後の日韓関係全体のなかで、日本がけっしてこの問題を大上段にふりかざしたことがないことを、韓国側は、理解しているのだろうか。竹島の周りで起きている軍事演習や、喧伝される『独島戦争』で盛り上がる韓国世論を、一度もそんなことを考えたことのない日本人が、けげんな眼差しで見ていることに、思いをはせたことはないのだろうか。
教科書についても、自分の教科書にあれほど明確に書いていることを、それよりも比べものにならない地味な表現で書こうとしていることに対して、かくも激昂することが、『二重基準』だと、冷静に思うことはないのだろうか。
この袋小路から抜け出す方策が、一つだけあると思う。
民間の研究者・有識者のあいだで、相互の認識のギャップについて、冷静に意見交換をすることである。」
「大まかにいえば、北方領土は『歴史問題』であり、竹島は『政治問題』、そして尖閣諸島は『資源問題』ではないかと思う。」
Posted by ブクログ
3つの領土問題、それぞれの経緯と問題点を明らかにする。筆者の専門が北方領土なのでそこだけ妙に情報量が多いのは置いておいて、それぞれ違ったアプローチが必要であるということは外交の素人にもよくわかる。
尖閣諸島も石油があるとしても掘らなきゃわからないしねぇ。国と国とかでなくもっと大局的な判断ができる人が両国にいて欲しいものです。なかなか難しいのでしょうけど。
Posted by ブクログ
領土交渉に関する三原則
現状を変更しようとする国は力によって行動をしてはならない。実効支配している国は相手国との話し合いに応じなくてはならない。両国が知恵を出して衝突に至らないようなメカニズムを考える。
Posted by ブクログ
国力が下がると、領土問題で他国につけ込まれるという指摘には納得。しかしなぜ尖閣や竹島に拘らなければいけないかという根本的なところは書いていない。
Posted by ブクログ
分かりやすかった。このレベルの知識は国民全体が持っているベキですね。そうすれば、対峙国の暴挙に対して国民全体が冷静に対応できるかと。しかし、外交は難しいですね。
Posted by ブクログ
尖閣諸島国有化より前に出た本です。恥ずかしながら、僕は子どもにこの問題を正確に説明できませんでした。そこで本書でお勉強、と思った次第です。
「歴史問題」「領土問題」「政治問題」の違いを前提に、北方四島、竹島、尖閣諸島の状況、まとめ、そして解決案です。
早くしないと解決できなくなるぞ!というプレッシャー。
「塩漬け」も選択の一つだと考えていましたが、領土問題と原発事故には、通底する意識として、そのままじゃいけないとわかっていても、自分が担当しているうちは何も起きてほしくない、という「原発安全神話」に通底しているものがあるという指摘です。そう言われるちゃうとなあ。
ある第三極のトップの方の唐突発言は、これ読んだのかな?
Posted by ブクログ
北方領土、竹島、尖閣の三つの領土問題を詳しく説明。東郷先生の言われる三原則が一つの解決の方向だと思う。1.現状を変更しようとする国は力で行動してはならない。2.実行支配している国は相手国と話し合いに応じなければならない。3.両国が知恵を出し合い衝突にならない方法を考える。特に2番目の話し合いに応じるという部分が大事だと思います。日本で言えば尖閣は実行支配しているのだから、強行するのではなく話合う。北方領土はロシアは話合いに応じなければならないし、竹島も韓国は話し合いに応じなければならない。国のプライドや利権などもろもろのしがらみを超えて実行支配している国が少し妥協し、合意の方向を模索する事が大事。日本も北方領土に関して4島同時返還などカッコはいいが、言葉だけの意味のない事を言っておらずに現実を見た外交をすべき