【感想・ネタバレ】嗤う伊右衛門のレビュー

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Posted by ブクログ

伊右衛門とお岩の悲恋を中心に、様々な登場人物の心情や秘密が交錯する。
ホラーというにはあまりに論理的だが、ミステリーというにはあまりに幻想的。
江戸下町文化の奥深さにも気付かせてくれたし、実りのある読書だった。

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2019年12月29日

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有名なお岩さんのお話。
京極さんのアレンジでは、お岩さんも伊右衛門さんも、とても良い人たちでした。

そして、お岩さんも伊右衛門さんも良い人だったからこそ生きにくい人生を送り、周囲は人間の愚かさや汚さをしっかり行動に起こす輩ばかりで、大変だったね…って感じでした。

この2人が、素直に自分の弱さを好きな人には打ち明けられるタイプだったら良かったのにな。
片方だけでも好きな人には素直に甘えられるタイプだったら、こんな悲劇にはならなかっただろうと思いました。

人間って難しいね。
弱い人ほど「弱いんだから仕方ないじゃんっ!」って開き直るしさ。

ぴったりとこの分量で、誰もが知っているこの物語を京極風に紡いだ作者の力量を感じました。
下手な映画を観るより良い時間を過ごせました。

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2018年06月28日

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おばけ、妖怪は怖いだけではいけない。。

語り、歌舞伎等でおもしろくするためには、岩を哀しく、恨みを深くしなければならず、伊右衛門を悪く、より悲惨にしなければならなかった。。でもこの作品は違う。

気丈な岩と、優しい伊右衛門。。
しかし、すれ違いによる悲劇。。仇討。
恋愛小説である。

在したという伊右衛門、岩も、こんな人たちだったらいいなぁと想う。

顔が爛れていることが、二人の間で大きな障害になっていないところが、すごく好きだ。


恨めしや

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2018年05月29日

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病により美しい顔をを失った岩と、その婿養子として迎えられた伊右衛門。
悪しき意思により2人の中は裂かれ、伊右衛門は心に深い傷を負う。
岩と伊右衛門の異なる性質の強さに、感動してしまった。

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2017年06月20日

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久しぶりの京極夏彦。
又市一味の活躍する巷説百物語シリーズかとおもいきや、こちらでは又市は一介の脇役に過ぎない。
主人公伊右衛門を中心に読み進める毎に、語り手はかわり、あくまでも登場人物達の目線で物語は語られる。
古典に引かれる物語の骨子と、緻密な心情描写、そしてページ替えにさえも気を配る筆者の拘りにより、最高度の読書体験をすることが出来た。

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2016年07月12日

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生きているうちに笑い合えてたら…と思う反面、これでやっと安らかでいられるのかなとしんみりしています。二人には最高の結末だったのかな。

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2015年09月06日

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四谷怪談をしっかり読んだのがこの本が最初でよかったと思います。思いの行き違いでさまざまな物語が形成されていく怖さを感じました。おどろおどろししい中美しさまで感じてしまいます。

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2014年08月13日

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非常に興味深い作品でした。
面白かったと言ってしまえばそれまでですが、しんみりと心に響きました。
四谷怪談としては知っていた作品ですが、お岩と伊右衛門のその気持ちにフォーカスしてのとても沁み入るお話でした。

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2023年09月19日

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元ネタは「岩」の名前と、ぼんやりとしたあらすじしか知らないのだけど、多分この作品はそれらを超える驚きの作品に仕上がっているんだろうと思う。
登場人物は、なんだかみんな悲しい。

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2023年09月18日

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四谷怪談の知識ほぼ0で読んだので、登場人物の他との違いはわからないけど、楽しめた。
岩と伊右衛門は報われてないけど、ハッピーエンドではあるな。

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2022年07月28日

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なんとなく知っているつもりだった四谷怪談だが、本書を読んで、案外と知らないことに気付いた。鶴屋南北の『東海道四谷怪談』など読んでないから、それも当然なのだが、案外と登場人物も多い、込み入った話なのだね。だから、どの辺りが南北から受け継いだ部分でと言った考察はできかねるのだが、伊右衛門と岩のキャラクターが、南北版とは大きく変わっていることぐらいは分かる。もっとも巻末の解説によると、岩のキャラクターは、南北が下敷きにした事件に取材した実録小説に多くを負っていると言うからおもしろい。
お互いに愛し合っているのに相手に伝わらないという、不器用過ぎる二人の悲劇を、同じようにわずかな齟齬が積み重なって生まれた悲喜劇が取り囲む。

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2022年04月26日

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読みながらずっと暗いものが自分の中でぐるぐるしてた切ないだけで言い表せれないやり切れない
愛とか執念とか慈しみとか憎しみとか、京極夏彦は人の感情の書き方が繊細だと思う

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2022年01月08日

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ネタバレ

歌舞伎で観る東海道四谷怪談とはまったく異なり、伊右衛門も岩も、不器用ではあるが愛に溢れている。現代の夫婦像にも通ずるところがありそう。
ただ周囲はひたすらにグロテスク。
どす黒い血に塗れた屍たちの中、桐箱だけが尊く描かれたように感じたが、それは天国なのか地獄なのか。

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2021年12月28日

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再読。四谷怪談を元として新解釈した物語。昔読んだ時はその壮絶な終幕ぶりがすっかり記憶に刻まれて、十年以上ぶりに読んだというのに物語の終わり方だけは全くと言っていいほど忘れていなかった。伊右衛門と岩の愛の行く末は悲惨でもあり、またどこかしら羨ましいとでもいった感情を抱いてしまう。

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2021年04月16日

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岩と伊右衛門の実直さは美しい。
でも、梅の狡さも嫌いになれない。
少しずつ皆がすれ違い、波紋を作っていくのだなあ。
又市が後手に回りすぎだよ!と思ったけれど、そうじゃなきゃ四谷怪談にならないので、仕方ない。哀しいね。

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2019年09月10日

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「東海道四谷怪談」をモチーフにした小説で、病んで顔貌が崩れてしまった岩と、そこに婿入りした伊右衛門との物語です。

時代小説はどうも苦手で、入っていくまでに少し時間がかかったものの、途中ですっと物語に入り込むことができて、それからはもうあっという間でした。鳥肌が立つくらい面白くて、こんなに夢中になった本はいつぶりだろう…と。

京極さんの本はあまり読んだことがないのですが、独特の文体に美しさを感じました。セリフは括弧書き、などというルールは取っ払った言い回し。わかりにくい、と感じる部分もありましたが、それでもなお伝わってくるものの方が大きくて、圧倒されました。

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2018年01月18日

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新訳四谷怪談。なかなか素直になれないが正しく物事を見ることができる岩と耐えるを知る伊右衛門の関係はかなり切ない。悲恋だが、最後まで岩を離さなかった伊右衛門にとってはハッピーエンドエンドといえなくもないメリーバットエンド。
岩と伊右衛門の思い会うがゆえの悲恋だけでなく、親子、きょうだい間の歪な愛も描かれており、いい意味で陰鬱さを増している。

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2017年05月17日

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四谷怪談を京極夏彦の文章で書き起こした一冊。 あんまりにも誰も救われていないじゃないか。それなのに、伊右衛門は救われている。最後の最後で伊右衛門は救われてしまったのだ。 お岩の「どうして伊右衛門様は幸せにならぬ!」という台詞がとても重い。 どうしてお岩と伊右衛門はすれ違ってしまったのだろうか。 他に幸せになる方法はなかったのだろうか。 何故、どうして。考えても栓ないことが頭をぐるぐるとまわって、最後、幸せそうに笑う伊右衛門の描写で涙が落ちかけた。

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2017年01月30日

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『東海道四谷怪談』を著者がリメイクした作品です。

貧しい浪人の伊右衛門のもとを、西田尾扇という医者の家で下男をしている直助という男がやってきて、人を殺す方法について尋ねるところから、物語は始まります。その後彼は、「小股潜り」という二つ名を取る又市という男の斡旋で、民谷又左衛門という謹厳実直な侍の一人娘である岩のもとへ養子に入ることになります。岩は美しい娘でしたが、疱瘡を患ったために醜い顔となり、父の又左衛門は窮したあげく、人をだますことに長けた又市を頼ったのでした。しかし又市は、伊右衛門に真実を告げ、伊右衛門も岩のことを承知の上で民谷家の養子になることを決意します。

ところで、又左衛門の上司である伊東喜兵衛という男は、薬問屋の一人娘である梅を手籠めにするという事件を起こしていました。そこに割って入ったのが又左衛門で、彼は梅を正式に伊東の妻にするために尽力しますが、この婚姻は誰にも幸せをもたらすことはありませんでした。その後、岩の結婚を目にした直後に又左衛門はこの世を去り、伊東と梅、そして又左衛門と岩をめぐって絡まり合う運命の波に、伊右衛門も否応なく巻き込まれていくことになります。

本作の登場人物はいずれも魅力的ですが、やはり女の強さと弱さを対比的に示している岩と梅の関係がストーリーを動かしていくところがおもしろく感じられました。敵役である伊東も、虚無を内に抱えたキャラクター造形が秀逸です。

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2017年01月03日

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男女とは斯くも分かり合えない、という良書その二。
しかしこっちは純愛でした。お互い思い合っているところがもえでした。

10年ぶり位で、本当に内容忘れていたので、どうなるのや、と面白かったです。

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2015年11月27日

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四谷怪談を京極夏彦が新訳。章ごとに登場人物視点で描かかれ、少しずつ話しが繋がっていく。ミステリー調で最後まで楽しく読めた。ラストは切なくも愛おしい。

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2015年04月30日

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ネタバレ

【本の内容】
疱瘡を病み、姿崩れても、なお凛として正しさを失わぬ女、岩。

娘・岩を不憫に思うと共に、お家断絶を憂う父・民谷又左衛門。

そして、その民谷家へ婿入りすることになった、ついぞ笑ったことなぞない生真面目な浪人・伊右衛門―。

渦巻く数々の陰惨な事件の果てに明らかになる、全てを飲み込むほどの情念とは―!?

愛と憎、美と醜、正気と狂気、此岸と彼岸の間に滲む江戸の闇を切り取り、お岩と伊右衛門の物語を、怪しく美しく蘇らせる。

四世鶴屋南北『東海道四谷怪談』に並ぶ、著者渾身の傑作怪談。

[ 目次 ]


[ POP ]
腹の中にどろどろとしたものを溜め込んでいる伊藤喜兵衛。

この男が妖怪に思えてならない。

彼には悪事を働いているという意識さえないように見えるからだ。

喜兵衛の悪意がお岩と伊右衛門のお互いの気持ちを踏みにじる。

憎い奴だが、彼がいることで主人公たちの純粋な想いがぐっと浮かび上がる。た

だの悪党には違いないのだが、私はこういうキャラクターが気になって仕方がない。

すべての出来事がこの男を中心に起きているように見える。

それにしても、四谷怪談をこれほどまでに切なく悲しい物語に仕上げるとは、京極夏彦はすごい。

はじめは京極版・四谷怪談と聞いてさぞかしおどろおどろしい話になるのかと思いきや見事に裏切られた。

感情表現が下手なお岩と伊右衛門は似たもの同士。

そんなふたりの不器用な姿が余計に胸を締め付ける。

本書を読むのはこれで何回目だろうか。

自分でも呆れるくらいこの物語が好きだ。

物静かでいちども笑ったことのない伊右衛門が、一気に感情をあらわにさせて嗤うところは何回読んでも泣けてくる。

[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2015年01月18日

Posted by ブクログ

京極夏彦の3冊目。

新解釈の四谷怪談と銘打たれているが……、怪談話ではない。周囲の陰謀と運命に翻弄された男女の、壮絶にして美しい愛を描いた物語。

面と向かってはうまく廻らなかった夫婦の、互いに相手を想うその気持ちが切なくなる……。

バッドエンドで締め括られる話は本来好きではないのに、不思議と本作では後味の悪さが微塵も無い。

★4つ、9ポイント。
2013.09.05.了。


“又市”なる御行が主要な役どころで登場している。
仕掛けの類いは無いけれども、あの決め台詞も……。

“あの又市”の初登場作品、ということなのかな?

後で、出版年を調べてみよう(笑)



(追記)
調べるまでもなく(笑)……他の方のレビューから判明。ゲスト出演というかスピンオフというか、前日談的な扱いだったのね。

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2015年07月06日

Posted by ブクログ

これは・・・。引きこまれた、かなり速いペースで読み終わった。しかし、読後感は、もやっと、どろっとする。ラブストーリーなのだろうけれど。うむ・・・。

お岩さんといえば、四谷怪談、「一枚、二枚・・・」のあれ。ですが、今回は、それをモチーフにした作品のようです。噂に聞く伊右衛門は、どうしようもないダメ男だそうですが、この話の伊右衛門はなかなかかっこよく、いい男です。
章立ては全て登場人物の名前で、それぞれの人物に焦点をあてながら事件の一つ一つが紐解かれていきます。とりあえず、

「伊藤喜兵衛」で「お前もう、死ね!頼むから死んで!!」と嫌悪し、
「直助権兵衛」で「え?何?何が起きたの?」と目を疑い、
「嗤う伊右衛門」で「ナンテコッタイ・・・」と落胆した。

愛って何だろうとか、人間って怖いとか、伊右衛門さん素敵とか、思います。最後の最後まで、芯を通し、潔く行きたのはあの2人だけだったのでしょうから、きっとこのエンディングでもハッピーエンドなのでしょう。

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2015年08月29日

Posted by ブクログ

怖いというより、お岩さんがかわいそうに思えてきます。

伊右衛門はひどい奴だ。

表現として最適なのは『酷い伊右衛門』です。

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2017年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東海道四谷怪談を京極夏彦が京極夏彦の文体で語ってくれる本だと思っていたら、設定を一部借りただけで全然違う話だった。
人間を書ける京極夏彦らしい、人間模様が交錯して成立するストーリーが、あくまでもシリアスに展開する。
ほんとに些細な登場人物まで、悉く人間がよく書けてる。
簡潔かつ的確で品位ある美しい文体も、時代物にぴったり。

んで、すごく読みやすくてスルスル読むうちに話はいつの間にか過去の回想シーンになってたりまた戻ってきたりで(京極夏彦のいつものやり口)、私はいつも時系列が混乱していまう。
ややこしくないことをややこしく見せられてる感はしなくもない。

他人のことを思いやることで余計にすれ違うことって、自分の身の回りにもよくある。
だから、岩と伊右衛門のすれ違いには身に覚えがあって心が痛む。
でも、それを美談にしちゃあいけない。我々はエスパーじゃないから、やっぱり気持ちは伝えないと伝わらないんだよ。幸せになろうよ(笑)。

クライマックスの、伊右衛門が報復(?)するシーンは、気分がスカッとした。
この前段階に、伊右衛門が梅から喜兵衛宅での一件を聞かされて全貌を知るシーンがあるはずだけど、そういう黒い感情が渦巻くシーンはわざと省かれてる。
読者は伊右衛門の立ち回りを目で追いながら、その省かれたシーンを想像で補う訳だ。
同様に、逐電した岩が伊右衛門と再会(と言っていいのかどうか)して、岩が死ぬシーンも想像力で補う必要がある訳だけど、こっちはいささか難しい。
特に、岩がどうやって死んだのか。
伊右衛門が殺したと考える人たちがいるみたいだけど、もう伊右衛門は真相を知ってるんだから殺しはしないと思うんだ。刀も研ぐ前だし。
でもとにかく、伊右衛門が落とし前をつけようと決心したきっかけは、岩の死だったはず。
何となく、岩が生きてるうちには会えなかったんじゃないかと思うんだけど、どうだろうか。

全体に壮絶な純愛譚で、すごく美しくまとめられてたけど、なぜか夢中になって読む感じにはならなかったので☆3つです。
(京極堂シリーズファンの性かもしれない…)
でも岩はこれまで読んだ京極夏彦の女性登場人物で一番魅力的でした。



(追記)
読み終わってもず〜っと消化できなくて、もう1度つまみ読んで、やっと一連の出来事のからくりを理解した。
毒は又左衛門が盛ったの、初読で分からなかった。
自らの読解力のなさに落ち込む。
(以下、自分へのメモ)
伊東喜兵衛から岩との縁談を望まれ(喜兵衛は本気じゃなかったけど)、いや他からも縁談話が出て、娘を手放したくない又左衛門は出入りの薬売りに頼んで毒を入手し岩に盛る。
表向き疱瘡に罹ったせいで顔がただれたとされた岩だが、喜兵衛の腰巾着堰口は、喜兵衛への意趣返しに何者かが岩に毒を盛ったと推測。
喜兵衛は岩を診た医者西田尾扇を恫喝し、民谷家出入りの薬売り小平にたどり着くが、民谷家の薬は利倉屋から仕入れられてることしか判明せず、痘痕は本当に毒のせいなのか、であれば誰の仕業だったのかは分からずじまいだった(とりあえず小平は殺害)。
モヤっとしっぱなしの喜兵衛は腹いせに利倉屋の娘梅を蹂躙する。
怒った利倉屋は喜兵衛に責任を取るよう直訴、事情を聞いた直助は、宅悦を通じて又市を引っ張り出し、喜兵衛との談判に乗り込む。
聞く耳を持たない喜兵衛が又市らを斬ろうとしたところへ又左衛門が現れてその場を丸く収め、梅を民谷の養子にした上て喜兵衛に輿入れさせると利倉屋を欺く。
又左衛門の存在が気に入らない喜兵衛は、鉄砲に細工し事故を起こして又左衛門を再起不能にする。
西田尾扇は自分に類が及ぶ前に直助を売り、喜兵衛は直助の妹袖を蹂躙する。
袖は自害。直助行方をくらます。
岩の行く末を心配した又左衛門は宅悦に相談し、又市は伊右衛門の婿入りの話をつける。
喜兵衛は伊右衛門も気に入らず、夫婦不仲につけ入って岩を騙して家を出るよう仕向け、廃嫡とし、妾となって子を孕んだ梅を民谷養女として伊右衛門に添わせる。
喜兵衛から離れたい梅は喜兵衛の企みを知りつつ従い、伊右衛門と夫婦になった途端に伊右衛門に喜兵衛の謀を暴露、ただし岩が喜兵衛に騙されたことだけは黙っていた。
やがて子が生まれるが喜兵衛は梅との関係を絶たず、5日ごとに民谷家を訪れる。
身を隠していた直助は妹の復讐に西田を殺害。その後偶然伊右衛門に遭遇し、民谷家の中間となって匿われる。そのあいだに情報を収集し、喜兵衛の企みを知る。
宅悦と直助は真実を岩に伝え、伊右衛門が全く幸せになっていないと知った岩は発狂し、宅悦を撲殺。

…で、隠坊堀へ向かった岩は伊右衛門が夜釣りしてるのを目撃して、直助らの話が真実だと確信するのか。

いつまでも消化できないのは、最も肝心なエピソード(岩の死)が書かれていないからだ。
やっぱり私の想像力では補いきれない。
岩が逐電した翌日に又市が民谷家に行って、荷車に木材を積んだ伊右衛門と会ってる時には、多分岩はもう死んでて屋敷内に安置されてるだろう桐箱に入ってる、と思う。
隠坊堀で伊右衛門を認めた岩は、それからどうしたんだろう。
伊右衛門と会話しただろうか。
梅を、喜兵衛を斬った伊右衛門は、コトの真相――岩が喜兵衛に騙されて家を出たことを把握していたのだろうか。そうでないとあんな落とし前にならない気がする。
だとしたら、伊右衛門は岩から真相を聞いたか。
そして、岩はどうして死んだ?
京極夏彦の匂わせ方はいつもとても分かりやすいけど、ここだけはどうしても分からない。
それこそ読者の解釈に任されてるのかな。

勝手な妄想を語ると、伊右衛門が岩を斬ったとする説は採らない。なぜなら人を斬れない伊右衛門が決心して刀を研ぎに出し喜兵衛(と梅)を斬った、という展開じゃないと「人を斬れない気持ちより勝った感情」が感じられなくなるから。
隠坊堀で帯刀してたとも思えないし。
狂死か、自死か…。やっぱり分からない。

あと蛇足ながら、本作品には男性と母親の関係についても何か言いたいことがありそうだけど、イマイチ摑めなかった。
これについてはネット上に優れたレビューがあったのでそちらに譲る。

それにしても、こうして出来事を起きた順に列記しても、小説としては面白くないか。
京極夏彦の卓越した物語の見せ方を改めて思い知ったかも。

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2020年12月20日

Posted by ブクログ

江戸言葉に苦労しながら読んだ。民谷岩、民谷伊右衛門を中心にしながら悪漢である伊東喜兵衛もみな芯が通って生きて死んでゆく。最後のシーンは特に生々しく感動的でさえあった。

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2015年04月06日

Posted by ブクログ

 近代的解釈でリライトした「四谷怪談」。ホラーよりもミステリ成分が濃い。「心中もの」の変種とも読める。

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2015年02月10日

Posted by ブクログ

お岩の祟りなのか、飼っていたテトラが一匹死んだ(泣 映像化する前には出演者が必ず墓に供養に行くという、まるで墓を暴いた探検家が全員死んだツタンカーメンの呪いの様だ。それほどの思いを残して死んだお岩のお話を、京極夏彦風にアレンジするとこうなる。悪役として登場する婿の伊右衛門が生真面目で、お岩を一途に愛する男として描かれている。映画化されているのでビデオも必見かな、小雪のイメージが実に合う。

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2015年05月11日

Posted by ブクログ

映画観て再読。以前に読んだときはさらっと読み流しだったのですが、映像が作品世界に忠実に作られていてすごく感動しました。難しいと思うんです、京極作品の映像化。それを美しく仕上げたというのは評価できます。
四世鶴谷南北の「四谷怪談」とは趣の異なる作品であり、その両方を知っている人にとっては微妙だ、という点もあるのだと思いますが、私は好意的な言葉を多く聞きました。

凄惨な怪談物とは一転、情念と純愛を描いた作品に仕上がっています。
「お岩さん」で知られる岩が、凛とした正しい女性に、岩を裏切る極悪人である伊右衛門を実直な侍として描かれます。
その二人を取り巻く周囲の罠や策略によって、すれ違い引き離される二人。
人心の恐ろしさと狂気が存分に描かれたこの作品は、怪談物でありながら、おぞましい妖怪などで盛り上げるのではなく、最後まで恨みや復讐といった人の念を強く感じられます。悲恋の物語とはいえ、きっちりと現代的な怪談に仕上がっています。


(2004年2月20日)

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2014年09月27日

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