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Posted by ブクログ
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン師/文学修士ことルイス・キャロルの、写真家としての側面についての本。彼の写真技術やモデルたちについても、とても詳しい。後半は、キャロルの写真作品64葉。私が感銘を受けた幾つかの点は……、・今から150年ほど前の写真が、驚くべき魅力的なポーズ(場所や小物なども含め)や表情で撮られていること。少女たちも他の人物も、レンズから視線をはずし、ほとんどの場合微笑んでなどいない。こちらを向いていても、じっと真っ直ぐな眼差しで視線を合わせている。・テニソン卿、ダンテ・G、クリスティナ、ウィリアムのロセッティ兄妹、ジョージ・マクドナルドとその子どもたち、ヴィクトリア女王の末息子レオポルド王子、等々、といった人々が、彼の写真によって見事に今日まで保存されていること。お蔭で絵や詩といった作品からだけではなく、ラファエロ前派の当時の様子を想像できる。・それにしても、少女たち、とりわけやはり「アリス」の写真が、ほんとうに魅力的なこと。等など。……、キャロルには7人の姉妹と3人の兄弟がいて、少年の頃からみんなを喜ばせることが大好きで、いろんな遊びをしていたとのこと。彼は自分の「幼いガールフレンドたち」を喜ばせ、共に愉しい時間を過ごすことが、ほんとうに好きだったんだなぁ、ということがよくわかる。少女たちも、ドジソンおじさまが好きだったに違いない。そうでなければ、カメラの前であのように素敵なポーズが取れるはずがない、と思う。いかにも「オックスフォード」といったあれこれの雰囲気や、多少風変わりで意固地な側面、あるいはヴィクトリア時代らしい階級差別意識も感じられるけれど。少女たちとキャロルの交歓は、無垢の愛、と言うにも相応しい。浅薄に「ロリコン」などと片付けること勿れ。「ヴィクトリア中期で最も有名なアマチュアポートレート写真家」キャロル、という人物像がくっきりと浮かび上がる。