【感想・ネタバレ】大山倍達正伝のレビュー

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Posted by ブクログ

まさに「大河ドラマ」級の人生!

この本は個人としての大山倍達と空手家としての大山倍達の2部構成で成り立っているが圧倒的に前半の方が面白い。

これは別に筆者のうんぬんではなく、あまりにも巷間伝えられていた大山像を覆すものであることと、戦前戦後の在日朝鮮人が置かれた立場、そしてその中でマンガ以上に血なまぐさい大山氏の活躍(?)がまさにドラマを超えたドラマのように面白い。

正直、大河ドラマの主人公としても十分に足りる!

本当に素晴らしい調査、素晴らしい本を作成いただいた小島一志氏、塚本桂子氏に敬意を表します

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2022年10月24日

Posted by ブクログ

大山倍達の伝記。武勇伝の類いが多く流布しているが、その裏に隠された韓国人としての生い立ちと晩年、日本人武道家としての世界を股にかけた立身出世の物語の二つの軸が大山の人生を形成している。
また、戦後史としても興味深い。戦後韓国人らは三国人として日本の警察権の及ばない所になり、民青と民団は特にヤクザそのもののような営利行為や抗争を行う。大山もそのなかで力を発揮する。

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2014年05月18日

Posted by ブクログ

徹底した調査と取材で明かされる大山倍達の「伝説」に対する「正伝」。
出自が韓国人・崔永宜(チェ・ヨンイ)であることはすでに知られているが、韓国在住の家族のインタビューを収録したのは初めてだろう。
日本にももちろん妻子がいるわけだが、なぜ二重国籍が可能になったかというと、戦後の混乱で戸籍が焼失し、自己申告で戸籍が作られたせいだ。

梶原一騎の「空手バカ一伝」がほとんど創作といっていいのは知られているが、それ以前の大山自身の多くの発言や記述の間にやたら矛盾や飛躍があるのを、徹底した裏取り取材で埋めている。

拓殖大学に在籍したことは大学の記録にはなく、戦後初の1947年に全国武術大会で優勝したこともなく(当時はGHQの命令で武道は禁じられている)、大会は演武を見せる会で所属していた韓国系団体の資金稼ぎとしたものと推測される。

MPと争っての清澄山の山ごもりはむしろ先輩たちのやった話を流用したもの、そして争いの相手はMPであるよりは北朝鮮系の団体、といった調子で、そこからすっぽりと抜けているのはつまるところ韓国系の師や兄弟子との関係であり、代わりに自らを日本人的に見せようとする意図がとってかわっていると著者は分析する。
身延山や清澄山など日蓮ゆかりの山にこもった、という主張は、石原莞爾の東亜連盟に加盟していたという主張を裏付けさせるためではないか。

「日本人」として生きていく上で、そうした韓国にまつわる部分を隠して行ったのが、そういう記述の矛盾につながっているわけだが、同じ韓国人で日本人として日本で成功した力道山の出自の隠蔽の徹底ぶりに比べると、満州開拓を目的とした拓大出、特攻隊帰りという主張、など、ずいぶん場当たりで無頓着に見える。

アメリカでのプロレスラーたちとの対戦記録が確認できる限り残っていない、というのはプロレスはボクシングと違って競技とはみなされておらず、力自慢や危険術を見せ時に客と相手するAT(アスレチック)ショーといういわば見世物とごっちゃになっていた、という事情から来ている。
そう考えると大山の自然石割りや氷柱割り、後年の牛との対戦などわかりやすい形で空手の威力をアピールするアイデアを多く出したのともつながってくる。

あんまり伝説と正伝との違いが多いので、めまいをおぼえるところあり。

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2009年10月04日

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極真カラテ創立者にして牛殺し。大山総裁。
呼び捨てに出来ない人物である。
この人の存在は高校の時に知り世の中にはこんなに凄い人がいるのかと感激した。知ってすぐに感激がピークのときに亡くなったので非常にへこんだ。その感激した大山倍達伝説のほとんどが虚構であったということがこの本を読むと分かる。だからといって騙されたとかいう嫌な感情はなくむしろ夢を見させてれたことに感謝している。 なんでも真実を知ればいいというもんじゃない。図らずも大山総裁がこの本の中で尊敬してやまない宮本武蔵について「武蔵は吉川先生が描いた嘘によって日本一の英雄になったんだから」「伝説とはいかに大きな嘘をついたかに価値がある」と語っている。

総裁がそういうなら押忍としかいえないのである。

そして世界120ヶ国、門弟1200万人という現実は伝説という虚構の賜物であろう。

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2012年07月03日

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増田さんの本を読んで感化されて。
あっちもそうだが、こっちも分厚い。
寝転んで読むにはなかなかの筋力を要する。
ウデイタイ。

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2013年08月18日

Posted by ブクログ

これは大変な力作である。

神格化されたともいえる大山倍達の素顔を、「伝説」を批判的にとらえつつ、客観的資料を徹底的に集め、証言を得るために韓国までも足を伸ばしてこの大著をつくりあげた2人の仕事ぶりには、編集を仕事とする人間として心から頭が下がる。

特に前半部を担当した塚本氏による、在日朝鮮人による民族運動についての取材は、大山個人の足跡を追うにとどまらない資料的価値のあるものと思う。

しかし気になったのは、本書の中で多用される、大山を評する言葉である。最も遣われていたのは「虚飾」という言葉だと思うが、ではなぜ大山は自らの出自・経歴を「虚飾」する必要があったのか、またはせざるを得なかったのか。その疑問に対しての明確な回答は、自分の読んだ限りでは、本書から見出すことができなかった。彼らの取材の成果と言う意味でも、その点の考察にも突っ込んでほしかった。

いずれにせよ、特に晩年の大山についての記述が示しているように、大山自身は出自や経歴について、一人歩きしている部分も、過去に自ら塗り替えた部分も、大して気にはしていなかったのではないか。「大物」というのは、こういう人を指すのかな、などと、途中からは生意気ながら少しほほえましい思いで読み進めた。

ところで、本書は大著であるが基本的には読みやすくまとめられた文で書かれており、2人の著者の文体も似たような感じなので違和感がないのだが、「・・・これについては後に触れる」「後述するが・・・」という書き方が非常に目立ち、自分としては気になった。書くべきことが多いからこういうことになるのだとも思うが、さらに読みやすい文章にするには工夫が必要ではないだろうか。

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2010年09月06日

Posted by ブクログ

嘘をつくこと。
物語を自分で作ること。

そのエネルギーを図らずも、「伝記」というもっとも物語とは遠いと思われるジャンルから感じることができた。

ハートとネグりは確か『帝国』で、人種差別の問題は経済の問題だと言っていた気がする。

だけど、ひょっとしたら「物語」にもまだなにか果たす役割もあるのかもしれない。
と思わせるだけの凄みを大山倍達から感じられる。

なぜ柏レイソルのサポーターは、「空手バカ一代」を歌うのか。
なぜ横浜Fマリノスのサポーターは、横浜ダービーの前に「あそこまで」煽ったのか。を考えるきっかけになるかもしれません。

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2009年10月04日

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