【感想・ネタバレ】財政危機と社会保障のレビュー

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Posted by ブクログ

この本はよく調べられている。元々経済・財政の専門家であった著者が、社会保障についても詳細に調査分析し、わが国財政の最大の部分である社会保障制度について問題点を的確に示している。今まで感じていたことが、はっきりと明確になった。問題点を踏まえ、提言もなされており納得できるが、あまりに問題が大きすぎるため、確かに正論ではあるが実施に際しては既得権益を有する組織の猛反発や巧みな反対工作にあい、実現は極めて困難であろう。わが国の政治に期待することは所詮無理で、亡国の歩みを止めることはできないと半分あきらめの気持ちになった。

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2018年11月26日

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ネタバレ

GDPに対する国債費比率が突出して世界最悪の日本。ギリシャの二の舞を演じなければならない日が目前に迫っている。国債の元凶は社会保障費。医療、介護、保育産業には多額の公費が投入されており、料金の低さが国民のコスト意識を狂わせ旺盛な需要を生み出し、社会保障費は毎年1.3兆円もの自然増が見込まれている。医療費のダンピング、とりわけ児童医療費ゼロ制度は小児科に診療の大名行列を生み出し過重な労働条件が医師の小児科離れを進行させ、今、深刻な医師不足を生ぜしめている。また、認可保育所の保育料ダンピングは入所できない低所得者層と入所できる中所得者層の格差を拡大し、保育料ダンピングの根源である認可保育所の補助金漬けの高コスト体質は、新たな保育所の建設の大きな障害となっている。しかも、医療、介護、保育分野は高い参入障壁により新規参入は徹底的に拒まれ既得権益が強固に守られている。医療などは自由診療がほとんど認められていないため、効率的なサービス、より良い治療のインセンティブが働かない。多少の藪医者であれば、いつまでも世にはばかることができる。生産年齢人口が激増し右肩上がりに高度成長を遂げる日本は既に終焉を迎えている。最早これまでのような社会保障費の大盤振る舞いは望めないことを深く自覚しなければならない。将来の投資である公共事業には未来の潜在成長力を押し上げ成長の果実が実る可能性があるが、将来に借金を回しての社会保障拡大は単なる需要の先食い、基本的に刹那的消費拡大に過ぎない。少ない貯蓄をさらに食べ尽くす浪費行動である。また、日本の少子高齢化の進展スピードは世界に類のないものであり、高福祉社会の北欧は既に少子高齢化が終章に入っており安定期を迎えようとしている。即ち北欧社会をお手本にすることはできないということである。どこの国もやったことのないハイペースで社会保障改革を進めていかなければならない。年金、医療保険、介護保険までが賦課方式という安易な財政方式を選んだ当時の政府の責任は重い。業界、官僚、政治家のみならず、高齢者、一般国民までが強固な既得権益者となっていることが、日本の社会保障構造改革を難しくさせている。しかも日本の社会保障制度は中間所得層にも富の再分配が行われており、低所得層に対する再分配より大きいため、驚くべきことに、所得格差を寧ろ増幅させている。公費に塗れ自律的な成長が期待できない社会保障費の拡大は成長戦略から最もかけ離れた政策である。安易な公費投入を即刻やめるべき。高齢化に伴う自然増だからなどという希薄な根拠を理由に毎年1.3兆円もの社会保障費の自然増は絶対認めるべきではない。とはいうものの選挙が至上命題の代議士の皆さん方が大鉈を振るうことはまずないのであろう。おそらく、国債の日銀引き受けという事態を経て第二のギリシャにならなければ性根はつかないのだろう。ああ何とも嘆かわしい限りである。

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2012年07月02日

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現在我が国が抱える財政問題に社会保障の問題を関連させて論じている。現在の両者の問題を包括的に理解するにはもってこいの著作。

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2011年10月09日

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1970年生まれの著書の本。

作者を年代で分けるのは、ある意味では先入観かもしれないが、難しい話をわかりやすく語る世代が次々と生まれてきていることを実感した良書だった。

財政危機や社会保障については、それぞれの専門家がいろいろな歴史、他国との比較で述べることはあるが、全体を俯瞰して、その問題性を指摘している点は非常によいと思った。何か魔法のような処方箋があるわけではなく、メリット・デメリットを比較して、国民がどのような方向に進むべきなのかが問われていると思うが、そのための議論が決定的に欠けている。

政治家が選挙のために、耳に痛い言葉を封印して、その場その場で政策を決めてきたツケが今、すべての原因だと思う。

議論のためにはまず同じ土俵にのるための資料などが必要であり、そのような資料を新書1冊で提示している。

まずは騙されたと思って1冊読んでみることをお勧めします。議論はそれからでも、いくらでもできますから。

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2013年05月22日

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現在の社会保障の問題は、高度成長を前提として、制度疲労を起こしていること。すなわち、参入規制、価格規制による護送船団方式、多額の公費投入、業界団体と官僚、政治家の利権保持。

協力なリーダーシップを持って変えていく人がいなければ、日本は変わらないと思わざるを得ないし、これから先、変えなければ日本は日本としての態をなさない。

これを書いてくれた著者に感謝したい。

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2011年06月12日

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 「社会保障の不都合な真実」と両方読みました。2010年の7月、9月と同じ時期に出版されています。この本の方が読みやすいですが、生活保護については触れられていません。
  この本のメリットは、一人の学者が、年金、医療、介護、保育所、(生活保護)という社会保障全般について論じていることである。通常はそれぞれの専門家が独自の視点で書いているので、社会保障に含まれている共通した課題がわかりにくいし、細部にこだわりすぎて論点が不明確になっているものも多い。是非、多くの人がこの本を読んで、社会保障関係費を抑えないと日本が破綻することに気がつくべきだ。

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2011年05月28日

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「身の丈にあった社会保障」を目指すべきという、とてもシンプルな主張。センセーショナルな表現を排しながらも、筆者の危機意識がはっきりと伝わってきます。年金・医療・介護・保育…デリケートですが、この国がまっすぐに見据えなくてはならない課題群=社会保障。すべてお金がなければ回らない=財政問題です。

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2011年03月31日

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日本の社会保障制度は、①公費漬け、補助金漬けの「高コスト体質」、②参入規制、価格規制に守られた悪平等の「護送船団方式、③多額の公費投入による見せ掛けの「低料金」、④天下りや利権を介した業界団体と官僚、政治家の強固な「既得権益の結びつき」といった特徴を持つ「高度成長モデル」のままであって、このままでは財政的に維持不可能であり、社会保障費抑制に軸足を置いた改革が必要であると主張している。当時の菅内閣が標榜していた「強い社会保障」ではなく、「身の丈に合った社会保障」が求められるとしている。
著者の日本の財政や社会保障制度に対する認識、今後の処方箋については、おおむね正論だと感じた。
ただ、医療、介護などの料金が低すぎることによって過剰利用が生じているという指摘については、生命、生活に直結する医療や介護の性格からいって、価格を上げて需要を抑制することは必ずしも正しくはないのではないのではないか(重い症状であっても低所得者は受診を我慢するような事態につながるのではないか)という感想を持った。価格ではなく、別の政策的誘導で、「コンビニ受診」や「過剰投薬」のような問題については対処すべきではないかと思った。

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2017年09月24日

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民主党政権時代に書かれた本ですが、筆者の鈴木さんが指摘していたことが、ようやく世間一般にも問題視されてきたと思いました。社会保障の論点整理ができました。

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2014年07月13日

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ネタバレ

震災前、2010年の本。
当時のバカ菅首相の社会保障政策をテーマに、医療・年金・介護・保育といった分野がいかに持続不可能で、将来に向かって破滅の道を突き進んでいるかを、かなり噛み砕いて論じてます。やっぱり既得権益を保持しようとする層の厚さと政治的影響力って凄いのね、ということを再認識できます。

の本の出版当時は、消費税アップを謳った民主党が選挙で大敗した直後だったので、著者は「消費増税はしばらくはパンドラの箱として、与野党ともに触れずに2013年の衆院選までダラダラ行くだろうけど、それでは間に合わないぐらい状況は切迫している」と述べてます。それに合わせて、実現できそうな対策についても私見を紹介しています。

が、3月11日の震災以降、その様相が一変したことによって、良書と言って好いと思うこの本で紹介されている「処方箋」が、もはや今の日本社会には適用できなくなってしまったかと思われるのが残念なところ。

著者の最新の論点が2011年に出ているので、現状を踏まえ、そちらも読んでみたいと思わせる書籍でした。

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2012年05月22日

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日経「アソシエ」で紹介されており、興味があったので、教養のために読んでみた。医療・介護・保育の現場で起こっている「低価格での供給」⇒「過剰需要の発生」⇒「供給者の不足」という問題に関しては、国民の立場として考え直すべき点であり、非常に納得させられた。
少子高齢化が謳われているが、持続可能な対応策をとっていかないと、将来への安心は訪れないと感じます。(もう手遅れかもしれませんが)

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2012年05月02日

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現行の社会保障が共通して抱える問題がよくわかった。
書かれている内容が年金、医療、介護、保育と多岐に渡っているため一つ一つを細部まで議論しているとは言えないのだろうけど、それぞれが抱える問題に目を通すのにはよいと思う。

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2011年11月30日

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現在の民主党政権が打ち出す社会保障制度の考え方に警鐘を鳴らす一冊。

現行の税制度や社会保障の仕組み、その変遷が分かりやすく書いてあります。

筆者は「手厚い社会保障を保ち、かつ負担の少ない税率にします!」という持続不可能な政策に異論を唱えており、その代替施策として介護・保育事業への参入規制の撤廃や、税率引き上げ、所得に応じた社会保障を唱えています。

日本の財政が危機的状況なのは周知の事実であるのに、手厚い社会保障と低い税率を掲げる政党に票が入ってしまう選挙制度、国民にも問題があると個人的には思いますが。

著者は問題提起だけではなく、その解決策まで示しており、その解決策の合理的な考え方は勉強になりました。

社会保障を詳しく知りたい方や、今の制度に疑問を抱いている方にお勧めです。

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2011年04月30日

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日本は1000兆円近くの借金を抱えている。しかし、財政は破たんするとかしないとか議論をしている。どちらでも結局借金があることに変わりはないのだから、このままでは借金が増えて行くのは目に見えており、すべきことはおのずと決まってくるのではないだろうか?

社会保障という聖域に踏み込んだ良き本である

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2011年02月25日

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社会保障の面を財政面から論じてあるのが、自分にとって新しい視点で面白かった。
(この本だけではないが)本書を読むと、メディアで分かりやすく言われていることだけで物事を判断するのは危険だと感じる。
財政危機の今、論じるべきは理想ではなく、現実的対応策だ。
政治家はそれを示してほしい。

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2011年02月23日

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良書。
介護、医療、保育の問題点(需要>供給による医師不足、待機児童、待機老人の問題)の原因/対応策に対する著者の主張は次の通り

【原因】
?安い利用料 →過度の需要
 …安易な公費投入(税金による補填)による、利用料金の不当なダンピング(サービスに対して、安すぎる)

?参入規制、価格統制 →供給を絞る
 …財政(政治)上の理由(国の支出=公費負担を抑える)で、価格が安く決められる
  →需要と供給のバランス調整が働かない

【対応策】
?公費負担を減らし、参入規制、価格統制を止める
  →自由競争によって、需要と供給のバランス機能が働く

?自由競争で、低所得者が十分な医療、介護を受けられないといったことが無い様にする為、低所得者には直接補助金を支給する(子供手当てみたいな感じ、またはクーポン支給)
  →低所得者、中所得者、高所得者に対して一律の補助をするのではなく、低所得者に手厚く補助をする(選択と集中)

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2013年11月24日

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「手厚い社会保障と低負担は両立しえない」という当たり前のことを、なぜ両立しえないのか説明した書。

代替案として提示されている年金賦課方式は真剣に考える余地があると思われる。

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2012年12月11日

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ネタバレ

社保に公費が投入され、価格ダンピングが起き、過剰な手厚い保護によって運営非効率となり、受益者も見せかけの安いか買うに満足して見直しには猛反発。市場原理の重視による解決は当然考えられることである。 筆者の主張は明快ではあるが低所得者への救済の点など確かに粗さはある。

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2012年09月26日

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ネタバレ

財政問題と社会保障問題の2本立ての本。
筆者は、「財政も大変だし、その原因に社会保障があるよ」って言っている。だから、社会保障はしっかりと考えなきゃって述べている。

全体的には、財政問題に関しては、その問題の本質を究明するような姿勢はこの本からは期待できず、あくまでも社会保障を論じるための餌として述べている程度なので、いささか中途半端である。というよりは、少し詐欺まがいな気がする。しかし、社会保障の記述に関しては、初学者に向けて書いているという言っているだけあって読みやすく理解もしやすいと思う。

つまりこの本は、社会保障の概略を知るための本であって、財政問題をこの本から学ぼうとしてはならないし、逆に情報不足である。

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2012年02月20日

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『201202 経済強化月刊』

著者の私見が色濃く出ているので注意が必要。社会保障について常識的なことも理解していなかった私なので、制度的な部分に関しては勉強になったが、主張については完全に鵜呑みにする訳にはいかないだろうと感じた。

著者が経済畑の人なせいか、市場の競争原理を評価し過ぎというか、信頼し過ぎなきらいがある。
例えば、医療機関への競争原理の導入を奨めているが、病院の経営重視が強まれば、回転率を上げるために入院患者を早期退院させたり、必要以上の通院・投薬推奨という状況が想像される。
また、医療費自己負担の増加は、低所得者層は必要な治療を我慢してしまい、医療格差が広がるのでは?もちろん、安いからといって大して必要もないのに医療を受ける人が多いというのも問題なので、落とし所が難しいのは確か。
アメリカの医療問題を考えると(自分も聞きかじった程度だけど)、著者の考えはちょっと安易だなあと感じる所がある。

また、自己負担額等は中高所得者の負担を増やす累進制にするべきという主張について。
それは賛成なんだけど、いかんせん、中高所得者は「高い税金・保険料を支払っているのに、それに見合う社会保障がないのはおかしい」という考え方なので、噛み合わないこと甚だしい。
著者は、その分高品質の介護・医療サービスを選べる利点があると述べているけれど、実際の所大部分の人にとっては選ぶ余地なんてほとんどないというのが現実だろう。

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2012年02月19日

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ネタバレ

 社会保障と財政。その両方の分野にやってくる危機の実態とその対処法を明らかにした本。

 900兆円を超える額の日本の国債の95%は内国債であり、1400兆円あまりの個人資産によって買い支えられている。そのため日本が直ちにデフォルトに陥ることはまずないと思われる。

 だが、少子高齢化を迎え、社会保障費が膨れ上ってくることを考えると、このままのペースでの債務比率拡大は危険である。景気が上向いた時点で財政再建をすることが欠かせない。

 全体として医療、保育、介護など社会保障に関わる分野の規制緩和と構造改革を進めるべきという論調が強い。その前提の下で、著者は日本の社会保障制度の特徴として、

①国民皆保険
②職業別の制度分立(厚生年金と共済年金など)
③賦課方式(財源を現役世代が拠出)
④過度の公費依存
⑤高コスト体質
⑥強い価格規制・参入規制
⑦政治的圧力を行使する業界団体
⑧天下りの多さ

といったものを挙げる。多くは高度経済成長期に構築されたシステムである。

 例えば菅首相は今年の参院選に臨んで消費税増税で「強い社会保障」という指針を掲げた。税収で医療・介護産業に財政支出することで産業とGDPの両方の成長をするものある。

 だが、著者はこの分野は競争や参入の規制が強く、財政支出を行っても社会保障費が浪費される可能性が高いことを指摘する。同時に規制緩和と構造改革で潜在成長率を上げる方が良いと主張する。

 所々頷けるところはありましたし、社会保障分野にはメスを入れるべき部分は多い。だが、規制緩和と構造改革ありきの論調には少し首をかしげてしまった。

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2011年06月18日

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普段から社会保障のことに関心がある人にはちょっと物足りないかもしれない。解釈にもちょっとすんなり肯けないようなところもあるが、財政問題から社会保障全般について、読みやすくてよくまとまっている。・特別会計とは別に、社会保障関係費というのは歳出があり、実際はこれが国からの補助金として使われる。が、公費を投入して社会保障を運用しているのは実は先進国ではまれなケースで、通常は積み立て方式にせよ賦課方式にせよ、独立採算が基本。社会保障関係費が支出されている結果、支払い者である政府としては参入規制や価格の抑制といった方向にすすみやすくなる。・管内閣が進めようとする強い社会保障政策については、日本全体で見ると使途がかわるだけでGDPは変化しない。また、ほとんどが人件費なので工業産業のように技術革新につながらない。社会保障制度が整備される結果、高齢者が安心して消費が増えるというのも幻想(介護保険の時にも貯蓄率に変化なし)だし、貯蓄の取り崩しによってかえって金利上昇を招く。・保育については、無認可保育所に通園している児童や最初から入所を諦めている人たちの数が入っていないので、待機児童はほとんどいないという統計になっているが実態を反映していない。0歳児一人当たりのコスト60万に対して保育料は2万円とここでも投入が行われており、参入規制を緩和しようと言う動きには業界からの反発がある・今後とるべき道としては給付の制限か消費税のアップのどちらかしかない。また、平行して規制の撤廃も進めるべき

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2011年08月07日

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