【感想・ネタバレ】マウスのレビュー

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Posted by ブクログ

 律と瀬里奈の物語。親友を、嫌いになる時ってある。近いからこそ嫌いになる。でも、その後、その嫌いなところもひっくるめて好きになって、より親友になっていく。
 長く続く親友は、その時々によっていろいろな関係性があると思う。ある時は、私の方が上(何が?って感じだが)だとか、ある時はあの子にはかなわない、だとか。でも、それで離れていってしまうことのないのが親友なんだと思う。
 自分の高校時代からの親友との30年近くになる親友歴を振り返るきっかけとなった小説だった。

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2024年03月31日

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村田沙耶香作品で1番好きです。
村田沙耶香さんの作品にしてはパンチが弱め(?)だけど暖かくて優しくて大好きです。

本当に素敵な小説。
みんなに読んで欲しいな。

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2023年05月15日

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内気な女の子、律。
過敏な神経の持ち主の瀬里奈。
学校生活、人付き合いが苦手な二人。
二人はそれぞれ社会に対応してしていくために、鎧を身に付けていく。自分に合った鎧を見つけて身に付けることは私は悪いことではないと思うなぁ。
でもそれは本来の自分ではないし、無理をしているわけだからやっぱり疲れちゃうんですよね。
鎧を脱いで素の自分を見せられる相手がいれば、自分がダメになってしまわない程度の鎧は大切なのかも、と思います。
律と瀬里奈は、素の自分を見せられる関係であり、『大嫌い』と言い合える関係。それに律は瀬里奈のことを羨ましく思ったり、それはライバル意識にも繋がったりしているとも思えて、これはもう本当の友だちだなぁ、と思うわけです。
人間関係苦手でも、親友が一人いれば幸せですよね!



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2023年05月09日

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村田沙耶香さんの作品の中で、一番衝撃を受けて、一番大好きな本です。

マウスのような女の子とクルミの、可愛らしい表紙に惹かれて購入しましたが中身もすごく素敵でした。

律と瀬里奈の正反対な2人がとても魅力的で、忘れられません。
一番お気に入りのシーンは、律が好きなブランドの服を着て外に出て行くところ

mouseは臆病者。内気な女の子。……。もう一つの意味が知れてよかったです。

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2022年12月17日

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ネタバレ

向上心 防衛本能
腫物に触る
学校はスーパーみたいなもの
人畜無害
マウス 臆病者
ウェイトレス
息継ぎができない
人の目を気にして生きる臆病者は奔放さに惹かれる
小さい時どんな動物に似てるって言われた?

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2022年06月09日

マイノリティな人の生きづらさ

私はこの本の登場人物とそっくりで、冒頭から自分に落とし込んで読んでいました。
 学校で目立たない律は社会に出てもその生きづらさを感じていた。そのとき、やっぱり一緒にいて瀬里菜は唯一の居場所だったんだと思いました。最初、瀬里菜を拒絶していた律は、自分自身の嫌いな部分だったんだろーなって。でも瀬里菜に付き合わされていくうちに、ちょっとずつありのままで生きていてもいいって風に律も気持ちが変わっていった。
 私自身何故か励まされたし、生きずらいまま自分を好きになれればとりあえず生きていけそうかも。そんな風に思えた作品でした。

#ほのぼの #癒やされる

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2021年05月16日

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ネタバレ

村田沙耶香さん大好きですが、これまた何と言葉にしてよいやら…

紹介してよと言うバイトの先輩に
『やめといたほうがいいですよ、ほんと変な女ですから』って言うのが、なんか良かった。

いい関係だ

最後も軽口言えて、腹割って話せて
弱いとこ見せ合って、認め合ってる

mouseな女の子達のお話

私にはこんな友達いないから羨ましい

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2024年05月23日

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「何でも話せる間柄」が如何に尊く貴重であるか。系統同じ=居場所とは限らなくて、もっと違う部分で繋がりを持てると良いと思う。

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2024年03月29日

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村田沙耶香流、シスターフッド小説。
最初だけどうなるのかとドキドキしたが、終始穏やかでいい雰囲気の作品だった。

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2023年12月23日

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色々と考えさせられるお話だった。

誰かと比べたり
別のものになりきったりして
なんとかその場をやり過ごす。
これって意外とみんなある気がする。

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2023年12月05日

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久しぶりに村田さんの本を読んだ。他の人のレビューにもあるが、作者を間違えたかと思った。
どこかでいつもの狂気に塗れたシーンが登場すると思っていたが、そんなシーンは一つもなく穏やかに物語が進んでいった。だけど、物足りないとは思わなかった。
村田さんは、年頃の女の子を表現するのがとても上手い。上手すぎて、幼い頃の自分を思い出し嫌になる程だ。律のような子は、大人になると苦労しそれがいつか誰かに指摘されて壊れるパターンかなと思ったが、それも違った。瀬里奈にしか気づかれていないからこそ、今回の話は穏やかに終わったのだろうなと思った。
瀬里奈が、律にだけ心を開いていくのを見るのが楽しかった。律も瀬里奈の前だけは、顔色を窺わず堂々と生きることができているのは、2人は相性がいいんだろうなと思った。

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2023年08月08日

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村田沙耶香さん、2冊目。
最初どんな話なんだろ?と思いながら読んでたけど、最後爽快感のある終わり方だったなぁ。

本の中の人物になりきる。
自分もドラマの主人公とかに影響されて、話し方とか変わるのはよくあるから共感。
そういう過程を踏んでいきながら、自分の本当のキャラが出てくるのかも。

また村田さんの本読もー

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2023年07月30日

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一気読み
村田沙耶香さんの著作ということで、かなり構えてドキドキしながら読んでしまったが、読後感の爽やかな友情物語でした
正反対に見える2人の少女だが、どちらも社会に溶け込むために厚い殻で自分を取り繕っていて、
それが再会によって少しずつ「本当の自分」を見せられるようになっていく様が微笑ましい
殻と自己表現のバランスに苦しんだ事がある人には共感を得られる話なのではないかと思う
コンビニ人間に通ずるテーマもあり

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2023年06月09日

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ジャケ買い本フェアのため再読。
当時初めて読んだ村田さんの作品だったけど、そこまで狂気じみた感じはなかったので、直後に『殺人出産』をみてびっくりした。

人は何かを演じずにはいられない。
一緒にいて演じずにいられる相手なんているのかな。。

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2023年05月24日

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ネタバレ

律からみた小学校時代の世界が、ちくちく刺さる
真っ直ぐな小学生は大人よりも残酷に上下や優劣が露骨
こんな歳の頃、律みたいに大人じゃなかったからここまで考えたことなんてなかったはずだけど、それでも記憶の端々が思い出されたり
村田沙耶香先生の作品はいつも自分の中に踏み込んできて掘り起こされる

大学生になった律が、まだ1学期と夏休みの記憶にとらわれていて、そのことを切なく感じていたところ、本当にそう、読んでいて私も切なかった

瀬里奈はマリーで新たな自分を見つけたけど、律にとってのマリーは瀬里奈で、だけど新たな自分なんて見つからない、変われない律が対象的ですこしやりきれない

ワンピースを買うことなんて簡単なのにね、せっかく買ったのに嬉しくなかったこと、身につけた自分を褒められることに嬉しさを感じる人なんだもんな律は

またいろんなこと、考えさせられました

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2023年02月23日

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『女子は、だいたい四つくらいのグループに分けられた。一番、クラスで権力をもっているのが、早野さんという女の子を中心としたグループだった』。

『その日は始業式で、私は小学校の五年生になった』というそんな日のことをあなたは覚えているでしょうか?そう、『校舎の前には大きな掲示板が立てられ、そこには新しいクラスと担任の名前が張り出され…』という、どこの学校にも当たり前のように見られる光景はどなたの記憶にもはっきりと刻まれているのではないでしょうか。

人は集団社会の中で生きる生き物ですが、長い人生の中ではその集団は常に変化し続けます。そんなことを人生の早い段階で思い知る機会、それが学校におけるクラス替えだと思います。一年かけてようやく築き上げた友だち関係が振り出しに戻るその瞬間。そこには、

『あぶれないうちに、急いで自分と同じような、大人しそうな風貌の女の子を探さなくてはならなかった』。

そんな風に、新しい集団の中で自分の居場所を確保するための必死の思いが交錯してもいきます。一方で集団というものには、その集団を維持するために一定の秩序というものが生まれるものです。それは、”ヒエラルキー”とも呼ばれます。”みんな仲良くしましょう”、そんなことを偉そうに言う大人社会のどんな集団にも”ヒエラルキー”は存在します。綺麗ごとだけ言って生きていけるほど人間社会は甘くはありません。

そんな”ヒエラルキー”、学校という集団社会のクラスの中に厳然として出来上がるものが、”スクールカースト”と呼ばれるものです。新しいクラスの誕生から程なくして、そんな”スクールカースト”は形作られていきます。

『彼女達が主人公で、私達は脇役なのだ』

たとえ小学生であっても、むしろ小学生だからこそ、そんな”ヒエラルキー”のどこに自分が位置したのかを悟る瞬間が早々に訪れます。

さて、ここにそんな”ヒエラルキー”の下位に位置する『「真面目で大人しい子」の三人組として認識され』るようになった一人の女の子が主人公となる作品があります。『平和な学校生活』を送るため、さまざまに気を使いながら毎日を送るその女の子。この物語は、そんな女の子が自分たち『よりさらにずっと「下」で、評価もされない異物』と認識される一人の女の子と関わりをもっていく物語。そんな女の子が『くるみ割り人形』の物語の中に『催眠術』にかかったかのように変化する様を見る物語。そしてそれは、そんな小学校時代のその先に、『彼女が内に秘めた強さに嫉妬』する大学生になった主人公の今の姿を見る物語です。

『残念だね、律ちゃんだけ、違うクラスになっちゃったね』と、張り出された掲示を見て友人が呟くのを聞くのは主人公の律子。『うん、じゃあ…』、『またね』とその場で友人と分かれた律子は『五年C組と』札のかかった部屋へと入りました。『すでに興奮気味に言葉を交わし合う新しいクラスメイト』の『顔の一つ一つを素早く見』る律子は『あぶれないうちに、急いで自分と同じような、大人しそうな風貌の女の子を探さなくては…』と焦ります。そんな時、『突風が吹き、窓ガラスが激しく揺さぶられ』、『ガラスが軋む大きな音が教室に響』きます。『顔を上げて窓に注目』する面々の中、『一人、さっと耳をふさいだ女の子がいることに』律子は気づきました。『ひときわ背の高い』その女の子はいつまでも『しっかりと耳をふさいだまま』います。『くっきりとした黒目』だけが『宙を見つめるというよりは射抜いたまま静止していた』という女の子。一方で、『律ちゃん、おはよ』と『去年までの美化委員会で』知り合いだった久美に声をかけられた律子は、『とりあえず一人、「大人しい女子」を捕まえたことにほっと』します。そんな久美は『うわあ、またあの子と一緒のクラスなんだ』と、先程の女の子を見ます。そこに、久美の知り合いの麗という女の子が現れ、久美との間で『塚本瀬里奈もいるの。ほら見て』と話す二人。そして、久美と麗と三人で『休み時間を一緒に過ごす』日々が始まりました。『四つくらいのグループに分けられた』クラスの中で、『「真面目で大人しい女子」の三人組として認識』されるようになった律子たち。そんな中で『異物』と扱われ、『塚本瀬里奈はまだ一人も友達ができないまま、いつも座って宙を見上げて』いました。『まったく喋らない』代わりに『とてもよく泣いた』という瀬里奈のことが気になりだす律子。そんなある日、教室に入ると『うわあ、またかよ』という男子の前で瀬里奈が泣き続けていました。理由を訊くも『俺、知らねーよ』と判然としない中、瀬里奈は『周囲の会話などまるで耳に入っていない様子で』教室を後にします。『いっつも、どこに行くんだろうね?』と噂される中、『夢遊病者のように』歩いていく瀬里奈の後をつけることにした律子。『来年改装される予定の旧校舎』へと向かう瀬里奈は、女子トイレへと入っていきました。『不審に思って中に踏み込んだ』ものの、個室のどこにも姿がありません。『塚本さん?』と声を出すも返事がない空間を慌てて逃げ出した律子。『その日から、私はこっそりと塚本瀬里奈を観察するようになった』という律子はやがて、『扉が彼女の内側につけられていた』という、瀬里奈が心の拠り所とする『灰色の小さな部屋』の存在を知ります。そして、『塚本瀬里奈をもうあの灰色の部屋とやらに行かせない方法』を模索する先に、瀬里奈が別人格のように変わっていく物語が描かれていきます。

“小学校の頃から、女子はたいへん。思春期、教室に渦巻いていた感情をもう一度”と内容紹介にうたわれるこの作品。そんな物語の舞台は、『校舎の前には大きな掲示板が立てられ、そこには新しいクラスと担任の名前が張り出されていた』という新年度の始業式の日から始まります。おおよそほとんどの小学校で毎年度行われるクラス替え。『三人で、また一緒になりたかったね』とそれまでのクラスメイトと別れ、新しいクラスメイトが待つ教室へと一人向かうドキドキ感。それは、このレビューを読んでくださっているどなたもが経験されてきた道のりだと思います。そんな物語に”思春期の苦しさをとことん書いてみようとした”と語る村田沙耶香さん。そんな村田さんは”女の子の友情とか、思春期のヒエラルキーとかコンプレックスとか、そういうことを書いてみたかった”と続けられます。”思春期のヒエラルキー”という言葉で思い出されるのが”スクールカースト”という言葉です。私にとってこの言葉が思い出されるのが柚木麻子さん「王妃の帰還」です。”スクールカースト”を大胆に取り上げ、それをフランス革命に重ねる物語は、私にとっての柚木さんベスト3に入る作品です。そして、村田さんが描くこの作品でも”女子社会”の”スクールカースト”はリアルに描写されていきます。『だいたい四つくらいのグループに分けられた』という『五年C組』の頂点に立つのが、『早野さんという女の子を中心としたグループ』です。『情報も、流行も、真っ先にそこから発信されている』という彼女たちのグループを見て『彼女達が主人公で、私達は脇役なのだ』と認識する律子。その『少し下に、にぎやかな女の子たちのグループが二つ』あり、さらにその下に『「真面目で大人しい女子」の三人組として認識』される律子たちのグループ。しかし、そんな律子たちのグループよりさらに下に『二人組の女の子がいて、「きもい」とされてい』るという見事なヒエラルキーの存在。そんな中で、『「真面目で大人しい」と「きもい」の境界線はとても曖昧』と認識し、『身だしなみには気を配り、清潔に、不潔に思われないように努力し』、卑屈にならないよう意識する律子たち三人組。それを律子は、『みじめな思いをさせられる危険』を避けるための『防衛反応』だと考えています。この”スクールカースト”に支配された教室の風景が物語前半の子供時代の律子の姿を描く中に続いていきます。そんな学校について、村田さんはこんなインパクトのある表現で、彼女たちのリアルを語ります。

『学校という場所はスーパーのようなもので、私達は陳列されているのだと、私はようやく気づき始めていた。私達を評価するのは大人たちだと、私はずっと思っていて、いい子であるようつとめていた。けれど、本当の買い手は生徒たちの方だったのだ』。

生徒たちの狭い社会、そんな中で生徒たち同士に見極められていく生徒たち。そして強固に形作られていく”スクールカースト”。そんな”スクールカースト”の『ずっと「下」で、評価もされない異物』とされていたのが塚本瀬里奈でした。『一人も友達ができないまま、いつも座って宙を見上げていた』という瀬里奈。そんな瀬里奈を意識し出した律子が関わりを持ち、瀬里奈に変革をもたらしたことで物語は大きく動き出していきます。上記で柚木さんの作品に少し触れましたが、そんな柚木さんの作品では、”スクールカースト”に支配された”絶対的ヒエラルキー”に変化が生じる様が絶妙に描かれていきます。そして、この村田さんの作品でも、律子が起点となって瀬里奈に変革をもたらしたことが”ヒエラルキー”に大きな変動をもたらしていきます。柚木さんの作品も村田さんの作品も”スクールカースト”に着目するにも関わらず、そこから見えてくる景色、そして内包するテーマは全く別物です。この作品に興味を持たれた方には是非、柚木さんの作品もセットで読まれるとなかなかに面白い地平が見えるのではないかと思います。

そして、柚木さんの作品がフランス革命に”スクールカースト”を重ねるのに対して、この作品で村田さんが登場させるのが『くるみ割り人形』です。チャイコフスキーのバレエ音楽で有名な『くるみ割り人形』。その主人公がマリーというのは、柚木さんがマリー・アントワネットを重ねるのと、これは恐らく偶然の名前の一致と思われますが両者を対比させる身には興味をそそられます。しかし、『くるみ割り人形』は、”フランス革命”とは全く異なり、主人公のマリーが気を失った中に見た夢の中の物語、ネズミの呪いと闘うくるみ割り人形の物語です。そう、村田さんの作品は、”スクールカースト”を『くるみ割り人形』に重ねるのではなく、マリーが見た夢の物語と、そこに登場する”ネズミ”=『マウス』を絶妙に重ねていくのです。ここが、柚木さんの作品と根本的にテーマが違っていることがはっきりします。

そして、この作品の書名にもなっている「マウス」。『大人用の大きな辞書』には、

『mouse。ハツカネズミ、小ネズミ…臆病者。内気な女の子…それと、かわいい子、魅力ある女の子』

と記された「マウス」。主人公の律子は、子供の頃に叔父との会話の中ででた、『臆病な女の子のことを、マウスって言う』という言葉を意識し『やっぱり私は「マウス」だなあ』と思い続けています。”スクールカースト”で瀬里奈の上に位置していた律子が、下に位置する瀬里奈に変革をもたらしていく、その先に展開する『クラスの中でこんな出世劇が起きるなんて、奇跡みたいなことなのだ』というまさかの物語展開。それは、一見痛快でもあり、律子にとっては複雑な思いもするものです。しかし、この作品が上手いのは、そんな『出世劇』の先が描かれていることです。そう、この作品は小学校五年の律子が描かれる物語前半と、『大学生というのはほどほどに授業を休んだり、遊んだりしなければならないと勝手に思い込んでいた私は、入学するまでは不安だらけだった』と、また、不安に苛まれるスタートを送る大学生になった律子の今が描かれる物語後半から構成されているのです。そして、この後半が描かれることによって村田さんがこの作品で描かれたいことがはっきりと見えてきます。一見、”スクールカースト”の変動を描くかと思われた物語前半に対して、大学生に”スクールカースト”はありません。そこに描かれるのは、『「今は仕事中です。私は店員です」という仮面は、私にとってはお給料よりずっと大切な授かりもので、それを装着すると、臆病な田中律はいなくなる』というファミレスのアルバイトの中に自身の身の置き場を見つけていく律子の姿でした。そして、そんな律子は、意図して再会した瀬里奈の中に、かつて、『彼女が強く振舞えば振舞うほど、その内側のもろさが怖くなった』のに対し、『今は、彼女が内に秘めた強さに嫉妬している』という律子自身を見つめる姿がありました。一貫して感じられる瀬里奈の強さに対して、なんとも脆さを感じさせる律子という二人の女性の対比を見る物語。瀬里奈が纏う絶対不可侵な空間の存在を強く感じさせる物語。そんな物語は、書名の「マウス」に帰結する中に優しく終わりを告げます。

『律ちゃんの今年の目標は何かな?と聞かれて、ぽろっと、「人畜無害です」と答えてしまった』という小学校五年の律子が主人公を務めるこの作品。そこには、『教室の風景の一部にうまく溶け込』むことを第一に考え、周囲から浮かないこと、それだけを考える律子の姿と、大学生になって瀬里奈と再開する律子の姿が描かれていました。前半の”スクールカースト”に描かれる生徒たちの人間模様に大人社会の縮図を感じるこの作品。律子と瀬里奈が惹かれ合い、傷付け合い、そして再び繋がっていく様を興味深く見るこの作品。

“クレイジー沙耶香”感がまだちょっと淡い、青春物語を感じさせる物語展開の中に、何故か「コンビニ人間」の原点を見たようにも感じた印象深い作品でした。

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2022年12月12日

Posted by ブクログ

小説は、二部からなっている。
前半は、「教室で出会えなかった村田沙耶香」といったいった雰囲気。小学校5年生の微妙なバランスの少女達。一人の内気な少女・律から見た、教室内のヒエラルキー。その中で、目立たぬ自分を演じ続ける。イジメ迄はない絶妙感は、重松清さんよりしっくりくるかも。
そんな律は、人目を気にしない協調性さえ持たないクラスメイト・瀬里奈の不可解な行動が気になってしまう。彼女は、空想の世界に生きやすさを持っていた。
後半は、大学生あたりに成長した二人の再会。それぞれ、演じてきた自分を解放しようと試行錯誤していく。
なんか、村田さんの小説に若さを感じる。あり得なくない程度の倒錯感。弱い者としての“マウス”から魅力ある女の子の“マウス”へ。

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2022年08月10日

Posted by ブクログ

再読。
あの頃はあまり面白いと感じなかったけど今読んでみると面白かった。読書ってタイミングも大事だな。

マリー。くるみ割り人形

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2022年06月21日

Posted by ブクログ

自分を動物に例えるなら…?

そう、誰かに聞いてみたい。
私は何だろう。
そして、村田沙耶香は
なんと答えるだろうか。
「mouse」かもしれない。


自分らしさ。
それはすごく難しい言葉だなと思った。
自分らしい、
それが決して良いこととは限らない。
そもそも、どれが本当の自分なのかも
わからない。
でも、いつか自分らしさを誇りたい。


そんな世界はこの先にはない。
そうわかっていても、
何かあるかもしれないと
期待してしまう私達は
夢見がち
なのかもしれない。
でも、それは素敵なことだと思う。



人は誰かを変えることができる。
それはいい意味でもあるし
悪い意味でもある。
でもそれだけ、
人間には力があるということだ。

まさか、村田沙耶香の本から
そんな事を感じるなんて
思いもよらなかった。
村田沙耶香特有の
アレがないからだろうけど。
中学校の図書室に置いてあるくらいだからか。

絵本のような、
素敵な出会いをした気分。



mouse。
ハツカネズミ、小ネズミ、、、臆病者。内気な女の子……それと、かわいい子、魅力のある女の子

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2022年05月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

思ってたより良かった
白色を彷彿とさせる、これが前身
今の自分にもすごくタイミング的に重なって、なんか感慨深い
わかる、主人公の瀬里奈に対する気持ち分かる、
周りの人と上手く調和するためにこっちは努力してるのに、何も考えず我の道を突き進んでる奴が受け入れられていくのを見るとウザいよね、分かる
そしてそれを見て馬鹿らしくなって、ちょっと自分でもチャレンジしてみたら意外と受け入られるし、それを嫌いな人がいたとしてもそれを認めくれる人が現れてるというか、逢えるというか、存在するから大丈夫なんだよね
ヤバすぎにはならないように調整はしつつも、自分の気持ちに素直に生きようと強く思った
村田沙耶香いつもありがとう

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2022年04月21日

購入済み

ざわざわ

村田沙耶香さんの書く小説は,相変わらず胸がざわざわする。
けっして言葉にしたくないことを,正確に言葉にされて突き付けられた感じ。
『コンビニ人間』ほど強烈ではないものの,やはり登場人物にサイコパスみがある。
少しだけ羨ましくもあるけれど。

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2020年11月10日

Posted by ブクログ

「しろいろの街の、その骨の体温の」でも感じたけど、
年頃の女の子の心情を描くのが抜群にうまい村田沙耶香さん。
学校って何気にすごく生きにくい世界だったよなあ、、、
律みたいに、バイトで生き生きする感覚、すごく分かる気がした。

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2024年05月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大学生になった律がバイト先の人に対して思う「働いているときはあんなに近くに感じられた皆が、今はずっと遠くに感じられた」に共感しすぎた。業務関係の話だと円滑にできるのにプライベートな場になると話題に困る、仕事を辞めたら疎遠になる、大人になってもあるよ。律が最後に好きなブランドの服を着て大学に行って蓮井さんと少しだけ親しくなってたのがよかった。

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2024年02月18日

Posted by ブクログ

村田さんの作品を初めて読んだのがマウスだったので、その後の作品が思ってたのと違いすぎてびっくりした

小中学生特有の女子同士の謎の絆が、ちょっと懐かしい気持ちになった

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2024年01月28日

Posted by ブクログ

【2023年152冊目】
臆病な私と、臆病に見えていただけの女の子の物語。低学年の学生によくあるカースト制のような空気感、めっちゃわかるな〜と思いながら読んでいました。出る杭は打たれるけれど、出すぎた杭は打たれないところも。自分を持っているようで、持っていないと思っている彼女に対して、私(律)はずっと複雑な思いを抱いていたんだろうなぁ。なんというか、弱いと思っていたけれど、実はすごく強いことも、最初からわかっていたという。結構難しい話だなと、感想書いてて思いました。

マリーになり切っていた彼女と、ファミレスで制服を着てウェイトレスを演じている私は一緒だったんでしょうね。

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2023年12月06日

Posted by ブクログ

内気な女の子と、教室内で浮いた存在の女の子との出会い。

教室内で目立た無いように振る舞う律は、異端と思われる瀬里奈とちょっとしたきっかけで関わるように。そこから、瀬里奈の変化が始まる。

僕は、律のような目立た無いように気をつけている人間だから、分かるなぁと思いつつ読んでいた。
瀬里奈があるきっかけで変わるようになったけれど、根本は変わってなくて、限定の魔法みたいなものなんだよな。少しわかる気もする。

瀬里奈によって、 律も変わってきて、そんな2人の関係がいいなと思える本作でした。

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2023年12月03日

Posted by ブクログ

教室の中、<女子>にとって<大切>なこと。<同じ匂い>の女子同士でつるむこと。ヒミツを打ち明ける<順番を守る>こと。<教室の風景>に溶け込むこと。支配している<価値観>を飛び越えないこと。自分はクラスの中の<脇役>だと理解すること。女子の心の機微と成長の物語-。

『タダイマトビラ』以来の村田沙耶香san。というか、直近に読んだ10冊のうち、7冊が村田sanでした!

あらすじを見ずに読みました。内気な小学5年生女子の律(りつ)、クラスで協調性のない「浮いた」存在の塚本瀬里奈。スクールカーストの様な展開かなとか、タイトルの「マウス」がどこで出てくるのかなとか、後半はまた世界が変わる?などと、ドキドキしながら読みました。教室の中は時に残酷ですね。気づいたら、一冊の本を拠り所にして戦う瀬里奈を応援していました。「大嫌い」と言い合いながら、仲良く公園で話す2人が微笑ましかったです。

「mouse:ハツカネズミ、小ネズミ・・・臆病者+α 」。辞書に意味がどんどん追加されますように。

異世界へつながる扉を信じて。

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2023年03月09日

Posted by ブクログ

村田さんは人の内面を抉って、楽しんでいる。


それが心地よい。
私はコンビニ人間の方が自分に近くて照らし合わせやすかった。

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2023年02月20日

Posted by ブクログ


よくある話だと思いながらも、主人公に自分を重ねるとよくある話だと思えなくなる

自分を憧れの人に重ね合わせて振る舞っていくうちに、それが本来の自分になってたみたいなことって皆はないんだろか
読んだ時は行き過ぎに感じたけど、振り返るとあり得なくはないような気がしてきた

不思議な雰囲気を漂わせつつ、本質をついてくる感じはまさに村田沙耶香ワールドでした

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2023年02月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の少女とその友達関係、価値観を描いた作品。

作者の別作’コンビニ人間'に似ている。
短くて読みやすい。

最初登場するキャラがかなりインパクトがあり展開がたのしみだったが、期待とは違う方向性に、、



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2022年12月05日

Posted by ブクログ

途中まで読んだと思って最初から読み出したが、実は完読していた。なかなか面白かった。内気な主人公とくるみ割り人形を読んで、大変身する友達との物語という感じ。そんなに厚みもなく一気に読めました。

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2022年10月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初は主人公が小学生の女の子ということで、読むのが億劫になっていたが、物語に引き込ませる文章でスラスラ読んでしまった。主人公がアルバイト先でうまく溶け込んでいるようだが飲み会などでは全然輪に入れてない、だれしも一度は感じたことのある感覚をうまく表現できていると思った。

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2022年03月11日

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