【感想・ネタバレ】貧乏は正しい! ぼくらの東京物語(小学館文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

シリーズ第3弾。本書は、「現在を成り立たせる地域と社会」がテーマとなっていて、イナカとは何か、東京とは何かが論じられています。

著者はイナカの過疎問題を、これまでの「当たり前」が通用しなくなった現代社会の縮図として捉えています。イナカに暮らす老人たちは、「ここはこんないいところなのに、どうして若者は出て行ってしまうのだろう」と言います。しかし彼らは、老人中心の暮らしやすさが若者にとっての暮らしやすさと同じなのか、という問いには思い至りません。

一方で、イナカを出て行く若者たちは、都会が魅力的だから都会に出てきたわけではないと、著者は言います。過疎問題とは、都会に出た若者がイナカに帰ろうとしないことにほかならないと喝破し、同様の問題は、現代の東京に暮らす「若者」たちにもあるのではないかという問いを投げかけます。「トーキョーだって、所詮は「巨大な地方都市」でしかないのかもしれない」のです。もしそうだとすれば、現在東京に暮らしている若者たちも、これまでの社会が持つ魅力にもはや惹かれなくなってきているということになります。そして、イナカの老人たちが、なぜ若者がイナカに帰らないのかが理解できなかったように、現在の社会を築いてきた「大人」たちも、なぜ「若者」たちが現在の社会に魅力を感じなくなっているのかが理解できないということになります。

こうして、そうした社会で「若者」たちはどう生きていくべきなのか、という、本シリーズの中心テーマへと話がつながることになります。本書の最終章は「若い君たちにお願いしたいことがある」というタイトルがつけられており、今の「若者」たちが、やがてこの社会を支えていく「大人」になること、だからこそ、「若者」たちに現在の社会の行き詰まりを「関係ない」と言ってほしくない、ということが語られます。

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2014年02月18日

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