【感想・ネタバレ】あるキングのレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年10月03日

導入は仙醍という都市にある弱小プロ野球チームとそれを応援するとある家族(山田家)の話から始まります。熱烈な仙醍キングスファンの家族のもとに育つ劇的な天才野球児の話です。

仙醍なんて書いたらほぼ仙台だろって感じますが、これを読んで球団設立当初の楽天イーグルスを思い出さすには居られませんでした。仙醍キ...続きを読むングスは弱小・常敗チーム。一方現実の仙台のチームといえば楽天ですが、新規参入の際は体制づくりがビハインドのなか、当初リーグダントツの最下位、当時の田尾監督は常にへの字口であったことを思い出します。

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さて、山田家の天才野球児の王求(おおく)、名前からして(横書きで球(たま)とも読める)野球の神様から祝福されているかのような彼は、小学生時には引退したプロ野球選手の球を軽々とホームランするほど。中学時代もその名はとどろくも県大会どまり、そして高校では訳あって中退。しかし、幸運もあり仙醍キングスに入団。

そしてぼろくそに打ちまくる。ないしは敬遠か死球。結果として6割・7割打者という驚異的な成績に至る。

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自分にストイック、野球にしか興味がない。

それはそれで素晴らしいことであるも、はるかに他を凌駕した才能を持つ彼。その姿勢や存在が気に食わない連中も多い。明示はされていないものの、彼はチームの監督にこっそり刺され、この世での生を20年と少しで去ることになります。

ここに私は、凡人の衆愚、嫉妬を見た気がしました。主人公山田王求への日本的出る杭は打たれる的バッシング。

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実は、主人公山田王求へのバッシングは、彼の父山田亮が犯してしまった殺人にも理由がありました。

そのため彼は高校を退学せざるを得ず、またどうにかプロ野球でプレーできることになるも、常に殺人者の子として後ろ指をさされることになったわけです。

ここで気になるのは、加害者家族に人権はあるのか、という話です。被害者家族は金銭的に補償され、また精神的にもケアされるべきだと思います。加害者本人も法の下に罰せられるべきでしょう。その中にあり、加害者家族、なべてもその子どもはどれくらいの責任を負うべきなのでしょか。

作品ではこうした価値判断については一切明言はありませんでした。しかし、温厚な仙醍キングス監督が狂人じみたクレーマーの差し金を受け入れた末に山田王求を刺したことに及んだシーンから、「大衆は加害者家族を抹殺する」「大衆は加害者家族を許さない」、と感じました。もちろん、被害者家族の気持ちを離れて、大衆はうねりを作ります。

加えて、シェークスピアのマクベスから”Fair is foul, foul is fair”という文句を度々引用し、善悪の相対性、善悪は大衆による都合によって決定される、というメッセージを勝手に受け取りました。このあたりのストーリー展開、歯止めが効かない流れ、にゾクっときました。

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ということで一風変わった伊坂作品でした。

天才打者の短い一生はバッドエンドで終わり、明言されない寓意が霧のように立ちこめる作品でした。その点でも、伊坂氏の純文学的エッセンスが感じられる面白い作品だったと思います。

伊坂作品のファンはもとより、野球好きの方、純文学好きの方、倫理学やジャーナリズムに興味がある方にはお勧めできる作品でした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年02月23日

フェアはファウル。ファウルはフェア。
マクベスを読んでいないのでところどころ意味不明なところがあったが、あとがきと解説のおかげでなんとなく著者の言いたいことが伝わったと思う。完全版はマクベス読んでから読もう。
なんとも言えない気持ちになったが、その曖昧さが心地よく、終わり方の割に爽やかな読後感だった...続きを読む
転落死した下着泥棒の帽子を付け替えるシーンが印象に残った。個人的にはスタンドに入るくらいファウルだと思う。ファウルはフェア。

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Posted by ブクログ 2022年10月17日

大好きな伊坂さんの新作。

あとがきに、ご本人自ら「いつもの僕の小説とも雰囲気の異なるものになりました」と書かれているように、今までの伊坂さんの作品とはテイストが違いました。

真の天才。
神懸かった存在。
そんな人間が実在したら。

実在しないから、何となく漠然と切望しがちなその存在の、与える影響...続きを読む力の大きさを感じることができました。
主人公・王求がたまに見せる平凡な人間らしさに、安堵感を抱いた読者もいるのでは?

人間、というか大人のエゴ。
いかにして私達大人がバランスを取っているのか。
当たり前という価値観の個人差。

そんなことを考えました。

凡人な自分に感謝。

ただ殺人の証拠品となった、プロ野球チームの応援グッズに「傘」を採用されたのはヤクルトファンなのでブーイング。

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Posted by ブクログ 2020年04月08日

あきらめない奴を負かすことはできない

淡々とした主人公。
普段は極端にしか捉えられない人ってめんどくさいなと思うのだけど、この主人公は上手く極端に生きるタイプだなって思った。
でも、毎回二択の何方かを選ぶでもなく、わからないことはわからないと思ったり、性欲に正直だったり、ほんと、素直っていいなぁ…

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