感情タグBEST3
中世魔女狩りの恐ろしさ。
感情移入しやすい描写や幻想的な雰囲気、そして恐ろしさ。他の初野先生作品を読んだ時も感じたものですが、恐ろしさは今回が一番でした。
中世の魔女狩りの、あまりに理不尽で残虐な事実・・・。そんな過酷な場所に大切な人の魂が迷い込んでしまったらと思うと血の気が引きます。
知識を武器に過去の時代で戦うというのはよくある話ですが、こんなに苦労するタイムスリップはあまり多くない気がします。信じられない程の苦労をしたのに上手くいかないことの方が多く、気軽に時間旅行なんて行きたくなくなっちゃいます(><)
枇杷と勇介がとても優しく、かつ勇気もあるので「主人公のエゴ・保身を見せつけられる」という類のストレスはありません。ですが自らを省みず人を助けようとする結果、傷ついていく姿にはハラハラしました。それでも、枇杷はいつもきちんと考えて行動する知恵を持っており、勇介は他にない特技を持っているため、「きっと大丈夫」と思わせてくれる頼もしさもありました。
最後の枇杷と勇介のやりとりが良かったです。子供たちが大喜びする姿が目に浮かびます(^^)
Posted by ブクログ
過去の世界を彷徨う少女の魂を救うため、タイムトラベルに挑む勇介とそのパートナー枇杷の活躍を描くSFミステリー。
初野さんの作品、特にファンタジー要素のあるミステリを読んでいて強く感じるのは登場人物たちの優しさと彼らが抱える痛さです。ただ優しいだけじゃ何も救うことも、変えることもできず、そのための代償として必ず痛さが伴う、ということを読むたびに意識させられます。
今作の登場人物たち、特に主人公コンビは本当に優しい。児童養護施設出身で、施設を出ることになった後も施設の子どもたちを案じる勇介。そして施設で特別に境遇が似ていた少女を救うため勇介は過去に行く選択をします。
そして過去に戻る力を持つ枇杷。言動は子どもぽかったりするのですが、彼女も本当に優しい。常に人を憂い穏やかなタイムスリップするまでの彼女の様子は、読んでいて心地よくなるほど。本当にいい子たちなんです。
しかし、ストーリーはそんな二人にも容赦なく襲い掛かります。二人が向かうのは中世ヨーロッパの魔女狩りが横行していた時代。人権も何もなく、理由のない恐怖と不信が渦巻く時代で二人は肉体的にも大きなダメージを負い、そして精神的にも辛い選択を何度も迫られます。その痛々しさは本当に読むのが辛くなります。
そのため事態が収束に向かっても、どこかうら淋しさや痛切さも残ります。でも一方でそれだけじゃない温もりも確かに感じられます。それは二人が物語の中で勝ち取った絆を感じさせられるようにも感じられました。そんな冷たさと温かさが絶妙にミックスされた不思議な読後感の残る作品でした。
Posted by ブクログ
面白い。一気読み。
初野晴さんの作品では「水の時計」を読んだけど、これも脳死をテーマに描いた作品。初野作品では人を一途に思う気持ちをとても強く感じる。そしてそれをストレートに表現する青春ラブストーリー要素も沢山ある。
それに所々涙が出そうなシーンがある。感情移入しやすい自分としては涙ぐみながら、鼻をすすりながら読んだ。
それにしても、脳死というテーマをこのようなファンタジーにしてしまうなんて凄いの一言。この発想が斬新ですぐに惹き込まれてしまった。
初野作品、今後も期待してます!
Posted by ブクログ
脳死状態になった少女の魂は過去の別人物へ飛ばされ、その人物が死ぬと少女が目を覚ます可能性も潰えてしまう。
少女の魂を救うためタイムトリップする枇杷と、命綱となることを決意した勇介。
ファンタジーだけどダーク気味。楽しい時間旅行じゃなく、物凄い痛みを伴う命を賭けた救出劇。
自分を慕っていた6歳の子が、自分に会いに来ようとして事故にあったって聞いたら堪んないよなぁ…
魔女裁判が行われていた中世、人を生きたまま焼き殺して喜ぶ愚かしさ…人間の醜悪さの塊のような行事。
小さな子の魂が宿りこの子を守ろうと奮い立ってきた老婆アルドゴンド。自分だけが死ぬと伝えられナナを連れていかないでくれと懇願する所、ナナとアレフを必死で助けてくれる所 拭いても読み進める度に涙が出てきた
Posted by ブクログ
精神のみタイムスリップという設定がまず面白いと思いました。
過去へのタイムスリップは情報という武器がある分、スーパーマン的な話になりがち。
しかしこの作品では、情報を持つことによって生じるデメリットの方が、際立っていたように思います。
なので読んでいて新鮮さは感じました。
推理ものとしては、解説ページが用意されたのが、個人的には残念でした。
Posted by ブクログ
『水の時計』『漆黒の王子』と同様のダークファンタジー。
(吹奏楽部の青春を描くハルチカシリーズとは大違い)
天涯孤独の身となった中学生の主人公勇介。
そんな彼に大伯父は博物館を遺すのだが、
そこは脳死状態となり精神の時間旅行に出てしまった患者を
救い出す実験を行う場所だった。
ある日、自分のことを慕っていた幼いナナが交通事故に遭い、
脳死状態となってしまう。
博物館の学芸員で時間旅行の要となる枇杷と勇介は手を繋ぎ
中世イングランド、魔女狩りの時代へと旅立つ。
現代に戻るためには絶対に離してはならない手。
果たして、ふたりは手を繋いだまま、ナナを救い出し
還ってくることができるのか!?
説明・描写が上手で物語の世界に入り込みやすい展開でした。
ファンタジーとしてはとっても大事な部分ですね。
枇杷が最初から勇介を快く思っている理由とか
勇介の持つある能力のこととか、
いくつか説明不足なのではと思う部分もあったし、
冒頭に書いたように「ダーク」なのでちょっと読み進めるのを
控えたくなるような展開もあった。
それでも、なかなか爽やかな読後感という不思議な感じ。
できることなら、時間旅行に出る話をいくつか読みたかった。
一回だけの長編にするにはもったいない位の設定の上手さでした。
Posted by ブクログ
簡単に言うと脳死者の魂を取り戻しにタイムスリップする物語。
せっかく個性豊かなキュレーターがいる博物館という素敵な設定にしたのに、長編一冊で終わるのはもったいない。途中のトリック解明のところは中弛み気味だったので、もう少しシンプルな中編集にすれば良かったのに。
Posted by ブクログ
両親を亡くし児童養護施設で育った雄介のもとに、ある日存在さえ知らなかった大伯父が訪れた。
ようやく家族と暮らすことができると安堵した直後、その大伯父も事故死してしまう。
雄介に残されたものは、大伯父が館長を務めていた奇妙な博物館だった。
それぞれ一風変わった学芸員たちの中に、何を専門としているのかわからない青い瞳の女性・枇杷がいた。
施設で妹のように可愛がっていたナナが事故で脳死状態となってしまったことで、中世ヨーロッパに迷い込んだナナの心を取り戻すため、雄介は枇杷と共に命懸けの精神の時間旅行に挑む…
初野晴さん、初読…じゃなかった、2冊目。「退出ゲーム」を読んでいた。
タイムトラベルものは数あれど、精神だけをとばして、過去の人物に憑依するというのは珍しい。
雄介と枇杷の絆が重要なのは伝わってくるが、枇杷の姉のことが解決しないままで、少しスッキリしないラストだった。
悪くないんだけれど、どこか少しずつ、ちょっとだけ、描きたい場面に夢中になって、何か枝葉の先が大雑把な感じがする。
これが若さか…という感じかなぁ。
Posted by ブクログ
勇介と枇杷の綺麗事で終わらない旅を、枇杷の姉と邂逅するまで見届けたかった……!
続きがもっと読みたくなる、でもよかったなと思えるラストでした。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
大叔父が遺した博物館は、時間旅行の秘密の実験場だった。天涯孤独になった勇介は、過去を彷徨う大切な人の魂を救うため、危険な旅路に出る。パートナーは碧い瞳の不思議な学芸員枇杷。「命綱」は堅くつないだ手。この手が離れれば二度と現代には戻れない。過酷な旅が今、始まる。新感覚ミステリー長編。
【感想】
Posted by ブクログ
なんて過酷で壮大なタイムトラベル。読みながら疲れを覚え、少しずつ息抜きしながら読みました。
とはいえど、どんどん核心へ近づいていく場面ではハラハラドキドキの連続でぐっと引き込まれ、ぐいぐい読み進めました。
自分が枇杷さんだったらこんな行動がとれるだろうか。
そんなことを考えつつ、彼女の勇気と知恵と優しさに感心、脱帽。
「アルドゴンドとアレフ」の章で涙。
Posted by ブクログ
初野晴の、ファンタジーミステリ長編。
子供向け風の世界観・展開ではあったが、描写が巧みで軽快なので、引き込まれた。
YA向けの冒険小説として魅力的。
求めていたものではなかったが。
3-
Posted by ブクログ
『水の時計』における人の死(ここでは脳死)、『漆黒の王子』における「上の世界」と「下の世界」(本作では現代と過去)、『1/2の騎士』にあるSF的(ファンタージ的とも)設定を活かし、主人公が魔女狩りの吹き荒れる中世イギリスの魔女探索人に挑む。SF的、ファンタジー的なようでいて、いちおう謎解きミステリの構成をきちんととっているのは流石。最後のひねりも秀逸で満足。惜しむらくは、主人公を支える、一人一人が実に個性的な学芸員たちの掘り下げが、主人公とナナ、時間旅行先の老婦人と少年との間に焦点が当てられているためか、やや足りなく感じられたことか。ただ、この作品は、枇杷の姉の設定もあることから、続編が予想できる点、今後に期待したい。
Posted by ブクログ
どっと疲れたけど良かった。
博物館・時間旅行・ミステリーと面白そうな題材揃いだったので読んでみたが、想像以上に過酷だった。
天涯孤独だった勇介に突然遺された大伯父の博物館。彼は不思議な学芸員、枇杷と出会い大切な人を救うため過酷な旅に出る。
時間旅行の目的。博物館である理由。癖者ばかりの学芸員たち。
重い雰囲気で気軽に面白かったとは言えない読後感だけど読み応えありました。
なにか裏がありそうな博物館と、残虐な魔女狩りが横行する中世のイングランドを舞台に展開されるスリルあるファンタジー+ミステリー。