【感想・ネタバレ】昭和天皇 「理性の君主」の孤独のレビュー

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Posted by ブクログ

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新書大賞2012 2位。
中立~昭和天皇寄り(?)

とっつきにくそうなテーマとボリュームだけど、すごく良かった。
天皇とその周囲の人たちがどのような国を目指していたのか、なぜ戦争に向かっていったのか。侍従官たちの日記に記載された天皇の発言を通して結構リアルに近い(?)気持ちがよみとれて感情移入してしまう。

結局昭和天皇の人生の一番の時期が、皇太子時代のヨーロッパ巡りであった。そこで感銘をうけた民主主義の実現を目指したが孤立し上手くいかず・・・というのが切ない。

原稿が紛失したという、昭和天皇本人による自叙伝が見つからないかな・・・

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2013年04月06日

Posted by ブクログ

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本書は、多くの先行研究の結果をその性格を明らかにしつつ批判を加えていくという「史料批判」の手法により昭和天皇の実像を描こうとするもの。

これでもかと言わんばかりに羅列される種々の引用からは、天皇の絶対性を前提とする明治憲法の精神の本で、多様化する利害関係の調整を図ることの困難さが浮かび上がってくる。天皇に強大な統帥権を付与しておきながら、いざ利害衝突の段になると天皇に政治責任が生じたり権威に傷がつくことを恐れて、為政者や側近達が天皇にディシジョンメイキングをさせまいと根回しに奔走するのだ(天皇が「聖断」を下すのは田中義一首相叱責事件や日米開戦時のように、これ以上放置すると却って政治責任が生ずる、という消極的事由が存する場合のみ)。だから満州国建設の是非を巡り御前会議が検討された際など、「決定を現地軍が無視した場合天皇の権威が損なわれる」という理由で開催が見送られるなどという事態が起こる。
また、(民間科学者としての天皇の考えと決して相容れるわけではない)「国体」という鵺のような概念を天皇より実質的に上位に置いているため、その解釈如何では天皇の意向に沿わぬことも可能、という理屈がいくらでも導き出せる。畢竟、昭和天皇には実質的に追認機能しかないことになり、これでは末端が中央を等閑視するのも当然、寧ろ暴走したのが陸軍のみだったのが僥倖とも思えてしまう。

面白いと思ったのは、自然科学、特に生物学に造詣が深い天皇が、理論や理屈で割り切れぬ部分が自然界にあることを認めるのと軌を一にし、表面上は信念や不屈の意思という体裁を纏う軍部の理不尽な要求に寛容的であったとする下り。こうなると本書の帯にある「理性の君主」というよりは寧ろ、「物分りの良すぎる上司」といった通俗的なイメージが浮かび上がる。また即位時にメディアにより国民に植えつけられた大衆的でリベラルな天皇像が、戦後の平和主義的な天皇のイメージ構築に一役買ったとする指摘も興味深い。

本書の主眼は極力特定のイデオロギーの介在を排することだが、それでも昭和天皇自身の追想や側近達の手記が予め著者の描く昭和天皇像に引き寄せられて引用されている疑いは残る。しかし天皇の思想のルーツを青年期に受けた教育や外遊に求める書き振りは周到で説得力があり、またサンフランシスコ講和条約締結交渉の際の天皇の逸脱的行動の指摘など新奇性に満ちた部分も多く、総じて興味深く読めた。

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2015年06月21日

Posted by ブクログ

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メモ

昭和天皇論。彼については賛否両論あるが、時事能力に長けた学者肌で頭脳明晰だったようだ。欧米に親近感を抱いており、国際協調を望み、平和主義者かつリベラルで国体の欺瞞を見抜き国民に近い皇室を目指した。君主としての自覚があり、戦前のみならず新憲法下でも政治的な発言をしたとされる。しかし、満州事変を経て軍部や右翼が台頭し、思想的にも孤立して戦争を抑えられなかった。戦後は戦争責任論に苦しめられた。

彼の在位期間中を中心に89年の生涯は壮絶だったし、戦争責任はないわけではないが、国体という大義名分で軍部や政治家に利用された悲劇の人ということもできると思う。

主権者としての天皇や先の大戦の賛美、一方で象徴としての天皇制を否定することはないが、そろそろ客観的に考えるべきだと思う。

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2011年05月07日

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