【感想・ネタバレ】組織戦略の考え方 ――企業経営の健全性のためにのレビュー

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一橋大学で名誉教授を務める著者による「日本企業の組織デザインの改善」をテーマとした本。
著者は経営組織論・経営戦略論のスペシャリストであり、本書は経営組織論の内容に寄っている。

本書は著者が自ら冒頭で述べている通り、実用的な内容となっている。「自分が経営するとすればどうするべきか?」という視点を持ちながら読めるのが特徴的で、そこが本書の優れた点だと感じた。

日本企業の一般的な問題点を挙げ、その原因を分析し、有効なソリューションを紹介・解説する形で書かれている。
この問題点補足の精度が高く、個人的にはいままで感じていた問題が「なぜ起こるのか?」の解像度が上がった。

テーマは組織デザイン、人事制度、決断力不足、社内権力の種類、組織腐敗のメカニズムと多岐にわたる。

特に興味深かったのは、「ある問題を解決するためには誰かがコストを負担する必要があるが、それを解決することによる利益は多くのメンバーが受けられるので、誰も積極的にコストを負担しなくなる」というフリーライド問題についてだった。
これを解決するための策として、著者は「かなり少数の人々をコア人材として選別し、その少数のエリート社員が周りの社員にフリーライドされても平気でいられるくらい大幅に高い賃金を獲得し、強い権限を発揮できるようにすること、また自分がかなり確実に会社のトップ層へと登り詰めていくという意識を早い段階から植え付けること」が有効だとする。
確かにこれは欧米でも主流の方法で、一定の成果を発揮できると考える。

ただし、この施策はエリート/ノンエリートの乖離を大きくして対立を強めるものである。だから、この間を取り持ち、当たり前のことを当たり前にやれる中間層の重要性が増す。
しかし、エリート層に金銭・昇進のインセンティブは充ててしまうので、彼らに報酬や昇進で十分に還元することはできない。故にそれに代わる報酬を開発しなければならない。
この報酬のひとつとして著者が挙げているのが、「彼らの働きを褒め、感謝を伝えることで承認・尊厳欲求を満たしてあげること」である。この感情が満たされれば人は頑張れる。

他にも興味深い内容が幾つもあり、実用的なので参考になった。良書。

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2024年04月24日

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職場同僚の推薦図書として読んだ。

第2部 組織の疲労 第7章 トラの権力、キツネの権力、第3部 組織の腐り方 第9章
組織腐敗のメカニズム、 が、自分の勤める会社が観察されてたのか、と思うぐらい、グサグサ来た。著者は学者一筋の筈なのに、随分とフィールドワークを熟して来たのだろう。

特に、「宦官vs武闘派」で、外向きにリスクを取って勝負している武闘派が、安全地帯から批評を述べるだけの宦官に屈するパスを解説する箇所は、当たっているだけに恐怖を感じた。(自分の仕事は、ここでいう宦官にかなり近いのでは?と。。)

あと、マトリクス型組織を、ミドルに権限ではなく「悩み」を委譲する形態、と断じる分析が秀逸だった。(P73-76)

組織は生き物であり、破壊と創造、新陳代謝を絶え間なく続けて行かない限り腐敗していくものだ、と肝に銘じたい。

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2024年02月13日

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ネタバレ

三品さんの経営戦略を問いなおすに続く、ちくま新書のロングセラー本。三品さんの本と異なり、連載がベースだったからか、本としてのまとまりは弱いけれど、組織を考えるためには必須の文献と言ってもいいのではないか。
まずは官僚制が組織の基本であるという点。得手して官僚制は唾棄されるべきものと扱われがちだが、官僚制がなければ、都度対応方法を考えなければならず、組織として大きな非効率が生ずる。官僚制により、実力者がルーティンに煩わされない状況を作ることこそ、組織論の第一歩なる。そして、組織設計上の工夫は、官僚制に付加する形で追加的に行われる。
事業部制の目的は、日常的に発生する問題の解決をすべて行えるだけの資源を事業部に与えて自律的にすることで、トップマネジメントが日常業務を離れて長期的なビジョンや経営課題に取り組む時間を得ることができる。一方で、現場=ルーチン、ミドル=例外処理、トップ=戦略とすると人が育たない。緩やかにオーバーラップさせることが必要。
ザ・ゴールにしたがって、ボトルネックを考えることは生産工程に留まらずあらゆる局面で有効。制約条件が何かを見極め、それを取り除くことが組織設計上も有効。
マズローの欲求階層説で重要なのは自己実現ではなく、承認尊厳。給料で答えられなくても、成果を認めること、感謝を示すことは必要。
後半はいかに組織が腐るかが論じられている。多くの兆候はあるものの、やはり議論が内向きになっているときは要注意で、資料の書き方がダメということが議論になっているような企業はやはり危険。そんなことを指摘する経営もどうかと思う。パワポがきれいすぎる会社はやはりダメ。もっと本質的なことを考えろということ。

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2021年11月03日

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学者が書いた本とは思えない現実的な内容
組織は人が動かしているため、組織形態を変更しただけで効果が出ると考えない方が良いと本書は警告する。人がいかにして組織を内向きに腐らせていくのか、そのために人を中心に組織をいかにして設計していくのかが述べられる。

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2021年09月23日

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沼上氏の文章は、書籍にしろ論文にしろ、ロジックが明快であり、学ぶことが多い。ロジカルな文章を書く上で、何か一つは読むと良いと思う。

本書は組織戦略についての論考であるが、ロジックが明快であるぶん読みやすい。ややオーバーに書かれているところもあるが、これは筆者の意図するところだろう。

自分の勤務先がどうなのかをイメージしながら読み進めると良いだろう。さらには、自分自身が「フリーライダー」や「キツネ」になっていないか、よく考えながら読むべきである。

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2021年08月30日

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発行された当時の若い頃に読んでも、抽象的と感じたかもしれないが、ある程度の経験があると非常に参考になると思う。

学者の理想論と思いきや、まるで色々な現場を動かしてきたような印象を受けた。

自分の仕事の考え方に幅がついたかもしれない。

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2021年03月09日

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日本的経営への評価や流行りの組織論と少し距離を置きながら、大きな組織の中で発生しがちな実際的な問題を考察して解決に向けた考え方を示す本。
「組織デザインは万能薬でない」「問題を処理するのはヒトであって、組織構造ではない」、自己実現や平等主義の罠など、まさにうちの会社のことを言い当てていると思う箇所がいくつもあった。
結局「この仕事は会社を良くしているのか」ということを真摯に問い続けることを忘れてはいけないということだと思う。

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2020年07月18日

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ネタバレ

レビューめっちゃ書いたのに・・・レビュー枠外を一回クリックしただけで、レビュー枠が消えて全部吹っ飛んだ(涙

面倒なので要約すると、組織戦略の基本(官僚制)や組織腐敗のメカニズムが書いてある。が、言葉や概念の定義はなく初心者に優しい本。詳しい事例は挙げられていないが、組織・人事畑じゃない方にもわかりやすく嬉しい。
流行りのGE・グーグルの本を先行して読んで、エッジのきいた人事制度ややたらフラットな組織戦略が頭を支配している私のような人には、良いパフォーマンスを発揮すると思う。

<キーセンテンス>
・官僚制はベースで、そこに時代に合わせた付与されるものがある。
・会社はみんなが自己実現する場ではない。
・調整役はうち内向きの仕事を作るだけ。
・トップ・ミドル・ローワーがそれぞれ、戦略立案・例外対応・ルーチンを正確にこなすことがベース。仕事をプログラム化しないと、トップやミドルが例外対応(個別処理)に追われる生産性の低い組織になる。
・組織変革の本質は、問題を減らすことではなく、問題を適切な階層に分散させること
・ボトルネックになっている場所(問題が発生している場所)に知識・情報をベースとした権力を手中させることが最適解。環境の不確実性が高まるにつれて、現場で大量の問題が発生するだから、意思決定のポイントを組織階層の下位にシフトするとよい。(ただし、決断はシフトさせてはいけない。)

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2019年02月05日

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一読して組織戦略というタイトルに違和感を覚えましたが、組織構造やヒト、企業の中での組織に生じる現象(フリーライダー、厄介者、キツネの権力など)について解説しており、日々の自分の属する組織と対比させながら読むと、なるほどと納得することばかりでした。
組織構造に関しては官僚組織が基本であること、ヒトに関してはマズローの欲求階層説での承認・尊厳欲求の重要性と配慮について、気づかされました。
お勧め本です。

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2017年05月07日

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組織戦略の考え方

自分の組織を考える上で、とても面白く、勉強になる本であった。
①組織においてまず考えられるべきは、官僚制である。プログラムとヒエラルキーを骨格として考えなければ、本来長期的・総合的視野で俯瞰しなければならない上層部が雑務に忙殺されてしまうため、組織として機能することはない。不確実性の高まりに対応し、マイナーチェンジをしていくことは、官僚制が機能して以降の話である。
②ボトルネックを考えよ。ボトルネックとは、複数の過程において行われる作業のうち、生産に制限があるため、全体に対して制限をかけている過程である。ボトルネックを意識し、ボトルネックを基礎に組織の行動をデザインしなければ、無駄な努力、もしくはロスが発生する確率が高い。
③組織戦略は万能薬ではない。組織は生き物であり、初めに制度設計をしても、逐一その制度の長所と短所に適合した調節を人間が心がけなければならない。
④欲求階層説から学ぶべきは、承認・尊厳欲求の大切さ。多くに人は、欲求階層説の最上部である自己実現の欲求に達してはいない。そのため、組織の人を機能させるためには、承認・尊厳欲求をまず高めさせることが先決であり、欠くことのできない行動である。よくもわるくも評価を与えることを怠った組織は、みんな頑張ったという悪平等のなかよしクラブとなってしまう。弱者に対する配慮は、目標に向かって進む組織にとっては必ず霜良い影響を与えない。
⑤中間層を大切にせよ。組織において、エリートだけを養成しても、フリーライダーのケツをたたいてもよい組織はできない。エリートとフリーライダーを結ぶ中間層が機能しなければ、組織の中の疲労が一か所に集中しやすい。これは非常に示唆に富んだものであり、私の知る限りフランスの政治学者であるアレクシス・ド・トクヴィルの中間共同体や貴族制を重要視する考え方と同根ではないかと思う。国家においても、エリートと貧困層の格差の増大は致命的であり、厚みのある中間層が多くの亀裂を調停し、民主主義国家を機能させるのである。
⑥決断し、集中せよ。長期的に安泰な集団では、ある種尖った人材よりも、落としどころをわきまえた調整役が多くなる傾向がある。このような傾向では、人々は組織の外部の利益よりも、組織内部の人間関係に注意力を集中させ始める。組織内部のコンセンサスを得るためには、欠点のない全方位的な案が多く通りやすくなる。しかし、欠点のないプランとは、裏を返せば利点もあまりないということである(これは、楠木健がストーリーとしての競争戦略で強調し続けているポイントでもある)。組織の継続的な維持には、外部からの制限の中で、選択と集中を具現化したプランが必要である。
⑦組織の阻害要因―トラとキツネの権力―。組織の円滑なコミュニケーションを阻害するものは、二つある。トラと呼ばれる癇癪持ちの声の大きい人間である。トラの存在する組織では、プランの中身よりも、いかにトラを通過するかということに集中力をそがれるようになってしまい。結果的に、トラに忖度したプランが組織に跋扈するようになる。二つ目はキツネの権力である。トラと人々の調整役に見えて、トラの恐ろしさを利用し、歪曲した情報伝達を送ることでトラと人々を分断し、自分の意のままに物事を進める人々のことである。現在の日本のメディアにはそのきらいがある。

本書では、その後、組織の腐り方という部分があるが割愛する。
自分のいる組織において、考える上で上記の7つのポイントがコンパスとなり得よう。

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2016年11月15日

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日本型組織の本質を維持しつつ機能不全の組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことの重要性を説いた書籍です。特に組織運営において陥りやすい過ちについて的確に指南されています。推薦者:『人事課』

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2017年02月01日

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全般的に読みやすい。
あー、なるほどなーという事実と解釈が書かれており理解しやすい。
自分の会社に例えるとなお頭に入ってきやすいかと思う。

62-64
組織は仕事の邪魔はできても、自動的に仕事を処理してくれるわけではない
組織変革でいい人がすぐに出てくると勘違いしている
組織変更後に実るのは数年後でしかない

82
マズローの欲求階層説
人は自己実現よりも承認欲求が潜在的にある。
カネもポストもあげれなくても、褒めることが大事
平等感という意味がわからないものに縛られて、差をつけすぎないで、なにを満たすことができるのか

102 第5章
フリーライド(人の貢献に乗っかる人)
コア人材の少数エリートに対して賃金格差を設けると、ノンエリートから社内野党が増えてくる
なにも言わずに成果をあげる中間層にいかにして、生産性をあげつつ、仕事してもらうのか

139 第7章
トラの権力 キツネの権力
厄介者の存在。
顧客や上層部からのメッセンジャーとしての立ち位置を利用して、誇張表現する。
自分の立場を利用して、権力を行使する人、たしかにいる!

178,204 第9章、10章
組織腐敗は成熟化の部分が面白い。
優秀ゆえに効率化していき、同じ仕事をこなしていても暇になっていく。
その暇を潰すために無駄に指摘を増やし、無駄な仕事を増やす。
なるほどと思った。
また社内の雑談の質からも腐敗しているかわかるとのこと。
社内の内向きの話(誰それと誰それが仲が悪いだの)よりも、外向きの話(なぜあの事業は失敗したのか)という高質な雑談をしているかどうか。
なるほど、前職では内向きな話が最後は多いようであったと実感。

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2022年04月02日

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会社の同僚からの勧めで読みました。そうでなければ、手に取らなかったでしょう。社会に出て、会社に勤める中で、日々思う事が言語化されております。腑と落ちる、納得感がありました。

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2022年02月06日

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あとがきには、筆者は啓発本の類と書いてみえたが、私にはアカデミックな部類だと思った。
組織戦略について、あまり考えたことがなかったが、考えさせられることがいくつもあった。
特に以下の描写が心に残った。
・縁の下の力持ちをコトバで支える
給与で報いるという方法でなくても、ホントに感謝していると、誠意ある言葉で報いる方法もある
・フリーライダーとは
会社の業績の高さは、従業員にとって集合財。誰かが頑張れば、会社の業績は高まり給与は手に入れられる。

この本が書かれたのは2003年。20年程時が経ったが、日本の組織のあり方を大きな変化はなさそうだ。これは良いのか悪いのか?

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2021年06月16日

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「組織の基本は官僚型です」
とのことでまあそうだよなと思いつつ、
昨今のティール型組織は、その違和感を何とかしたい、人類を未来に進めたい、と考える人たちの挑戦なのかもしれません。より戻しをビジネスにしている、あるいはそれを信じ切っている方々には異議申し上げです。

・組織構造を変えることにより、マイナスは打ち消せるが、プラスの効果は、数年後にしか現れない。結局は、個々の能力がどれくらいか、それを最大限引き出せているか、にかかっている。だから採用大事。
・フリーライダーを生み出してはいけない。

#実践しきれてないけど組織を知るための良本ですシリーズ②

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2021年02月11日

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ちくま新書セールの際に衝動買いした本の一冊。

日本の「コア人材を長期雇用する」という組織構造を、全否定するわけではなく、全肯定するわけでもなく、客観的にそのメリットとデメリットや対策を考えているという視点が新しかった。

# 組織とは
「プログラム」
「ヒエラルキー」
が組織の2大要素

- 例外処理は上にあげる

# Japan is No.1の時代があった。
- 高度成長時代に、日本モデルは嵌っていた。
- 終身雇用前提で、組織として効率性を突き詰めた。

# 例外処理が増えて、組織が回らなくなったときの対処方法
-下の処理あげる
-上の処理あげる
-システム(IT)使った処理効率up
-垂直分業

# GOALがもたらした価値観
- 徹底的に事業のボトルネックを考え、それに合わせて対処する。

- (余談) 教育のボトルネックについて考えてみると面白い。
日本の教育のボトルネックはどこか?

- 組織より大事なのはヒト = 結局実行し、問題解決するのはヒト

- マズローの5段階仮説
生理的欲求 => 安全の欲求 => 所属と愛の欲求 => 承認欲求 => 自己実現の欲求

2.承認 3.所属が軽視されがち、組織はこの欲求も満たす必要あり。

# フリーライド問題
解決は難しい。それぞれが自分ごととして捉えることが必要。

# 組織は複雑化、腐敗が進んでいく。
- 無駄な内的な仕事が生まれていく
- ルールのための行動が生まれていく

日本の組織論を考え、面白かった!!!

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2020年08月31日

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勧められた本を素直に読んでみました。組織論もさることながら、自分でしっかり考えることの大切さを再認識させられました。仕事に限らず、あらゆることについて考え抜き結論を出す。これを根っこに出来る様にしていきたいと思います。はい。

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2020年02月24日

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色々と書いてあるが、結局は「守・破・離」ということ。アメリカ人が書いたソフトウエア・マネージメントの本にも「守・破・離」の大切が力説されているものがあるが、これが伝承の原理原則。未熟者に告ぐ、「徹底的にトッププレイヤーのまねをせよ。それができたら、受け継いだものにオリジナリティーを付け加えよ」。その後は、まさに”離”の世界だがこれはなかなか難しい。

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2018年10月23日

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ネタバレ

著者が「自分で経営した場合、どういった点に気を付けるか」という点にこだわり書き上げたという、組織マネジメントの本。2003年発行だが現在読んでも全く違和感がない。
TOC、マズロー、事業部制といった組織論を交えながらも、著者が自分の言葉で咀嚼しており、内容は非常に分かりやすい。
例えば組織設計でのトップダウンで作り上げた理論に対して現実が追いつかない点に対して「スパッと割り切った組織に不純物を後から混ぜる。最初から混ぜて作るのでは、しがらみだらけの組織になる」といったように。また、組織へのフリーライド(ただ乗り)、キツネ(宦官的振る舞い)の悪癖だけでなく、それらを生み出す「大人しい優等生」の無責任さを問う等、切れ味も鋭い。

●メモ
・日本の高度成長、世界最高の水準になったのは日本が優れてただけでなくアメリカに大いに問題があったのではないか
・日本は長期雇用が前提である。アメリカ、その他の国のような雇用へ簡単になるわけではない。その問題を捉えながら現実的な施策が必要
・組織は毎回発生する問題を都度考えては組織の意味がない。手順、ルール遂行により実現してこそである
・人は目の前に大量のルーチンワークが積まれると、それを優先し、創造的な仕事を後回しにする
・経営のボトルネックは短期と長期で異なる
・マトリクス組織にてパワーバランスを取るのは難しい。解決策は「腹を割って話す」「トップ判断」「ミドル層がバランスを取る」。だが3つ目は本来両組織のトップが決断することを放棄しただけ
・マズローの法則では自己実現の前に「承認欲求」がある。これを如何に実現するか。これを軽視している傾向がある
・フリーライダーを防ぐことは難しい。責任感の強い人を採用し、会社と自分の運命がリンクすることを示していくしかないのではないか。エリートと呼ばれる人の賃金を大幅にあげるなどの考えもある。その場合、階層が生まれるため、その中間層が重要になってくる
・決断とは「何かを取り、何かを捨てる」ため、一部の人には苦痛を強いるものだ
・何本ものプロジェクトが乱立する状態は危険、「決断したつもり」に経営者がなっている可能性が高い
・エースの無駄遣いには注意。エースには仕事が集まる。無能な人間は暇である。
・意思決定で「自分の考えとは違うが、●●さんの意向を踏まえて…」という理由での決定は健全な議論を黙殺してしまう。議論の相手が存在しなくなる
・成熟した組織から人を抜くのは難しい。
 彼らは生産性も高く優秀だが、その場から抜け出さないし、権力もある。だが、彼らの忙しさは「内向き」である。なぜなら生産性が高いため、新規事業より忙しいはずがない。これは組織腐敗の始まり
・組織腐敗が最悪まで進んだ場合、「複雑怪奇なルールの廃止」「成熟事業部から優秀な若手を乱暴に引き抜く」「優秀な人材が暇になるような組織にする」ことである





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2017年08月19日

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ネタバレ

バブル期には絶賛された日本的経営も、いまや全否定の対象とすらなる。
だが大切なのは、日本型組織の本質を維持しつつ、腐った組織に堕さないよう、自ら主体的に思考し実践していくことだ。
本書は、流行りのカタカナ組織論とは一線を画し、至極常識的な論理をひとつずつ積み上げて、
組織設計をめぐる多くの誤解を解き明かす。
また、決断できるトップの不在・「キツネ」の跋扈・ルールの複雑怪奇化等の問題を切り口に、
組織の腐り方を分析し対処する指針を示す。自ら考え、自ら担うための組織戦略入門。

目次
第1部 組織の基本
組織設計の基本は官僚制、ボトルネックへの注目、
組織デザインは万能薬ではない、欲求階層説の誤用(承認・尊厳欲求が大事)

第2部 組織の疲労
組織の中のフリーライダー、決断不足、トラの権力、
キツネの権力、奇妙な権力の生まれる瞬間(バランス感覚のある宦官)

第3部 組織の腐り方
組織腐敗のメカニズム、組織腐敗の診断と処方

★ポイントは、企業理念に基づいて、利益を産み出す行為か否か、ということ。

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2017年05月15日

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ネタバレ

自分が所属する組織のことを考えながら読むと非常に参考になる。経営者がどの視点で物事を見ているのかも理解しやすくなる。
内向きの話ではなく、外向きの意識を常にすること。
3割以上内向きの調整が出てくるようになるのであれば危険信号。

組織の基本は官僚制
ボトルネックに注目すること
組織デザインは万能ではない。常にその中のヒトを中心に考えること
金銭やポジションでなく、自己実現に目をいかせすぎると会社の理念と異なる安易なものが出やすくなる。自己実現と厳しい評価はワンセットであるべき。
組織の中にいるフリーライダーをゼロにすることはできない。すべての不満に対応することも困難。
フリーライダーとなりうる人は自分が忙しそうに振る舞う。
本当に仕事がくるエースが重要な仕事の決断できるように、エースに振り分ける仕事に気をつけること

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2017年03月20日

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組織戦略の考え方 -企業経営の健全性のために】読み終わったー\(^o^)/
日本企業にありがちな組織構造の問題提起書。内向きではなく外向きの意識が大切。

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2016年09月18日

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・しっかりした組織とは、各人が自分で判断できる問題をほとんど自動的にミスなく解決し、判断に迷う問題を即座に上司の判断に委ねる、といった一連の作業を至極当たり前のように遂行する組織。基本的な判断のルールをしっかり守る人々が、何階層かのヒエラルキーで結びつけられた組織、すなわち官僚制組織である。
・組織設計上の工夫は、官僚制を打破して、官僚制を代替すべく行われるのではなく、むしろ官僚制に付加する形で行われるべき。
・官僚制組織設計の第一歩はプログラム開発。繰り返し出現する問題を解決する手順やルールをあらかじめ決め、各人が自分に割り振られた役柄を信頼性高く遂行できるようにする。仕事の多くをプログラム化し、そのプログラムできる対応できない例外をヒエラルキーによって都度上司たちが考えて処理する。これが組織設計の基本。
・組織において、構造的に問題を解決する方法とは、①現場の知的能力アップ ②スタッフの創設 ③情報技術の装備 ④事業部制(あるいは小規模で自律的な組織ユニット) ⑤水平関係の創設
・トップは長期の戦略思考/ミドルは業務の例外処理判断/ロワー現場はルーチンワークの正確な遂行、これが官僚制の基本骨格
・日本の多くの企業で起きているのは、選択・意思決定できる人材の不足。これが組織成長のボトルネックにもなり得る。選択を行える人の時間がボトルネックとなる。
・組織構造自体は仕事の邪魔をすることはできても、仕事を自動処理はしてくれない。例えば、新製品が出にくくなっているのは、新製品を生み出す研究開発スタッフの時間が足りないとか、技術者の育成が停滞しているといったヒト絡みの問題かま原因であって、それを専門にする組織を作ったところで能力のあるヒトがいなければ問題は解決しない。
・組織のチェック①メンバー固定・組織構造変革 ②組織構造固定・メンバー変革 ③メンバー・組織構造変革 を問う。
・組織では、欲求階層説が誤用されている。自己実現欲求の追求という方向が美しく気高く、組織の人事にとっては安上がりであるがゆえに、多くの人がそこに目を奪われ、所属・愛情欲求や承認・尊厳欲求などを一足飛びにしてしまう。本当は承認・尊厳欲求が大事。
・組織の中にはフリーライダーが多い。自分個人の仕事を若干犠牲にしてまで、例えば職場の雰囲気を維持する仕事を引き受ける人がどれだけいるか?厄介者を厳しく叱りつける作業もフリーライドされる集合財である。これらフリーライド問題の基本解決方針は、責任感ある人を育成・採用すること。単純。
・落としどころを探ろうとしすぎると、決断ができない。決断こそ経営者の仕事であり、決断かできない管理者は不要。
・決断ができるエースに仕事が集中し、重要でない仕事までエースに集中してしまうことは経営上の深刻な問題。

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2016年10月03日

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斬新さはないが、サラリーマンからすると、なるほどと思える内部が多かった。
学者の立場ながら、企業内部のこうした事情に精通できている点が興味深い。

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2022年04月10日

Posted by ブクログ

一橋大教授で経営戦略・経営組織・経営学方法論等を専門とする沼上幹の新書。現実的・本質的な実践を念頭に会社組織構成について基本的な考え方と、日本社会において起こりがちな組織腐敗の事例とその対処の基本的理論を紹介している。これを読むことで、一般的な組織構造の意義と、陥りがちなミスや腐敗への対処法を学ぶことができる。また経営者側の立場に寄り添って組織戦略の考え方を書いているため、いち従業員の立場で読むと観点の違いをよく知ることができると思う。

一旦読んだが、咀嚼しきれていない。
「官僚制」は批判されるが、組織で価値を生み出すための基本構造であり、官僚制の腐敗は憎むべきだが、官僚制の基本的な構造自体は憎むべきでない、という立場で始まる組織戦略の考え方の一章や、それ以降のいくつかの議論は、当たり前だけど何故か誰も言わなくなってしまったことを再度述べている。基本を疎かにしてはいけないと感じる。

あと口が悪い。

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2022年03月22日

Posted by ブクログ

事象が言語化されている、という意味において気付きもあったけれど、課題に対する改善方法に膝を打つようなものが見つけられず、少しモヤモヤが残った。
自分にとっては、学問的な考察を学ぶよりも、現役の経営者の考え(判断基準や直観の用い方)を知る方が役立つと思った。

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2022年03月03日

Posted by ブクログ

フリーライダーのとこはおもしろかった。特に、フリーライドを上回るメリットを感じられれば、この問題は克服できるだろうなと思い、一次的にはWG、二次的には別の策を考えていかないとないと思った次第。

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2021年10月15日

Posted by ブクログ

久しぶりにビジネス書を読んだ。本書では、典型的な組織を検討対象とし、それらの特質を了解した上で、よりベターな体制に整備できるよう、構成員自らが主体的に考えるためのケース群が紹介されている。大学の組織は、設置者を問わず基本的に官僚制組織なので、第1章の内容は参照しやすく、読者が持つ課題に引き寄せやすいだろう。第3章の組織改編のための視点はこうだ。①メンバー固定・組織構造変革、②組織構造固定・メンバー変革、③メンバー変革・組織構造変革の3点を、現実に照らし合わせを考えることが求められている。第5章の組織におけるフリーライダー説は、多くの大学に何人かはいるというイメージがなんとなくある。自分は特に何もプラスの貢献をせず「学内野党」として生活している人々のことだ。第10章の組織が腐敗してからの処方箋は興味深く、本格的に自組織が崩れる前に一読しておくとよいだろう。人材の優秀層とそれ以外をわけ、前者が新規事業を考案し、実践していく作業に取り組んでいくプロセスが、人材育成と説かれている。

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2019年08月18日

Posted by ブクログ

会社の組織をどうするのか?
そんなことを 興味をもつには、やはり
管理職になって 初めて考えることだろう。
日本の会社の組織は、よく考えられているが
事業によって、その目的を明確にした 組織づくりが必要だ。

しかし、組織づくりが 万能薬ではない。

組織づくりのボトルネックをあぶり出す
作業は とても大切である。
会社において『判断する』ということが、
ボトルネックになっている という指摘はまさに正しい。

①問題の認識②情報の収集③情報の分析④選択肢の生成
⑤選択⑥組織の正当化プロセス⑥命令•決定の伝達。
ここでは 選択 がおくれる。

マズローの5段階の要求で
『自己実現』に重きを置かれているが
『承認•尊厳』が重要であり、それが所属意識をたかめる
というのは、現実の問題である。

『コストは、他社より低く、すべての性能に関して
他社競合製品をうわまるものを、
他社よりも早く市場に導入せよ。』

フリーライダー問題と
エリートとノンエリート。すねた『厄介者』。
トラとキツネの権力。

『企画書の完成度は、ある程度までは大切だが、
一定のレベル以上になるとほとんど実質上の意義は薄れていく』

組織は 腐敗する。
能力のある 次期社長候補に 認知した子供がいた。
それは、プライバシーの問題なのだ。
と言い切るところが 牧歌的な感じも。

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2016年04月21日

Posted by ブクログ

奇妙な権力(キツネの権力)と組織の腐敗について詳しく書いてある。組織タイプや分業、調整については、同著者の別書「組織デザイン」の方が詳しい。

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2015年09月22日

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