感情タグBEST3
Posted by ブクログ
そんなふうにして、さかのぼってみるとすると、十代前には千二十四人の人がいる、ということになる。十代前って、だいたい千七00年ころでしょうかねえ。ちょっとややこしいけど、その人たちを全部足してみます。そうすると、自分の親から、十代前の千二十四人まで、二千四十六人の人たちが関わっているんですよ。二千四十六人。そして当然のことですけど、その半分が母親です。千二十三人が母親。みんな、女、です。その女たちのひとりでも、気を変えてこの子を産むのをやめよう、とおもったら、あなたにはつながっていなかった。そしてね、ひとりひとりが、若いころがあり、親との葛藤があり、恋があり、悩みがあったんだ。あなたのお母さんは、それをみんな、受け取って、今のお母さんになっているんですよ。母親になる、ということは、それまでの女の歴史を、自分で全部受け止める、ということです。
「しょうがなかったから、今の仕事を選んだんだよ。就職氷河期だったしさ」夫は言うが、わたしは知っている。それは夫がやむをえず選択したように聞こえるけれど、その時点の「決断」によっている。彼がそう決めたから、そうなっているんだ。この世界で起こっていることって、みんな結局、やむをえない選択みたいに見えても、実は自分がそんなふうに決断している果てに起こっているに違いない。
流されているように見えて、本当のところは、みんな自分でそうやって流される決断をしているんだわ、わたしは思う。本当に選ぼうと思えば違う道だってあったはずだ。みんな、それぞれ、正しかったり間違ったりしているけれど、決断しながら生きているんだわ。思うようにならない、ってそれってどこかの決断が間違っているんだ。意志の力さえあれば、なんとかなる。
チベットの曼荼羅
「夢も見ないっていうことは現実に夢を持てない、ということと同じだわ」
忙しいと、何でもめんどうくさい。いいかげんにやるようになる。だから、そこで処理されたことは、後々になって問題が出てくる。いつもそうだ。わかっているのに、忙しくて、めんどうくさかった。なんてこと。
でも、そういうものって本当はたくさんあるんだと思う。やりかけて、見届けることができないもの。ほとんどのことってそうなんじゃないだろうか。なんでもやり始めることは楽しい。でも最後までやりとおすことは難しい。やり始めたのとを終えられなかったことはなんとなくうしろめたいから、わたしたちは、言い訳したり、病気になったり、むやみに忙しくなったりしながら、適当にごまかしながら生きている。そういうものだ。だから、ラザニアが見届けられなくても、それは、もうひとつ、私の人生に重ねられた「未完のこと」に過ぎない。
「人知らずして恨みず」孔子
他の人になんと思われても、それはその人が知らないだけなのだから、怒ってはいけない。人が自分のことを全く理解してくれなくても、怒ってはいけない。自分がよりよい状態であれば、相手のほうが変わっていく。長い間かかってもかならずそうなる。
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三砂先生のお話が短編になった感じ。言ってることはいつもと同じなのだけど、物語になっている。
どれも好きなのだけど、ベビーバギーだけはちょっと考えちゃった。
もし、生まれるところを自分で選べるとしたら。紛争地では、こどもが少なくなるはずじゃない?日本で少子化がおこらないはずじゃない?(これはそうとは言えないか…)
Posted by ブクログ
この方、フィクションも書けるんだなー。
全て短編で、よく練られたお話でした。
いわゆる「研究者」の方が、自分の専門分野をテーマにしたストーリーをかくというのが面白い!
母娘の関係や、時間に縛られる話、
どれもリアリティがありました。
Posted by ブクログ
強烈なタイトルに惹かれ手にしましたが、タイトルのみ強烈でした。
どの短編も、言わんとすることは分かるのですが、そこにたどり着くまでが哲学的というか独自というか、でも話に重さがあるわけではないので、さらりと読めてしまい、結果、読後、何を読んだか印象が残らない本でした。