【感想・ネタバレ】大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史のレビュー

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Posted by ブクログ

古い本だけれど、感情論になりやすい教育論が丁寧に考察されていてとても良い本だった。古いからこそ、流行とは無関係に読める点も良い。
教育には何ができないのか、を考えるべきだという提言に納得。

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2014年10月30日

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自分が受けた中学での補習授業はこうした状況の中で行われていた。友人はだから大学へは進まなかった。自分はなぜ大学へ進みたかったのか。

戦後と言う社会状況の中で、教育がどのような歴史的意味をもっていたのか、教育社会学の視点でたくさんのことを知ることができる良書である。国際的な比較を通した、「平等」の考え方は多くの教育実践者にも知ってほしいと思った。

サブタイトルの「学歴社会と平等神話の戦後史」のほうが、本書の内容をよく表している。

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2013年04月23日

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1995年発行とは思えないほど現代的で、今も筆者の言う構造があるように感じられる。
神話にあふれる教育の世界、抽象的な「本当の教育」といった終章での意見は非常に共感できた。

同じ平等な教育といってもイギリスは階級的、アメリカは多民族的に考え日本の差別感を与えない教育=平等という考え方の特殊性を明らかにしていく部分や日本の場合、社会的出生=入試による生まれ変わりがあるといった主張は非常に参考になった。

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2012年08月26日

Posted by ブクログ

大衆教育社会が成立したが、そこには表だって問題とされない、(学力)階層社会が存在していたということを、いろいろな資料によって明らかにしている。また、日本は諸外国にはない、平等的な学校システムが作られた国でもある。

これは、日本的な能力主義、平等主義が生み出していったものであるとする。90年代半ばに、社会の変革を的確にとらえて、大衆教育社会が成立し、そして揺らぎ始めていることをとらえている。

当たり前のことを分析したうえで、しっかりとした意見を構築しないと、砂上の楼閣になりかねない。そんなことを、わからせてくれた本だった。

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2012年03月31日

Posted by ブクログ

これは非常に面白かった!!
文句なく人にオススメできる本。

「階層と教育」の問題に切り込み、この問題が戦後の絶対的貧困の解消から現在に至るまで人々にどう扱われてきたか、そしてそれらが日本人の教育観にいかに影響して、最終的にいかなる教育が生成されたかを語る。

最終章が秀逸すぎて震えた。
アメリカの社会哲学者フィッシュキンの「トリレンマ」の話もさることながら、最後の一言。

「教育に何ができるかではなく、何ができないかを語りなさい。教育に何を期待するかではなく、何を期待してはいけないかを語りなさい。」

教育関係者、特に教員志望者をはじめとする学校教育を考える方々に是非ぜひ読んでほしい!
「教育の無限の可能性」「子どもの無限の可能性」を信じる人には、必ず読んでほしい。

教育と社会とが目指す姿、目指せない姿、そしてそれらがいかなる思想、教育観を前提としているか。
人によってはショックを受けるかもしれない内容。
日本一有名な教育学者が語る「教育の現実」。

ぜひ手にとってみてほしい。

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2012年03月13日

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東京大学大学院教育学研究科教授(社会学)の苅谷剛彦(1955-)による大衆化する教育社会における階層問題の考察。

【構成】
第1章 大衆教育社会のどこが問題か
第2章 消えた階層問題
第3章 「階層と教育」問題の底流
第4章 大衆教育社会と学歴主義
第5章 「能力主義的差別教育」のパラドクス
終 章 大衆教育社会のゆらぎ

「大衆教育社会とは、教育が量的に拡大し、多くの人びとが長期間にわあたって教育を受けることを引き受け、またそう望んでいる社会で」あり、本書で挙げられる特徴は以下の3点である。
 (第1の特徴)高い高校進学率・大学進学率
 (第2の特徴)「メリトクラシーの大衆化状況」の現出
 (第3の特徴)大衆化したメリトクラシーを通じて選び出される特定の社会
        階層の文化との親近性格をそれほど強く持たない「学歴エリ
        ート」の存在

 1950年代には至るところで見受けられた貧困層の低学力問題は、高度成長を経て一億総中流の大衆社会の出現によって消滅した。かわって、学歴エリートへの批判が持ち上げってくる。1991年の中教審小委員会の中間報告においては、私立中高一貫高の国公立大への進学実績伸張による、大都市部富裕層によるエリート階層の独占化が危惧された。しかし、この批判が的外れであることを1950年代以来のエリート層輩出家庭の分析により明らかにされる。つまり、東大をはじめとする有力大学は一貫して、上層ノンマニュアル層の子弟の寡占状態であり、私立中高一貫校の普及とは関係がない。
 とはいえ、教育社会学の研究者が長年積み重ねてきた階層と教育の問題が社会的な問題として大きく取り上げられる機会は少なかった。

 それは、学歴取得前ではなく、学歴取得後の社会的格差を問題にし続けた「能力主義教育批判」という教育界の一大潮流にあった。この潮流こそ、教育の形式的な画一化を求める「画一的平等化」と平等原則に基づく教育の機会拡大を求めることになった。しかし一方で、このような教育機会の平等化要請により、同等の学力レベルに達した生徒達による学歴獲得競争が激化するというパラドクスも同時に生じた。

 以上のような、大衆教育社会の状況を、実証的に示す本書の議論は明快である。同時に
このような歪な大衆学歴社会を改善する特効薬も見あたらないのもまた本書で明らかにされている通りである。評者を含め我々戦後世代が歩んできた「学校教育」の構造的な問題点を認識する上で、本書の存在は非常に有意義であり、教育について少しでも関心のある人間には是非一読していただきたい一冊である。

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2012年02月18日

Posted by ブクログ

新書で体が震えたのは「ビジネス・インサイト」以来かな。

ゼミ論で使えそうだと思ったから丁寧に読書ノート取りながら読んでたけんども、考えさせられる事が非常に多い。いかに今までの自分の考えがうわべだけだったのかを実感させられる。批判的な態度で臨んでもこのざまか、という自分に失望クリスマス。歴史は偉大でした。やはり歴史的布置連関もしっかり追跡しますよ。

戦前から90年代にいたるまでの学校教育史の本。メインは戦後いかに「大衆教育社会」が成立したのか、であるよ。能力主義を嫌って平等主義をうたった方針がいかに確固たる能力主義制度を作り上げたか、またいかに不平等を覆い隠すシステムを作り上げたか(←教育の問題を社会から切り離して論じる限り、方針が変わろうと歴史は繰り返される)。欧米との差別観の差異も面白い。ブルデューもハマータウンも頭の中で大活躍でした。

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2010年12月25日

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生まれながらの身分制が(ほとんど)存在しない日本という国で、
学歴というものが持つ意味を考える
なぜ「学歴」なのか

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2010年04月25日

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ちょっと古い本ですが内容的には全然古くなっていません。
内容も読みやすく、非常に分かりやすいです。
統計データは使いますが複雑な話ではないので、苦手な人にもオススメ。

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2009年10月04日

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これみんなに読んで欲しい!!って特に大学の人はこれを読んで自分の歩んできた教育と現状を理解して欲しい。それでいて自分達の状況が当たり前ではない事を……。無理か!!
それにしても僕は学校の先生にはなりません。これめっちゃ面白かった!!

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2009年10月04日

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格差社会がとりだたされる以前にこうした冷静な教育に対する見方が日本にあったことに驚いた。日本人の平等主義を教育のみならず、価値観への影響も踏まえて論じている。「教育はこうあるべき」と熱く語る前に、「教育に何を期待してはいけないか」を冷静に考える必要があるのかもしれない。自身の研究にも影響を与えうる書

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2009年10月04日

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25年も前の著作だが、データを丹念に扱い、他国との比較も踏まえ、戦後の日本教育の変遷を辿った語り継がれるべき良書。今でも学歴の再生産と固定的知能観を醸成させていることは否めない。大学入学共通テストもどうなるんだかねぇ...。合否判定する側の力量の方が問われるだろう...。

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2020年07月18日

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●教育の量的拡大
●メリトクラシーの大衆化
 高校進学率の爆発的拡大と合わせて、経済的理由によって進学を断念しなけらばならないという貧困問題が希薄化。だれでも努力次第で進学できるように見える社会が到来した。
●学歴エリートの非選良性
 量的に拡大した新制大卒層がエリートとしての自覚や世代間再生産の後ろめたさを持たないまま、漫然と中間層上層を構成している現代日本の実態

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2013年05月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<概要>

『知的複眼思考法』で有名な(少なくとも個人的には…)苅谷剛彦氏の著書。
日本に特有な「大衆教育社会」が成立した経緯及び生み出される問題、隠されている問題を検討する。「大衆教育社会」の特徴は以下の三つである。
①教育が量的に十分供給されており、国民に広く行きわたっている。
②学校における成績によってエリートが選抜され、エリートがその後の人生において非エリートに対する相対的な優位に立てることが社会的にある程度認められており(メリトクラシーの大衆化)
③エリート層はあくまで「学歴エリート」であり、独自の文化を持たず大衆に基盤を置いている。

まず日本における教育機会に関する検討が行われる。戦後に関しては親の経済力が子供の教育機会に如実に表れる傾向があった。経済成長を経てこの傾向が希薄化された後も、親の階層(学歴・職業)によって子どもの教育機会は強い影響を受けたが、この相関関係は大きな社会問題としては取り上げられなかった。
この要因として筆者は、以下の二つを指摘する。
第一に国民に根付いた学歴社会観であり、「誰でも学校で成功すれば成り上がることができる」と思われたために、学校教育が階層に関して中立的とみなされたことである。
第二に、生徒の受ける差別感をなくすために日教組が唱えた「能力平等論」であり、これは学力差を(出身階層にも由来する)能力差としては見ず、高い学力を努力の成果だと捉えるものである。
しかしこのように形成された「大衆教育社会」も近年(本書の出版は95年)揺らぎ始め、教育に全てを求めるのではなく教育に「できないこと」を検討すべきである。

<所感>

極めて雑な概要でまとめてごめんなさい。所感は以下の三つ。
①能力の平等を日教組が主張したことが、表面的な平等感を作り出し社会階層と教育機会の問題を隠蔽した、という部分の議論展開は面白かった。理想理念が日教組にとってより深刻で重大そうな問題を隠蔽したと。

②エリート層と非エリート層の間に文化的・精神的な隔絶がないことが労使協調に寄与した、というのは興味深く、新しい観点を得られた。

③大学に進学した際のことを回顧すると周りの友人の出身社会階層がかなり限定されていたことが思い出される。多くの友人は、親が有名企業勤務のサラリーマンだったり、公務員だったりする場合が多くて、ブルーカラーが少なかったため、個人的な経験からも筆者の主張は実感できる。
加えて地方格差が酷いと受験期には思っていたので、筆者の議論に何か付け足すとしたらその辺かと。

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2012年12月09日

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教育社会学のパイオニア・苅谷剛彦氏が書いた15年前の書である。しかし、内容は今にも通じるものばかりである。経済から見た教育格差。大衆化した大学教育とメリトクラシー。教育格差から生まれる階層・文化の違い。国際比較から見た日本の教育の現状etc...いずれにしても両極端に偏ることなく、バランスのとれたものが多い良書。教育社会学のバイブル。

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2012年05月08日

Posted by ブクログ

95年の著作でありながら社会学として普遍的な書だと思う。
流石は東大教官がすすめる100冊といったところか(まあその手のモノはむやみに信用しているわけでもないのだけど)。

この本ではデータを駆使して今まで全く論じられることのなかった点を追及している。
それは学歴取得以前にも不平等はあり、小学生レベルでも親の社会階層によって学力が違う、ということ。
正直これは子ども心に薄らと気付いていたけどある種触れてはいけないタブーのような部分があったように思う。
やっぱり団地の子とか軽く馬鹿にされていたし、そういうのは確実にあった。
また改めて振り返り、進学校と呼べる高校に入った子をカウントするとその分布にも面白い発見がある。
最近ではAO入試というものが多いそうだが、この著者はそういったことに対しても「個性」や「創造性」が親の階層によって決められる可能性がある・・・と予言している。
これは事実そうなっているだろう。
また満足な職を得るにも親の階層が多いに関係している社会になっている。
しかもこの手の本を手にするのも親の階層が関わってくるのだ。
小学校入学時に親に配って感想を書かせるべき一冊。
因みに個人的な感覚だけど、進学校でも親の階層を感じる部分はかなりあった。

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2011年05月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
本書は、欧米との比較もまじえ、教育が社会の形成にどのような影響を与えたかを分析する。

[ 目次 ]
第1章 大衆教育社会のどこが問題か
第2章 消えた階層問題
第3章 「階層と教育」問題の底流
第4章 大衆教育社会と学歴主義
第5章 「能力主義的差別教育」のパラドクス
終章 大衆教育社会のゆらぎ

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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共感度(空振り三振・一部・参った!)
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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年03月29日

Posted by ブクログ

「本書は、比較社会学の視点から、戦後日本の教育と社会とのユニークなむすびつきがどのように形成され、いままた、どのように変わりつつあるのかを探るひとつの試みである。」(まえがき■)
「戦後日本社会の形成という謎に、教育と社会との結び目に着目することから迫っていく。本書は、教育に視点を置いた、戦後日本社会論のひとつの試みである。」(025頁■)

著者の『知的複眼思考法』を実践したもの。

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2012年05月15日

Posted by ブクログ

戦後、国民の平等がうたわれ、形式上は階級格差がなくなったとされる現代だが、その背後には依然として教育の場で階級格差が残っている、と説く一冊。
教育社会学かな?

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2013年02月17日

Posted by ブクログ

なるほどなーと思った。確かに東大の子は東大、政治家の子供は政治家だ。入試の際に、その後の階級を決める公平で平等な「生まれ変わり」が行われているようで、実は、生まれたときから自分の階級は決まっているのかもしれない。少し怖いな、と思う。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

「教育に何ができるのかを考えるのではなく、何ができないのかを考えること」
「教育になにを期待すべきでかではなく、何を期待してはいけないのかを論じること」
こうすることで、私たちは、教育がそれ以外の世界ときりむすんでいる関係にまで、少しでも視線を延ばすことができるだろう

この一文に全てが集約されているような気がする。日教組という組織の頭の固さにも辟易する。
学歴が両親の経済力でなく家柄(社会階層)が強く影響するというのはなんとなく分かる。時間がたったらもう一度読み直してみよう。

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2018年11月05日

Posted by ブクログ

アメリカやイギリスとの比較を通して、日本の大衆教育社会の形成とその問題を考察した本です。

イギリスでは階級が、アメリカでは人種が、学歴の再生産と密接に結びついていることがはっきりと見えるのに対して、日本では高度成長によって目に見えやすい貧困がなくなった結果、学歴の再生産が論じられることは少なくなっていきましたが、その背後で不平等の再生産がますます強化されつつあると著者は論じています。

さらに、能力主義教育への批判が浸透し、誰でも同じ教育を受けられる制度が行き渡ったことで、メリトクラシーが大衆的規模に拡大し、階層的なアイデンティティを持たずノブリス・オブリージュを備えていない学歴エリートが増加したことにまで説き及んでいます。

教育を社会学的な視点から見てみると、このような問題が明らかになるということが、興味深く感じました。

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2014年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

現在の大衆社会的な教育がいかにしてできたのか。
日本の戦後の社会の流れ、日本の特徴について、多数の学術的データも使いつつ、述べたもの。
おもしろい本ではあるが、さすがに15年以上経ってしまうと少し古いのではと感じてしまう。

今や過去のものとなりつつあるが、日本の教育の問題点について、深く考察を行いしるしている。どの子も同じように平等な機会をとしたばかりに多様性を打ち消す方向にそれが表れてしまった。
としている。

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2011年11月03日

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