【感想・ネタバレ】電話帳の社会史のレビュー

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Posted by ブクログ

かつて「著作権」を勉強していた時に、「アメリカでは電話帳にも著作権がある」と聞いて、電話番号と名前、住所の羅列にも著作権があるのか、と不思議な感じがあった。この本を読んで、アメリカの電話の発達とともに電話帳がいろいろな工夫を加えていった歴史が俯瞰でき、納得がいった。
考えてみれば、一番初め、ベルが電話というシステムを発明(特許取得が1876年)したころ、電話の所有者は、まだ2桁程度のものだった。この時点では、まだ電話番号は存在しない。初めのころの電話帳というのは、加入者名と職業、住所のリストだった。そして、いかにもアメリカだが、電話業者もまして電話帳業者も、すべてが民間でビジネスチャンスを狙っているだけに、いろいろな工夫が加えられていく。やがて「どこそこの○○さんへ」といって繋ぐ電話交換手の手に余るほどに加入者が増えた時点で、加入者は付与された電話番号を交換手に伝える「番号」の時代になる。
業者の消長も激しい。
加入者の名前だけで配列した、日本風にいえば50音順、アルファベット順という「ハローページ」「ホワイトページ」から、「ビジネス電話帳」「イエローページ」「職業別電話帳」へと編集が加えられていく。ここで「著作権」が発生すると言っても良い。配列するに当たって、分類が出てくるからで、どのような職業別にどの仕事の分野を仕分けていくか、が利用者の使い勝手に関わってくる。これを巧くしていくと、電話帳が広告媒体として注目されていく。立派な仕事の領域が生まれる。さらに長距離電話や近隣地区との接続が容易になるとともに、エリア別の編集という新たな工夫も生まれ、ビジネスチャンスはさらに広がる。

また番号案内の人件費と、電算機の進展によって、電話番号簿のデータベースが出てきて、案内有料化の世界を迎える。ビデオテック、日本でもエンジェルラインなどが導入され、利用した覚えがある。
それも携帯電話がここまで普及して、個人情報の保護の風潮が強まってくると、電話帳の役目も変わってくるのだろう、と思った。

因みに、日本では「官」が電信も電話も押さえていたが、官尊民卑で役所から若い番号が振られたりしたようだ。それでも「カステラ1番、電話は2番」の文明堂は早い時代からのキャッチフレーズになっている。終戦直後の日本で最初にできた電話帳はGHQのものだった。
電話資源の歴史をみても、確かに戦後の電電公社時代、加入申し込み数に追いつかず「積滞」の数は増える一方で、都会でも「親子電話」がかなりあった。私も経験があるが、いまとなれば懐かしい。そんなことまで思い出した。

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2009年11月29日

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