【感想・ネタバレ】新・日本の外交 地球化時代の日本の選択のレビュー

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Posted by ブクログ

名著『日本の外交』の続編として出された新書。

 歴史家が、「現代」「現在」を語ることの難しさを痛感させられた著作。外交史の大御所である入江昭氏が書いた著作であっても、15年経った現在読んでみると、論証の度合いや認識不足という点が気になってしまう。

 歴史家は常に、過去の一事象を取り上げて論じる。もちろん、その一事象の原因・背景・経過そして影響までも知った上で、その一事象について論じるのである。しかし、現在は違う。我々が生きる現在には、過去はあっても未来はない。現在を形作っている原因・背景すらもはっきりしない。
 そのような状況の中で、現代史の通史を描くことは歴史学者として勇気のいることだと思う。


 さて、本書の肝心の中身であるが、冷戦は終結からソ連崩壊の間に書かれているため、時代の「過渡期」で試行錯誤している様がうかかがえる。
 その一方で、前作から貫かれている「定まらぬ日本の外交姿勢」ということは明確に打ち出されている。今や当たり前の概念となったボーダーレス時代の地球を見据えた著作と言えるだろう。

 ただ、日米関係の考察は鋭いものがあると思うが、日韓・日中関係についてはやや考察が甘い部分があるように感じた。

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2010年02月07日

Posted by ブクログ

『新・日本の外交――地球化時代の日本の選択』(入江昭、1991年、中公新書)

第二次対戦後の国際政治史を詳細に解説している。すばらしい分析力をもって書かれている。国際関係の流れが国際政治、国際経済の両側面から説明されているので非常にわかりやすい。

初版が1991年であるため、近時の国際関係については記述がないが、80年代までの国際関係と日本外交の流れを学習するには非常に有益である。

(2009年6月29日)

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2009年10月07日

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ネタバレ

 明治維新から太平洋戦争直後までの外交の流れを著した『日本の外交』の続編。本書では、太平洋戦争の結末から1980年代の日本外交を概観する。

 著者は、太平洋戦争期までの日本を軍事強国・経済弱国とし、戦後の日本はその対称であるとする。そして戦後の日本には、軍事と経済のギャップを埋め正当化する思想が求められたにも関わらず、外交理念の確立が遅かったという。「日本」の政策に思想的な追求が遅れているという状況は、本書から四半世紀経過した現在においても同様なのではないかと感じる。

 まさしく副題の通り、地球化時代が不可逆的に加速している現在において、自分の自身の生活に関わる「日本」の選択と選択肢たちを検討するために、知識を深めようと刺激された2019年一冊目だった。

以下、心に残った文メモ。 
「現在の世界を理解するために、固定化した過去のイメージにとらわれず、柔軟性のある見方を持った上で、最近の諸現象の意味を探り、それが近い将来にいかなる動きとつながっているのか、考えてみるべきであろう。要するに、バランスのとれた歴史感覚が必要とされるのである。(中略) 未来を創るのも、過去の遺産と同時に現在の努力である。」

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2019年01月07日

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2012.12記。

「日本の外交」刊行から20余年を経て1991年に出された続編。

米ソ冷戦、第三世界の台頭、そして冷戦の終焉・・・いずれの時代も興味深いが、一番印象に残ったのが、本書の刊行年に日本がまさにバブルの絶頂(からの今思えば転換点)にあったこと。

円安に起因する貿易摩擦で対日批判が吹き荒れ、ロックフェラーセンターの日本企業による買収で「アメリカの魂が買占められた」と激震が走る。日本の輸入の少なさの原因を国内の歪んだ慣行や商習慣に求め、内需拡大のための「構造協議」を要求する米国。それに対する反発の象徴が石原慎太郎・盛田昭夫「Noと言える日本」のベストセラー化。まさにそういう時勢だった(本書はそうした風潮に警鐘を鳴らすことで終わっている)。

昔日の感あり。

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2019年01月06日

Posted by ブクログ

入江昭『日本の外交』の続き。前作が、カバーしていない戦後の日本外交史についてまとめられている。
戦前から我が国の外交は、国際環境に合わせて場当たり的な対応に終始し、一貫した外交思想を持っていないというのが筆者の主張であり、本書においても、そのように主張しているところがある。しかしながら、90年代に近づくにつれ、外交の根源的思想をどうするかということについて議論が始まりつつあると述べられており、だんだん我が国でもそのような機運が高まってきていることについて述べられ、本書は終わっている。(本書が書かれた時代は、1990年である)
私自身、外交は国際環境によって規定されると考えているため、筆者の主張する外交の思想がよくわからなかったが、二作通じて読んだことで、筆者の言わんとしていることを理解し、共感することができた。2000年代が終わり、2010年代も半ばを迎えつつあるが、今の筆者は90年代と00年代をどのように評価するか、興味深いところである。

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2014年02月25日

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前著 日本の外交の続編。1960年代以降の外交を中心に、政治・経済的な面の戦後史的な本。内容は、下記の通りであり、基本的な政治史がわかれば全体像もわかりやすいと思う。

序五十年の軌跡

第1章 日米戦争の結末
第2章 日本外交の再出発
第3章 平和的共存の芽生え
第4章 第三世界の抬頭
第5章 経済混迷期の外交
第6章 「ポスト冷戦」の世界へ

二一世紀に向かって

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2013年04月23日

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戦後日本の経済力と軍事力のギャップ、そのギャップが、国際秩序の中で
如何に評価され、外部からの評価をどう国内の動きにつなげていくか
これがここ20年ほどの日本の課題であったと思う。
この本は戦後から現代までの主に外交分野での軌跡を追いかけているが、常にその時々で沖縄が絡んでいる。
その沖縄の絡みから、戦後日本を提示する方法があると、思いたい。

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2012年08月06日

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『日本の外交』(中公新書)の続編で、太平洋戦争後の国際状況の中での日本外交の歴史を扱っています。

東西冷戦という大きな枠組みの中で、戦後の日本がアジアにおける共産主義の防波堤としての役割を果たしながら、経済成長を遂げてきたことを概観するとともに、日本に確固とした外交理念が欠如していたことが、冷戦後の日本の外交の混迷を招いたという指摘がなされています。

日本の外交史に見られる枠組みが提示されていた前著に比べると、ややスケールの大きさに欠ける印象もあるのですが、いまだ評価の見定めがたい現代史を扱っている以上、やむをえないように思います。戦後日本外交史が分かりやすく概観されていて、おもしろく読みました。

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2015年10月03日

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