【感想・ネタバレ】蘭菊の狐のレビュー

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Posted by ブクログ

代々「狐憑き」の家として見なされた出雲家の少女・阿紫。村八分にし家族を残酷に奪い去った村の人間に対し独り復讐を挑む彼女のまで前に現れたのは、くたびれた3人の中年男だった。彼らは阿紫の復讐に手を貸すことに決める……。

「狐憑き」がテーマということで時代物かと思いきや、舞台は昭和。もちろん、オカルト的要素は描かれるのが、その一方で「憑き物」というラベリングによって村八分という差別の図式が形成されていく、そのメカニズムが明確に描かれている。それは往々にして、村において成功した「分限者」に向けられる妬みや僻みから発生したものであることを知って寒々しい気持ちにさせられた。その人間の心の中に巣食う醜さを、作者は

「狐は、あなたがたが心に棲まわせていたのです」

というクライマックス前における阿紫の科白によって語らしめたのだろう。

重く、どことなく滑稽で、読後に一抹の爽やかさの残る一冊。

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2011年03月18日

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