【感想・ネタバレ】皮膚は考えるのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年07月28日

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傳田 光洋
京都大学工業化学科、工学研究科分子工学専攻を経て京都大学工学博士。カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科学教室博士研究員、国立研究開発法人科学技術振興機構CREST研究者、広島大学客員教授などを経て、明治大学先端数理科学インスティテュート客員研究員


皮膚は考える (岩波...続きを読む科学ライブラリー)
by 傳田 光洋
私がそんな友人たちに「皮膚ってのは実は大事な臓器なんだ」と酔った勢いで自分の研究を吹聴したときのことです。コピーライター氏が「心臓や胃や肝臓は「 内臓」 だよね。だったら皮膚は「 外臓」 か」とビールグラスの向こうから言いました。もちろん彼の造語ですが、うまい表現だと思いました。企業を身体にたとえれば、人事や財務担当部門は内臓、宣伝制作は外臓と言えるでしょうか。

それによるとヒトやモルモットの皮膚、とくに表皮は裏側を基準にすると一〇〇ミリボルト近いマイナスの電圧を持っている、というのです。

他にも役立つ物質はないだろうかとさらに考えていた頃、南フランスのサン・レミの街で開催される学会での招待講演を依頼されました。美術に詳しい方なら聞き覚えがある街だと思います。アルルでのゴーギャンとの共同生活がうまくいかず、やがて破綻の末、自分の耳を切り落とす、という状態になった画家ゴッホが収容された精神病院のある街です。ゴッホの代表作の一つ、「星月夜」はこの街で描かれました。

皮膚は実は免疫をつかさどる最前線の臓器であり、さらには身体のホルモンのバランスにも影響していることが明らかになってきました。

肝臓や腎臓を近親者から移植するというケースはよくあります。まったくの他人からの心臓移植も前例があります。ところが皮膚は他人のものはまず移植できません。移植してもすぐに剝がれ落ちてしまいます。

(最近、日本でも医学教育のなかに東洋医学を取り入れることが必須となりました。)  東洋医学が、その実効性が認められながらも、なにやら怪しげなものと見なされている理由は、その作用のメカニズムがよくわからないことであると思います。「気」だの「つぼ」だの「経絡」だの、はては「陰陽五行説」だのと言っても、実態が何であるのかよくわからない、明確な説明がなされていないところからもそう思われるのでしょう。  
西洋医学の場合には精密な解剖学的知識がまずあって、胃が痛いなら、そこにある潰瘍なり炎症なりを手当てする。心臓がちゃんと機能しているかどうか、心電図をとる、というように一対一の対応が体系化されているのでわかりやすい、ということがあります。言い換えれば、すべてが何らかの原因と結果に還元できるという医学の考え方です。  
しかし、この方法論は生体のように多くの因子が複雑にからみあった系では単純すぎて逆に落とし穴に陥る可能性があると思います。薬の副作用に見られるように、その効果も一対一の関係ではありません。  
わたしたちの身体はひとつの「複雑系」です。些細な身体の異常が重大な病を引き起こすこともよくあります。そして、そういう場合の身体の異常と病との因果関係は、そう簡単に答えがでるものではありません。

しかし私は、不運な事情で修士課程を終えて大学を離れることを余儀なくされました。自分は科学に縁がないのだろうと、いっそのこと好きな美術や詩に関係のある仕事に就ければと思い、深く考えもせず現在の勤務先に就職しました。物理化学も生物物理も関係のない歳月が一〇年あまり流れました。気がつくと皮膚の研究者になっていて、その研究で母校の京都大学から博士号も取得できました。さらにアメリカの大学の皮膚科に留学する機会も得られました。

さらに岩波科学ライブラリーの中でも、そのタイトルが際立って目を惹く『愛は脳を活性化する』(一九九六) という松本博士の本の中で、海馬の中の情報の流れを光計測で視覚化する、という研究に魅了されました。

学生時代、濫読していたユングの心理学が思い出され、意識とは別に、我々の心や身体に重大な影響力を持つ無意識の存在を重く感じました。

そのとき私は松本博士が現代医療の限界に気づいておられたこと、それに対して東洋医学の臨床面での効果の絶大なることを身をもって感じました。そして、再び皮膚科学による東洋医学の解釈の可能性について、初学者用の教科書を開いたり、文献を集めたりし始めました。そして、その立場から再び自分のこれまでの研究を鳥瞰しなおす作業を始めました。本書はその最初の一歩です。

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Posted by ブクログ 2011年02月18日

浅く刺した鍼がなぜ効くのか?本当にちくっとしか刺さない日本の古典的な鍼灸治療に私も治療者でありながら、半信半疑な所がありました。
しかしこの本を読んで、経験医学としてのカテゴリーだけでは納得できないない部分も多少あったので、「皮膚科学」という専門分野から鍼灸を見直すきっかけができて、本当に素晴らしい...続きを読むと思います。
これからも研究を進めて欲しいし、鍼灸界とコラボしてほしいですね。

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Posted by ブクログ 2013年03月09日

皮膚には脳神経系で働く物質と同じものが存在する。そして、皮膚は環境に応じて、その状態を変化させ、必要な情報を体内に伝える。鍼灸の効果もこんなところから本質がわかるかもしれないらしい。マッサージやスキンシップの科学的な効果もこれから明らかになってくるのだろう。これからも要注目である。

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Posted by ブクログ 2013年01月26日

鍼灸の作用機序は現代科学で明らかになっていない。

これを、非科学的だからと取るか、または一種の哲学や思想であり医学ではないと取るか、それともあくまで現代科学では明らかになっていないが経験科学によって支えられていると考えるか。様々な捉え方があり、特にわが国では前者二つの受け取り方が大勢を占め、その結...続きを読む果鍼灸の生涯受診率が6%という結果になっているわけである。

しかしながら意外や欧州、例えばドイツでは日本よりはるかに鍼灸治療を医療のチョイスにいれている人が日本の倍ほどもいたりする。

この本は皮膚についての本であるが、最後一章を割いて鍼灸治療について書かれている。

なぜ鍼灸治療では皮膚に鍼やお灸をすることで内臓疾患にアプローチできると考えているのか。ただの迷妄か、それとも皮膚刺激にそのような効果があるのか?

現代科学と伝統医療の間に横たわる深い溝に頭を悩ませたことがある人には一読を勧めたい、そんな本である。

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Posted by ブクログ 2011年07月25日

賢い皮膚の作者の前著
あまりにもわくわくしながらよんだためこの人の
書籍を読みたくて紐解いた まあ内容が重複するので
内容は一緒ではあるが 一気に読みきってしまった
前著にはない細かいデータや考察がすこし入っていたので
非常によかった

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Posted by ブクログ 2010年07月11日

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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Posted by ブクログ 2014年07月10日

フォトリーディング&活性化で高速リーディング。

著者は「おそらく」と断ってはいるが、皮膚は光を感知し、気分に作用するとの事。ベータエンドルフィン(快感物質)が皮膚にあるが、どのような役割なのかは不明との事。

皮膚は臓器、皮膚は免疫をつかさどっている、などのキーワードで科学的に色々説明をされている...続きを読む

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Posted by ブクログ 2012年10月04日

著者のこれまでの研究と、それを踏まえた予想、皮膚が単なる体を包む膜ではなく免疫や全体のホルモンバランスと関係し、さらには皮膚そのものが脊髄や大脳のような情報処理システムを持つのではないか、という、まとめるとそのような考え、が述べてあります。
語りくちが丁寧でわかりやすく、研究者のおじさんの話を「うん...続きを読むうん」、「へぇ~!」と相槌を打ちながら聞いている気分で読みました。
ただ専門用語が多く、わからない言葉があるとその都度勉強しながら読んでいたので時間がかかりました。お医者さんが読むとより面白いんじゃないかなぁ?

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

皮膚は内臓の鏡というぐらいだし、お肌のお手入れに熱心な女子ならみんな「カラダの中身が肌に出る」ことは百も承知。
その事実に科学でアプローチした一冊。
生物で習った「皮膚は外胚葉由来」という
知識に、こんな意味があったなんて!その他にも皮膚について知らなかったことが満載。やさしい文章で文系の私にも読み...続きを読むやすい本でした。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

皮膚って、単なる単なる表面を覆う、包装紙の役割だけでなく、全身に大きな影響を与えています。お肌を制するものは、健康を制する、とも言えるかも・・・。美容・健康に深く関心のある方におすすめです。

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